My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

12 / 52
ちょっと疲れて一回休みしちゃったけど十二話です。毎回最終チェックで加筆修正しまくる筆者が悪いんですが。

説明回を書くたび矛盾との戦いで頭が痛くなってきます。


第12話:なにこれ拷問?

 「えっと、大丈夫ですかオールマイト?」

 

 「あ、ああ、なんとかね」

 

 オールマイトの背中を擦ることしばらく。萎み、吐血した身体はようやく落ち着いてきたようだ。

 さすがに個性の受け取り拒否はともかく、それを即答されるのは予想してなかったようで、その精神的ショックは吐血のダメージより凄まじいようだ。

 

 「なんていうか、すみません。せめて間を置いて答えるべきでした。さすがに即答はないですよね……」

 

 「い、いやいいさ。これだけハッキリと拒否されたのは確かに驚きではあるが、ショックというほどではない。なにせ次の平和の象徴を担う役割を押し付けてしまうのだ、君ほどの年の少年ならプレッシャーに怖じ気づいても仕方がないだろう」

 

 「あ、それに関してはプレッシャーはあれど怖いってほどではありません」

 

 「ないの!?」

 

 ブフォッとまたもや予想外の反応だったのか驚き血を吐くオールマイト。この人なんでこんな身体であんなに動けるの……?

 

 実際の話、平和の象徴をやるとなるとあまねく悪意に立ち向かうことにプレッシャーは感じる。だけどそれに怖じ気づくかといえばそんなことない。なにせこっちは一歩間違えれば死ぬ修行と、一手誤れば世界が混沌に呑まれるような出来事に日常的に遭い続けていたのだ。いちいち怖がっていても疲れるし、哀しいけど慣れた。やらない理由は別にある。

 

 「僕を後継者として選んでくれたことは嬉しいです。その力も出来れば使いたいです。その力があれば救える人が増えるでしょう。勿論個性に傲らず研鑽もするはずです。それでも僕は受け取れません」

 

 「そこまで思っているのに受け取れない、か……。何か理由はあるのかね?」

 

 「理由はいくつかあります。一つ目は僕の戦闘スタイルに影響があること。僕の個性(血法)を使った戦いは本来殺傷力が高く、それを今は刃引きなどして無理やり加減してるんです。なので唐突な強化は加減を間違えてしまいかねません。

 

 二つ目は僕の個性がワンフォーオールと競合して不安定になる可能性です。この辺りの詳細は省かせていただきます。

 

 そして三つ目、これが一番重要です。僕は平和の象徴に相応しくありません」

 

 「ふむ……。その辺りはおそらく問題ないぞ少年。スタイルが崩れるというがこの力は徐々に身体に馴染んでいくタイプだ。一時的に崩れるかもしれないが慣らすのは容易いだろう。競合に関しても譲渡する以上君の個性を優先してくれるはずだ。そして相応しくない、と君は言うが決してそんなことない。確かに最初は不安だろう、だがそれは私も同じだった。それもいざヒーローとして現場に赴けば自ずと―――」

 

 

 「オールマイト。僕はあなたの個性を継げませんし平和の象徴にもなりません。……なってはいけません」

 

 

 「……なってはいけない、とはどういうことかね?」

 

 「平和の象徴というのは気高くなくてはいけません。肉体も、精神も、魂も。

 

 オールマイトのように手が血に汚れてないヒーローが相応しいです」

 

 「手が血って、その言い方じゃまるで君の手が……!?」

 

 

 「そうです。オールマイト。

 

 

 血で汚れてる僕に象徴を担う資格はありません」

 

 

 僕の言葉を聞いてオールマイトは驚き黙りこむ。後継者に選ぼうとした少年が手を汚していたなんて突然聞かされたら仕方がない事だ。

 残念ながらこれは事実だ。あの街ではほぼ毎日どこかしらで世界の危機が発生している。場合によっては一分一秒の差で結果が変わる事態もある。

 そんな中誰も殺さず、逮捕のみで解決させるというのはとてつもなく難しい。対象を抹殺しないと危機から脱せれないようなものもあり……実際に手をかけたりもした。

 だから僕の手は既に血で汚れているのだ。そんな手で平和の象徴になるだなんてとんだお笑い草じゃないですか?

