自分のことを工藤新一だと信じて疑わなかったヤツ(黒歴史)   作:はごろも282

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デスアイランドの千世子ちゃんは内心ドロドロしてそうで健康にいい


デスアイランド事件 前編

事件は突然だった。修学旅行中の24名の生徒を乗せた飛行機が嵐に遭い海に落ちた。無人島の浜辺で目を覚ました12名の生徒たちの傍らには海に流されたはずの各々のスマホがあり、無人島にあるはずのないWi-Fiが繋がっていた。

 しかしなぜかすべてのアプリは起動せず、島外への連絡手段は皆無。唯一起動するアプリはインストールした覚えのないものだった。

 アプリ"デスアイランド"からは定期的に奇妙な指令が下る。理解の及ばない事態の連続に混乱する生徒たちだったが──

 

 今、わたしたちは現場の南の島まで来ていた。撮影が既に始まっていた。今日撮るべきものは着実に消化されている。私は最後だから、暫くは暇だ。カメラの確認でもしておこう。

 

「スタントマンですか?僕自身が演じたほうがアングル誤魔化さなくて済みますよね。やりますけど」

 

 いろいろと見て回ってると、そんな声が聞こえた。アキラくんだ。どうやら次はアキラくんの撮影らしい。

 アキラくんは撮影のシーンが始まると、走って崖を登っていく。頑張るなぁアキラくんは。

 

 スゲーなアキラ!3メートルくらい手使わずに登ってるぞ!

 

 周りがアキラくんをみてそんな声をあげる。私も天使らしく乗っておこうかな。

 隣にいる同じ事務所の町田リカちゃんとタイミングを合わせる。

 茶化すときは雰囲気が大切なんだ。町田さんはよく分かってる。

 

「すごーい!さすがライダー!」

「母親社長だし、イケメンだし完璧〜、結婚した〜い」

 

 うん、オッケー!

 監督の声が聞こえる。

 

「監督!母さんにはちゃんとワイヤー使ったって伝えておいてくださいね。後で怒られる」

 

 アキラくんはそう言った。そこだけ聞くとなんかすごいマザコンっぽいよね君。ほら、町田さんも小声で、ちょっとマザコンっぽいのがなぁって言ってるよ!ていうかふと思ったんだけど、

 

「アキラくんってさ、白馬探に似てるよね。そう思わない?」

 

 金髪だし、お金持ちだしイケメンだし、あとマザコンっぽい。

 私のセリフに、町田さんは苦笑いしながらこう言った。

 

「アンタホントに漫画好きね……特にコナン。確かに言われてみれば似てるけど普通白馬なんてそうそう出てこないわよ?」

 

 失礼な。私は確かに漫画は好きだが別にコナン好きではない。少し人より詳しいだけだ。私が漫画好きになったのは確実に幼なじみの影響だ。しかしコナン好きだと思われているのは心外だ。訂正しておこう。

 

「私が好きなわけじゃないよ。いつも言ってるけど、友達がコナン好きなだけなの。ところで今週の金曜は紅の恋歌(からくれないのラブレター)がやるんだけど、町田さんは録画した?私は勿論したんだけどさ、やっぱり映画は劇場で見たいと思わない?」

「うん、いつも言ってるけどアンタやっぱコナン大好きだよ」

 

 町田さんは若干引いた目でこちらを見ている。おかしい。私が大好きなら、幼なじみは何なんだろうか。工藤新一のなりきりしてたヤツだぞ。

 まあいいや。そろそろ私の撮影だし退散しよう。

 

「そろそろ私出番だし、準備してくるね!今度また二人で映画見に行こっ!」

 

「はいはい、予定が合えばね。撮影頑張ってねー」

 

 彼女は数少ないアニメ映画を見てくれる同業だ。大切にしていきたい。

 

 

 

 

 

「よかった。皆生きてたんだね。生き残ったのは私達だけかと、本当に良かった!大丈夫!?ケガはない?」

 

 身体を完全にコントロールして演出する。カメラの場所はすべて把握しているから、ソレに最適な映り方をするだけでいい。

 

「うっ、うん。私達は大丈夫皆こそ「私達も大丈夫!みんなで協力すればきっとこの島から生きて帰れるよ!」」

 

 カットの声が聞こえる。今日も私の演技はバッチリだ。途中で相手の子がつまっちゃったけど、ソレは私がカバーすれば問題ないよね。演出家要らずの天使は今日も健在です。

 

