My Hero Battlefront ~血闘師緑谷出久~   作:もっぴー☆

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ヒノキ花粉に鼻をリスキルされてたので第四十九話です。

今回もお待たせしました。ちょい病んでて語彙力崩壊してて遅れに遅れました。4割は物間君のせいですけどね。あの子喋らせるの本当難しいんですけど彼を上手く煽らせてる人達どういう頭脳してるん羨ましい。




第49話:君なんなのさ本当

 

 『スタ――――――ト!!!』

 

 プレゼントマイクの声がスタジアムに響き渡り、ついに騎馬戦の火蓋が切られた。

 相手のハチマキを奪うべく騎馬が一斉に動き出す中、やはりというべきかほとんどの騎馬は僕ら高得点組に狙いを定め向かってくる。高得点が三チームもいるおかげでバラけているのは幸いか。

 

 「実質お前らの高得点争奪戦だッ!!」

 

 「はっはー!ニ千万いただくよ緑谷ー!」

 

 真っ先に僕へ向かって来たのは鉄哲君と……騎手がいない二チームだった。え、騎手がいないんだけど。なんで?

 

 「馬鹿だね。よく見ればちゃんと彼女はそこにいるのがわかるはずだよ」

 

 「……あ、なるほど」

 

 物間君のヒントで理解した。見れば人の頭がある位置にハチマキが浮いている。おそらく透明の個性持ちなのだろう。道理で見えないわけだ。

 

 「……ん?いや待って、見えないってことは君もしかして今裸なのッ!?」

 

 「おっと勘違いしちゃってるね。安心してください、穿いてますよっと!」

 

 某パンツ芸人みたいなことを言ってズボンに指を差す―――透明だから差してるのかはわからないけど―――B組生徒。

 いやどっちにしても上は着てないってことだよね?物間君の言葉から察するに君女性だよね?色々不味くないかな?主に騎馬になってる思春期の少年たちとか。金髪の少年とかちょっと興奮してるし心操君も察して目を逸らしてるぞ。

 

 「葉隠にばっか目いってんじゃねえぞッ!」

 

 「!?デク君足が!」

 

 「おっと骨抜め、さっそく仕掛けてきたか」

 

 鉄哲君達が先制攻撃を仕掛けてくる。突然騎馬が揺れ、下を見てみると地面が沈んでいた。どうやら向こうには物質を泥化させるような個性があるようだ。

 

 「足を取られた状況でどこまでやれっかな!?」

 

 「二人がかりだからって卑怯とか言わないでよー!」

 

 足を取られたところを左右からの挟撃。鉄哲君は全身を鈍色に変え、透明の子―――葉隠さんも合わせるように向かってくる。物間君の言う通りB組は連携してくるというのは本当そうだ。

 

 「ま、簡単に取らせる気はないけどね」

 

 僕は血槍を二本瞬時に形成し、二人へ向けてブンッと振るった。無論穂先は丸めており切れる心配はないが、それでも棍みたいなものだから当たれば相当痛い。

 

 「ぬおっ!?」

 

 「うわわわっ!?」

 

 突然現れた槍による攻撃を二人は慌てて攻撃をやめ回避。挟み撃ちは不発に終わった。

 甘い甘い、他の生徒ならともかく僕はこの程度で取れるほど簡単じゃないぞ。

 

 「血、つーことはブラ先と同じ個性か!油断できねえぜ!」

 

 「ずるーい!そんなの出されちゃリーチ負けしちゃうじゃん!」

 

 「集中狙いする君らに言われたくないな。よし麗日さん、物間君、今のうちに脱出するからみんなを軽くして!」

 

 「うん!」

 

 「はいはい」

 

 麗日さんと物間君がそれぞれ決めた相手に触れていき無重力の個性が発動。騎馬を軽くする。そこへ槍を地面に突き刺し、どっこいしょーっと漕ぐように勢いをつけて泥の足場から無理やり脱出し、飛ぶように包囲を抜けた。

 安全地帯までいけたら個性を解除してもらい着地。最初の危機を乗り越えるのだった。

 

 「二人の個性様々だな」

 

 「ふふん!」

 

 「そりゃどうも」

 

 ここでひとつ。麗日さんの個性である無重力(ゼログラビティ)はあらゆる重力を取り除くことが出来るが、自身を対象にする場合のみ非常に負担が大きいという欠点があり、現状無理に使おうものなら重度の宇宙酔いのような状態になって最悪リバースする。