 

 ……あれ、なんで僕、突然罪の自白をしてるんだ?これ下手したらオールマイトに捕らえられないか?

 オールマイトを前にして興奮しすぎたか?今は昔ほどファンって訳じゃないのに。ミーハー心を刺激された?いやまてそんなこと考えてる場合じゃない。最悪戦闘になるぞこれ。

 そんなしょうもないミスをした自分に呆れているとオールマイトが口を開いた。

 

 「……少年、この半年の間に君に何があったんだ?ニュースじゃ個性事故でニューヨークに飛ばされて向こうのヒーローに拾われたなんて言われているが、嘘だろ?向こうのツテに頼ってみたが君の存在は確認できなかった。君ほどの人間なら少しは情報が出てくるはずだ。

 無理に全てを明かさなくていい、話せる範囲でかまわない。君が手を汚した理由を、君を知りたい。無論秘密にしてほしいと言うなら、私の命に賭けて明かさぬと誓う」

 

 だからどうか、教えてくれないだろうか?そう説明を求めてくる。

 少し、悩む。出来ることなら言わない方がいいけど、僕はオールマイトの重大な秘密も知ってしまった。

 

 ワンフォーオール、継承できる個性。

 この個性が仮に公になろうものなら(ヴィラン)はこぞってその力を奪おうとあらゆる手を取るだろう。そんなド級の厄ネタを僕は知ってしまったのだ。胃が痛くなる、クラウスさんの胃痛もこんな感じなのかな。

 

 いっそお互いの秘密でもって楔を打ちあい、牽制するために教えるのもいいかもしれない。うまくオールマイトを味方につければ大きなコネが出来るし、最悪信用はされなくても敵対は回避できる。何より僕を象徴にすることを諦めてくれるかもしれないし。

 

 僕は話すことにした。異世界の元紐育(ニューヨーク)……ヘルサレムズ・ロットに飛ばされたことから、世界の危機と戦い続けて帰還したことまで。ライブラのことは名前など出来る限り伏せたけど、どういう組織かとクラウスさん達一部関係者は伝えておく。

 聞き終わったオールマイトは近くの廃棄された椅子に座り込み、余りにも予想外の展開だったのか頭を抱えて俯いた。

 

 「Holy shit(なんてこったい)……異世界からの帰還者ときたか……。俄かには信じられない話だが、それなら少年の情報が欠片も手に入らなかったのも頷ける。なにより君の目を見ていると嘘じゃないってわかってしまう」

 

 「まあ普通は信じられないのが当然です。ただあり得ない事があり得ないのはどの世界でも同じだと思います。あの街もそうですけど、こっちの世界も超常が日常化してますし」

 

 「別の世界を見たからこその見解といったところかな……。しかし君……緑谷少年。手が汚れていると言ってもヒーローは目指そうと思うんだね」

 

 「幼い頃からの夢だったというのもありますが、誰かを守れる力を持っていながら誰も守らないなんて僕が嫌です。それに世界を救うために誰かを殺してしまった以上ここで降りてそれを無駄にすることは出来ません。なにより僕を絶望から立ち上がらせてくれたクラウスさんに顔向け出来ないなんてこと死んでも御免ですし。

 あ、だからって平和の象徴もついでにーってなりませんからあしからず」

 

 平和の象徴に関しては頑なに拒む。個人的理由もあるけれどそれ以上に世間の問題もある。

 仮に僕がなったとして、それはそれで平和の象徴として活躍出来るだろう。だけどそれは僕の秘密が暴かれるまでだ。なにせ世界の均衡のために殺めた数は一人や二人じゃない。例え別の世界の出来事であっても、僕が誰かを殺したことに変わりはない。向こうの世界の出来事なんてわかるはずもないだろうが、超常の溢れたこの世界だ。過去を暴露させる個性なんてあるかもしれない。

