自分のことを工藤新一だと信じて疑わなかったヤツ(黒歴史) 作:はごろも282
「……何やってんの?」
自宅にて。パソコンとにらめっこしていた俺は、不意に背後から聞こえたそんな台詞で我に返った。
「千世子か。人の部屋に勝手に入るクセどうにかしたほうがいいぞ」
「君もインターホンに応答するクセつけたほうがいいよ」
売り言葉に買い言葉。家の主である俺よりもデカい態度なのはどうなんだろう。お前は不法侵入なんだからな。
「それで、何をそんなに必死に見てたの?」
「わ、わわっ!見るなって!」
身を乗り出す千世子に慌てて画面を隠そうとするも、千世子の俊敏な動きによって瞬く間に俺の動きは抑えられてしまう。
「えーっと、なになに……?エドガー・コナンを語る──なにこれ掲示板?」
千世子の声色ご疑問が滲んでいたものから困惑混じりに変わる。
クソっだから見られたくなかったのに!自分のこと調べてるのを知られたいヤツがいるか!このデリカシーなし女!と、とりあえず深く見られる前に話題を変えねば……!
「あ、アレだよ。なんかたまたま見つけたから好奇心で……」
「ふーん。あんまり好奇心で見るものじゃないけどね。って、なにか書き込もうとしてたの?」
どうしてこの女はいつも気づいてほしくないことだけは気づくんだ。もしかして嫌がらせなのか?
必死の抵抗も虚しく片手間で身柄を拘束された俺をおいて、千世子が再度パソコンを覗き込む。
「『エドガー・コナンエアプか?彼は本物の天才だし容姿も整ってるらしいし彼女もいるっぽいし正真正銘17歳だしなにより江戸川コナンとは無関係だよ』……え、自演?」
いけない。千世子の声が本気で引いてるときのトーンだ。
「そ、それで今日は何の用だって?」
「えぇ……。無理があるよ今その方向展開は」
「ふっ、バーロー……」
「強引すぎない?もうそれでいいよ」
千世子の良いところは自分から折れてくれるところだ。これが夜凪だとあと5分はかかる。
「まあいいけどさ。自演とかダサいよ?」
「もうしない。今日だってたまたま見かけてレスバしてただけだし」
「レスバ!?未遂じゃないの!?」
驚くようなことじゃないだろ。千世子が登場したタイミングがちょうどコメントしようとした時だった方がレアだろう。
と、そんなことはいいんだ。さっさと話を戻そう。
「で、何のようだ?」
「何のようじゃないよ。舞台も終わって暇になったんだよね?」
……?確かに時間はできたけど、それが一体どうしたんだろう?
「エドガー監督、復帰するらしいね」
「……あ」
「私、なにも聞いてないなぁ」
そういえば、もともと千世子の一声で復帰するかどうか悩まされてるところだったような。
必死に過去の記憶を探る。あれは確か屋形船での会食前のことだ。唐突に訪問してきた千世子がなんやかんやでエドガー・コナンとして復帰するように迫ってきたことがあった。当然ながら一度はその願いを跳ね除けたが『私を題材にして私を主演に据えないのはどうなの?』と至極正論をぶつけられてしまい絶体絶命。
結局自分の意志ではないとはいえ、こうしてなんの報告もなく俺は復帰している現状は、千世子にとってみれば文句の一つも言いたくなってもおかしくはない。
「あ、ああ!それは理由があるんだ!」
まずいぞ。どうにかして適当なことでっち上げないと……。
こういうときの千世子は面倒なんだ。結構尾を引くからな。昔のことだが、千世子とのかくれんぼの途中で帰ったときなんかは本当に大変だった。
「へぇ。どんな理由なのかな?」
もちろん、本心であれば『忘れてた』の一言だ。
しかし、そんな正直な返答は求めていない。今必要なのは窮地を脱する詭弁なのだ。
「あー、えーと、その……」
考えろ、まずは何でもいいから言葉にしなくちゃはじまらない!