 本来ならこれのせいでこんな序盤で四人も浮かすなんて無茶な行動は出来ないのだが……そこは物間君のおかげで解決させるころが出来た。

 

 物間君の個性はその名もコピー。触れた相手の個性を数分間好きに使える個性だ。

 これを使って麗日さんの個性をコピーしてもらい、お互いを浮かすことによって負担問題を解消。人数も各々二人ずつに分けれてさらに負担も半減、おかげで苦も無く強引な脱出が出来たというわけだ。柔軟性が求められるが、使いこなせばいくらでも化ける可能性の塊のような個性だろう。

 

 ただコピーできるのは個性の性質そのものであり、溜め込んで発動するタイプなど特殊なものだとうまくいかず、所謂スカとして扱われるらしい。僕の個性もそうらしくコピー出来なかった。

 ……ああ、うん、おそらく個性(再構築)はコピー出来てると思うよ。表立って使ってる斗流血法を個性と虚偽申告してるから誤解しているだけで、今僕の血取り込んだり毒でも飲めば多分個性が発動するかもしれない。危なすぎるから絶対やらないほうがいいけど。

 

 「やるな首席、そうでなくちゃ取り甲斐がねえ!」

 

 「今ので取れたら良かったのにー。ていうか物間ー、なんで緑谷達とチーム組んでんの!?連携作戦はどしたのさ!」

 

 「あっ、そうだぞこの裏切者ッ!」

 

 「ちょーっと嵌められちゃってねえ、さすがにこの展開は予想してなかったよ!でも好きで組んでるわけじゃないのは信じてほしいかな!」

 

 「そうだったのかッ!?」

 

 「いや素直か!……でも普段からA組敵視してるし嵌められたのは本当かも?」

 

 「チキショー卑怯な手使いやがって!恥ずかしくないのかA組!」

 

 「ゔっ」

 

 心操君が気まずそうに顔を歪めた。自分のやったことが何故かA組のせいになって罪悪感でも芽生えたかい?そう思ったなら次回から説得を放棄しないように。止めなかった僕も悪いけど。

 

 「隙ありー」

 

 横から突然声が飛んでくる。油断しているところをついて奇襲でも仕掛けてきたか?だけど声を出しちゃあそれは意味ない―――。

 

 「……って、は?口、だけ?」

 

 振り向いた先にはニヤニヤと笑う口だけが浮いていた。フヨフヨと浮いている人体の一部を見て、これには僕もどういうことと素っ頓狂な声をあげてしまうのだった。

 

 「ハイしゅーりょー」

 

 ケタケタと笑う口がそう告げるとふと首筋に風を感じ、ハチマキがわずかに浮き―――、

 

 

 「ふんっ」

 

 バチイィンッ!!

 

 「ぉあいっだあぁッ!!?」

 

 

 反射的に背後へ裏拳を放った。甲高い衝撃音を鳴り響かせ、同時に正面の口からあまりに痛かったのか悲鳴があげた。ごめん加減ミスったや。

 後ろに振り向き確認をすると、そこには手が……手だけが浮いていた。裏拳が綺麗に入ったのか手が赤く染まっており、振って冷やしていた。先ほどの高い音の出どころはこれか。

 

 「拳藤ごめんミスった~!アイツの裏拳メッチャ痛い!」

 

 「ドンマイ取蔭!それより手大丈夫?怪我しないよう安全第一でお願いよ!」

 

 口と手が飛んでいき涙目の女子の欠けた部分にくっついた。見れば下手人は拳藤さんチームの騎馬のようだ。

 ところどころ身体を欠けさせ飛ばす……ふむふむ、某海賊漫画の道化師船長に似た個性といったところかな。個性バラバラとか、そんな感じ?

 

 「こりゃあ緑谷達は一旦保留でいっか。まだ始まったばっかだしまずはハチマキ集め優先でいこう!というわけで葉隠、悪いけど勝負は勝負。恨みっこなしだ!」

 

 「うおーブルータスお前もかー!?鎌切君防御防御!鱗君も弾幕張ってー!」

 

 まだその時ではないと拳藤さんは側にいた葉隠さんへターゲットを変更。唐突に身内から狙われたことがショックなのか裏切り者への定番セリフを吐いた。結構余裕あるな君。

 

 『さ~~~早くも各所で一千万狙いの集中攻撃だ!だが中にゃハチマキ集めて駆け込み四位を狙う奴も出てるぞ!賢しく攻めてけ!』

 

 マイクの実況を聞き、他の高得点組に目を向ける。

 轟君は飯田君の速度を駆使して上手く逃げ回っている。囲もうとする相手に対し八百万さんと常闇君の個性がうまく壁と機能しており奇襲できず、かといって正面からくると氷をお見舞いしてくるため攻めあぐねてしまい徐々に遠巻きになっている。

 一方かっちゃんはといえば……空を飛んでいた。比喩抜きで騎馬を置き去りにひたすら空を飛び回って暴れていた。なにあれ?