 今日はコレが最後。撮影一日目は予定より3時間早く終わった。明日はいよいよ夜凪さんの番だ。しっかり見させてもらおう。

 

 

 

 夕方、私はシン君に連絡を入れていた。今日から撮影だということを改めて伝えようと思ったのだ。あのとき伝えたとはいえ、忘れている可能性もゼロじゃない。万が一忘れられていて、虫が死んでいようものなら……いや、まだ死んだわけじゃないんだから落ち着け。

 

 ←            

今日から撮影はじまります        ☆  

百城千世子10秒前

To:自分                ↰︙

 

 ヤッホー! 前言ったから知ってると思うけど、今日から一ヶ月帰れないので餌やりよろしくっ! って言われなくてもわかってるよね? 一日一回あげれば大丈夫だと思うけど、ちゃんとお世話お願いしますっ!あと、前言ってた夜凪さんだけど、私とは仲良くなれそうにないかも。彼女の演技は、私には眩しすぎるからね。じゃ、よろしくね!

 

 

 

 こんな感じでいいだろう。少し弱音を吐いてしまったが今更だ。そもそも前の電話での一件以来、こうして愚痴のようなものの捌け口として彼を使わせてもらっている。役者になるって伝えた日になんでも相談してこいって言ってたもんね?

 

 メールを送信して辺りを歩いていると、海辺の方から声が聞こえた。近づいてみると、夜凪さんたちがなんかやってた。

 

 イヤあれほんと何してるんだろ。デートかな?まあいいや、私は先に戻らせてもらおう。

 帰ろうとしたところで、隠れて覗いている人を見つけた。アキラくんだった。あんなとこでどうしたんだろ。

 

「どうしたのアキラくん?そんなとこで」

 

「ああ、千世子くんか。そこで夜凪くんを見つけてね。何をしているのかわからなかったから話しかけるか迷っていたのさ」

 

「あ、そうなんだ。じゃあ私と一緒だね」

 

 私は話しかける気なんてなかったけどね。

 

「しかし夜凪君、随分印象が変わったな」

 ……へぇ。

「それは、どんなふうに?」

 

 独り言だったのか、急に話しかけられアキラくんは驚いていた。

 

「いや、なんて言えばいいのか。前までの彼女は一人で完結していたように見えたんだ。それこそ周りなんか知らないって具合に。でも、今の彼女は周りを見ようとしてる」

 

 アキラくんからはそう見えているらしい。言ってはなんだがアキラくんにはそういうセンスが欠けている。そんな彼でもそう見えるってことは本当にそうなんだろう。

 

「そうなんだ。それは明日が楽しみだね」

 

「ハハ、明日はウルトラ仮面の撮影があってね。本島まで戻らなきゃいけないんだ。だから僕は彼女の演技は見られないんだよ」

 

「そうなんだ、それは残念。じゃあ明日早いだろうし早く戻ろっか!」

 

 そうして、撮影は二日目を迎える。

 

 

 

「おまえだ!お前のせいでリンが死んだ!お前がアプリの命令を無視したから!!」

 

 目の前で、スターズ二人の撮影が行われていた。このあとは、夜凪さんの撮影に入る。

 

「OK、じゃあ次竜吾くんが和歌月さんに斬られて、ソレを目撃した三人のシーンもらうよ」

 

 きた。見せてもらうよ夜凪さん、あなたの演技。

 

 テスト!という声とともに彼らの演技がはじまる。

 

「リンが死ぬくらいなら、お前が死ねばよかったんだ!」

「やっ、やめっ!うわあああ!!」

 

 流石、スターズ二人の演技は安定してうまい。ここからはオーディション組の三人の演技だ。

 

「キャァァア!」

 

「アンタ達も、コイツとグルなんじゃないでしょうね!?」

 

「ち、違うよ!」

「信じられない!証拠はあるの!?」

 

 うん、いい感じだ。和歌月さんの錯乱したキャラもうまくハマっている。あとは夜凪さんが一言喋るだけのはずだが…………?

 

「うん?夜凪ちゃん?次、君の《皆、逃げて!》だよ。台詞飛んじゃった?」

 

 監督の呼び声に、夜凪さんはハッと何かに気づいたようで、すいません……と謝っていた。

 

 ホントに台詞が飛んでただけなのかな。あの夜凪さんが本番前に緊張なんてする?

