自分のことを工藤新一だと信じて疑わなかったヤツ(黒歴史) 作:はごろも282
子供の頃、俺は自分が特別なんだと信じて疑わなかった。
父親がなんかすげー小説家で、母親は俺を産む前は女優をやってたんだ。おまけにそれなりに仲が良くてかわいい幼馴染みまでいた。
完全に『名探偵コナン』の主人公と同じじゃないか。
勘違いしても仕方がないだろ?
俺が名探偵コナンに出会ったのは6歳、まだピカピカのランドセル背負ったガキだった頃だ。あの時の俺はひとめ見た瞬間ピーンときたね。
それで自分を工藤新一だと思い込んだ俺は親にコナン片手に言ったわけだ。
「ジンにこどもにされるまえにとっくんしなきゃ!!」
ってね。誰かあのときの俺を殺してくれ。てか俺が殺す。なに子供にされるって。どこにあるのトロピカルランド。別に幼馴染みに角なんか生えてないけど?
父さんも母さんもしばらく呆けていたけど、笑って
「そうねぇ、サッカーでもはじめましょうか?」
と言ってくれやがりました。父さんも笑顔で
「じゃあカッコよく推理できるように、父さんの推理小説でも読むか!」
って。6歳児に推理小説は難易度高いぜマイファーザー。
父さんたちは子供の戯言だと思っていたんだろう。だが俺はマジのマジ、自身が工藤新一であると否定されなかった俺は完全にそれを信じこんだ。
そこからの俺は今思い出しても恥ずかしい。
自分を工藤新一だと思いこんだまま過ごしたんだ。サッカーも勉強も死ぬ気ではじめた。全ては工藤新一になるためだ。どう考えても中二病だった。何てことしてんだ俺。
それから四年たっても俺は留まることを知らなかった。
この時期に、俺は何を血迷ったのか、ある暴挙にでた。幼なじみを引き連れて事件を探し始めたんだ。
彼女は友達も多かったがなんだかんだ言いながらも俺に付きあってくれた。かわいい顔して虫好きとかいうイカれた奴だったけど。なんなら人のことコソコソ見てくるヤベー奴でもあった。
結局、大した事件に出くわすこともなかった。
その後は、いつも通り幼なじみの虫取りに付き合わされたり、勉強したり、サッカーしたりと、あいも変わらず工藤新一と思いこんで生活していたが、流石に両親もマズイと思ったのかさり気なく
「父さんと小説書いてみないか?もしかしたらお前も気にいるかも知れない」
「母さんの昔いた劇団に行ってみない?一緒にお芝居やってみたくなっちゃうかもよ?」
なんて言って俺の進路を誘導しようとしはじめた。
当然自分は組織と戦わなきゃならないと思いこんでる俺はこれを一度拒否。主人公たる俺に寄り道なんかしてる暇はないのだ。すると流石俺の両親だけあって、
「犯人がどんな思考をするのか、どんなトリックで殺害したのかは勉強だけじゃ分からない。小説を書くことは、そういう発想力を養うということだよ」
だとか、
「せっかく犯人を推理しようとしても、容疑者が嘘ついてたりしたら捜査が遅れちゃうでしょ?お芝居をしてると、そういう嘘は通用しなくなっちゃうんだから!」
なんて言って俺を誘ってきた。まんまとひっかかった俺は父さんと小説書いたり、母さんのいた劇団に行って稽古中の役者を見たりするのも日課に加えた。
それからしばらく経って俺が中学に入る頃、流石の俺も自分は工藤新一じゃないと察していた。両親や幼なじみに、
「俺、新一じゃないかも」
って言うの超恥ずかしかった。死にたくなった。
あのときのみんなの生暖かい目線、忘れたくても忘れられません。今でもたまに思い出して悶えてます。こうして俺の一度目の中二病は幕を閉じた。そう、一度目の中二病は。
そうして新一の呪縛から開放された俺は劇団に行くことも減り、代わりにベッドでゴロゴロ本を読んだりする時間が増えた。サッカーはなんとなく続けることにした。
この頃から俺はなんとなく流されるまま生活するようになった。人生の最大の目的が消えてやりたいこともなくなった。やるべきこともなくなった。だからといって何もかもつまらなくなったのかと言われれば、そうではなかった。サッカーは楽しいし、本を読むのは面白い。今の生活には満足していた。
不満があったとすれば、工藤新一という俺の黒歴史がそこそこの知名度を誇っていることだ。色んなところで探偵くんとか呼ばれるの普通に恥ずかしい。お前のメンタルおかしいよ昔の俺。