 

 「爆豪君すっごい空飛んでる」

 

 「ねえ彼これが騎馬戦って忘れてないかな?それとも騎馬戦を空中機動で戦う何かと勘違いしてるのかい?」

 

 「先生、あれいいんすか?反則ぽく見えるんすけど」

 

 「テクニカルだから落ちなければOKよ!」

 

 「いいんだ……」

 

 ミッドナイトが許可したことでみんなの物言いは却下された。割と細かいルールは胸先三寸で決めるよね。自由すぎる。僕としてはかっちゃんが空を飛ぶのはいつものことだからいいんだけど。

 ただ今回は普段の飛行と違い爆破で吹っ飛ぶような挙動じゃなく、鳥のように滑らかに、それこそ某アイアンなパワードスーツのように飛び回っては加速や急旋回を行い、AB問わずハチマキをむしり取りにいっている。

 あ、回転して青山君のビーム攻撃避けた。なんで騎馬戦でバレルロールが見れるんだ―――なんて見ていたらかっちゃんと目が合い突撃してきた。捕捉されちゃったか。

 

 「よそ見とはいい根性してるな!なめんのもいい加減に「邪魔だゴラァッ!!」ウゴッ!?」

 

 不幸なことにかっちゃんの軌道上に入り込んでしまった鉄哲君はかっちゃんの爆破をくらってよろけてしまう。もちろんそんな隙をかっちゃんが見逃すはずがなく、ついでとばかりにハチマキを奪取……しようとしたが頭から外れず取り逃すことのだった。

 

 「アッブねえ泡瀬にくっ付けてもらってなかったら危なかった!」

 

 見れば鉄哲君の額とハチマキがくっついている。泡瀬という生徒にくっ付けてもらったようだが、凡戸君みたく接着する個性持ちかな。……いや接着って許されるの先生?頭に巻いてるからOK?自由すぎる……。

 かっちゃんも取れなかったことに舌打ちをこぼすがすぐさま気を取り直し、宙を飛んで一度騎馬へ戻ってこちらへ対峙するのだった。

 

 「来るのはわかってたけどかなり早くきたねかっちゃん」

 

 「ハッ、テメエらも半分野郎もぶっ殺して四千万取んなら早いも遅いもねえッ!ゼロポイントの負け犬になる準備は出来てんだろうな!」

 

 「それはこっちの台詞…………なんだけど少し見ない間にかっちゃん重装備になってない?チーム分けの間に何があったのさ」

 

 かっちゃんの今の姿に困惑する。

 というのもかっちゃんの今の姿だが……背中に羽っぽい何かと箱を背負い、足にデカイ靴を履いており、そして脇に角取さんの角が添えられているのだ。待って、それもしかしなくてもサポートアイテムだよね?アイテム使用はルール違反なはずだけど大丈夫なの?

 

 「ふっふっふっ……どうやら彼の装備が気になるようですね!!」

 

 「うおっ」

 

 僕の疑問にかっちゃんの騎馬をしている生徒が顔を出して答えてきた。彼女は…………物間君の反応をみるにB組ではなさそうだな。もしかしてC組以降の誰かか?

 

 「彼女はサポート科だね。あそこの生徒は自作限定でサポートアイテムが使用可能なのさ。チーム戦だと味方に貸すことも許されてるようだね。

 あれぇ〜、もしかして何も知らなかったのかい?やめてよね僕らの顔である首席が全国放送で無知を晒すなんてさぁ。情報の取得を怠って足元掬われるのは勝手だけど、僕らを巻き込まないでほしいなぁ〜!」

 

 補足はありがたいけど君どっちの味方だい物間君。

 

 「そう!彼の言う通り大会の公平を期すべく、サポート科の生徒は自身で作った装備のみ例外として持ち込みが許されているのです。つまり今彼が装備している全てのサポートアイテムは!私発目明が開発した愛すべき!!ベイビーたちなのですッッ!!!