 

「監督〜、俺達の芝居は問題ないでしょ。次本番にしようよ」

 

 竜吾くんがそういった。なにやら和歌月さんに言われているが、監督は少し考えてから、

 

「そうだね、夜凪ちゃん。次本番いけそう?」

 

 どうやら次は本番にするらしい。夜凪さんも承知したようだ。

 

 本番よーい、スタート!

 

 合図と同時に、空気が変わった。夜凪さんだ。

 びっくりした。テストのときとはまるで違う。

 

 竜吾くんが斬られる。さっきまでと同じだ。違うのは、それを見た夜凪さんの様子。

 

 そのシーンのあと、夜凪さんは一瞬で顔を青ざめさせ、嘔吐した。

 

 !?

 

 愕然とした。さっきまで平然と立ってきたのに、一瞬でそんなことできるものなんだろうか。まるで、目の前で本当に人が、斬られたのを目撃したかのよう……!?

 共演者も驚いている。驚いているが、

 

「皆……逃げて……っ!」

 

 彼女の鬼気迫る演技につられ、演技をやめられない。

 

 カットの音がなる。同時に、夜凪さんが倒れ込む。

 

「オイ!誰か急いで担架もってこい!!」

 

 一気に慌ただしくなった。芝居が終わると同時に倒れたんだ。心配になるのも当然だ。

 それにしても、スゴイ芝居だった。嘔吐した時も一瞬画面から外れるようにしていた。あれならただよろめいただけのようにしか見えないだろう。あんな技術いつ身につけたんだろう。

 

 まさか、私から学習した?

 

 確かにそう考えれば納得がいく。顔合わせの時言っていた幽体離脱も、私から技術を盗むためのことだったんだろう。

 

 それにしても、こんな短期間で自分を俯瞰する技術を一部とはいえものにするなんて。私はあれほど努力したというのに。

 

「ははっ、やっぱりスゴイな、天才は」

 

 ホント、嫌になる。

 

 

 

 撮影開始から3日目

 

 今日も夜凪さんたち三人の撮影だ。今はシーンの半ば刀を持った和歌月さんに追いかけられるシーンだ。

 

「飛び込んで!」

 

 夜凪さんが叫ぶ。ここでシーンは終了だ。飛び込むところは後で合成で入る。普通ならここでOKのサインが出るはずなんだけど。……?

 

「飛び込むシーンは後で合成で入れるから、ホントに飛び込まないでね。なんて」

 

 監督がそう言い終わる前に、夜凪さんが水の中へ飛び込んだ。

 

「あら」

 

 なんで監督は落ち着いているのか。当然、周囲は騒然となる。

 

 焦ったアキラくんが助けにいこうとしたところで、監督がそれを止めて言った。

 

「カットかけるの忘れた僕のミスだけど、カメラ回ってるし勿体ないから続けてもらおう」

 

 ……?へぇ、なるほどね。

 

 夜凪さんに誘発されるように他の共演者も飛び込んでいく。和歌月さんが追いかけるように飛び込んだところで、やっとカットが出た。

 

「早く様子見てきて!何かあったら大変だよ!」

 

 監督の声でスタッフが急いで様子を見にいく。

 結果、3日目は予定より3時間遅れて終了した。

 

 

 

 その日の夜、私はある場所に向かっていた。私の予想が正しければここに目的の人はいるはずだ。

 部屋を覗き込む。やっぱりいた。

 

「うん、よく撮れてる。いいね」

 

 私が探していたのは監督だった。一人で今日の撮影を見てチェックしている。

 

「よくないよ、カントク」

 

 後ろから話しかける。

 

「夜凪さんのせいで現場がピリピリしてきてる。このままじゃ竜吾くんみたいな人が増えるよ」

 

 断言できる。勝手な行動で現場を遅らせているんだから、スターズの人は特に反感を覚えるだろう。問題なのはこの人がそれを煽っているということだ。今日のあのシーンもわざとだった。この監督がカットを忘れるなんてまずありえない。

 第一もしそうであったとしても、カメラを回し続ける必要はないはずだ。あれだけ分かりやすければ*1山村警部だって気がつくだろう。

 

「いいじゃないか、本当の殺し合いみたいで」

 

 まったく、やっぱり確信犯だったか。

 

「それで、私にどうしてほしいの?」

 

「まとめあげてくれる?いつも通り、夜凪ちゃんごと」

 