「い、言えなかったんだ!」
ほう、そう来るのか俺の脳は。我ながら無計画だな。今のところ自分の脳には落胆しかない。
「……へぇ?」
千世子の顔に笑みが刻まれる。天使の名にふさわしい美しい笑みのはずなのに、どうしてだろう。俺の身体が震えている。
「俺だってお前に最初に言うつもりだった。本当だ」
おかしい。これじゃ懺悔じゃないか。新一が蘭を誤魔化すときもこんな気持ちなのかもしれない。こんなところで初発見だ。
「でも、実際は違うもん。口ではなんとでも言えるよね」
「──あ、天知心一!」
口から飛び出したのは、思わぬ人物の名前だった。
「デコでキャラ付け必死な男だ。俺になんの連絡もなく公表したんだよあの人」
「天知さん?いくらあの人でもそんなことしないよ。常識的に考えてさ」
まずい。事実と違わないはずなのに千世子の言い分が本当にその通りだから反論の余地がない。
だが、言ってしまった以上は貫き通すしかない。ここからどうにか巻き返すんだ。
「知らないのか?天知心一といえば金の為なら何でもする犯罪者みたいな思考の男で、職と面次第じゃ手錠待ったなしのイカれた詐欺師だぜ」
「シンくんって天知さんに恨みでもある?」
まさか。勝手に記事にされたことを怒ってたりなんてするはずがない。ただデコの黒子はヤスリとかで取れたりするのか気になっているだけのことだ。叶うなら是非とも試させてもらいたい。
「とにかく、俺にも想定外のことだったんだよ。第一、エドガー・コナンとして復帰するつもりなんてサラサラなかったし」
「待ってソレ聞いてない。どういうこと?」
どういうことって言うのはいったいどういう意味なのか。言葉通りの意味でしかないけど。
「その理解できないみたいな顔やめてくれるかな?じゃあなに、復帰するつもりとかなかった感じ?」
ああ。そういうことか。確かに話だけ聞けばそう捉えるのも無理はない。よし、ちょうどいい機会だし、少しからかってやるか。
「少なくとも、エドガー・コナンが復帰する予定はなかったのは確かだな」
「……なにその含みある言い方」
「含んでると感じるのはオメーの主観でしかねーよ」
「うわなつかしっ。久々だねその喋り方と小難しい言い回し」
やめろ冷静に分析とかするんじゃねーよバーロー。こっちがただただ恥ずかしくなるじゃねーか。
「んんっ!俺には業界に戻る意志はあった。これに嘘はない」
「数秒前と矛盾してるよ。いよいよ本格的にバカになった?」
「オイ失礼だぞ中卒低学歴」
「どっちが!?」
別に俳優に学歴とか関係ないもん……と口を尖らせるバカは無視する。
「つまりだな。俺はエドガー・コナンじゃなくて別の名前でやり直すつもりだったんだよ。エドガー・コナンの顔を知ってる人もそういないからな」
「……それってできるものなの?」
知らない。できないかもしれない。できなかったら復帰しないつもりだったから関係なかったし。もしできるなら強くてニューゲームだ。もうこれほぼ異世界転生だろ。
「というか、そんなんじゃデビュー作リメイクできないじゃん。意味ないよそんなの」
うっ。それを言われると耳が痛い。こいつは自分を主役に据えて作品のやり直しが目的だと前から言っていたからな。俺のプランではそれが叶わないことにすぐに気がつくと思っていた。
「でも、それでも……!こんな不名誉な芸名……!!」
「せ、切実すぎる……」
当たり前だバーロー。こんな、ただでさえ目をそらしたい現実と肩組んで歩くなんて耐えられるわけがない。ニュースのタイミングも重なって既にもうレッドカーペットじゃねーか。どんな顔して外出ればいいんだよ俺。
「まあ結局エドガー・コナンなわけだからいいや。結果オーライってね」
「オメーからしたらそうかもしれねーけどな……」
ニヤついてんじゃねーよ。なに笑ってんだ。
「でもさ、実際こんなことになって大変なんじゃない?」
シンくんと夜凪さんはさ。なんて続く千世子の台詞に思わずため息が出てしまう。
「そうなんだよな。俺は特にフリーだからな。今は天球に連絡がいってるらしい」
七生さんがさっさとどうにかしろってブチギレてた。詰められたときは正直財布出す寸前だった。
そう、舞台『銀河鉄道の夜』はトラブルもなく全日程を終えた。舞台は全日満席となり好評。そのため、主演を務めた夜凪景の知名度は著しく向上し、そのついでにエドガー・コナンも再びその忌々しき名を聞くようになった。一般的には夜凪の方が注目されているのがせめてもの救いだろう。
「所属はどうするの?やっぱり巌裕次郎を継ぐ?」
「うーん、それはないな。あの人の劇団はあの人のだし、教え子がどうにかしていくものだろそういうのって」
「シンくんだって教え子じゃん。演出家としては唯一の」
「だとしてもさ。一度離れた時点で終わってるんだよそういうのは」
もともと団員のつもりなんてなかったし。天球は巌裕次郎の劇団で、俺は巌裕次郎に師事していた。そしてその師事も自分から願ったものではない。改めて考えると俺ってその場の空気に流されすぎじゃないか?