 

 「声デッカ」

 

 「うるせえ黙れや……!」

 

 どうやら彼女がこのサポートアイテムを作ったらしい。話題に出されたからかそれはもう嬉々として聞いてもいないことを話し出した。マイペースだなこの子。

 

 ふむふむ、背中の羽みたいなのはオートバランサーで三十二軸のジャイロセンサーが自動で旋回補助を行い爆破の負担を軽減させているのか。履いている靴はエレクトロシューズで左右の靴を電磁誘導で反発させ滞空時間を延ばすと同時に瞬間的な回避も実現させていると。これがかっちゃんのあの軽やかな飛行能力の秘密か。

 さらに背中のジェットパックはとあるヒーローのバックパックを参考に独自解釈を加えたお気に入りの一品ね。……あ、その装備、もしかしてバスターヒーロー・エアジェットのこと?奇遇だな近所のヒーローで僕もたまにお世話になってるよ。

 

 そこにダメ出しで角取さんの個性がかっちゃんの飛行補佐、死角の防御、個性(爆破)の休憩といった補助を行い、帰還時に重装備かっちゃんが与える騎馬への負担を防御に自信のある切島君が大半を受け持つ形で安定させた、といったところか。すごいなかっちゃん、発目さんの装備をこの短時間で使いこなす相変わらずの高センスもだけど、十五分という限られた時間でここまで最適解チームを叩きだしたのか。なにより……!

 

 

 「かっちゃんなら渡されてもテメェだけサポートアイテム使って勝っても意味ねえわカスとか言って拒絶すると思ったのに、相手の思いを汲み取ってあげることを覚えたなんて。着々とヒーローとして、人として成長してることに嬉しく思うよ……」

 

 「後方腕組み保護者面すんなうぜぇッ!仕方なくに決まってんだろがこの発明バカが付けろ付けろクソうっせえんだよッ!!つかテメェも装備バラすなや情報アドバンテージなくなったろがッ!!」

 

 「発明バカだなんてそう褒められては照れますね!」

 

 「褒めてねえ察しろッ!!」

 

 「でもぉ爆豪クン発目サンとチームアップ組んダら、ちゃんとアイテムプラン考えてくれましタ」

 

 「なんだかんだ優しいよな爆豪」

 

 「テメエら黙るかぶっ殺されるか選べ……!」

 

 

 切島君たちの追撃にキレるかっちゃん。あのかっちゃんがみんなにちゃんと活躍の場を考えてくれたことを微笑ましく思う。まあそれはそうと隙あらばハチマキを狙わせてもらうけど。

 

 「えい隙あり」

 

 「んなモンねぇわッ!!」

 

 ジャブ代わりにかっちゃんを槍で小突きにいくが残念ながら弾かれた。最近反応が一段と早くなったな、以前ならギリギリで避けて危ねえわって怒ったろうに。

 

 「さて、時間も限られてるしどっちが三千万になるか試そっか」

 

 「上等だ、ゼロポイントで無様を晒して底辺這いずり回れやッ!!」

 

 片や槍を構え、片や屈んで飛び上がる準備に入った。いざ尋常に勝負だ―――

 

 「敵は一人と思うな!」

 

 「うおーまだまだ諦めないよー!」

 

 と、構えた矢先に横槍が入ってきた。マスクをしたキメラチックな異形の生徒が地を這うようにこちらへ向かって突撃、背中に作られたドームから鞭のようなものを―――蛙吹さんの舌じゃんコレ―――しならせ飛び出てくる。そこへ葉隠さん達も負けじと後に続いてきた。

 僕らの一騎打ちに水を差されたことにかっちゃんは不機嫌になり、僕も渋々防御に入る。

 

 ……しかし、B組の生徒達は隣のハチマキに目もくれずあくまでA組狙いか。面倒くさいなB組の作戦。

 現にB組の首にハチマキが巻かれた者がチラホラおり、作戦を聞く限りそのハチマキの出処は……A組だろう。

 

 『さー試合開始から七分経過!現在の保持ポイントはどうなってるか、現在のランクを見てみよう!

