幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる 作:袴紋太郎
嘘だろおい、人気投票トップとか普通そうはならんやろ。
『なっとるやろがい!』
「ゴジラ/怪獣王」のタイトルで執筆を始めたのだが、予想を大きく上回り人気に火が付いた。
ジャンプの表紙をデカデカと飾り、単行本は発売してすぐに在庫切れ。
電子書籍ってこういう時便利よねぇ。
『わーはっはっはっはっはっは、ゴジラの魅力に取り憑かれた時点で勝ち確よ!』
わぁいファンレターの山、返事どうしよう。
で、映画って特撮…というか実写だろ?
何処にどうすればいいわけ?
『馬鹿だなぁモブ太くんは』
やかましい。
『そういうのは詳しい人に聞けばいいじゃないか』
…それもそうか。
そもそも、人気なんて今だけだし逸り過ぎか。
よし! 今日は牛丼特盛で卵もつけるぞ!
『やっすいなぁ、お前』
◆◆◆
読み切りから連載開始というのは、実は非常に稀だ。
漫画雑誌というものは、その性質上読者からの人気によって引っ張り上げられる。
どれほど技量があろうと、シナリオが秀逸であろうと、読者の関心を惹かなければ意味がない。
今週号を手にとった男は、自宅でページを捲っていく。
「怪獣王ゴジラ、敵対する怪獣、人類の戦い…」
技量はある。
設定も悪くない。
登場する怪獣はどれも手強く、キーとなるゴジラは人類の天敵。
人類の科学力を結集して生み出された兵器は時に爆散、時に活躍、時には怪獣を打倒する。
だが誰もが好むかと問えばそれは否だ。
対象はほぼほぼ男性に限定される、戦闘が多いタイプなのでさらに絞られるだろう。
沢山の人に楽しめる作品とは言い難いものだ。
これは自分の求める作品とは絶対に違う。
…だから、菊瀬編集の言葉は、どうでもいい。
【男か、女か、少年か、大人か、誰に向けたものでどんなテーマがあるのかサッパリだ】
【こいつを応募した作家は、怪獣が好きな男性向けとして描いてるとハッキリ言ったぞ】
【お前何か勘違いしてないか?】
どうでもいい。
どうでもいい。
どうでも、いい。
ボツ扱いされた原稿を机に置いて、新作を描くためペンを握るのだ。
何が悪いのか理解出来ない男は、事実に目を向けることなく陰鬱な日々を過ごしていた。
◆◆◆
「今季の冬アニメ、枠取れたぞ」
マジっすか。
菊瀬編集からの電話で集英社に駆けつけた矢先、いきなりアニメ化の話が出てきた。
早すぎません?
「SNSやツイッターでも盛り上がってるからな、話題性にアニメ会社も乗っかるそうだ」
『実写化に一歩近づいたな、進撃○巨人もやったし余裕余裕』
マジっすか。
つか幻覚うるさい。
「でだ、作家本人から何か要望あるか?」
アニオリでゴジラが歩み寄る的なそれはやめてください、解釈違いなんで。
声優? いやそういうのは別に自由にで。
あ、可能なら特撮とかやってる人たちと渡りつけたいっす。
実写映画希望なので。
「実写ぁ? だいたい外れるだろそれ」
約束なんで。
『分かってるじゃないか!』
ええいうるさいよ幻覚!
「んじゃさっきの条件だけに注視してそれ以外は自由にと」
当たるといいっすね。
「そればっかりは俺らじゃ口出しすることしか出来ねぇよ」
うっす。
◆◆◆
「先生! 私をアシスタントにしてください!」
家に帰ったら女子中学生から弟子入り志願された。
どゆこと?
時期的には原作より1~2年くらい前かなぁ