 そんな僕の闇が暴露された場合、平和の象徴だとヒーローに対する世間体へのダメージは桁違いだ。個人なら切り捨てられるが平和の象徴は簡単に切り捨てれるものじゃない。切り捨てようものなら象徴を失い(ヴィラン)の専横を招きかねないし、その割を食うのはいつも弱者だ。

 ならばならなければいい、それが一番誰も傷つかない。

 

 「頑なに拒むね……だが君にとっては残念だろうが、話を聞いたうえでまだ君は平和の象徴に相応しいと、私は考えさせてもらうよ」

 

 なのにこの人はまだ諦めてくれません。なんでなの?世界が違うから証拠もないし罪に問われないかもしれないけど実質殺人犯だよ?そのうえで平和の象徴に選ぶとか頭オールマイトですか?この人がオールマイトでした。

 

 「今失礼なこと考えなかったかい?確かに君は世界を救うために(ヴィラン)……で問題ないかな?を殺してしまっただろう。だがそれは私も同じだ」

 

 「え?」

 

 「緑谷少年、覚えているかい。出会った日に見せたこの傷を?

 世間には隠してあるが、五年前私はある巨悪と戦った。苛烈なんて言葉が温く感じるその戦いで、この身に大きな傷を負ったが辛くも勝利した……奴の命を断つことによって。今でも覚えている。アイツの頭を砕いた時のあの悍ましい感触を……。

 私の手はその時血で汚れてしまったがそれでよかったと思っている。あの男が行った数々の所業は君の言う世界の危機に匹敵する行為だ。奪われた人の命も百や二百じゃ済まないだろう。なにせあいつは百年以上生きる怪物だったからね」

 

 百年以上生きる人間とは驚いた。それほどとなると個性黎明期時代から生きた存在か?そんな(ヴィラン)が五年前まで暗躍していたなんてこの世界もやっぱり物騒だな。

 しかしそんなことよりオールマイトはなんといった。命を断つ?つまりオールマイトも謂わば人を殺したことがあると?

 

 「……思ったより平和の象徴って血生臭いんですね。そりゃあ人殺ししたら平和の象徴失格、とか言わないわけだ」

 

 「いや、少なくとも先代は殺人を犯したことはないからね?それに君をそれでも選ぶ理由は、命を奪う重さを知っており、なお罪を背負い誰かのために命を懸けるその覚悟と高潔さに惹かれたからさ。だから考えてはみてくれないかい?今なら私もついてくるよ?」

 

 「だからお断りしますってばオールマイト。貴方を商品のおまけみたいに扱うのは僕には無理ですし、個性の問題もあります」

 

 「そういえば少年の個性って何なんだい?最初は血液操作だと思ったけど血法って技術だって言うし、競合するって言ってたけど……もしかしてワンフォーオールの親戚?」

 

 ……そういえば言ってなかったな僕の個性。そして違います。そんな継承するなんてトンデモ個性ポンポン出てこられても困ります。

 

 「僕の本来の個性は便宜上『再構築』と呼んでます。能力は取り込んだ組織を自分の身体に合うように作り変える事。血液操作もその過程で手に入れたものです」

 

 「再構築……シンプルながら可能性を持つ良い個性じゃないか。しかし取り込んだ組織を自分に合わせるか。むしろ好都合じゃないのかい?」

 

 「そう思いますけどこれ落とし穴があるんです。……この個性、作り替えるのに条件がありまして、細胞の鮮度、取り込む組織の強弱、摂取量など次第で個性を素通りしたり個性の許容量を超えると取り込めずに終わるんです」

 

 「……つまり?」

 

 「毒食べてうっかり素通りしたり許容量越えたら目も当てられません」

 

 「ええ……」

 

 かつて実験映像で見た侵食の光景。あの映像のおかげでいくらでもいけると思ったが、実は違っており、それを知ったのは師匠との修行の時だった。

 

