My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

20 / 52
20XX年、書き溜めはカグツチの炎に包まれたので第二十話です。

投稿が遅れてしまいすみません!前から感想でもちらほら言われてたクラス構成変更、あれ結局どうするべと悩んでいました。5日ほど大真面目に。
そしてせっかく整合性を取るための口実(18話の組み分け部分)があるんだから入れ替えてみようぜ!という結論に達しました。決まり手はB組の推し。
拳藤と小大ちゃん好きだし二人の出る機会を増やしたかったんです。推しの登場が増えるっていいじゃないですか、例えそれがプロットに影響が出たり残りの書き溜めが全部死んだりしたとしても!もちろん二人以外にも絡ませたい人はいますが。

というわけで一部除いてヒーロー科のメンツを混ぜて組分けしました。今回会話で誰だコイツってなりましたらそれはおそらく原作B組の生徒です。

そして今回オリジナル技も出ます。そういうのが苦手な方ご注意ください。


第20話:すごく悔しいけど

 「ちょっと待ってください!最下位除籍って……入学初日ですよ!?いや、そうじゃなくっても理不尽すぎます!」

 

 「残念だがこの程度の理不尽、まだまだスタートラインってところだ。事故に災害、(ヴィラン)犯罪。いつどこから来るかわからないあらゆる厄災に対応していくのがヒーローというもの。放課後マックで談笑したかったならお生憎様、その期待は捨ててくれ。これから三年間、雄英は君たちに数々の苦難を与えていく。Plus Ultra(さらに向こうへ)さ。全力で乗り越えて来い」

 

 突然の除籍勧告に生徒達は必死に抗議をしている。それも当然だろう、せっかく苦労して雄英に入れたのに除籍されるなんてあんまりだ。せめて普通科への強制移籍ならまだチャンスはあるというのに、これじゃあみんなの言う通り理不尽すぎる。

 しかし相澤先生は聞く耳を持つことなく、こっから本番だからはやくしろと急かしていく。いきなり除籍なんて絶対嫌だと、みんな必死で気合いを入れ直している。もちろんそれは僕も同じだ。

 

 「あははなーんだあのヌエっぽい獣達草食だったんですね食べられるかと思って必死で戦って損したなーもー師匠ったら驚かせるにしてもちょっと怖すぎますよ僕もお灸を据えられるようなことをしたのはわかってますが……え?草食だけどとても嗜虐的で他の生き物を甚振り尽くして殺す趣味を持ってる獣?何それ怖いです師匠もしかしてあの時抵抗が数瞬遅かったら僕の右腕って今頃ブツブツブツブツ……

 

 「緑谷君!おーい緑谷くーん!?」

 

 「そろそろ帰ってこいアホ」

 

 「あいだっ」

 

 そう、同じなんだけど……修行時代(トラウマ)を思い出して気合を入れる前に絶賛現実逃避中です。まさか相澤先生の気配から師匠を思い出すなんて思いもよらなかったよ。嗚呼、花の学校生活が鈍色に染まりそうだ……。

 なんてブルブル震えているところに容赦のない拳骨が頭に落ちてきて正気に戻る。麗日さんに変な所見せちゃったな。まあそのあたりの弁明は後にして今はテストだ。初日に除籍されて母さんを卒倒なんてさせたくないぞ。

 全ての手を見せてでも勝ちを取りに行く!というわけではないがそれでも気合いを入れ直す。とりあえず血法を軸にどう記録を出すか考えていこう、話はそれからだ。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 というわけで最初は50m走。早速個性の影響が出やすい種目のため、やはり記録は大きくバラける。普通に、もしくは四足歩行で走る人もいれば、個性を使い好記録を出す人もいる。

 飯田くんがその例だ。個性で足が車のエンジンのようになっており、それを駆使して50mを約3秒で走り抜けた。それでも短距離じゃフルスロットルにならないらしく、実際はもっと早いらしい。マニュアル車のようなものかな?

