ゲームのエネミーキャラにガチ恋したのでイチャイチャするためにがんばります   作:どくはら

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人狼に捧ぐ小夜曲⑦

 想像以上に、防戦一方を強いられていた。

 

 その事実に舌打ちを零しつつ、猗々冴々は白狼めがけて引き金を一つ引く。発射と同時に散弾が拡散し、鉄片がまき散らされた。

 既に鉄片の痛み(あじ)を知る白狼は、俊敏な動きで後方に飛び退く。

 そこから即座に反撃へと転じてくれれば、残しておいた銃で迎撃もできただろう。しかし、相手はそこまで単純ではなかった。

 

『ウォォォォォン!』

「ちぃ……!」

 

 跳びかかる前に、【咆哮(ハウル)】が挟まれる。

咆哮(ハウル)】は同一エネミーから連発されれば耐性がつくスキルだが、それでも一瞬体が強張ってしまうのはどうにもならない。そして白い獣は、その一瞬を突くように跳びかかってきた。

 

 もう一度舌打ちをしながら、デバフが解けたばかりの体に鞭打って回避する。

 それでも、完全によけきることは叶わない。爪が脇腹をかすり、そこから赤い血霧(ダメージエフェクト)が噴出する。痛みの代わりに感じた衝撃に顔を顰めつつ、神経を次の一手に集中させる。

 銃口を向き直す暇もない。これ以上HPを削られてなるものかと、地面に向かって発砲し、その推進力を使って強引に距離をとった。

 

「うおっと!?」

「っ! すまない、魔弾の射手殿!」

 

 その背中が、近くで戦っていた四月一日の体とぶつかる。

 二人で戦い始めてから、何度目かになる衝突だ。そのためすぐに体勢を立て直すことはできたが、それは同時に何度も衝突させられるように仕向けられたということでもある。

 

 横目で黒狼の方を窺えば、狡猾な狼が目を細めて嗤うのがわかる。

 さらなる舌打ちを重ねてから、【クイックリロード】【速射】【手妻使い(イカサマ)】を発動。挟み撃ちを仕掛けてくる二頭の狼を視界の端に収めつつ、両手に持ったショットガンを構える。

 ただし、銃口は揃えて明後日の方向を向いていた。

 

「【詠唱省略(エリプシス)】【対象加算】――【A・TELEPORT(トリック)】!」

 

 それを狼たちが怪訝がるより早く、四月一日が術式を唱える。

 直後、二頭の狼に挟み撃ちされていた退魔士(プレイヤー)二人は、狼たちの真横に移動していた。同時に引き金が引かれ、散弾が獣の顔面に叩きつけられる。

 

『ガァッ!』

『……!』

 

 苦悶の咆哮を上げながら、二頭の狼は追撃を嫌うように地面を蹴り、その場から飛び退く。人と獣、両者の間に距離が生じた。

 からんと。距離の真ん中に、一つの石が落ちた。

 

「ふー……っ」

 

 横たわる距離は、獣がその気になれば容易く詰められるほどの広さでしかない。片時も意識から外さないようにしていると、四月一日が呼びかけた。

 

「魔弾の射手殿、勝利条件にギミックは関わると思うかい?」

「……」

 

 ロールプレイ中は滅多に口にしないゲーム用語を交えた問いかけに、牽制するように獣たちへと銃口を向けながら口を開く。

 

「あるだろうな。それが一番、イベントとしては映える」

「けれども、そうではない可能性も検証しないわけにはいかない。そうだろう?」

「大見得切って雑な攻略本以下じゃ、笑われかねないからな」

 

 言いながら、猗々冴々は狼たちを見据える。

 わざわざ得手を捨ててまで白兵距離で挑んでいるのは、その方が足止めしやすいからだけではない。足止めをするために、あえて不得手な分野で挑んでいるのだと。そうマーナガルムに思わせるためだ。

 

 マーナガルムの最優先対象は朔のルー・ガルーだ。

 第一形態と第二形態に痛手を負わせた退魔士(プレイヤー)と、わざわざ真正面から戦う必要はない。戦闘にデメリットしか感じなければ、早急に片方が離脱していただろう。

 しかし、厄介な攻撃を持つ退魔士(プレイヤー)が、わざわざ不利な戦いを挑んできているというなら、話は変わってくる。狡猾なAIを持つエネミーだからこそ、あえて足止めに付き合うことで頭数を減らそうという選択肢が生まれてくる可能性があるのだ。

 

 はたして、その予想は的中した。

 後は、わざわざそう思わせてまでここに引きつけているもう一つの理由。すなわち、二頭で一体という本性を表した幻日の(アルター)マーナガルム攻略の糸口を掴むだけ。

 

 問題は本気状態のマーナガルムが想定以上に手強く、攻めあぐねていること。

 その間に、手札もリソースも順調に数を減らしている。

 猶予もあまりない。【咆哮(ハウル)】を温存する黒狼に気取られたら、今までの攻防が水泡と化す。

 博打に走るか、堅実にいくか。二人は二択を迫られていた。

 

「きついね」

「あとで焼き肉奢ってもらわないとな」

 

