幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる 作:袴紋太郎
見つけるのは苦労しなかった。
集英社からの帰りか、日が傾く中で相対する。
コケた頬、目の下の隈は深く、明らかに生気の感じられない表情。
どうも佐々木先生、コーヒーでもどうです?
近場の公園のベンチで、缶コーヒーのプルタブを開ける。
なんとなく暖かいというよりはぬるいって感じ、寒くなれば変わるだろうか。
「…何の用、ですか。連載はまだ」
ええ、拝見させて貰いました。
技量云々ではなく、単純に興味を惹かれない。
アレが、貴方の「ホワイトナイト」なんですね。
「ッ…」
我ながら嫌な言い方だ、正直自分でもどうかと思う。
だが、たぶん、今を逃せばきっと聞けないだろう。
あえて問わなかった疑問を、投げる時だ。
佐々木先生、「ホワイトナイト」の原稿を「参考」にしたのではなく、「模写」したのだと確信しました。
どうやって手に入れたんですか、その、本来書かれてないはずの「藍野伊月」さんの作品を。
ベンチに座り、暫くの間空き缶を見つめ続ける佐々木氏。
…実はですね、私も0からゴジラを生み出したわけではないのですよ。
互いに執筆の秘密を抱えている同士、暴露もまたアイデアの一つではありませんか?
沈黙から数秒、あるいは数分、夕焼け空に黒点となる烏の鳴き声だけがBGM。
「タイムマシンだよ」
ほう?
「落雷で電子レンジがタイムマシンになって、未来のジャンプが出てきたんだ」
「それでホワイトナイトを読んで、俺はそれを模写した」
「………もう出てこないけどな」
壊れたのか、壊したのか、判断はつかないが。
タイムマシン、なるほど面白い。
未来からの贈り物、つまり現在…未来からの過去を観測する存在がある。
うん面白い、これはいいネタだ。
某潜入ゲームにもあったが、過去を変えたことで未来が変化するタイムパラドックス!
今度使ってみよう…どうしました、そんな驚いた顔して。
「信じるのか…?」
疑ってどうするんです、しかし面白いですね是非読みたかった。
ホワイトナイト以外の作品も気になりますね、おっと今度はこちらの番だ。
そして語る。
自分にしか見えない幽霊の存在。
そこから得た情報を基にゴジラを描いたこと。
別の誰かが作った話を、自分のものにしたゴーストライターであること。
どうです? 私も大して変わらな…「自慢かよ…」はい?
「なにが幽霊だ! ただ、ただ自分の”想像”から生まれたのなら、それは自分のものじゃないか!」
「あんたに分かるのかよ! 才能のない俺の気持ちが、あるあんたに分かるのかよ!?」
「特定のジャンルに逃げるだけなのに、それも出来ない俺は哀れか! ふざけんな!」
空き缶を地面に叩きつけ、走り去る佐々木氏。
それを見送る自分。
自慢? 才能?
………ああ、なるほど、そう捉えられる所もあるのか。
俺は何がしたかったんだ?
ただ秘密を吐き出したかったのか?
同類だと思い込んでいた彼に、糾弾してほしかったのか?
…………馬鹿馬鹿しい、何もかも自分勝手が過ぎる。
『ゴジラが見たかった』
幻覚…?
『好きなんだ、子供の頃に見てからずっと…でもこっちには無かった』
『誰にも知覚されず』
『誰にも干渉できない』
『そんな中で、ただ一人だけ声が聞こえるやつがいた』
『そいつ通して、世界が見れた気がした』
『そのための手段に、大好きなものを利用した』
『違うんだ、俺は作り手なんかじゃない』
『ただかつてあった世界への縁を求めて…』
『その為だけに、大好きなものを勝手に使ったんだ』
『でも、それでも俺は―――』
風が吹く。
空気を切り裂く音が、鼓膜を叩き、咄嗟に目をつぶってしまった。
聞こえない、煩わしいと思っていたあの声が。
見えない、顔もあやふやな半透明の物体が。
消えてしまった。
おい幻覚…おい。
語りかける声は虚空に消え、返す者など何処にもいない。
なんだよ、いきなり現れたくせに。
まだ、望みが叶っていないのに。
いきなり消えるやつがいるかよ。
竜頭蛇尾どころか終始ドジョウでありますが、それでも一応完結させるべきと判断しています
ご不満に思われる方もいらっしゃると思いますが、次の最終話までお付き合い頂ければ幸いです。
※ヒカ○の碁って言っちゃあかんぞ!