 

 そうしていると僕とかっちゃんの番になった。こちらの準備が出来たら開始してくれるらしく、計測前に個性で色々して準備しても構わないらしい。

 それはありがたいけど、個性を使うにしてもこうも開けたところで移動となると相性が悪いな。

 どうしたものかと少し頭を捻り……、

 

 「で、パチンコもどきかよ」

 

 「スリングショットって言ってよ」

 

 血法で支柱を二本立て、スリングショットもどきを作って自分を弾代わりに飛ばすことにしてみた。別に走るだけでも記録は十分取れるのだけどせっかく個性ありで出来るのだから活用したい。周囲も面白そうに見ているし。

 弾力マシマシの血紐を引き絞りセット、準備が出来た旨を伝え計ってもらう。

 

 審判ロボの合図と同時に射出。かっちゃんの爆破が顔をかすめたけど問題なし、そのままゴールを切る。着地は血法をクッションにして衝撃と反動を殺しつつ転がり、最後はズザザザーと足で地面を削って停止した。

 うーん、やっぱり着地だけで手間と距離を取るな。開けたところだと柱を作る時間がいるし、都市部なら建物に貼り付けるだけで出来るから便利だけど。ともかく無事にゴールはしたのでさっさと記録の確認と血法の回収をしよう。

 

 記録は1秒18、着地の安全面を優先したからこんなもんだろう。速度を優先しすぎて着地失敗して事故るなんてバカなことはしたくない。

 ちなみにかっちゃんは4秒ジャストだった。悔しそうにしてる……かと思いきや僕のメチャクチャな飛び方に呆れてた。え、人間に出来る動きをしろ?僕が人間である以上人間に出来る動きだよこれ。だからそんなおっきいため息吐かないでよ。

 

 

 

 次は握力。握った後血法で手を複数作り上げてところ狭しに握らせる。絵面が気持ち悪いけど効果はあるはずだ。

 

 「ふんっ!」

 

 メキャリッ!

 

 ……気合いを入れて握ったら計測器がひしゃげ壊れた。まあそうなるか。血手は腕が使えない時の代用品だけど、集中力ひとつで精密操作をしたり師匠なんてチキンを食べ過ぎてた時の兄弟子(デブ)をアイアンクローしながら容易に振り回したり出来る力を有している。それを握力特化でこれでもかと使えばこうなるのも当然か。

 ところでこれ弁償とかにならないよね?個性ありきでやってる以上こうなることも織り込み済みですよね相澤先生?え、大丈夫?よかった。

 

 「緑谷測定不能。次行け」

 

 しっしっと追い払われ次へ向かう。途中メキャリ!と音と声がしたので見てみると計測器を壊している人がもう2人いた。片方は万力で壊したのはわかるけどもう片方はもしかして声で壊した?え、どういうこと?

 

 

 

 次は立ち幅跳び。これもさっきと同じく支柱を作って飛んでいく。貼り付ける場所さえあれば便利だよねこれ、安全に受け身を取れないと危なすぎるから絶対勧めれないけど。

 準備が出来たのでさっきと同じく安全面重視で飛ぶ。記録は113m。もう少し身体を鍛えて頑丈にすれば延ばせるなと思っている横でかっちゃんが飛んでいった。かっちゃんの記録は309m。瞬間速度はともかく持続力となると全然敵わないな。

 なお一位はかっちゃんじゃなくカートゥーン調の顔つきをした少女だった。角に乗って空を飛び(むげん)判定を取っていった。∞判定なんてあるのか……。

 

 

 

 次は反復横跳び。これは血法の応用が効きにくいため、地力で勝負する。結果55回と至って普通だ。

 なお一位は意外にもブドウ頭の少年である。彼が頭からもいだボールは弾力性があるのかそれを左右に設置して、その間をすごい勢いで反復してなんと記録114回を叩きだした。

 

