自分のことを工藤新一だと信じて疑わなかったヤツ(黒歴史)   作:はごろも282

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感想欄に読解力SSがたくさん現れて震えました。自分でも適切に表現できなくてモヤモヤしていたのをスッと説明されて「もう君が続き書いてよ(褒め言葉)」ってなったけど今日も僕は元気です。


自分を工藤新一だと思い込んでいた人による6話

「ど、どうしよう先輩!私殺されるかもしれない!」

 

 どうしよう、後輩がコナン世界に行ったかもしれない。

 

「とりあえず周りを見ろ。コナンもしくは少年探偵団はいるか?ソイツらがいるなら間違いなく殺されるから諦めろ。怪盗キッドがいる場合はほとんど死なないから全力で探せ」

 

「なんの話してるの!?」

 

「はぁ?殺人事件が起きるときの対処法に決まってるだろ。そうだ。自分以外が死んだとき用にコナンたちには媚を売っておけ。やりすぎると怪しまれるけど」

 

「真剣に聞いてくれる!?」

 

 真剣に聞いてるだろ。お前も遂にそういう時期になったんだよな。弟妹の世話は俺も手伝ってやるから早めに直せよ?

 

 仕方ない。とりあえず話だけでも聞いてやるか。

 

「で、お前が本当に殺されるとして、お前誰に何やらかしたんだよ?」

 

「台本が、台本が頭に入ってこないの!」

 

 知らねーよバーロー。台本が覚えられなくて殺されるわけねーだろ。

 

「ソレが関係あるのか?」

 

「さっき武光くんに、巌さんには気をつけろって言われたの。身の危険を感じたら逃げろとも。もしかしたら私明日死ぬかもしれないわ」

 

 ジジイのことなんだと思ってんのお前。流石に可哀想だぞソレ。

 ……いや、そうでもないな。あの暴虐無道なハゲ野郎には丁度いい評価かもしれない。

 

「武光ってヤツは知らないがジジイには気をつけたほうがいいのは正解だ。顔面以外ならどこ殴ってもいいと思ってる節があるような男だ。ほら、顔面セーフって言うだろ?」

 

「顔面セーフって顔面以外ならセーフって意味じゃないけど!?」

 

 じゃあ顔面だからセーフってことか?流石にアウトだろ顔面は。セーフの要因どこにもないぞ。

 

「ま、大丈夫だって。多分お前より先に亀さんが死ぬだろうから。それから考えればいい」

 

「それも大丈夫じゃないわ!?えっちょっ……」

 

 通話を切ってやった。俺も明日から面倒な仕事に参加させられるんだ。明日に備えて早く寝る必要があるって夜凪もわかってくれるよな?

 

 俺はSwitchの電源を入れた。ソラ参戦に備えて身体を馴染ませて置かなければ。

 

 

 

「……す、すいません。サボるつもりはホントになかったんです。久しぶりすぎて頭に入ってなかったんです。でも頑張りますから痛くしないでください」

 

「似たようなのがさっきもいたぞ。オマエら揃って俺のことなんだと思ってやがる」

 

 翌日、当然のごとく寝坊した。別に特大遅刻というわけではないが、謝罪しなければ何されるかわかったもんじゃない。

 

「別にまだお前の仕事には関わってこねぇから構いやしねぇよ。お前も今日は見学だ。久しぶりだろうから頭に詰め直しとけ」

 

 お前も?ってコトは夜凪もだろうか?アイツ昨日台本読み込んでたのに。

 

「亀テメェ何回言わせんだ!頭要らねぇんなら千切るぞコラ!」

 

「ちょ巌さんホント危ないって!死ぬからマジで!?」

 

 久しぶりに杖が飛んでいく風景を見た。新鮮だ、昔はコレが日常だったんだからな。神経を疑う。

 

 え?いま杖刺さったよね壁に。ウソ、そんなことある?殺傷性上がってるんだけど。杖で銃弾と同じ殺人現場作れるじゃん。完全犯罪成立でしょこんなの。

 

 見学をしている夜凪の方まで行く。夜凪は俺を見ると安心したようにコチラに駆け寄ってきた。心細かったのかお前かわいいな。

 

「せ、先輩。先輩の言うとおりだわ。あのメガネの人殺されるかも」

 

「あぁ、俺も半分冗談だったが杖の威力が上がってる。コレは本当に殺人事件が起きるかもしれない」

 

 なんていう話も交えながら見学すること数時間。全体的にレベルが上がってることがよく分かった。七生さんとか亀さんとか俺がいたときより2ステップくらい上にいる。

 まぁ、これくらいなら問題ないが。少なくとも練習で足を引っ張ることはないだろう。助監督なんてそれほどやることもないし。ココでは。

 

「よし!お前ら、ちょっとこい!」

 

 ジジイの呼び出しだ。

 

「夜凪、ココで喜怒哀楽の表現やってみろ」

 

「えっ?えっと……これが喜」

 

 夜凪の喜怒哀楽表現が始まった。お前ビックリするくらい表現の幅ちっさいな!?