「第一、頑固ジジイの中古なんてこっちから願い下げだね」
「言い方が終わってるよこの人格破綻者」
お前こそ幼馴染にむかってなんて言い草だ。
「んー、じゃあさ。うち来る?」
……うちっていうのは千世子やアキラの所属するスターズみたいなものだろうか。それっていわゆるスカウトってやつなんじゃないか?そうだとするならそんな「今日暇?」みたいなノリで尋ねてくるのは間違っていると思う。
「悪い話じゃないと思うよ?私は勿論、アキラ君もいるし」
どうかな?といいつつ顔を覗き込んでくる千世子。相変わらずの整った顔立ちだ。分かっててやってるであろうことが質の悪さを際立たせる。この顔面エンジェル内面ベルゼブブめ。ベルモットでもお前をエンジェルと呼ぶことはないだろうぜ。
それにしてもスターズか……。確かに知人がいるのは心強い。千世子の目的からしても活動の距離が近くなるということはメリットのある話だし、社長の星アリサも実力を評価する人っぽい。一見するといいことばかりだ。
「いや、やめとくわ」
しかし、俺レベルになるとだまされることはない。一度話しただけでなんとなくわかる。星アリサ、あの人は平気でとんでもない仕事を回してくるタイプだ。『できるわよね?』とかやってくるに違いない。
ちなみに千世子にもこの傾向はみられる。*1無意識に理想を押し付けるのは人間の弱さだ。愚かな人間、やはり滅びねばならぬ……。
「ならどうするの?もしかしてだけど──夜凪さんのとこ?」
探るように千世子が聞いてくる。確かに天球でもスターズでも無いとなればそう考えるのも分からなくもない。というかそれほど重要なことなのかこの問題って。
まあ、夜凪の名前を出した瞬間微妙に千世子の雰囲気が変わったような気もするし、コイツにとっては大事なことなのかもしれない。
「夜凪のトコでもないよ。一旦はフリーで考えてる」
気になっているようだから簡潔に答えも教える。今言ったように、俺はどこかに所属するつもりはない。演出家ってのはフリーランスだって結構いるし、別におかしなことでもないしな。千世子の言うように事務所に所属する人もいるがどっちかというとそれは例外だったりする。
そもそもの話、俺の師匠ヅラしていた巌裕次郎は舞台演出家でエドガー・コナンがやったのは映画監督だからな。自分で言ってても何やってんのか分からないくらいには複雑なことになってるのは否めない。
「ふーん……フリーの理由とかってあるの?」
「……今日はやけにしつこいな。どうしたんだ?」
「そう?久々の会話だし、こうして役者と演出家として話すのって初めてじゃん?なんか新鮮なのかも」
確かに、俺が演出家として千世子と顔を合わせるのは初かもしれない。脱走前はエドガー・コナンのことは隠してたし、舞台練習のときはあくまで補佐だったわけだから。そう考えるとおかしなことでもない、のか?
……まあいいか。ここは流されておこう。無理に角を立てる必要もない。えーと、フリーの理由だったか?