 あの個性面白いな。頭のボールを取る度にすぐ生えてくるし。しかもあのボールを見てて気づいたけど、粘着力もあるのか?ブドウのように一ヶ所に固まったかと思いきや跳ねることも出来る。しかも個数制限もなさそうだしデメリットは髪の毛の消耗か頭皮のダメージかな?どっちだろうどっちにしてもあの個性強いぞ壁にくっ付けてよじ登ることで崖際の救助も出来るし(ヴィラン)の捕縛にも使えるし弾力があるから落下時クッション代わりにも出来るし下手をすればこの中で応用力と言えば上位に位置するぞ今の時代個性を服に組み込むヒーローもたくさんいるからうまく組み込めば汎用性の高い装備もかなりの種類が出来る彼がそこ気付いて鍛えれば絶対強くなるぞ体格が他より劣るけどむしろそれは閉所に有効で落盤事故なんかのブツブツブツブツブツブツブツ……

 

 「だから帰ってこいアホ」

 

 「あいだっ」

 

 いつもの癖が出たところに容赦のない拳骨が再び落ちてきて正気に戻る。痛みに頭を擦りながらふと見るとブドウ頭の少年が震えながら隣の子と話していた。

 

 「な、なあ。なんかむっちゃこええけどあれってオイラ褒められてるんだよな……?むっちゃこええけど」

 

 「う、うん。応用力が高いって褒めてるノコね。……ちょっと怖いけど」

 

 「お、おう……まあ首席にそこまで褒められんのも悪くねえか?むっちゃこええけど」

 

 とりあえず二人に謝っておこう。

 

 

 

 気を取り直して次は上体起こし。これも血法を使わずに地力でやる。血法でバネでも作って背中に付着、反動で動こうなんて考えたけど、反動を殺す力の制御に手間取りそうなのでやめた。というか峰田君がそうなってる。さっきの称賛で調子に乗っちゃったなあれは。

 結果は54回、ちなみに一位は尾白君だった。尻尾をバネにしていたけどあちらの場合身体の一部だからか反動や負荷を自然と調整できる分バネの上位互換として活躍した模様。ただ尻尾だけが優秀かと言えばそうでもなく本人も相当動きがいい。あれは何か武術でもやってるな?いつか手合わせしたいものだ。

 

 

 

 次は長座体前屈。計測の板を五指全部触れている状態が前提となるため、これに関しては身体能力の影響が大きく出る種目だ。軟化する、手が伸びるなんかの個性でもない限り普段から柔軟をしているかそこに注目がいく。そして師匠の修行(拷問)や日々の研鑽で鍛えた身体はこれでもかと柔らかく、僕にとって有利な内容だ。

 ちなみにどれくらい柔らかいかというと……、

 

 「え?緑谷君、それ大丈夫なん……?」

 

 「緑谷怖っ。まっぷたつに折り畳まれてるけど生きてる?」

 

 「まるで軟体動物ですな……。もしやそのまま頭が地面につくのではないか?」

 

 と、一堂に若干引かれる程度に柔らかい。ついでだから柔らかさアピールにうつ伏せになり、そのままエビ反りにお尻が頭の上に乗るように身体を曲げると悲鳴混じりの歓声が挙がった。すぐにかっちゃんにキメエわと蹴られ、遊ぶなと先生に怒られた。

 

 「つかそこまでやわらけえならさっきのバックブリーカー大して効いてなかっただろデク」

 

 「いや、柔らかくても痛いものは痛いからね?特に関節技はやりすぎると危ないから手加減なしとかはやめてよお願いだから」

 

 

 

 続いて持久走。終盤付近で1500mも走らせるというわりとイヤらしい配置だ。とはいってもこの程度でへばってたらヒーローなんて出来ない。

 この種目に関してはさっきのように準備も出来ず一斉に走るので仕方なく地力のみの計測になった。とはいっても1500m走る程度だったらあの街で散々してきたし、修行でも丸一日全力疾走させられたこともあるから問題ない。個性なしの持久走なら圧勝も可能だろう。

 でもこれは個性ありきのテスト。僕が走るなか、個性の相性がいい人たちが次々と追いつき追い抜いていく。

 飯田君は個性の相性が抜群で、水を得た魚のように高速で走り続け、またかっちゃんも爆速ターボなる加速技でそれに食らいついていく。しかしそれだけじゃない。ツートンヘアーの少年が氷を出してすごい速さで滑っていき、ポニーテールの少女はなんとバイクを創造して爆走している。これには僕も意地になって少し本気で走ったが結果5位だった。個性なしじゃやっぱり厳しい。

