八幡side
アート「すみませんトレーナーさん、またこのような席にご案内させていただいて。」
八幡「いえ、娘さんのレースなのですからこのくらいはさせてください。それに事前に聞いていましたからね。」
オルフェ「………」
ジャーニー「………」
アート「ジャーニーもいつも以上にやる気を出しているみたいですしね。」
中山レース場の観覧席。今日は有マ記念当日で午前11時頃なのだが、ジャーニーとオルフェの両親が既に来ている。もう少し後に来るものだと思っていたのだが、意外と早く来たのには驚いた。
八幡「オルフェ、今日は臣下達は走らないのか?」
オルフェ「今日は2人走る。午後からのレースだ。」
八幡「そうか……じゃあソイツ等の応援もするか。」
アート「ところでトレーナーさん、ジャーニーがクリスマス会で着た衣装はご覧になりましたか?」
八幡「?いいえ。」
アート「あら、そうなのですか?実は私がデザインして、金細工は夫が作成したんですよ。とても良い出来なので是非見てほしいのです。」
八幡「……それでは、見せていただいても?」
だってアートさんが『私のジャーニーが更に綺麗になっているので是非っ!』っていう目で見てくるから見るしか無いだろ。アートさんのスマホの写真を見せてもらったが、確かに綺麗だった。今日着るジャーニーの勝負服とは真逆で、白を基調にした衣装だったからだ。そうか、これでクリスマス会に参加したのか……
八幡「確かに綺麗ですね。」
アート「そうなんですよ。オルにも用意してあげたかったんですけど、『余には必要無い。』って切られてしまいましてね。」
八幡「あぁ~……言いそうですね。」
ガチャッ
父上「……帰った。」
アート「お帰りなさい、あなた。どう?良い素材はあった?」
父上「……あぁ。ジャーニーはまだしているみたいだな。」
アート「えぇ、凄く集中しているわ。」
八幡「今回のレースはどうしても勝ちたいみたいですからね、自分自身のメンテナンスやパフォーマンス向上も欠かしていませんでしたよ。」
父上「……本番が楽しみだな。」
ーーー数十分後ーーー
ジャーニー「……ふぅ。」
アート「あら、終わったかしら?」
ジャーニー「あぁ、終わったよ。どのくらいだったかな?」
アート「大体4~50分くらいよ。長く集中出来ていたみたいね。お腹が空いたんじゃないかしら?」
ジャーニー「そうだね、少しだけ空いた感じがするよ。」
八幡「昼飯なら用意してあるけど、食べるか?」
ジャーニー「おや、作ってきてくださっているのですか?」
八幡「この時期は冷えるからポトフを作ってきてある。それだけじゃ寂しいからサンドイッチもあるけど、食べるか?」
ジャーニー「是非。八幡さんのお作りになる料理は文句無しに美味しいですから。」
八幡「じゃあ用意する。もしよかったらお2人もどうです?結構多めに用意していあるので。」
アート「いいんですか?ではお言葉に甘えさせていただきます。」
父上「……いただこう。」
家族皆が食事をする事になった為、俺は作ってきたサンドイッチを取り出してポトフを椀に盛り付けた。
アート「っ!美味しい……っ!」
父上「………」
オルフェ「うむ、今日も良い味である。」
八幡「それは何よりです。」
ジャーニー「この料理はいつ作ったのですか?」
八幡「ポトフは昨日で、サンドイッチは今朝だ。お前の為に作ったにも関わらず頼みもしてないのに味見役がわんさか来て美味いって言ってたから味は保証する。」
アート「あら、トレーナーさんの料理は大人気みたいですね。」
八幡「自分としてはジャーニーに作る事が出来れば満足なのですが、さっきも言った通り毎度誰かは寄ってくるんですよ。」
父上「……この美味さなら寄ってくるのも頷ける。」
ジャーニー「そうですね。それにポトフの熱が身体に身体に染み渡ります……」
家族全員高評価みたいで安心した……一般庶民が作った料理だから受け入れられなかったらどうしようかと半分心配してたんだが、杞憂だったみたいだ。
ーーー2時間後ーーー
八幡「……さて、そろそろ準備するか。」
ジャーニー「分かりました。それじゃあお父さん、お母さん、オル、行ってくるよ。」
アート「えぇ、頑張って。」
オルフェ「姉上の走り、しかと見届けよう……」
父上「……行ってこい。」
そして俺とジャーニーは控え室に向かった。その間もジャーニーを緊張させないように会話を弾ませながら歩いた。今はジャーニーが控え室で着替えている。
ジャーニー『八幡さん、着替え終わりました。どうぞ。』
八幡「あぁ、じゃあ入るぞ。」
ジャーニー「変なところはございませんか?」
八幡「今日もしっかり着こなしてるな。」
ジャーニー「これからパドックですが、その後に最後の打ち合わせですね。」
八幡「そういう事だ。まぁ言う事なんて無いけどやって損な事は無いからな。油断ならない相手も居る事だしな。」
ジャーニー「そうですね。八幡さんもいつもの余裕が無いわけですから、入念にしておいた方がよろしいかと。」
ジャーニーの言う通り、パドックの後は打ち合わせ入念にするか。