トレセン学園には約300名近いトレーナーがいる。しかし、重賞ウマ娘の担当、G1ウマ娘の担当ともなるとそうそういない。重賞ウマ娘の担当経験のあるトレーナーは3人に一人ほどだ。その中でもある新人トレーナーは担当ウマ娘をG1で勝たせられないことで有名だった。その新人トレーナーは今まで二人のウマ娘を担当した。一人目のウマ娘は気性難で有名だったが、彼が担当した間にG1に19回挑戦し、何度も入着を繰り返す実力の持ち主だった。そして彼は一人目のウマ娘が引退レースで海外の20回目の挑戦でG1を初めて制する直前に同期で出世した名家のトレーナーに託したことで初めてのG1制覇を逃した。二人目はクラシック戦線で善戦、特に日本ダービーで2着などシニア級になっても将来が期待されており、担当契約をして2年目の宝塚記念のレース後に二人目のウマ娘に契約解除を持ち出す。担当ウマ娘には引き留められるも一人目同様、名家のトレーナーに引き継いで貰う。その後、二人目のウマ娘は天皇賞・秋、ジャパンカップ、有馬記念を3連勝し秋シニア三冠を達成する。またしても彼は初G1制覇を逃す。これはそんなトレーナーが三人目のウマ娘と共にG1制覇を目指す物語。
「今年もこの時期が来たか……」
そう言ってトレーナー室の机に座る俺、辰巳駿佑(たつみしゅんすけ)は学園から配布された新入生の資料をみながらため息混じりに嘆く。
「正直、資料ってあんまりあてにならないことが多いからな……選抜レースを見るか」
そう思い、今年でようやく25歳になる俺は重い腰をあげて選抜レースを見るため、レース場に向かう。
「お、今年も来たのか、辰巳?」
レース場に着くと、そう言って話しかけて来るのは、俺より二つ上の先輩トレーナーの岩村さんだ。一人目の担当の時に新人で対策に困っていた俺に色々なことを教えてくれた先輩で毎年のようにこの時期にレース場であっている。
「今年で辰巳が高卒でトレセン学園にトレーナーとして配属されてもう八年目か」
「そうですね、相変わらずG1は勝ててないんですけどね」
「辰巳ももったいないことするよな。G1で入着を繰り返してたリョテイに加え二人目で後の秋シニア三冠ウマ娘のロブロイちゃんまで移籍させちゃうからなー」
「リョテイもロブロイも俺の担当から外れて初めてG1を勝ったので俺は関係ないですよ。俺の担当を経て他の担当になるとG1を勝ってるウマ娘が二人もいるんです。ウマ娘の中じゃ、俺のことを魔法のタレか何かって言われてますよ」
「ロブロイちゃん、秋天勝った時も秋シニア三冠達成した時もインタビューで泣いてたよ。前の担当の辰巳さんがここまで育ててくれたのに私は恩返しが出来なかった、って」
「言わないでくださいよ、そのことは。理事長に色々注意されたんですから」
「まあとにかく今年の担当は最後まで面倒みてやれよ。おっ、俺は気になる子を見つけたからスカウトしてくる」
そう言って岩村さんはレースを終え、スカウトを待つウマ娘のもとへ歩いていく。
「……最後まで、ね」
岩村さんに言われた言葉を思い出し、ぽつりと呟く。確かにインタビューでロブロイが泣いていたのは俺もテレビで見た。リョテイも泣きはしなかったが感謝していると言っていた。そんなことを思い出しながらボーッとレース場を眺めていると後ろから肩を叩かれる。
「なぁアンタが辰巳駿佑か?」
「おう、そうだが何か用か?」
「辰巳駿佑……辰巳でいいや。辰巳、私のトレーナーになってくれないか?」
そう言ってきたのは飴を咥え、ニット帽を被り、ゼッケンをつけたウマ娘だった。当時のスカウトしたばかりのリョテイとまではいかなくても、気性難な雰囲気が感じられる。ここ、トレセン学園では気性難のウマ娘は気性難である故にトレーナーからのスカウトは少なく、逆にウマ娘側から逆指名され担当契約に至ることが多い。目の前にいるウマ娘も恐らくそのうちの一人だろう。
「どうして俺なんだ?」
「私の先輩に言われてな、辰巳トレーナーを勝たせてやってくれってな」
察しのいい方はもうお気づきでしょうが一人目はステイゴールドことキンイロリョテイさん、二人目は個人的にライスより好きなゼンノロブロイです。二人の登場は遅かれ早かれあると思います。質問ですが25歳って若手なんでしょうかね?もしかしたらみんな大好きゴルシでるかも?
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