 

 ……あら?ちょっと待てよコレ、A組一千万以外全員取られてるじゃねえか!どうしたお前ら!?』

 

 どうやら正解のようだ。プレゼントマイクから伝えられる無慈悲な実況に舌打ちの一つでもしたくなる。

 

 「まったく、君らA組は揃って単純なんだよ」

 

 「あ"あ"っ?」

 

 「だってそうだろ?ミッドナイトが第一種目と言った時点で予選段階から極端に減らすとは考えにくいと、君らは誰一人思わなかったのかい?」

 

 物間君の発言にA組は揃って言葉を詰まらす。どうやら揃って図星を突かれたようだ。

 僕?僕はそもそも一位以外取る選択肢がないから……。じゃないと師匠から何言われるかわからない。絶対こんな児戯で躓くほど怠惰を貪るか~とかなんとか言って〆られる。もしくは何か言う前に殺しに来る。

 

 「だから僕らB組はおおよその目安を仮定し、その順位以下にならないように走ったのさ。ライバルになる者たちの個性や性格を後方から観察できるようにね。

 その結果は……君たちの得点を見ればわかるだろ?どうだい?注目に浮かれて後先考えずその場限りの優位に目が眩んで揃って無様を晒すことになっちゃった気分はぁッ!

 

 あ、わかってるだろうけど心操君は例外だよ。彼は普通科なんだから僕らと違って勝ち上がらなければ同じ土俵に立つことすら叶わないんだから必死になって当然さ。彼を出しにするなんて浅ましい真似はしないようにね、程度が知れてしまうからさ。まあ蓋を開けてみれば(ヴィラン)を退けた優秀なA組よりも彼のほうが活躍してるんだけどねアーッハッハッハッハッハー!」

 

 高笑いと煽りを繰り返す物間君。聞いていたA組生徒はぐうの音も出ないのが呻くに留まり、ヒーローからも賛同するように頷く姿がチラホラ見える。場を支配してみせた物間君は絶好調だ。

 

 

 「ま、全部が全部B組の総意ってわけじゃないけれどいい案だろ?調子づいてるA組を蹴落とすのにさ」

 

 「じゃあなんでテメエA組(デク)と組んでんだよ」

 

 「ホントなんでだろうねぇ〜!この計画を立案した僕がなぜか憎きA組と組んじゃってるおかげでクラスのみんなから裏切り者の烙印を押されることになっちゃったやハッハッハッ!!

 ねえどうしてかな〜?キミら三人はなにか知らないかな〜??僕がここにいる理・由・を・さぁ〜ッ!!?」

 

 『ごめんて』

 

 

 う〜〜〜〜〜ん良心が痛い!

 口撃は個性で耐性つかないから彼はある種の天敵でタチが悪いな。自業自得なんだけど。

 僕らの謝罪が綺麗にハモった。麗日さんほぼ無関係なのに巻き込んでごめんね。

 

 「聞いといて救けなかった私も私だし……?」

 

 「何やったんだアホデク……」

 

 「わりぃ、犯人俺だ」

 

 「デクに毒されてんじゃねえぞ隈目ッ!コッチ戻ってこいやッ!!」

 

 

 かっちゃんは諭すようにキレ、物間君もまだまだ煽り散らしている。混沌としてるなぁ。でも心操君のそれは僕の影響じゃなくて元からだと思う。

 少しして物間君は溜飲が下がったのかそろそろ包囲を抜けないかと催促してくる。メッチャ楽しんだね君、こっちはその間ひたすらB組に対応していたのに。いいけどさ。

 

 「あ、そうそう。それともうひとつ」

 

 動き出そうとした時、最後に物間君はかっちゃんへ煽るように言葉を投げつけた。

 

 「爆豪君だったかな?今度ヘドロ事件のこと参考に聞かせてほしいな。年に一度、(ヴィラン)に襲われる気持ちってのをさ」

 

 

 ―――その言葉を聞いた瞬間。

 

 

 

 

 

 かっちゃんの怒りは冷めた―――

 

 

 

 

 

 スンッと、先ほどまで噴火する火山の如く怒っていたかっちゃんはあっという間に鎮火した。キレすぎて逆に冷静になったとかでなく唐突に怒りが収まったのだ。これには絶好調だった物間君も驚き戸惑っている。

 かっちゃんの瞳は酷く哀しげだ。例えるなら「あ、コイツ何も知んねえんだな、可哀想に」と言わんばかりの瞳だ。

 

 「……おい煽り魔、ひとつ言っておく」

 

 「な、なんだい?僕はただ純粋に今後の事を踏まえて聞きたいと―――?」

 