「大した理由があるわけじゃないけど、事務所とか責任がついて回りそうで面倒だし」
「本当に大した理由じゃないねこの社会不適合者」
「正直事務所とかで先輩のご機嫌とるのとかダルいっていうか……」
「仮にも事務所の顔相手にとんでもないこと言ってるよ君」
「あと単純にそのうち自分でスタジオつくるつもりだし」
「今言う!?最初に言うことだよねそれ!?」
えぇ……。そんなに驚くことか?よくある話じゃないかこういうのって。
「な、なんでまた個人事務所なんか……」
個人事務所をつくる理由か。まあ、色々思い浮かびはするがあえて言うのであれば──
「──約束したからな」
宣言しちゃったからな。ジジイを超えるって。これで達成できなかったなんて俺のプライドが許さない。
「……そっか。なんか懐かしいな」
「ん?」
何故か千世子から感じる優しげな笑み。なんだこの、我が子の成長を微笑ましく見守るかのような生暖かい視線は。
「シンくん、横顔が昔に戻ったみたい」
「今世紀最大の誹謗中傷だぞ!?」
笑顔でなんて酷いこと言うんだこの幼馴染は。こんなひどい台詞、俺じゃなかったら耐えられてないぞ。言葉は刃物だってコナン君も言ってただろう。
「というかお前のその横顔って単語も久々だけどな。人の顔盗み見る趣味は健在なのか」
「言い方。まったく、小さいときは認めてくれたのにさ」
「別に今も否定してないだろ」
かといって理解もしていないが。そういうもんだと受け入れているだけで。
情けねーが、人の無防備の横顔が好きなんてニッチな性癖はどんなに筋道立てて説明されてもわからねーんだ……。
「でも、ちょっとくやしいな」
スッと俺から背を向けながら、ふいに千世子がそう切り出した。
「……なにがだよ?」
「その横顔は、私が取り戻すつもりだったのに」
その台詞に、思考が真っ白になった。
「知ってる?私が役者をはじめるきっかけなんだよ?それって」
だから、ちょっとだけ巌さんに嫉妬、なんて少し寂しげに言う千世子を意識する余裕もない。
そんなことははじめて聞いた。役者は千世子がなりたいからなったんだと思っていた。いや、それが正しいんだろうけど、俺がキッカケの一端であるなんて思ってもいなかった。
千世子が役者になると俺に打ち明けたときのことはよく覚えている。忘れようにも忘れられない。あれがエドガー・コナンの原点だからだ。
「――俺はさ」
「うん、なに?」
「俺は……いや、なんでもない」
「なにそれ。いいところで話終わるのやめなよ。逆に気になるじゃん」
「男は謎が多いほうがモテるんだ」
「なにその胡散臭いブログに書かれてそうな台詞」
突然の出来事にまとまりのない思考のまま喋ろうとして、結局なにも出てこなかった。なんとなく、今なにを言っても本心は伝わらない気がした。
「にしても、そんな事考えてたんだな。全然知らなかったよ」
いやホントに。そんな素振り一切見せなかったよな。エドガー・コナン関連にも舞台練習の時まで触れなかったし、コイツの忍耐力どうなってるんだ?
「ふふん、前にも言ったはずだよ」
千世子はそこで言葉を区切ると、背を向けたまま少しだけ振り向くとこう言った。
「It's a big secret……I can't tell you…… A secret makes a woman woman. キミには難しかったかな、探偵さん?」
からかうように笑う彼女に、あの日の光景が重なった。
☆
「それで、話がそれちゃったけど個人事務所の話だったよね」
フリーズしている俺をよそに千世子がそう言った。俺にとっては今の話がメインくらいの衝撃の連続だったが、千世子にとっては脱線らしい。
「スカウトする子とかは目星つけてるの?」
「いや全然。気がはやすぎるだろ流石に」
そのうちっつってんだろうが。滅茶苦茶先の話だしお前にしか話してねーんだぞコレ。
「へー。じゃあその時最初の役者は私ね」
「やっぱお前って頭おかしいんじゃねーの?」
バカなんじゃないかコイツ。設立と同時に潰れるわそんなの。自分の立ち位置分かってんのか。
「おま、スターズがそんなに嫌なのか?」
「全然。むしろすごく気に入ってる」
「なんなのもう怖いよ俺お前のこと」
同じ言語を話してるのかすら怪しくなる。未知の生命体を相手してるような気分だ。
「まあそれはいいじゃん。先のことなんだし」
「いいわけねーだろ俺のスタジオ始まる前から倒産の危機迫ってるんだぞ!?」
「実力で示せばいいじゃん。自信ないんだ?」
「は?甘く見んなよこの日本映画の救世主をよー!?」
「じゃあいいじゃん」
あれ……?もしかして今すごく軽やかに致命的なことをしなかったか?
