八幡side
八幡「……この格好でいいのか?」
ジャーニー「えぇ、とても良く似合っていますよ。」
オルフェ「うむ、良き恰好である。」
八幡「スーツに着られてるだけだと思っているのは俺だけか?」
オルフェ「そう思っている内は、そうであろうな。」
ジャーニー「しかし八幡さんであれば、知らぬ内に着こなしている事でしょう。」
八幡「だと、いいんだけどな。」
俺は今、部室でジャーニーとオルフェの2人と待ち合わせをしていた。今日はジャーニー達の実家に行くから、こうして自分の服装をチェックしてもらっている。まぁ年末年始の集まりだから着飾る必要なんて無いんだが、一応ってわけだ。
ジャーニー「では、行きましょうか。きっと両親も貴方の事を心待ちにしている事でしょうから。」
八幡「そっちの実家に行くのは3回?4回目だったか?」
オルフェ「3回目である。1度は金細工とスーツの試着、2度は合作のスーツと金細工と眼鏡の調整、3度は同窓会……そして今日が4回目である。」
八幡「内容まで細かく覚えてたんだ、超意外。」
ジャーニー「オルであればこのくらい当然ですよ。」
準備が出来た俺達は学園から出て、2人の実家へと向かった。寒さが少し気になっているところだが、それは2人も同じだろうしな。それに着いたら暖かい家が待っているだろうし、そこまで我慢だ。
そして俺達は2人の実家に着いた。
ガチャッ
ジャーニー「ただいま、お母さん、お父さん。」
オルフェ「……帰ったぞ。」
八幡「お邪魔します。」
アート「お帰りなさい、皆。寒かったでしょう?さぁ、早く暖まって。」
八幡「ありがとうございます。」
アート「ジャーニーとオルも着替えてきなさいな、トレーナーさんもそんな堅苦しい恰好をする必要なんて無いんですから、ラフな格好になっていただいて構いませんよ。」
八幡「すみません、自分はこの格好しか持って来ておりませんので。」
アート「あら、そうなのですか?でしたらお父さんの服を借りましょうか。」
八幡「いえ、自分は「まさか今日来て帰る、なんて事は言いませんよね?」………」
見破られてる……もしかして?
ジャーニー「まさか帰るつもりだったとは……それは想定外でしたよ。」
オルフェ「王命である、年末年始はこの場で過ごせ。」
やっぱりかぁ……この2人も気付いていなかった事にアートさんは一瞬で気付いた、流石はこの2人の親だな。
八幡「しかし、そんな急では「迷惑ではありませんよ?その証拠に、私達だけでなく娘達もそのつもりだったのですから。」………」
アート「当然、今工房に篭っているお父さんも同じ気持ちですよ。貴方と話せるのを楽しみにしていたのですから。」
オルフェ「兄上よ、今更家に帰るとは申さぬな?」
八幡「……はい、此処で過ごします。」
今日、1番怖いのはアートさんで間違い無いな。
ーーー数十分後ーーー
アート「それじゃあ少し早いですが、1年間お疲れ様でした。今日はたくさん楽しみましょう、乾杯。」
オ・ジャ・父・八「乾杯。」
目の前にはアートさんが作ったであろう料理がたくさん並べられていた。かなり気合いを入れていたのだろう、豪勢な料理ばかりだった。
ジャーニー「お母さんの料理は久しぶりだから楽しみだよ。」
アート「ありがとうジャーニー。トレーナーさんも遠慮せずにたくさん食べてくださいね、その為にたくさん作ったんですから。」
八幡「ありがとうございます。」
父上「……思えば、トレーナーと家族で集まって食事をするのは初めてだったな。」
八幡「そうですね、いつもはジャーニー達と、この前はお2人とご一緒させていただきましたが、ちゃんとした形では今日が初めてですね。」
父上「……トレーナーの料理も美味かったが、嫁の料理も負けていない。」
アート「もう、そんな事で張り合わなくていいのよ。」
アートさんの作った料理は本当に美味しかった。イラストレーターとしての仕事で忙しい中でも、旦那さんに作る料理は1日たりとも欠かしていないのがよく分かる。じゃないとこんな味は出せない。当然俺も出せない。
八幡「……ホッとする味ですね、自分には真似出来ません。」
アート「そうですか?有マ記念の時にいただいた時のお料理はとても優しいお味でしたよ?」
八幡「味や料理を作る事は出来ても、芯までホッとするような味は出せませんよ。」
ジャーニー「ふむ……それは哲学的な意味で、でしょうか?」
八幡「まぁそんな感じだ。まぁ例えるなら今のお前達だな、寮よりも此処の方が落ち着くだろ?」
ジャーニー「あぁ、成る程……確かに実家の方が落ち着きますね。」
八幡「この料理だって同じだ。もし仮に俺が同じ料理を作ったとしても、アートさん以上に安心出来る味を作る事は出来ない。品は同じでも他人の作った料理だからな。」
父上「……っ!」ブツブツブツブツ…
八幡「……え、どうしたんだアレ?」
ジャーニー「あぁ、父は何かを閃くと何かを呟きながらメモを取るのが癖なのです。」
八幡「そ、そうか……」
アート「その内戻ってきますから大丈夫ですよ。」
……その内ってどのくらい?