 

「そしてコレが楽!!」

 

 ピスピス!とダブルピースでニコニコの夜凪。超絶かわいい。でも失格です。

 

「巌さん。コイツにはそれ投げないんスか?ふざけてますよ」

 

「ふざけてない!真剣です!!ねぇ先輩!?」

 

「正直とてもかわ何でもありません」

 

 ここで俺にパスすんなよお前ビックリしちゃうだろ!

 

「ったく、一旦見学させた意味がねぇな。察しが悪すぎる。亀、もう一度見せてやれ」

 

「うィす。よーく見とけよこの和製ジムキャリーの演技をなぁ?」

 

 今度は亀さんの喜怒哀楽らしい。この人も演技はスゴいからなぁ……。

 

「ハイ喜ィ!」

 

 身体全体を使った大げさな表現だ。だがさっきの夜凪と比べれば雲泥の差だ。夜凪に教えるという点で言えば100点だろう。そのまま怒と哀も繋げていく。

 

「そしてコレが!!え、エクスタシィ〜

「亀テメェそこに直れ」

 

 汚い(直球)

 

 完全にイッてるだろコレ。R18指定の顔してるぞ。非合法でトンでるだろこんなん。

 

「えぇ!?伝わんなかったっスか!?喜怒哀楽の楽!!」

 

「間違ったほうに伝わってんの。訴えるよアンタ。シンもなんか言ってやんな」

 

 爺さんにシメられてる亀さんを眺めていると、七生さんから発言を求められた。別に言いたいこととかないんだけど……。

 

「童貞のくせになんであんな演技できるんスか?」

「お前あんまバカにすんなよ!?言い方悪すぎだろ!?」

 

 あんな事後みたいな顔を童貞ができるわけないだろ。経験もないんだから。

 

「だいたい夜凪に教えるって名目なんだからそんなのされても真似させ……ハッ!!」

 

 瞬間、天才的なことを思いついた。

 

「亀さん!さっきの楽、もっかいやって!!」

 

「はぁ?いいけど、お前なにしようとしてんの?」

 

 なんだアンタ分かっててやったんじゃねーのか?仕方ない、教えてやるよ!

 

「アンタの放送コードギリギリアウトの楽は、アンタがやってるから吐き気を催すほど汚いものになったんだ!」

 

「お前ホント少しは言葉を包めよ!本人に言うかそれ!?」

 

 うるせー!そんなこと今はいいんだよ黙って聞いてろ!

 

「そこで、だ。もしアンタの楽を夜凪にさせられるなら、それはもう擬似的なイキガフゥッッ!!」

 

「シン!?畜生任せとけ!お前の願いは俺がかならイタイイタイ!!巌さんそれ以上いけない!!」

 

 腹に大砲でも食らったのかってレベルの衝撃がぁ……っ。

 

「七生、ソイツそのままシバいとけ。俺はコイツで手が離せねぇ」

 

「任せといて。二度とふざけたこと言えない身体にしておくから。オラ、さっさと起きろセクハラ野郎」

 

 畜生!亀さんより俺の方が罰がキツイのはなんでなんだ!!

 

 二時間後、意識を取り戻した俺は五体満足だったことに泣いて喜んだ。

 

 

 

 アレから無事生還を果たした俺は、夜凪と一緒に帰っていた。

 

「あんまり近寄らないでくれるセクハラ男」

「辛辣すぎないか?未遂だったんだからセーフだろ」

「どうしてそんなに堂々とできるの!?」

 

 いや、悪いとは思ってるんだけどさぁ。なんか夜凪への対応が千世子と話してるときに近づいてきてるんだよな。コイツなら大丈夫だと思って結構攻めた発言をしてしまう。

 

「そもそも本気でやる気はなかったからな。俺がそんなコトさせるような男に見えるか?冗談に決まってるだろ」

 

 2割くらい。

 

「……本当かしら。先輩なら結構本気で言っててもおかしくないと思うけど」

 

「ハッ!俺にセクハラされたいならもっと自分を磨くんだな。具体的には色気を出せ。秒で惚れる自信がある」

 

「やだこの人何でそんなに強気なの?しかもチョロすぎない?」

 

