幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる   作:袴紋太郎

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「今週号のゴジラも面白いですよ! ますます先生の筆も脂がのって」

 

具体的に何処が面白いのか言って欲しいなぁ…

 

「あ、いえ、そんな、自分なんかが…」

 

いいのいいの、編集者と作家なんだからイーブンだよ…あ、これオフレコで。

 

菊瀬さん、どうなん新人くん。

 

「腫れもの扱いですよ、編集長が目に見えてアレみたいな感じにしちゃって」

 

それなんで自分がゴジラ担当にしてもらえたと、若い編集は複雑だとばかりに苦笑している。

 

新作、ねぇ。

 

伊月ちゃんが言ってこないから無視してたけど、ううん。

 

「”ホワイトナイト”ですよね、いやぁー遅咲きって程じゃないけどあんな才能あるんですねぇ。いっつも菊瀬さんからボロクソ言われてた記憶があるけど」

 

そっかーホワイトナイトかぁ

 

『いつからジャンプはパクリ有りになったわけよー』

 

うーん…新人くん、悪いんだけど今週号の人気投票、出たら確認しててよ。

 

「分かりました!」

 

さて帰るか…幻覚に尋ねるって自分の頭が心配になるんだけどさ。

 

『お前マジでさぁ…』

 

マガジンとサンデー、移るならどっちにするべ。

 

『サンデーはない』

 

◆◆◆

 

では伊月ちゃん含めアッシーズ、改めて今週号を買ってきましたが。

 

なんでホワイトナイトあるの?

 

「「「盗作だぁーーーーーーー!」」」

 

だよねぇ…いやーまずいっす。

 

結局5話分まで何も言わなかったけど、これ伊月ちゃんの作画だよねぇ。

 

伊月ちゃんがこっそり出してるってのは…

 

「いいえ、そんな記憶ありません…私が書いたのとは細部が違うけれど、ホワイトナイトです」

 

『編集ぇ…』

 

う~ん、大事になる前に鎮火させたいなぁ。

 

下手したら飛び火して実写化がポシャる。

 

コンクール受賞品なんだし、意図して無視してるとは思えないんだけどなぁ。

 

となると、アマチュア作だからそもそも知らない…かなぁ。

 

まずいよまずいよ、不味すぎて吐くよこれ。

 

「…この佐々木という人、僕知ってますよ」

 

そうなん?

 

「菊瀬編集に何度も持ち込んではボツ食らってた人です、試しに読ませてもらったけど酷い内容でした」

 

……あぁ、たぶん読んだかもしれない。

 

作画、違いすぎない?

 

なんというか、個性が全然出てない。

 

「藍野さんが書いたのをそのまま出したってのがシックリくるなこれ」

 

「コンクールの原稿そのまま抜き出してきたんじゃ」

 

黙って読みふけってた伊月ちゃんに視線を向けると、眉を八の字にしている。

 

「”私”のホワイトナイトです、間違いなく…構成や表現も、私のだって分かる」

 

どうしたもんかねぇ。

 

正直、掲載先が変わるのは別に良いんだけど。

 

知り合いも増えたし、まぁなにより義理があるしね。

 

「先生…」

 

ん?

 

「先生は、盗作そのものには何も言わないんですね」

 

(俺も似たようなものなので)言えない、かなぁ。

 

例えそうでも問題になってないのなら、これも仕事だよ。

 

惜しい、と感じるのは…うん。

 

なんでこの人は”自分”のホワイトナイトを書かなかったのかなぁ。

 

◆◆◆

 

「また、2位…!?」

 

アパートの自室にて今週号の読者投票の結果、ホワイトナイトは2位。

 

1位独占は言うまでもなく、ゴジラだ。

 

俺…佐々木哲平は奥歯を噛み締め、瞑目する。

 

売れない作家、そもそも作家ですらない自分。

 

25になる後のない自分。

 

何度出してもボツとされる現実。

 

落雷によって10年後のジャンプが送られるタイムマシンとなった電子レンジ。

 

その中の【ゴジラのないジャンプで一番人気のホワイトナイト】を、俺は模写し持ち込んだ。

 

未来の人気漫画という可能性を踏みつけて。

 

今まで俺の漫画を没にし続けた菊瀬編集の意見を押しのけ、こうして連載を獲得してしまった。

 

俺には、未来の人気漫画を潰した責任がある。

 

だからこそ、ホワイトナイトを世に出す使命があるんだ。

 

そう、自分に言い訳して…

 

こうして毎週来る未来のジャンプに掲載された「ホワイトナイト」を模写している…

 

なのに。

 

「どうして…」

 

なのに…

 

「ゴジラを超えられない…!?」

 

背負った十字架が、のしかかる。

 

愕然とする中、携帯に着信が入る。

 

編集部からのそれに、言いようもない不安感を感じるのであった。

 

 

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