 僕の個性が組織を侵食して特性や耐性をつけたりすることを知った師匠は嬉々としてそれを使って強化すべく毒物を用意しまくった。あの時はきっと僕の目からハイライトが消えていた。

 そうして必死で個性を使って摂取していたんだけど……途中で摂取量に個性が追い付かず、吸収しきれなかった毒物が逆に侵食、生死の境を彷徨ったのだ。

 

 幸い師匠が一週間、血法で疑似臓器を作ったり血液透析もどきをしてくれたおかげで後遺症なく復活出来たけどあんな思いはもうしたくないので師匠には断念してもらうことに。師匠としてもひと月近く修行を中断する羽目になったため納得してくれた。

 今は修行のおかげか許容量は増えたため、かなりの耐性を付けられたけれど、それでも毒がうっかり素通りして泡吹いて倒れた。なんて出来事もあるので進んでヤバイものを摂ろうと思わない。

 

 余談だけど師匠の血は一滴で許容量を越えました。あの人には勝てる気がしません。

 

 「ダメ出ししますと個性を取り込んだこともまだないのでワンフォーオールを取り込むとどうなるかも全然わかりません。なので遠慮しておきます。オールマイトも自分の力が歪んで継承されるかもしれないのは嫌でしょう?」

 

 「……個性もそうだけど君の師匠も気になってきたんだが。血液透析もどきってそれ人が出来るの?」

 

 「例えるなら機関銃の弾をひたすら同じ穴に通すような神業なのでまず無理です。兄弟子なら10分くらいなら出来るかも、程度でしょうか?でも師匠はそれを一週間寝ずにやってくれました」

 

 「……君の師匠なんなの?」

 

 「デス仙人です」

 

 「デ、デス……?ひ、ひとまずそれは置いておこうか。しかし厄介な個性だね緑谷少年……。このまま継承したら力が半端に吸収されてチグハグになる可能性もあるのか……。仕方がない、ワンフォーオールの継承を今は諦めるよ」

 

 「今はですか……それってつまり平和の象徴に据えることは諦めてないってことですよね?言っちゃあなんですがオールマイトもそこまで暇じゃないですし、その身体じゃいちいち勧誘に来るのは大変だと思うんですが?」

 

 「なーに、ヒーローならたくさんいるし、最近は近くに引っ越してきたからそれほどじゃないよ。さすがに毎日来るのはこの身体じゃ難しいけどね!」

 

 そういえば胃がなくて呼吸器官もやられてるんだっけ?それであんな動きしたり出来るんだからこの人も大概化物だな。

 それでもかなり苦しいらしく、日に日に衰弱しているのを実感しているらしいけど。せめて血法で臓器の代替品を作れればいいのだけど……残念なことに自身にはともかく、他者に付与する場合維持が出来ないのだ。

 

 「心配してくれてありがとう。確かに大変だがその程度でやられる私じゃないよ!……それよりも血で臓器を作るってどういうこと?さっきも血液透析をしてたと言うし血法って技術本当になんなんだい?」

 

 「それに関しては師匠だからなにが出来てもおかしくないとしか……。オールマイトも血法習ってみます?」

 

 「いやいや。習うって私血液操作は出来ない……………………え?待って、もしかしてそれ含めて出来るの?」

 

 「師匠の流派は特別な力がなくとも、修めていけばいずれ使えるのがモットーで、僕の場合個性によるズルをしましたがそれでも出来るはずです。体の構造自体は向こうの人もこちらと一緒だったので」

 

 向こうの人間とこちらの人間の違いを挙げるならば個性因子の有無程度だろう。それが問題ないなら修めれる可能性は高い。それを伝えると豆鉄砲をくらった鳩のような顔をオールマイトは晒した。

 

 僕の師匠は身体の欠損がとても多い人だ。襤褸と獣の骨に隠れ滅多に中を覗くことは出来ないが、それでも左腕以外の四肢すら確認したことがない。そのため失った部位を血法で補うなんてことを普段から行っている。その中には臓器も複数あり、胃も例外じゃない。