 ……それにしてもあの子個性でバイクも作れるのか。向こう(H・L)にいたころミニバイクを持ってたけど置いてきてしまったんだよな。作れたりしないかこっそり聞いてみよう。

 

 

 

 次でラスト、ボール投げだ。僕らは最初に投げたから残り一球らしい。しっかり決めていこう。

 かっちゃんが円に入ると精神集中、最終だからと今まで溜めてた余力を右手に集中させていく。

 

 「即席だがテメエの記録を抜き殺すには十分だ……!」

 

 そう言うや右手に力を入れ集中、パチパチと小さな爆音が鳴り響く。徐々に勢いが増し、音が大きくなるにつれかっちゃんの顔が歪む。ひたすら一点に爆破を集中させてる分痛みが生じているのだろうか?

 そうしてバチバチとどんどん音が強くなりピークに達した瞬間、音が爆ぜた。

 

一点集中砲撃(コンセントレートカノン)!!」

 

 DOOOOOOM!!

 

 一際豪快な爆音が耳を揺さぶり、ボールが放たれた。一点集中で放たれその威力は凄まじく、一投目が投石機というなら、二投目は大砲といえよう。

 遥か上空へと飛んでいったボールはしばらくして落ちてきた。遠すぎて確認は出来ないけど、きっと黒焦げてボロボロだろう。

 

 そうして出た記録は1781m。即席で作ったらしいがそれでも十分技として出来上がっている。さすがはかっちゃんと言えよう。これには周囲も、特に男性陣から興奮の歓声が上がっている。そりゃああれだけ綺麗な射出と高記録を出せば当然だ。

 そんな中かっちゃんは次はてめえだと言いたげな顔を向けサムズダウンで挑発してくる。

 そう、まだ僕の一投が残っているのだ。これで僕の記録に勝たない限り喜びはしないだろう。まったく、相手の本気をねじ伏せようとするかっちゃんらしい挑発だ。

 ならその挑発に乗ってあげよう。手心を加えたらむしろ怒鳴り散らして突っ込んでくるに決まっているし、それなら完膚なきまでに叩きのめした方がいい。

 

 位置についた僕は今度は極細の血糸を指から吐き出し、先端に大きめの球体を作りあげる。出来上がった血玉を貼り付けヒョウタンのような形になったボールを掴み、大きく振りかぶって投擲。ぐんぐんと伸びるボールだが先ほどと違い勢いはなく、100を切ったあたりで勢いが弱まりだす。が、ここで終わらない。

 最初に貼り付けた血糸を硬化、そのまま毛糸玉から糸を引っ張り出していくかのように指先から血を吐き出しながらボールを押し出す。そうやって血を調整しながらドンドン距離を伸ばし、頃合いをみて術式を発動した。

 

斗流血法(ひきつぼしりゅうけっぽう)―――カグツチ―――」

 

 一投目は骨喰を爆炎でジェット噴射させる間接的な手段だったが、今度は伸ばした血糸を導火線とし、直接技を火を放つ。パチリと指を鳴らすと血糸からボールへと火が走り出し、瞬く間に血玉の中心に到達するや盛大に爆発し炎をまき散らした。

 

百煆繚乱(びゃっかりょうらん)!!」

 

 ゴッバアオオオオンンッ!!

 

 ボールから轟音が鳴り響き、爆炎に焼かれながら大きく吹き飛んだ。

 

 ―――百煆繚乱(びゃっかりょうらん)―――

 血玉を芯から一気に爆破し爆炎を巻き起こしながら焼き尽くすカグツチの技。爆炎によりまき散らす火の粉がまるで花びらが舞うように見えとても綺麗だが、ボールを焼く熱は地獄の業火と言えよう。

 あまりの熱気に周囲の空気は揺らぎ、他の生徒たちは腕で顔を隠すか顔を背ける。先生だけはしっかり睨みつけてるあたりさすがプロヒーローというところか。

 爆炎が止み、ボールが地面に落ちる、と同時に塵になって散った。何千度もある炎なのだ、当然こうなるだろう。むしろ落ちるまで残ってただけよく持った方だ。

 