 はぁ……監督は嘘つきだね。まぁいいや。それにしても

 

「また私任せってコト?」

 

 ホント、イヤになるね。

 でも、監督の思惑は分かった。それだけで今日は十分だ。さっさと部屋に戻ろう。でもその前に一つだけ。

 

「あ、そうだカントク。何をしたいのかはわざわざ問わないでおくけど、そう簡単に私の仮面とれると思わないほうがいいよ」

 

「……っ!さぁ?なんのことか分からないな」

 

「そっか、それならいいんだ。あんまり乙女を軽く見てると、痛い目みちゃうんだからね?」

 

 そう言い残して私は部屋から去った。

 そうだ、そう簡単に仮面を外したりするものか。この下を見ていいのは、私を、百城千世子を視てくれる人だけだ。

 

 それに、『女は秘密を着飾って美しくなる』

 そうだよね?シン君。

 

 部屋に戻った私は、作品の研究をしていた。

 

「オーディション組の子達は主に原作に準じた役、スターズは普段のイメージそのままの当て書き。原作ファンと俳優のファンのどちらもターゲットにって感じかな。極端だけど手堅い人だなぁ手塚さん」

 

 そう、手堅い人だと思ってたんだけどなぁ。

 たった一つの異物は、作品をあるべき姿から遠ざける。

 さーて、これはどうしよっかなー。

 

 ここからが、私の腕の見せどころだろう。

 

 

 

 撮影12日目

 

 今日はオーディション三人組の一人、湯島茜さんとの共演がある。

 彼女は初日に一度同じカットを撮ったが、あれから大きく成長しているはずだ。

 

 それでも、やることは変わらないんだけどね。

 

「ご覧ください!この人の数!千世子ちゃんを一目見ようと、大勢の観光客のみなさんが押し寄せています!」

 

 町田さんの声が聞こえる。あの子ホントにアナウンサーみたいな事やるの得意だな。絶対ヒーローショーのお姉さんとかの受けいいでしょ。

 

「千世子ちゃーん!」

「天使ー!」

「こっち向いてーっ!」

 

 見物に来ている大衆に手を振る。こういう細かい所作に気を配ってはじめて、天使の百城千世子だ。

 

「ゴメンね。半分宣伝目的なんだと思う。集中できないよね」

 

 一応謝っておく。私はそんなに悪くないけど、事務所のことだし、ここで謝らないのは天使じゃない。

 

「……ううん。今日は大丈夫」

 

 へぇ、やっぱり成長してる。初日だったら萎縮してろくな演技が出来てなかっただろうに。原因は、やっぱり夜凪さんかな?

 ほら、今も夜凪さんの方をチラ見してる。

 

「テストはなしだ。雨に濡れるシーンがあるし、二人に負担をかけたくないからね」

 

 カントクの声が聞こえる。撮影のため観客を静かにさせたら、いよいよ本番だ。

 

「カレンはいつも綺麗事ばっか!私たちに死ねって言うの!?」

 

 おお、やっぱりスゴイな。初日とはまるで別人だ。演技力が大幅に上がっている。茜さんの台詞は続く。

 

「あなたの綺麗事を鵜呑みして一体何人死んだ!?みんなで生き残りたいなんて嘘ばっかり!!」

 

 怒声が響き渡る。この演技に対応するには台本通りではダメだ。今私に求められるのは、カットとして違和感がなくて、天使らしい演技だ。そのためにこの感情の昂りは必要ない。

 心を落ちつかせ、身体をコントロールする。

 

「綺麗事だって、そう言われても仕方ないね」

 

 相手とは対照的な、静かな演技。普通ならあっけなく相手に呑まれてしまうような、小さな声。それでも、私がやれば結果は大きく変わる。

 

「でも、私はみんなで生き残りたいんだ。友達同士の殺し合いなんか、見たくない」

 

 少し台詞を変えながら芝居をする。そのほうがこの状況に合っているから。

 

 カレンは特別優れたキャラクターじゃない。頭がすごくいいわけじゃない、運動も人並みだ。それでも彼女が主役である理由は、その善性にあるはずだ。ただどうしょうもない現実に翻弄されるだけじゃなくて、どうにか解決しようとする強い意思がある。

 そんな彼女の言葉には、相手を引き込むある種のカリスマじみたものがあるハズだ。

 