 僕も血法による代替臓器の生成は習得しており作ることは出来る。しかし生成は出来ても維持出来るのは自分のみであって、他人には出来ない。なので臓器を作って維持するならばオールマイト本人が斗流を修得しなければいけない。そうなるとあの地獄の鍛練を修めていかなければならないが、それも臓器を作ることのみに特化すれば、まだ幾分か早く修得出来るだろう。

 

 「そんなわけで血液操作と疑似胃の生成技術だけに絞れば長期の(何度も死にかける)修行をしなくても修めれるかもしれません」

 

 「待って今不吉な言葉が聞こえたんだけど?と、ところでその血液操作ってどれくらいかかりそうかな?」

 

 「気のせいです。僕は個性で扱えるようになったから参考にはなりませんが、感覚の天才といえる(度しがたいクズの)兄弟子が基礎鍛練と平行して二年かかったと言っていました。とは言っても外に排出して武器を形作り強度を高める技術が難しく、体内で形作る分には最初の一年で出来たらしいので長い道のりではないかと。オールマイトなら下地も最初から出来上がってますのでさらに早いかもしれないです」

 

 「待って今ヒーローとしてダメな言葉使わなかった?」

 

 「気のせいです。それでどうしますかオールマイト」

 

 「あ、ああそうだな……是非とも教えてほしいね。この身体になってからというもの、まともに食事を摂ることが出来なくなってしまっててね。普通に食事が出来るようになるなんて嬉しいことこのうえないさ」

 

 そういって苦笑いでサムズアップするオールマイト。わかりましたと確認した僕は定期的に指南することになるのだった。

 しかし僕がオールマイトの師になるなんて、現実は小説よりも奇なりとはこのことだな。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「これでよしっと……。それじゃオールマイトこれを。そこに書いているメニューをこれから順次こなしていきます」

 

 「OK欠かさずやることをちか……待って緑谷少年。この術式を身体に刻むってなに?」

 

 「血液を操作するにあたって身体に術式を書き込む作業です。血法を用いて心臓と丹田に直接刻み込みますがまあしばらく大人も泣くほどの激痛が走るだけなんで問題ないです」

 

 「待ってなにそれ拷問?え、それじゃあその次以降のメニューはなに?」

 

 「術式付与後に行う血液操作と臓器生成の修行を書き出したものです。極力負担は減らしてますがそれでもそこに書いてるメニューは毎日しっかりやるようにしてください。あ、ちなみに僕の場合こっちのメニューを二年やりました」

 

 「え……え?……待って少年なにこれ拷問?私の師匠も大概だったけどここまで鬼じゃなかったよ?……え?ほんとになにこれ見てて足が震えてきたんだけど?なんなの君の師匠、閻魔大王かなにか?」

 

 「だからデス仙人です」

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 僕の渡したメモとにらめっこしては顔を青くしたりひぇ……と小さな悲鳴をあげたり口から血が滴ったりと百面相―――ただし全部悲嘆を含んだ顔―――をするオールマイト。用件も大方済んだことだろうし、そろそろ身体を気にして帰ってくれないだろうか。

 もちろんオールマイトと一緒にいるのは嫌じゃないが、一緒に居るところを見られて変な噂が流れても困るし、隙あらば後継者の地位を外堀から埋められてきそうで困る。

 なによりそうこう言ってるうちにおじさんが……と思ったその時、ブロロロロッと音が聞こえてくる。視線を向けるとかっちゃんのお父さんが軽トラに乗って帰ってきたようだ。

 

 「おまたせ出久君。いやー行き道が混んでて時間食っちゃったよ。次はどれを載せて……っと、その人は?」

 

 「お疲れ様ですおじさん。えっとこの人は……」

 

 「初めまして。私この近所に住んでおります八木と申します。ちょっと散歩していましたらそこな少年が海浜を掃除しているのを見ましてね!休憩がてら見学させてもらっていたんですよ!」