 測定が出た。記録は5237m。かっちゃんとの差を大きく見せつける結果になった。

 かっちゃんに続いて僕のパフォーマンスと記録にみんなが興奮している。僕もどんなもんだとかっちゃんに顔を向けたが、悔しがってはいるけど歯を剥き出しにまるで極上の獲物を見つけた獣のような顔をしている。今のかっちゃんを(ヴィラン)って言っても納得してしまうぞ。

 あれは悔しいよりも先に越え甲斐がある、絶対最後には勝ってやるからなという気持ちが前面に出ている顔かな。実際かっちゃんが使ったあの技にしても即席技だ。しっかり練って完成させればさらに距離を稼げるだろう。

 だがしかし、君が今越えようとしている目標は人界の頂点が研鑽の末作り上げた武の境地だ。そう簡単に勝たせてあげる程斗流の名は軽くないぞ。

 

 

 

 「八百万、22118m」

 

 「わあー、5桁とかすっごお。大砲とかってありなのか?」

 

 「麗日、(むげん)

 

 「おいおい無限が出たぞアッツいなオイ!!」

 

 「……Oh……」

 

 結局僕は3位でした。うん、さすがに相性の問題もあるし、本物の大砲に勝つのはまだ無理だとすぐさま納得することにした。すごく悔しいけど。すごく!!悔しいけど!!!

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「はいみんなお疲れさん。結果を口頭で説明すんのは時間の無駄だから一括開示で発表するぞ」

 

 全種目を終えて、結果発表という名の除籍宣告がついにやってきたことに僕らは震えた。この中から一人、早々にいなくなるという結末はこれからの学校生活に恐怖をもたらすだろう。

 

 開示された結果を確認する。僕は2位だった。かっちゃんには勝てたがまださっきのポニーテールの子……八百万さんがまだ上にいるか。さすがに文明の利器を相手にはなかなか勝てない。とはいってもルール内でのテストや訓練じゃなくなんでもありの現場なら負ける気はないけど。

 ちなみに最下位は峰田君だった。せっかくの強個性なのに、除籍なんてもったいない……。

 

 「ちなみに除籍は嘘な」

 

 『は?』

 

 「君らの最大限を引き出す合理的虚偽」

 

 『は―――――――――!!!??』

 

 結果の開示と同時に、相澤先生は除籍は嘘だと鼻で笑った。これを聞いて叫び声があがり、峰田君にいたっては発狂とも言えるほどの安堵の雄叫びをあげていた。

 

 「あんなのウソに決まってるじゃない……ちょっと考えればわかりますわ……」

 

 八百万さんが呆れながらそう言う。それを聞いて、あちこちから気の抜ける気配がする。

 ……残念ながらあれは本気だったよ八百万さん。除籍しなかったのはみんな見込みがあると判断したからだろう。なにせ最下位の峰田君の個性なんて伸び代が大きくとても強力だ。努力と工夫次第で色々出来るしデメリットも少ない。これを最下位だから除籍と切り捨てるのは宝石の原石を捨てるようなものだ。まあそのあたりは言わぬが華だから黙っておこう。

 

 だけど安心は出来ない。除籍発言は嘘と言うまでは本当にやるつもりでいたのは確かだ。師匠もさっきの先生と同じ気配を出してはトラウマになるようなことを有言実行してきたのだ、間違いない。関係者(被害者)の僕はわかる。

 見込みなしと判断したらきっと、ひとりどころか複数人除籍宣告をされていただろう。これからも僕らの気持ちや行い次第できっとそれが起きる。初心忘れるべからず、慢心せず研鑽を積んでいかなくては。

 

 「それと緑谷、お前はちょっと残れ」

 

 「……じ、除籍宣告ですか?」

 

 「違う。お前の個性で聞きたいことがあるだけだ。ちょっとわかりにくい個性だからお前の方針を固めるためにもいくつか確認をとっておきたい」

 