 「おまえが乗せてるそのアホだがな……」

 

 物間君の言葉を遮り、すっ、と僕へ指を向けて、

 

 

 「毎週(ヴィラン)事件に巻き込まれて、毎回(ヴィラン)に人質に取られては秒で返り討ちにして、毎度地元のヒーローの仕事奪っては正座させられて、毎月何回人質になったかこっそり賭け事に使われてる傍迷惑なアホだぞ」

 

 「」

 

 

 淡々と、よく見る僕の光景を口にした。

 周囲の空気が死んだ。

 

 それを聞いた物間君は一拍後、引くつかせた顔のままスーッとこちらを見てきた。

 その視線は僕にこう伝えようとしているのがよくわかる。

 

 

 今の話本当か?と。

 

 

 厳然たる事実です。

 

 

 『わーお、さっきの熱どこいったってくらい冷えだしたぞ。え、イレイザー、アイツそんなトラブルメーカーなの?』

 

 『…………地元じゃちょっとした有名人とだけ言っておく』

 

 シャラップ二人共。僕だって好きで有名なんじゃないやい。

 

 「お前らのせいで僕のプラン全部めちゃくちゃだよ……!」

 

 うん、それに関しては本当にごめん。

 

 「ついでに言やぁ、その都度こいつの手綱をしっかり握ってくれと居合わせた地元ヒーローに懇願されてるのが俺だ」

 

 「君なんなのさ本当ッ!!?」

 

 折寺の悪鬼菩薩と、どこからか聞こえた気がした。やめてその異名。

 

 物間君ドン引き。切島君も引いた。なんだったら麗日さんや角取さんも苦笑いしながら若干引いている。騎馬崩さないでね?

 周囲も珍獣を見るような目を僕に向けてくる。さすがにそれは僕でも傷つくんだけど。え、残当?ええい事実陳列罪で訴えるぞ。負ける未来しかないや……。

 

 「ん!んッ!」

 

 「ハッ!?チャンスは今ですぞ!」

 

 「そうだよ今がチャンスじゃねぇか!」

 

 気まずい雰囲気から一転、皆の動きが止まってる今がチャンスと、A組も攻めて来た。小大さんを乗せた宍田君が掠めるように突撃し、別方向からも凡戸君と肩車された峰田君が接着剤ともぎもぎを撒いてくる。

 一千万と二千万というお宝が(ポイント)が固まっているうえ、B組に軒並みポイントを奪われている以上、彼らがここで逆転の一手を狙うのは当然か。

 

 「邪魔すんなッつってんだろが!」

 

 「おっとと、危ない」

 

 二人で攻撃を捌いていくが続々A組が集まりだし、乱戦になりつつある。これじゃあタイマンもクソもない、残念だけどお預けってことで逃げさせてもらおう。それじゃあね。

 

 二人に頼んで再び軽くしてもらいもう一度跳ねるように脱出する。逃げる僕らをかっちゃんは追いたがってたが、他のチームに邪魔されてしまい離脱を許してしまった。腹いせに攻撃を始めるかっちゃんは機嫌の悪さから攻撃が一層苛烈だ。

 こちらも離脱を見計らって攻めるチームがいたが槍とカグツチを駆使して相手の動きを制限しつつ、再び逃げに回るのだった。

 

 「ま、まったくデタラメだなA組は。ハチマキを取られてなりふり構ってられないのはわかるけどあれじゃ取るどころかハチマキすら見えているのやら。あれだけ言われても猪突猛進しかしないなんてよく雄英に入学出来たね。主に頭脳面でさ!ハ、ハハ、ハッハッハー!」

 

 危機を脱し、調子を取り戻そうとA組のみんなを煽り始める物間君。少し声が震えてるよ。

 

 …………ただ、それ以上彼らを貶す発言はやめていただこうか。A組の一人としてもそうだが、あの街で戦った者として先ほどから彼の発言は少々いただけない。釘を差させてもらおう。

 

 「物間君、ひとついい?」

 

 「……今度はなんだい?」

 

 ハァッとため息を吐き返事をする物間君に僕は告げる。

 

 「君の考えは合理的で悪くないと思う。その時の優位に無理に執着せず先の布石にする考えも正しい。多分相澤先生やスティーブンさんも評価してくれると思う」

 