 黙れ。俺は可愛くて色気がある人が好みだ。もっと言えば俺のことが好きな人が好みだ。でも料理を作れる人じゃないと嫌だ。

 

「あ、そうだ。今日食べてくからよろしく」

「唐突!?雪ちゃん達もいるから別にいいけど」

 

 やったぜ。コレでお前の俺にした行いは許してやろう。感謝するんだな。

 

 

 

 夕食も作ってもらい美味しく頂いた後、俺はまだ夜凪家に滞在していた。すぐ帰っても良かったんだが流石にソレはどうなんだと俺の良心が訴えていたのもあり、今はルイたちの遊び相手をしていた。

 

「頭ではわかってるの。阿良也くんの演技は大げさなのにリアル。動作から感情が伝わってくる感じ」

 

 隣では夜凪の演技お悩み相談が始まっていた。ぶっちゃけほとんど聞き流していたが、レイはそっちに行ってしまった。悲しい……。

 ルイは俺と遊ぶもんな?あっち行かないもんな?

 

「だそうだが、江藤。お前から見てどうなんだ?」

 

 急に話をふられてしまった。一体なんのことについての質問なんだ。とりあえず適当に肯定しておこう。

 

「そうだな、俺もそう思う。そういうとこだと思うわ」

「おい、何について話してたか言ってみろ」

 

 しまった。会話を聞いていなかったのがバレたらしい。完璧な肯定だったはずなんだが。

 

「現場にいる人間としてお前も聞いとけ。夜凪だけじゃ情報が偏るかもしれねぇ」

 

 やだよ忘れさせてくれよ。俺だって好きでやってるわけじゃないんだぞ。今だってルイとの交流で忙しいんだぞ。

 

 ルイさんはテレビに夢中だ。俺はどうやら必要ないらしい。大人しく夜凪たちの会話に混ざることにした。レイを捕まえて俺の上に座らせることで仕事への嫌悪感を中和しておくのも忘れない。

 

「で、なんの話?あんま演技については分かんねーぞ?」

 

「エドガー・コナンが分かんねぇわけねぇだろ。夜凪の演技についてだ。見ててなんかあんだろ」

 

「やめろそのエドガー・コナンって!アンタバラしたのまだ許してねぇからな!」

 

「黙れ。いつかバレることだったんだから今更だろうが」

 

 コイツ……!絶対仕返ししてやるからな!社会的に終わるレベルのっ!

 

 レイの頭を撫で回しながら言われたことについて考えてみる。柊さんの方は見ない。エドガー・コナンバレしてからあの人の顔が怖い。何か恨みでもあるのか?

 

「夜凪には言ったけど表現がリアルすぎるんだよ。今日の亀さんを見たらわかるだろ。あれくらいでいいんだよ演技なんて」

 

 ぶっちゃけそれ以外分からない。なんでそうなってるとかも知らない。ちょっと調べればわかるかもだがそこまで踏み込む気もない。

 俺たちは学校の先輩と後輩だからな。あんまり根底まで探る気はないぞ。

 

「でも大袈裟にやればやるほど役に入り込めなくなるの」

 

 あー、そういうタイプね。メソッド演技だからこそ大袈裟な演技はズレてくって事か?

 

「役者にも色んなタイプがいるんだよ。例えば……」

 

 黒山さんがホワイトボードで説明を始める。流石プロだけあって説明が上手だ。

 なるほどね。夜凪は役に深く入りすぎてそのまま戻ってこないのか。コレがジジイの言ってた俺にありえた現象。怖すぎるって。

 

「例えば千世子はお前と真逆。アイツは役の感情を掘り下げるつもりがねぇ上っ面の演技だ。ただし自分の魅せ方をよくわかってる」

 

 千世子についてだ。別にアイツに役を掘り下げるつもりがないワケじゃないぞ。アイツのスタイルにちょっと向いてなかっただけだ。

 

「要するに百城は媚の精度が高すぎて誰が見てもキレイなんだよ。俺から言わせりゃクソだが売れる理由はよくわかる」

 

 媚びとか言うな。言い方悪すぎだろ。仮にも幼なじみなんだし気分は良くないぞ。

 

「ちょっおにーちゃん!イタイ!」

「あ?あっ、ゴメンなレイ!」

 

 気づかぬうちに力が入っていたようだ。痛くしたお詫びにレイを全力で撫で回してやる。キャーッと喜んでいる様子なので俺も気分がいい。

 

「そう考えると阿良也君は景ちゃん寄りだね」

 

 柊さんはそう言うとホワイトボードに何かを描き始めた。多分アラヤだ。ド下手じゃねーかパンチドランカーかよ。

 

 結局のところ阿良也には役の掘り下げを表現する技術があって夜凪にはそれがないってことだ。で、それはみんな忘れてるだけで誰でも出来ることだってワケ。

 

「あー!!ちょみんな静かに!!」

「お前が一番うるせーよ」

 

 夜凪が詳しく聞こうとしたときだった。ルイが大声をだした。どうやらテレビで何かあったらしい。一体何が……?