 すわやらかしたか?と思ったけど除籍ではないようだ。もし除籍だったら母さんに顔向け出来ず、師匠に至ってはこちらの世界にやってきて、修行という名の死刑宣告が言い渡されてただろう。異界渡りなんて出来るのかと思うけど、師匠の場合出来ないと言い切れないのがまた恐ろしい。なにせ十年単位で行方不明になる御方だ。

そんなことを考えているうちに周囲の生徒は教室に戻っていく。全員が戻ったのを確認した相澤先生が僕に質問を投げ掛けてきた。

 

 「それじゃあさっそくだが緑谷。―――お前の本当の個性を教えろ」

 

 まだ除籍宣告の方が心が軽かったです。

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

 「な、なにを言ってるんですか先生?僕の個性は血液操作で―――」

 

 「ひとつ教えてやろう。俺の個性は抹消。見た相手の個性を視認している間消すことが出来る」

 

 「個性を消すって……もしかしてあなたは、抹消ヒーローイレイザーヘッド!?」

 

 「ご名答。そこまでわかっているなら質問の意味もわかるな?」

 

 他者の個性を消し、無力化する発動型個性のアンチヒーローとも言える存在。まさか目の前にいる人がそうだったなんて。

 彼が本当の個性を教えろと言うことは、僕の血液操作が個性じゃないことがバレている。おそらくテスト中に僕の個性を消そうと試みたのだろう。

 

 「素直に教えた方がいいぞ。さっきの除籍は嘘だったが除籍権限を有してるのは事実だ。危険だと判断したら除籍処分だけじゃなく最悪拘束もさせてもらうぞ。もう一度聞く、お前の個性はなんだ。俺の個性で消すことが出来なかったあの血液操作と炎も一体どういう原理だ。隠すとそれだけで後ろめたい証拠になるぞ」

 

 不味い。本当の個性を教えるのはともかく、斗流を教えるのはあまりにもよくない。斗流血法は修行次第で誰でも使える技術だ。属性付与に関しては師匠がいないと出来ないけど、血法だけでも殺傷能力が高く、なによりこれは向こう側の世界の技術だ。下手に漏れていいものじゃない。

 オールマイトから漏洩することは恐らくない、かっちゃんにも詳しくは言ってない、だけど先生に告げる場合詳しく聞かれるのは確実だし、なにより教師内で情報が共有されかねない。そこから情報が流れたら技術を奪おうと僕や周囲の人々に危害を加える(ヴィラン)が現れる可能性もあり得る。それだけは避けるべきだ。避けるべきなんだけど……目の前の教師はそれを許さないだろう。

 

 「あ、相澤くん、ちょーっといいかな!?」

 

 「おや、お疲れ様ですオールマイトさん。なんの用ですか?今俺は忙しいのですけど」

 

 どう言い逃れるか考えているとオールマイトがやってきた。慌ててやって来たところを見ると、話を聞いていたのだろう。

 

 「HAHAHA!いや緑谷少年のことなんだけどね……すまないが、今は詳しくは聞かないであげてくれないかい?」

 

 「何故です?彼は自分の個性を偽っています。本当の個性を明かさないのは非合理的すぎるし、特に彼の起こした爆炎、入試でもそうでしたがあれはかなり危険な代物です。

 テストの際は調整が上手く熱を周囲に撒く程度で済みましたが、もし彼が誤れば被害は大きくなりますし、なにより個性でない以上あれはなんだったのか解明する必要があります。……仮に後ろ暗い存在、それこそ(ヴィラン)のような存在だったら場合尚更ですよ」

 

 「だからこそ今は待ってやってくれないか。彼の個性(ちから)の経緯は繊細で、お互いある程度関係を築いてからではないと説明が難しいのだよ。

 それに緑谷少年は決して(ヴィラン)じゃない。私が保証する」

 

 「えらくその子を気にかけているんですね?貴方の関係者かなにかですか?」

 

 「当たらずも遠からずだよ。……ちょっと彼には負い目もあってね」

 

 「……それは去年あった彼の失踪事件のことですか?」

 

 「……ああ」

 

 オールマイトと相澤先生の口論が止む。教師の二人に初日から迷惑をかけてしまい申し訳なく思い小さくなっていると、相澤先生がため息をひとつ吐き、了承してくれた。

 