このままユルイ幸せな生活もいいなぁ、とか考えてたある日、突然幼なじみが役者になるとか言いだした。
正直、へー、そうなんだ頑張って。くらいの感想しか思い浮かばなかったが、一応急に役者を目指すことにした理由を聞いてみることにした。
そしたらあの女は笑いながらこう言ったんだ。
「*1It's a big secret……I can't tell you…… A secret makes a woman woman. 勉強不足だよ、探偵さん?」
思考が、止まった。
幻視した。残忍で、妖美で、何を考えているか分からなくて、それでいて主人公とヒロインに激重感情をもっている大女優で悪の組織の女幹部を。
思わず見惚れてしまったんだ。綺麗だとさえ思った。
彼女の演技はまだ役者を目指すと決めたばかりの技法も何もないモノだったが、それでも。
その後、何と返したのかは、覚えていない。
あの後気づくと家に帰っていて、無性に悔しくなった。
冷静に考えてみたが、あれは完全にからかってやがった。
俺は売られた喧嘩はとりあえず全部買ってその後どうするか考えるタイプだ。負けたままなのは許せなかった。
どうにかして仕返ししてやりたいという衝動のままに、俺はシナリオコンクールに幼なじみが主人公の自作小説を書いて出してやった。流石に名前とか細かい設定は変えたけど、俺の知ってること包み隠さず書き込んで、だ。応募するときに名前が必要だったが小心者の俺は、そう簡単に受かるわけないし、ふと思いついた適当な偽名にして応募した。あとからこのことを知った幼なじみにはちゃんとボコボコにされた。
ここで偽名を使ったことを、俺は後悔することになる。
後日、俺が書いたシナリオがなんか賞とったらしくて、そのせいで両親は俺が演出家の道に進むことにしたと思ったらしい。母さんの劇団時代の演出家に弟子入りさせられることになった。両親はそのまま海外に行った。
そういうとこが俺が勘違いする原因だバーロー!!!
そこからは地獄だった。両親が両親なだけあってセンスだけはあったらしく、めちゃくちゃ厳しく指導された。杖とか飛んできたもん。殺す気かクソジジイ。
たちの悪いことに劇団の奴らは新一時代の俺を知ってるんだ。弱音吐くたびに
「どうした?やっぱ演出家辞めて探偵にしとくか(笑)」
なんて煽ってきやがる。そして羞恥心と怒りで奮起しての繰り返し。そこで俺はしばらく下働きさせられた。
当時から冴え渡る頭脳の持ち主だった俺はそこでこう思ったんだ。
この業界、ブラックすぎない?って。
だってそうだろ?朝の9時頃に始まって終わるのは次の日の5時とかの日もザラにある。一回の芝居で貰える額はとんでもないとしてもベッドで本読んだりしながら一日を無為にするのが幸せの俺からすれば割に合ってない。
それにそもそも演出って別に面白くない。俺だって役者みたいに周りからチヤホヤされたい。が、残念なことに演出家は監督にでもならない限り、名前なんかそうそう覚えられるものでもないんだ。
俺がこうしている間にも、幼なじみはスター街道を突き進んでいる。不愉快だった。だから俺は、忙しくてジャンプを読めていないであろう幼なじみにNA○UTOの最終話のネタバレを通話でしてやった。
しばらくして、遂に限界がきた俺はそこで監督になろうと思い至った。来る日も来る日も迫りくる地獄に耐えられなくなったからだ。
ガキの俺にはどう考えても成功する未来しか見えなかった。根拠はないけど自信に満ち溢れてるときってあるだろ?例えばテスト前日とか。
まさにこのときの俺はそれだった。将来天才演出家としてチヤホヤされるビジョンが俺には見えた。
そう、つまりは中二病再発の知らせである。
工藤新一である時間が長過ぎた俺は、自信と自己肯定感に溢れた人間だった。工藤新一になるべく行ってきた努力が俺をそうさせるのもあったのかもしれない。
とどのつまり、この頃の俺は自分が一番優れているんだから失敗なんかしないと本気で思ってたわけだ。恥ずかしいっちゃ恥ずかしいが、工藤新一時代と比べればどうってことない。恥ずかしいけどな!!