 

 〘星アキラ熱愛発覚か!?明神阿良也の舞台挨拶に現れたアキラさんですが謎の美少女と……〙

 

 あ?星アキラと写ってんの、夜凪じゃね?

 

「なにしてんの景ちゃん」

「てかお前千世子と行ったんじゃなかったの?」

「オシャレしていってよかったわ……」

「そういう問題じゃないよおねーちゃん……」

 

 柊さん、ヒゲ、夜凪、レイが喋っているが俺の耳には届いていなかった。

 

 星アキラ、スターズのイケメン俳優。ウルトラ仮面役で人気沸騰中。社長の息子。イケメン。

 

「……星、アキラァ……ッ!」

 

 思わず声が漏れる。憎しみで人が殺せたなら……っ!

 

「ど、どうしたの先輩?様子が変よ?」

 

 心配してか夜凪が声をかけてくる。夜凪はたまに頭がイカれるが基本的には良いやつだ。家族のために一生懸命なトコロは好感がもてる。だから今も交友が続いてるんだ。それをあのクソイケメンが……!

 

「クソが!あのイケメン!!一回会えばすぐ手だしやがって!羨ましいなチキショウ!!幼なじみの次は後輩まで持っていきやがったッ!!」

 

「まさか熱愛信じてる!?というか多分千世子ちゃんもそんな関係じゃないわ!?」

 

 おのれイケメンめッ!!夜道には気をつけやがれバーロー!!

 

 

 

「だからウルトラ仮面とは何もないんだってホントに!」

 

「わかってるって、詮索しやしないよ。問い詰めるつもりもないから。ただコレから彼氏動かなくなっても許してくれよ」

 

「何もわかってないって!!というか何するつもり!?」

 

 翌日のことだ。どうやら昨日の熱愛騒動は舞台の宣伝ということになったらしい。もちろんそんな話は知らされてないのでダウト。急遽入ったイレギュラーに違いない。

 

「ハハッ。これから星アキラがここに来るんだろ?待ちきれねぇぜオイ……」

 

「ねえホントに大丈夫なの先輩?目が血走ってるわよ?」

 

「……夜凪、コイツどうしちゃったの?」

 

「分からないの。昨日の報道からずっとこんな感じで……」

 

 七生さんと夜凪が何やら話しているが今はいい。今はどうやってあの下半身野郎を処分するかだ。アイツの演技は努力の跡が見えたから好印象だったがそれもここまでだ。必ずここで仕留めてみせる。

 

「オイオイ新君よぉ!!愛しの夜凪取られて嫉妬してんのかぁ?」

 

 亀さんがダル絡みしてくる。後ろで夜凪のたじろぐ声が聞こえた気がするが気にしてられない。嫉妬してるのか、だって?

 

「してるに決まってんだろバーロー!あのイケメン野郎モテやがって羨ましい!」

 

「……は?」

 

 亀さんはどうしてか俺の慟哭に呆けた顔をしている。アンタは俺の仲間じゃないのか?

 

「俺の幼なじみが千世子なのは知ってるだろ?千世子とアキラは同じ事務所。年も近い。そしてアキラの母はその会社の社長。つまり──」

 

「間違いなく、堕とされてるってことか……ッ!?」

 

 その通りだ。それにそれだけじゃないぞ。

 

「スターズにはほかにも美少女がたくさんいる。それに加えて夜凪だ。コイツも見てくれはいいからな」

 

「あぁ、とんでもねぇ野郎だぜ星アキラ!涼しい顔して特大ハーレム作ってるってのか……?」

 

「そうだよ。そして今日この天球に来るってことは……」

 

「……?何があるっていうんだ?」

 

 ここまで行ってまだわからないのかアンタ!このスタジオに来るってことは──

 

「七生さんも、時間の問題ってことだよッ」

 

「理解したぜシン。協力してアキラをぶっ殺してやろう」

 

「アンタならそう言ってくれるって信じてたぜ亀さん!」

 

 俺たち二人なら、きっとイケメンにだって勝てるさ!!七生さんは俺たちが守る!