 そして、相手を引き込むその話術は、元探偵志望の幼なじみのおかげで嫌というほど見てきた。

 

 役を掘り下げる必要はない。無理になりきる必要もない。ただ彼女が言っていてもおかしくない発言を、百城千世子がいってもおかしくない台詞を、発するだけでいい。

 

「それがどれだけ困難でも、またみんなで笑って過ごしたい。遊びたい。そんな明日が私は欲しい。だからあなたにも、協力してほしいの。それじゃあ、駄目かな?」

 

 そして台本に戻し、自然に手を差し伸べる。茜さんは呆気にとられていたが、台本通り手を握り返してくれた。

 

「カット!オッケーです!!」

 

 私の演技に、周囲がざわめくのが分かる。私がやったことを、それらしく説明している声が聞こえる。

 それらを無視して私は茜さんに話しかける。

 

「ゴメンね。みんなに夜凪さんみたいな芝居をされたら困るんだ」

 

 呆然としてこちらを見る茜さんに、構わず言葉を続ける。

 でも、夜凪さんみたいな芝居はホントに困る。だって、

 

「主人公は私じゃないといけないから」

 

 今日も天使は、健在だ。

 

 

 

 

 撮影終了後、監督である手塚は一人今日のカットを見直していた。

 

「……うーん、なかなか崩せないな。この仮面」

 

「仮面?」

 

 彼の独り言に、反応する声が一つ。夜凪景だ。

 

「……ここ僕の部屋なんだけどノックくらいしてほしいな……。なんの用だい夜凪ちゃん?」

 

「すいません、私、最後のシーン演じられないかもしれない」

 

 彼女はそういった。

 夜凪景が演じるケイコは原作には登場しないオリジナルキャラクターだ。特になんの活躍もせず次々起こる理不尽に振り回されるだけの脇役、それが彼女。ただし物語終盤、カレンの身代わりに自ら死を選ぶ。

 

 夜凪の言葉は続く。

 

「今日までずっと悩んでました。でもやっぱり私は千世子ちゃんの代わりに死ぬ役は演じられないと思うの。私、千世子ちゃんのこと好きじゃないんだと思う」

 

 彼女の演技法は自身の経験に基づいて行われるもの。そんな彼女が演じられないということは、百城千世子を友達として見ることができないことを意味する。

 

「ああ、今日のシーンのことね。彼女が無感情な人間にでも見えたのかな?」

 

 深刻そうな夜凪に対して監督の調子は軽い。

 

「ところで夜凪ちゃんこの映画の製作費知ってる?六億円」

 

「!?……食費何千年分?私そんな大金のかかった作品に出演していたの?」

 

 今まで金に余裕のなかった夜凪にとって、その数字は到底聞き流せるものではなかった。手塚の話は続く。

 

「それだけじゃないよ。映画の興行的成功は主演にかかっている。キャスト・スタッフの時間と労力、宣伝コストに大衆の期待──彼女はたった一人ですべてを背負っているんだ。だから百城千世子はああも美しい“天使”になったんだ」

 

 夜凪にとってその話は聞き流せるものではなかった。彼女がしっかりと演技をするためには、千世子のことを知る必要があった。

 

「彼女が天使なら、きみは……えーと、ブルドーザー?」

 

 ……?夜凪は理解できなかった。なぜ一方は天使なのにもう片方は無機物なのか。あれか?硬くて平らだとでも言いたいのか?どこのこと言ってんだ蹴り飛ばすぞ。

 そんなことを夜凪は考えていたが、口にはださなかった。彼女は大人だった。

 

「とにかく、演じられないなんて言わないでよ。僕はもうあの仮面見飽きたんだ。アレぶっ壊してやってほしいんだよね。そのために君をキャスティングしたんだし」

 

 まずは千世子ちゃんと仲良くなろう。

 

 監督から期待を寄せられていることを知った夜凪は、内心でそう考えていた。

*1
山村ミサオ。群馬県警の警部。通称・ヘッポコ刑事。

 元女優でコナンの母の工藤有希子の大ファンで、彼女が主演した刑事ドラマを見て刑事になった。巷ではコイツが組織のボスなんじゃないかと噂されている。多分そんなことはない。




このままじゃあただ原作なぞらえて書くだけになってしまう……
強引にマイノリティー出してくか……?いややめとこ

他者視点のデスアイランド欲しいっていう声が多かったんで書きます。視点誰がいい?

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