 「はぁ……あなたにそこまで言われたら引き下がるしかありませんよ。わかりましたオールマイト先生。まだ入学初日、お互い知らないことばかりですし、今は忠告だけにしておきます。

 そういうわけだ緑谷、今回は聞かないでおいてやるが、それでも遠からず言わないといけない時が必ずくる。それまでにしっかり信用を勝ち取れ。いいな?」

 

 「は、はい!ありがとうございます!」

 

 「今年も難儀な生徒が現れたもんだね……。質問は以上、もう行っていいぞ。明日から授業だしっかり励め」

 

 相澤先生は帰るよう促し去っていく。オールマイトと二人揃って頭を下げてそれを見送る。

 

 「……すみませんオールマイト、油断していました。まさかイレイザーヘッドが雄英の教師だったなんて」

 

 「仕方がないさ。どれだけ対策をしても必ず最善に行きつく訳じゃない。君もそのことはよくわかってるはずだ。それに私も先に伝えておくべきだったよ、すまなかった」

 

 オールマイトはそう謝るがそんなことない。あの街で情報収集や諜報活動は散々行ったというのに活かさなかった、僕の失態だ。

 だけどオールマイトが庇ってくれたおかげで猶予をもらえた。話すべきその時までになんとか信用を勝ち取らなくては。

 

 ……しかし言わないといけないその時は、意外と早くにくるのを、その時の僕はまだ知らなかった……。

 

 




ちなみに組み分けは公正を期してダイスで決めました。でも意外と面白い組み合わせが出来たのでやってよかったと思ってます。喋らせるのが茨の道ですけど。
誰がA組入りしたかは次回以降に表示します。


※オリジナル技紹介※

百煆繚乱(びゃっかりょうらん)
カグツチの技。拳大の血の塊を中心から点火、爆発と炎で周囲を焼き飛ばす。空中で使えば花開く感じに燃え広がるが地上で使うとナパームみたいになる。とても物騒。
名前は百花繚乱から。炎の大輪から火の粉が舞うのが花びらっぽく感じてそこからもじった。という設定。

ちなみに煆の文字が技を叫ぶときのフォントに対応していなくて困ってたりします。たすけて


一点集中砲撃(コンセントレートカノン)
かっちゃんの技。拳に個性を集中して点で爆破する。地味に爆破に回転を加えているため飛距離が伸びているし精度もある。APショットと比べたら手間がかかるが威力と飛距離はこっちの方が高い所謂長距離狙撃向きの技。
名前は英訳をもじった感じ。集中の英訳がコンセントレート、砲撃といえば大砲、大砲を英語でキャノン、そこから語呂的にカノンのほうがいいかなとフランス語に変更。一点はそれっぽく付けただけです。

なおオリ技が再び出るかは知りません。



※クラス構成変更決断時の筆者脳内※

もっぴ「うう…推しの拳藤ちゃんと小大ちゃん出したいよ…!でもそうなるとプロットも書き溜め(笑)も全部死んじゃうぅ…!」
内なるもっぴ「おいおいクラス混ぜ混ぜとかそれは茨の道だぜ?だいたい拳藤のどこがいいんだ?」
もっぴ「ゴリラで姉御なところ!」
内なるもっぴ「わかる!それじゃあ小大ちゃんは?」
もっぴ「ん!」
内なるもっぴ「わかる!しょうがない混ぜちゃうか。で、どうやってB組と混ぜるの?あれこれ考えてたらまた時間かかって終わらないよ?」
ダイス神「ならば私が貴公を導こう。あ、推しが二人ともBに行っても泣かないように」
もっぴ's「「ゲェーッ!ダイス神!」」

こんな脳内会議があったとか。
そして変更に伴いアレコレ加筆修正をしまくってます。つまりいつも通りです。
さらに書き溜めが死亡したので更新が遅くなります。こんないい加減な筆者ですまぬ…すまぬ…。

【誤字報告】

ちはやしふうさん。 羽柴光秀さん。 Skazka Priskazkaさん。

誤字報告ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。