 

「す、すごいわ。会ったこともない人間にここまで憎悪を抱けるなんて。もしかしたらお芝居の参考になるかも」

 

「やめときな。それより悪いけど私これから用事できたから。おっきなゴミが二つほど見つかってね。捨ててくるから」

 

 不可視の速攻(ただのシバキ)まで、残り10秒。

 

 

 

「今日からお世話になります!星アキラと言います。舞台は初めてですが精一杯頑張ります!よろしくお願いします!」

 

「「「……」」」

 

 星アキラと劇団天球との初絡みは、とんでもなく空気が悪かった。

 

「テレビで見るよりかわいい顔してる」

「顔だけじゃないといいけどな」

 

 天球とスターズは分かりやすく方針が違う。真逆と言っても差し支えない。当然アキラは歓迎されていなかった。にしてもいびりが怖すぎる。もっと優しくしてやれよ。

 

 さすがのアキラもこの雰囲気は気まずかったようだ。知り合いである夜凪を見つけると表情に明るさが戻った。

 

「ああ、夜凪く──」

「私、ウルトラ仮面さんと熱愛なんてした覚えないわ」

「いやあれはほとんど君のせいじゃ……!」

 

 まるで信じていた人が真犯人であったかのような驚き方だ。彼の中ではとんでもない裏切り行為だったのだろう。

 

「星君。はじめまして、明神阿良也です」

「……初めまして」

 

 周囲に緊張が走る。いったいどうしたというのか。

 

「……やっぱり凄いなキミ。却って珍しいよ。驚くほど何の臭いもない」

 

 私は臭くてなぜアキラ君だけ……という声はいったんスルーする。どうやら阿良也の判定には引っかからなかったらしい。

 

「……あまりいい意味ではなさそうですね」

 

「?別にいいも悪いもないんじゃない?俺はあんまり好きじゃないけど」

 

 のっけから好きじゃない認定を受けたようだ。みんなしてアキラに厳しすぎる。だんだんかわいそうになってきた。もっと優しくしてあげてほしい。

 

「というか、巌さんも好きじゃないと思ってたけど」

「何度も言わせんなよ阿良也」

「俺の配役に口出すな、でしょ?ハイ挨拶終わり」

 

 どうやらもう挨拶は終わったらしい。黙って静観していたがいくら何でも雰囲気が悪すぎる。これじゃ稽古にもならないだろう。

 

「じゃ稽古の続きやるよ夜凪」

 

 嘘だろここから続けんのかよどんな神経してるんだお前。今から俺もアキラと会話しようと思ってたのに。

 

「よし……喜!!「それ癖になるからやめな」

 

 夜凪の演技に爆速でストップがかかった。早すぎるストップ、見逃しちゃったね……。

 

「潜ることを諦めるな。鏡でも見て練習してきたの?」

「うん……沈んでも戻ってくる方法がわからなくて……」

「最悪だ。二度としないでくれ」

「……はい」

 

 目まぐるしく動く事態についていけない。分かるのは、俺がずっと見ていたアキラの様子が変わったということだけ。どうやら覚悟が決まったらしい。

 

「僕が、皆さんにどう思われているかはわかっているつもりです。でも、きっと皆さんに認められる芝居をするつもりです。よろしくお願いします」

 

 ついさっき同じような自己紹介をしていたが、さっきとは言葉にかける重みが違っていた。

 

「青臭さもかっけぇのズルいよなイケメンって」

 

 亀さんの発言には同意する。たまに見る芝居に感じる形跡からも薄々思っていたが、コイツは面白そうだ。

 ゆっくりとアキラに近づいていく。挨拶を済ませていないからな。

 

「俺は江藤新、よろしくな。といっても、俺は演者じゃないけどね」

「……?よろしくお願いします」

 

 困惑しているようだが律儀に挨拶を返してくれた。いい奴だ。熱愛とかがなかったらもっと好印象だった。

 ただ、仕事の時はそういうのは置いておこう。

 

「じゃあ何なんだって顔してるな。俺の仕事は補佐。巌裕次郎の補佐だよ。演出家としての名前もあるにはあるけど知らなくていい」

 

 恥ずかしいからな。エドガー・コナンは消し去りたい過去だ。そのうちバレるだろうが俺の口からは言いたくない。

 

「ジジイが俺を呼んだ理由はまだ理解できないけど、アンタがいるなら少しやる気が湧いてきた」

 

 バックレ決めた奴が何言ってんだって話だけど、俺は弟子だった時からずっと。

 

 死ぬ気で努力する奴らを磨き上げることが、演出家としての本懐だと思っている。




たまに投稿で見かける〇〇杯ってアレなんなんスか?公式が主導でなんかやってんスか?どっかに書いてあったり?教えてエロい人!


あとアンケートに他意はありません。しいて言うなら今後の参考です。

一番不快になる表現

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