感謝
勝った。勝った。賭けに勝った。医師の女の人からもらった綿飴をもしゃもしゃ食べながら、私はそう確信していた。個性を発動してみて、と言われて一度成功し、もう一度すると失敗したことで「条件付きで発揮される個性、失敗することもある」と印象づけられた。これで恐れるものは何もない。
とりあえず高校生になるまではなんの問題もなくなる。なぜ分かるかって?昼前に整理券を母と取りに行った時、たまたま出くわしたのだ。
そう思うと、思わずにやにやしてしまう。どうやら予想以上に、
それにしても、『個性』を成長させるための訓練法が全く思いつかない。今日の採血で
……ひょっとすると、ある程度の年齢になるまで身動きがとれないパターンじゃないか?これは。
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本当に年単位でかかった。全く、冗談じゃないぞ。だが収穫は大きい。時間をかけたお陰で私の『個性』の本質を捉えることができた。
ずっと、『ダメージ吸収』が私の『個性』だと思っていた。しかし、それでは説明がつかないことが二つあった。一つ、吸収したダメージはどこに行っているのか。二つ、なぜ
ダメージを吸収するのは、概念的な怪我を無効にしたり自身を傷つけうるモノの影響を受けないようにしたりする類の力ではない。それは4歳のときの採血で針が刺さったことから明らかだ。つまり吸収したダメージ、言い換えればエネルギーが私の中に蓄積しているはず。
そして力の流れに対する第六感はいうまでもない。単純なダメージ吸収という『個性』ならば、そんな感覚は付随する筈がない。『個性』は後付けの特殊能力ではなく身体能力の延長なのだから、感覚があることと『個性』の根源には繋がりがあるのが当然だ。
きっかけは個性検査以降、行き詰まりすぎて2年もの間足踏みを続けていたこと。『個性』の許容限界の向上は見込めない、しかし空手や合気だけは順調に習得していくというギャップから「やっぱり身体能力は鍛えられても特殊な力なんて早々鍛えられるもんでもないな」と思ってしまった。そのことを母に愚痴ると、
「『個性』も体の一部なんだから、橋華の成長に合わせて育っていくの。だから、焦らなくていいのよ?」
と言われたのだ。
目から鱗だった。この世界ではそれは当然のことだが、なまじ
それに気づかされてからは、徹底的に検証を行なった。重い一撃と軽い連撃、限りなく素早く衝撃を与えることとじっくり圧力をかけていく時の差。皮膚の薄皮一枚を擦るように衝撃を与えたらどうなるか。回転を入れた場合に変化はあるか、など。
結果、私の『ダメージ吸収』の攻略法が判明した。ゆっくり力をかけ続けた場合、ダメージ吸収は作用せず組織の破壊、つまり青アザが生じる。試したことはないが、例えば総重量数百キロの物体を私に乗せ、ジワジワと組織を圧壊させられれば私は死ぬということだ。パンチ力1トンの人に殴られたとしてもかすり傷すら負わないだろうという確信を持っているので、これは不思議だったが。
このことから結論づけた私の『個性』の本質が、エネルギー変換だ。ある単位時間あたりに体細胞が破壊されるような圧力を与えられた場合そのエネルギーを吸収、細胞分子の結合を強化するのに利用する。それにより肉体は瞬間的な衝撃に強い耐性を持つ。
こう仮定すれば、力の流れが理解できることも吸収したエネルギーを意識的に分配するために必要な機能だと言える。
聞いてみると、母もヒーロー時代は熱を吸収してどこを強化するかを考えながら動いていたそうなのでこの説は正しいのだろう。
……というか遠慮せずにもっと積極的に母のヒーロー時代について聞いていれば良かったのではないか?
いや、だめだ。母が話そうと、そして私に話してもいいと思えるまではやめておくべきだろう。たまに話してくれる思い出話で私は十分満足しているのだから。
とにかく、これで私の成長の方向性が定まった。目指すべきは自動回復ができるタンク役だ。敵の攻撃で強化し、守るべき人に被害が及ばないように受け流して動き回る変則的な盾役。
×ダメージ吸収
○エネルギー変換
ダメージ吸収を自分が納得できる形で説明しようとしたらこうなりました。まあ強く見えても「すごい一撃」には負けるので(エネルギー変換と細胞の強化が追いつかないほどであれば)オールマイトには普通に勝てません。