 

 いつの間にかマッスルフォームを解いていたオールマイトがフレンドリーに挨拶する。

 本当かい?と聞いてくるおじさんにそうですと返答。お話を聞いていたのは事実なので嘘は言ってない。

 ……というかオールマイトの名前が八木ってことは日本人なのか……マッスルフォームの顔つきからしててっきりアメリカあたりの人だと思ってた。

 余計なことを考えつつも身体は動かす。次に積む分は予めまとめていたためさっさと積み上げていき、積み終えるやおじさんに運搬を頼んだ。

 

 「いい時間だしこれで最後だね。後は捨てるだけだけど出久君はどうする?横乗っていくかい?」

 

 「あ、僕はまだ鍛練を続けるのでいます。次はいつごろ空いてますか?」

 

 「今週はちょっと仕事が忙しいからね、来週始めくらいかな?」

 

 しばらく空きが出来るのは残念だが、おじさんは無償で手を貸してくれているんだ、文句なんてない。清掃も急いでる訳じゃないし鍛練は毎日出来るしさして問題でもない。

 

 「それならちょうどいい緑谷少年!私も君の手伝いをさせてくれないかい?これだけのゴミを片付けるのだ、手の一つや二つ増えるのはいいことだろ!そちらの保護者の方もよろしいかな?」

 

 「え?ええ、出久君がよかったら。でもいいんですか?」

 

 「彼の話と目標に感銘を受けましてね。なぁにこんな成りですが運転は得意ですよ!」

 

 なんて考えてたらこれである。ちょっとフットワーク軽すぎませんかオールマイト?もっと自分を労ってください。

 いいのかい?いいかな?と同時に聞いてくるおじさんとオールマイト。もう考えるのも疲れてきた……。清掃の手が増えるのはいいことだし、了承しよう。

 

 「なら話は決まりだね!明日から手伝わせてもらうよ緑谷少年!」

 

 「よろしくお願いします。すみませんおじさん、せっかく手伝ってもらっているのに」

 

 「気にしなくていいよ、僕も楽しかったし。今度は勝己とも出来るといいなあ、ハハハ」

 

 笑顔で返すおじさん。かっちゃん、おじさんは聖人かなにかかな?もっと親孝行してあげようよ? 

 そうしておじさんは車を出して、オールマイトもまた明日と去っていった。僕はまだ鍛練をするために居残る。

 

 今日は疲れた。まさかオールマイトに謝られ、スカウトされ、秘密を共有し、海浜清掃を手伝ってくれるなんて。勧誘と鍛練が目的だろうけど。

 ……平和の象徴の継承か。昔の僕なら迷わず引き受けていただろう。いや、今でも汚れてさえいなければ選んでたかもしれない。それだけ魅力的な話でもある。今は絶対にならないしなれないけど。

 だけど改めて驚きの連続だったな。おそらくこれ以上の驚きはしばらくないぞ?

 

 

 ……なんて思った数時間後、再び驚くことになるのを、僕はまだ知らない。

 

 




説明の度にどこかで茶々を入れていくスタイル。
というわけで個性公開&ナーフ入りました。

出久個性『再構築』

・体内に取り込んだ細胞を自分に合うように作り替えるぞ!

・ただし一定期間すぎたモノからの細胞は受け付けないぞ!新鮮なうちに摂取しろ!

・自分の体が耐えれない、本質的に強い細胞(血界の眷属(ブラッド・ブリード)、神性生物など)の作り替えも無理だぞ!

・でも自分の身体が強くなれば耐えれるものも出るぞ!

・でも師匠の血に勝てる気はしないぞ!

・許容量の上限は鍛えれば増えるぞ!でも取捨選択が出来ないから取り込むものとタイミングは慎重にな!

・たまに更新されたり変更されるぞ!

【誤字報告】

zzzzさん。クオーレっとさん。百面相さん。

誤字報告ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。