「ところでさ、シンくんのことは聞いたけど夜凪さんは?あれだけの舞台だったし、オファーとか引っ張りだこなんじゃない?」
「あ、ああ。夜凪なら今は仕事全部断ってるらしいぞ」
「え!?どうして!?」
「知らねーよ。アイツの事務所の方針だろ」
俺が全部知ってるわけがないだろ。いちいち聞くつもりもないし。聞いたって教えてくれねーだろうしな。
「うーん。どうしてだろう?役者のメンタルのため?でも夜凪さんはお芝居大好きってタイプだし……」
「別にいいだろなんだって」
「でも気になるじゃん。だって期待の新星だよ?シンくん本当になにも知らないの?」
「だから知らねーって」
千世子のヤツ、夜凪のことを随分気にしてるな。すげー意識してるじゃん。うーん、これ以上聞かれるのも面倒だな……。
「黒山サンだってバカじゃないんだし、何か理由があるんだろ」
「その理由が気になるんじゃん」
「考えてみろ。この状況、アイツのスタジオにとってチャンスなのは疑いようのない事実だ。いくら夜凪のセンスが化け物だからって人の目に触れるのは波に乗ってる今が絶好の機会だし。なのに敢えてすべてのオファーを断って業界から距離を置かせてるってことは──」
「そうしなきゃいけない理由がある?」
「まあそんなとこだろ。ハイこの話終わり!」
コレでコイツも満足だろう。難しそうな顔してるが俺のもう話すことはないという意思が伝わったようだ。これ以上聞いてくる素振りもない。
夜凪がオファーを受けさせてもらえない理由なんて推理するまでもなく想像がつくが、そう簡単に人に教えていいわけがないしな。
「まあでも、ちょうどいいんじゃないか?リフレッシュになって。うちの高校そろそろ文化祭だし」
「へー、そうなんだ。じゃあシンくんもそれでインタビューとか断ってるの?」
「いや、別にそれは関係ないけど」
インタビューとかはただ面倒なだけだ。顔出し怖いよぉ……。
「さっさと顔出しちゃいなよ。一回出したら慣れちゃうから」
「危ないことやってるヤツは皆そういうんだ。くっせめてエドガー・コナンなんて名前じゃなければ……!」
「どこまでも足を引っ張るなぁその名前」
ホントだよ。昔軽いノリで決めた名前がここまで足を引っ張ることになるなんて誰が想像しただろうか。
「でも、そのうち顔も出すさ。逃げ続けられるわけじゃないしな」
どうせ出すならドでかい場所で出してやりたい。カッコよく、それでいて衝撃的に。それまでは大事にしておきたいところである。
「あんまりグダグダしてたら私が出しちゃうからね。幼馴染ですって」
「新手の脅迫はよせ。自爆テロだぞもはや」
コイツは本当に危機管理能力が終わっている節があるな。
ただでさえ俺は毎回お前の横を歩くときはビビってるんだ。もうね、すでに満身創痍なわけ。お前らの距離の近さでどれだけ俺が勘違いしそうになってるのか分かってるのか。鋼の意思でそういうのから目をそらし続けた俺を誰か褒めてくれ。10代でこれとか勲章レベルじゃないか?
人知れず自分の偉大さを噛みしめている俺をよそに、千世子が何かを思い出したかのように「ああそうだ」と呟いた。
「当初の目的を忘れるとこだったよ」
「目的?」
まだ何かあるのか?いったい今度はなんだって──
「シンくん。暇になったんだよね。デート行こ?」
じ、地雷が自分から突っ込んできた……!?
いくぞ。息抜き、H(ell)!
一年越しに、ようやく息抜きに入ります。数話かかるとして
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