幻覚がゴジラがないので漫画を描けとか言ってくるので悩んでいる 作:袴紋太郎
「あームカつく」
炭酸飲料を飲み干して、自分の中の溜まったものを吐き出した。
アシスタントの先輩たちは色々とやる事があるらしく、私はこうして先生を待っていた。
「アイノさん…!」
そこへ来たのは、先ほど怒鳴り散らした佐々木という男。
いっぺんぶん殴ってやりたかったが、【意趣返し】は済んでいるので気持ちを落ち着かせる。
「なにか?」
…語尾が強くなったのは、私の未熟故だろう。
「…す、すまなかった、俺は君のホワイトナイトを!」
「佐々木先生、やめてください」
これ以上聞くに堪えない、さっさと終わらせるのが吉だろう。
「ホワイトナイトの連載続行は、私から先生にお願いして条件に出してもらいました」
正直な所、裁判云々は必要ない。
私に必要なのは、この男への意趣返しによる「禊」だ。
「先程はああ言いましたが、私個人としては書いていない部分もよく出来ていたと思います」
「ですから、私からホワイトナイトを【託そう】と思いました」
「…キツい言い方になったこと、ごめんなさい―――ホワイトナイトをお願いします」
頭を下げて、背を向ける。
これで―――佐々木哲平の漫画家としての人生は終わった。
こちらに向ける視線…安堵、決意、謝意、何かは分からない。
しかし、彼は最後まで描き続けなければならない…“藍野伊月のホワイトナイト”を。
途中で逃げ出すことは許されない。
自分を守ってきた建前が、それを許さない。
描いて、描いて、描き続けて。
貴方は【自分の作画】を見失う。
自分の漫画を描くことは出来なくなる、私の描いた漫画のコピーマシンに成り下がる。
自分でやって反吐が出る、だけどそれくらいしないと気がすまなかった。
私が危惧したのは、この一件で先生の執筆に影響が出ること。
もし盗作であることを公表すれば、今後の連載に支障が出てしまう。
全てを丸くおさめるために、佐々木哲平が作者である方が好ましいのだ。
名誉なんてくれてやる。
利益だって欲しければくれてやる。
だから潰れろ、盗作家。
バキリと、手の中の空き缶が潰れた。
◆◆◆
『で、あのJK大丈夫か?』
そこなんだよねぇ。
どんな形だろうとホワイトナイトが表に出た以上、書ききって欲しい…と言われたのは驚いたけど。
暫く、休ませたほうがいいかもね。
実写は流れるかもしれんが、ウダウダ抱えるよりスッキリするか
『移動の理由はどうすんだよ』
ゴジラの作風がジャンプ掲載としてのニーズが合わない…辺りで誤魔化すさ。
恩義や義理もある、関係者には自分から説明しに行くよ。
しかし、ちょいと佐々木氏におっかぶせ過ぎたなぁ。
『コピペ野郎に何言っても無駄じゃねぇか』
だからってこっちが不義理していい理由にはならんだろ。
…あの場ではあえて流したけど、あれだけの完成度の原稿どうやって手に入れたんだ。
コンクールに出したのよりもいい出来だった、佐々木氏が手直ししたというなら個性が出るはずなんだけど。
まるで、成長した彼女の書いた漫画を真似たみたいな…はは、SF過ぎるか。
「先生ー!」
ああ伊月ちゃん、ごめんね気分悪かったでしょ。
「もういいんですよ、この話はこれで終わりってことで。それで映画のシナリオはもう出来てますか?」
そう、だね…ねぇ伊月ちゃん、正直な所、幻滅したんじゃないかな。
結局、何も無かったで済ませたわけだしさ。
「今更ですよ」
だよねぇ…未成年の高校生だ、これ以上トラブルに関わらせるよりはスパッと終わらせるべきと判断したけど。
自分でも薄情だと思うよ。
「だから今更ですって。そんなに謝るなら毎週分のジャンプ代ください!」
え、もしかして買ってたの!?
言ってくれたらあげたのに…
「毎週分は結構馬鹿になりませんからねぇ、ちゃんと買うのがファンです!」
…ありがとう。
頑張らなきゃね、ファンがいてくれるなら…頑張ろう。
活動報告などにも記載しましたが、本作はまだ続きます。
原作の内容的にも前話含めて書く必要があると判断しました。
気分を害しましたこと、お詫びします