 「へぇ?スティーブンって人がどういう人か知らないけど、A組の教師からも評価を得られそうなら悪い気はしないかな。君も猪突な首席の片割れと同じと思っていたけど意外と考えは合う方かもね。でも上から目線なのはいただけ―――」

 

 「ただそれでも、彼らの執念を、足掻くことを否定しちゃあ駄目だ」

 

 「……どういうことかな?」

 

 確かに冷静にならず無理に拘ると今回みたいに不利になる。なんだったら一転窮地に陥ることだってある。

 だからあえて捨てる考えは決して間違っていない。むしろ僕らの状況を見れば正解とまである。私情で意固地になっても、執着して藻掻いても、結果全身ボロボロの満身創痍になるだけでみんなに迷惑をかけるかもしれない。

 

 けれども……それでも、意地になって目の前の優位をがむしゃらに掴もうとする行動は決して間違ってない。

 

 「その場限りの優位っていうのは僕らが思ってる以上の価値が出ることもあるんだ。例えそれが刹那の瞬間であっても、その一瞬が直接間接問わず、誰かを救う結果に繋がることがある。

 それを僕は一人の、ただ他人より目がいいだけの少年が傷つきながらも、何度も為しえたことをよく知っている」

 

 思い出すのは血まみれになりながらも走るレオさん。

 世界崩壊幇助器具「カロプス人蟲」を巡る戦いの最中、偶然回収した人蠱の生贄となった幾人の……子供たち。

 彼らをその(義眼)で視たレオさんは、ただただ涙を流し彼らを庇い続けた。彼らに莫大な懸賞金をかけられ街中を敵に回そうとも。

 

 追われ撃たれ、目を酷使し焼き、どれだけボロボロになっても足掻き続けた逃走劇は、結果的にクラウスさんの復帰と僕らの合流時間を稼いでみせ、人蟲にたどり着く一助へと昇華してみせた。それもレオさんが彼らを守ることに意固地になったからだ。

 

 もちろんこれは結果論だ。綱渡りのような行動が上手くいっただけに過ぎず、もう一度同じことをやれば世界の均衡は崩れるかもしれない。

 ザップさんが合理的に考えろと言っていたように、もしかしたら生贄の子達を囮にすればもっと容易に人蟲までたどり着けたかもしれないし、生贄の子達を殺せば儀式が失敗し被害はもっと抑えられたかもしれない。ライブラの一員として考えればザップさんの考えは共感できる。

 

 ただそれでも、意固地になってでも彼らを守ろうとしたレオさんの選択を、僕は一人のヒーローとして肯定したい。

 だってあの子たちが、蠱毒の怪物でなく人として逝けたかもしれないのだから。確認する術はないにしても、僕はそう思いたい。じゃないと誰の心も救われないじゃないか。

 

 「それを知っているからこそ、必死になる彼らを煽るような発言は……敬愛するレオさんが貶められてるようで不愉快でもある。やめろとは言わない、けれど常識の範疇に留めてほしい」

 

 「……」

 

 「なんて、未だ師匠に蟻の触角にも劣る未熟者扱いされてる僕の言葉じゃ響かないかな?」

 

 「そんな言葉程度ではいわかりましたと変わると思ってるのかい?お人好しがすぎるよ。

 ……と言いたいけど僕だって鬼じゃない。そのレオって人を意図せず貶してしまったことは申し訳なく思ってるし、彼に免じて記憶の片隅にでも留めておいてあげるよ。ありがたく思いなよ?」

 

 「うん、それで構わない。ありがとう」

 

 肩をすくめながらも物間君は僕の意を汲み取ってくれた。これで少しは自重してくれるといいな。

 よかったよかったと、そんなことを考えているとなにやら下から視線を感じる。見れば二人も感心した目でこちらを見ていた。

 

 どうやら僕の言葉を先達のヒーローの言葉としてしっかり聞いてくれていたようだ。そのキラキラした視線、ちょっと恥ずかしいな。いつぞや程ではないにせよ只々こそばゆい。

 ああもう無理やりでもいいからこの空気をリセットしたい。なにかないか?この際サプライズニンジャ理論でもいいからさ。

 

 …………そういえば。

 

 

 「今思えば本当に四千万ポイント目指して襲って来たねかっちゃん」

 

 「え?あ、そういえばそうだね」

 

 「いきなり何の話かな?」

 

 「……よし。みんな、賭けに勝ったからお昼に唐揚げとコロッケ頂戴ね」

 