思い至ったが吉日、俺は師匠である爺さんに土下座して映画を作りたいと頼んだ。俺のアツい想いをありったけ込めて、洗いざらいぶちまけた。
当然のごとく認められなかった。当たり前だ。なんで包み隠さなかったんだ俺。もっと建前作れよバカなの?殺すよホントに。
それから諦めを知らない素人のアホ(自分)は、毎日手元にくる仕事をこなしながら、頼み方を変えて強請り続けた。
1日目
「爺さん!肩凝ってるだろ!揉んでやるよ!!ところでさ、俺映画つく「駄目だ」って……そう……」
2日目
「爺さん!学校の病気の友達のチヨコってやつが、俺の映画みたら良くなりそうだっ「お前友達いないだろ」死ぬほどいるわボケェ!!」
3日目
「おじいちゃん!ボクお願いが「キメェ」…………」
N日目
「貴様は既に包囲されている!!開放されたければ映画を作ることをって動くんじゃあない!!抵抗はやめてこっち来ないでホントゴメンなさい冗談です首絞まるってあああああああああああ!!!!!」
そんな感じで毎日強請ってたら流石に鬱陶しくなってきたのか、遂に条件つきで相手が折れてくれたんだ。
ふざけんなこんなの無理だろバカがどうすんだよ殺すぞとか思いつつも、どうにか条件を達成した俺は、14歳にしてようやく映画撮影ができるようになった。
作品は俺がコンクールで入賞した内容で作ると決めていた。それなりに愛着があったからだ。そもそもそれ以外に選択肢がなかったというのもあるが。
とはいえ、子供の撮影に協力してくれる奴なんかそうそういないってことでそこらへんは爺さんが色々やってくれた。サンキューじぃじ、愛してるぜ。
そうしてなんやかんやあって人は集まったんだが、ソイツらは一癖も二癖もある連中だった。駄作に名前は残さねぇとかのたまうヒゲ野郎に常人じゃ理解できないこと喋る爺さんとこの演者だとか、ハッキリ言ってまとめられる気がしなかった。
他の奴らも、失敗が見えてるとでもいいたいのか、やる気がなさすぎた。それじゃ失敗は目に見えてるってことで、俺はどうにかナメられない方法はないかと考えたんだ。そこで俺の天才的な脳は遂に答えを導きだした。
何を考えているか全部見通せるってことにしたらいいんだって。
俺には工藤新一という名の黒歴史があった。奴になりきろうとして、推理力やその他諸々を鍛えまくった過去があった。それらをフル活用した俺は、なんとか演者を従えて、一本のネット映画を作ることができた。
できた映画は最後爺さんのチェックが入って、そのままネットに流された。そのとき俺は疲労で頭が働いてなかった。だから気づかなかったんだ。俺の犯した致命的なミスに。
結論から言えばその映画は瞬く間に人気になった。
俺は当初の予定通り期待の天才少年監督として有名になる。そう、シナリオから脚本まで一人で手掛けた天才少年
エドガー・コナンとして。
俺は引退を決意した。
俺は自分で映画を撮ることをやめ、中学卒業までは爺さんの手伝いをするのみになった。そして卒業、進学とともに実家で一人暮らしをはじめた。
高校に進学してからは劇団に行くこともなくなり、労働から解放され俺は自由の身になって今に至る。ビバ自由!!ビバありあまる時間!!
引退当初は周りから色々言われることもあったが3年も経てばそういうのもなくなる。エドガー・コナンは闇に葬り去られたのだ。
現在高2の俺は定期的に来る幼なじみのコールを適当に受け流しながら級友と談笑したりして、一般高校生らしい生活を送っている。幸せだ。誰も俺の道を阻むことはできなかったようだな。
そんな気持ち悪いことを考え、ニヤニヤしながら今現在、俺は一人机に向かっていた。周りには誰もいない。たった一人で強大な敵を前にして立ち竦んでいる。
進路選択の紙だ。俺だけ出してなかったらしい。
他のやつは出してるからお前も書いてもってこいと担任に告げられた俺は、放課後一人こうして進路を考えているという訳だ。
ぶっちゃけやりたいこととか何もない。将来の夢とか特に思い浮かばないまま生活してきた俺にはこれはどんな難事件よりも難解だった。この問題に比べれば、好きな女の心を正確に読み取ることなんて赤子の手をひねるよりも簡単なはずだ。出来たことないから分からんけど。
結局色々考えてみたがピンとくるものは何一つなかった。
頭に浮かんでくるのは今まで経験してきたモノばかり。
芸能界?あんなブラック企業にも劣らないとこ誰が選ぶか!映画作りも重圧でストレスハンパなかったし超つまんなかったし疲れるだけだったわ!
え?探偵?ちょっと何言ってるかよくわからないです。
あーあーせっかく忘れてたのにー!!高校ではみんな工藤新一のこと知らないから平和だったのにー!!
ふぅ、落ち着いた。なんか面倒になってきたし帰るか。
時間を無駄に消費して自問自答を繰り返すのはもういいや。
俺は立ち上がると進路用紙を無造作にカバンにぶち込んで、意気揚々と我が家に向かって歩き出した。
30分後
「私の家族になにするの?事と次第によっては……」
「待つんだ見知らぬ少女!まずは落ち着いてその手に持ったスマホから手を離すんだッ!!場合によっては路上の真ん中で見るに堪えない土下座を見ることになるッ!!!」
俺は謎の女にドロップキックをかまされ、踏みつけられていた。
バーロー!!ホント、どうしてこうなった!?
演者にいうことを聞かせた方法
「〇〇さん、あなたは、さっきレストラン『コロンボ』から帰ってきましたね!!それも、かなり急いで!!そして、次にあなたは「ど、どうしてそれを!!」と言う!」
「ど、どうしてそれを!!……ハッ!?」
(((コイツ、ただ者じゃあない!!とんでもない凄みだ、まさか、全部見通しているとでもいうのか…ッ!?)))
超簡単にしたらこんな感じ
デスアイランド主人公蚊帳の外なんですけど、他者視点で書いたほうがいい?
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YES!YES!YES!
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NO!NO!NO!