 「えぇ!?だ、だったら私も勝ったからお昼に唐揚げとトンカツだよ!」

 

 「その場合俺も勝ってることになるから昼にトンカツとコロッケもらうが……こんなかで一番高えおかずトンカツじゃなかったか?損すんぞ?」

 

 「だからなんの話かな君達ィッ!?」

 

 

 洗脳されてて何も知らない物間君が問いかけてくる。ただの悪ふざけなので特に気にしなくていいよ。

 俺で賭け事してんじゃねえとキレ散らかした声がスタジアムに轟いた。ごめんね、僕も賭け事の対象にされてるらしいしおあいこってことで許して。

 

 ところでかっちゃん、僕で賭け事してるの誰かわかる?知ってたら教えて、今度お話しにいくから。大丈夫手は出さないよ、本当だよ。

 

 「余裕だな緑谷」

 

 「競技中だから警戒は解いてないけどね」

 

 「だろうな。さっきからこっちを槍チラつかせてて油断ならねえ」

 

 さて、調子が戻ってきたし、巫山戯るのもここまでだ。

 

 

 「それでも、奪るぞ二千万」

 

 「その前に君の一千万を無料で引き取らせてもらうよ」

 

 

 残り時間が半分を切ったころ。

 

 轟君が仕掛けてきた。

 

 

 





おまけ:ヒーロー休憩所にて。

物間『君なんなのさ本当ッ!?』
折寺ヒーローズ『折寺の悪鬼菩薩(よ(です(也(だな))))』
デス「お前らもう少し手心加えてやれ……」


今回のダイス
かっちゃんにサポートアイテムは?
1:装備しない
2:騎馬戦装備
3:装備しない
4:決勝売込装備
5:フルアーマーかっちゃん(よく許容したなお前)
6:装備しない
7:騎馬戦装備
8:装備しない
9:決勝売込装備
10:銀河系最強のパワードスーツ(この世界にはチョウゾが存在した?)
【1D10:5】

おかしい意図せずかっちゃんが軟化していくぞ……?


【誤字報告】

Cranさん。

誤字報告ありがとうございました。
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ひねくれ魔法少女と英雄学校(作者:安達武)(原作:僕のヒーローアカデミア)

長谷川千雨、中学三年生。▼今日から訳あって異世界でヒーロー志望です。▼


総合評価:19561/評価:8.78/連載:110話/更新日時:2026年02月02日(月) 22:45 小説情報

僕自身がスケベになればいいのでは?(作者:PhaseShift)(原作:僕のヒーローアカデミア)

アレにはなりたくないけどあの魅力的美少女たちに囲まれてスケベ心を抑えられる自信もない。一般憑依高校生にとっては気が狂うほど長い、新生児という肉の牢獄の中で悩みに悩んだ。半ば精神が崩壊しそうになったその瞬間、彼はある事に思い至る。▼そうだ、僕自身がスケベになればいいのでは?▼割と残酷なヒロアカ世界でよりにもよって峰田実に憑依転生した主人公が、粘着球をもぎ取るだ…


総合評価:15013/評価:8.19/連載:27話/更新日時:2026年01月01日(木) 00:00 小説情報

異世界イズク(作者:規律式足)(原作:僕のヒーローアカデミア)

▼ 緑谷出久は異世界帰還者である。▼ そんな彼が雄英高校にて最高のヒーローを目指す物語。▼ ただ異世界生活でちょっと現実に達観気味。▼ 


総合評価:15721/評価:8.48/連載:117話/更新日時:2024年10月30日(水) 00:15 小説情報

回原のドリルは天を貫く(作者:のりしー)(原作:僕のヒーローアカデミア)

回原旋。▼本来の正史であれば優秀ではあるが、歴史の教科書にのるような逸話を残すことは無かった埋もれたヒーロー。▼だがそんな彼が、古い昔のアニメやゲーム好きな祖父の影響で見たとあるアニメの影響で、本来の正史から大きく逸脱し物語の主役へと躍り出る。▼『天元突破グレンラガン』▼これは、回原旋のドリルが天を貫き、最高のヒーローになるまでの物語だ。▼そんな、少し変わっ…


総合評価:5949/評価:8.16/連載:134話/更新日時:2026年05月10日(日) 16:05 小説情報

酒カスエルフ、ダンジョンへ行く(作者:エルフスキー)(原作:ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか)

属性過多トンチキエルフはお好きですか?


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