 後続のヨシツネと朔に繋げるため、二人は軽口を交わしながらも頭を回転させる。

 そして、ほぼ同時にこれしかないかと結論づけた。

 

「Vanilla or Chocolate?」

「そりゃあもちろんチョコっしょ。吠え面かかせないと気が済まんわ」

「……任せた(plz)!」

楽勝(EZ)!」

 

 細かい打ち合わせは不要。ゲーム用語を織り交ぜつつ、同時に地面を蹴った。

 それを迎え撃つべく、白狼は猗々冴々の方へ、黒狼は四月一日の方へ向かう。

 各個撃破を試みないのは、得手に切り替えられることを警戒してか、それとも一対一で十分だという慢心か。どちらにしても、猗々冴々たちには都合がよかった。

 

「お色直しが終わるまで、もうちょっと付き合ってもらうぞ、マーナガルム!」

 

 言いながらショットガンを同時に構え、引き金を交互に引く。

 現実(リアル)の散弾銃ほどではないが、RTNでもこのタイプの銃は射程(レンジ)が短い。至近距離で撃てば高い威力を発揮するが、距離を離せば離すほど速度が下がり、威力も落ちる。

 

『ウォンッ!』

 

 数分の交戦でそれを学んだ白狼は、スキルを介さない咆哮でさらに弾を減速させた。

 そして、勢いが弱まった鉄片に自ら向かっていき、猗々冴々ごとまとめてなぎ払うように右の前脚を振るう。

 

 それに対して足裏に力を込め、跳躍。

 上に逃げる猗々冴々に、白狼は前脚を振り上げて追撃を図る。

【クイックリロード】で弾を装填し直しながら、追いかけてくる前脚に自分から足裏をぶつけることで、猗々冴々の体はさらに高く跳んだ。

 

 一方、少し離れた場所では四月一日と黒狼が剣戟を繰り広げていた。

 

「はぁ……ッ!」

 

 気勢がこもった声とともに、二振りの脇差を手足のように操り、爪を弾く。

 即座に咢が開かれ、スーツに包まれた体を噛み砕かんと牙が迫るが、小さくバックステップをすることでそれをかわす。そのまま体幹を捻って刃を叩きつけようとするも、それは剥きだしの犬歯によって受け止められた。

 

「やれやれ……!」

 

 困ったように笑いつつ、追撃が来る前にもう一度バックステップ。今度は大きめに距離をとり、いったん双方の間合いを離脱してから【戦作法】の構えをとった。

 本職(ヨシツネ)と比べれば精彩さに欠けるものの、一線級のアタッカーに相当する動きで四月一日は立ち回っていた。適正人数で挑んだ場合という但し書きはつくものの、猗々冴々たちが交戦したさまよう(フライング)デュラハンを相手取っても、十分に仕事ができる動きである。

 

 一見すると、互角。

 しかし、それが見せかけであることは他ならぬ四月一日が最も痛感していた。

 

(もてあそんでくれちゃって、まあ……!)

 

 嗤いながら爪牙を振るう黒狼に、内心歯噛みする。

 四月一日の動きは、間違いなく一線級のアタッカーに相当した。

 だが、それを相手が上回っている。

 殺意のままに攻撃を仕掛け、それゆえにやや単調でもある白狼と違い、黒く染まった獣はより狡猾で、何より邪悪だった。

 わざと拮抗しているように見せかけ、こちらの油断を誘ってくる。策略とわかっていてなお誘導されてしまい、そのたびにダメージを負い、猗々冴々と衝突させられていた。

 

 厄介極まりない相手だが、付け入る隙がないわけではない。

 一つは、術式を警戒しつつも基本的には白兵戦の四月一日を見下していること。

 そしてもう一つは、賢すぎることだ。

 ちらりと横目で猗々冴々の様子を窺ってから、四月一日は黒狼との距離を詰める。それを迎撃しようと狼が咢を開けた瞬間、形の整った唇が動いた。

 

「【A・TELEPORT(トリック)】」

 

 瞬間、黒狼の目の前には、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「――――ッ!?」

 

 最低限の知能だけを持った(AI)なら、その事象を深く考えなかっただろう。しかし、高い知性を持つがゆえに、文字通り手品(トリック)のような入れ替わりに虚を突かれる。

 

「――ハッ」

 

 そんな黒狼を見て、猗々冴々が笑みを浮かべ。

 

「【詠唱省略(エリプシス)】――――」

 

 四月一日は、()()()()()()()()()発動する。

 そして。

 

「【一撃必殺(フルバースト)】!」

「【首吊りし隻眼神の魔槍(グングニル)】!」

 

 魔弾の射手(デア・フライッシュ)となる前の猗々冴々を破壊者(ダメージレコーダー)たらしめていたスキルと、四月一日がストックするものの中で最も火力が高い術式が、同時に炸裂した。

 

『ッ、――』

 

 二つの銃口が黒狼の鼻先で火を噴き、光の槍が背を穿つ。

 SAN(リソース)の残量を度外視した最大火力の一撃は、エネミーのHPを一気に削る。虚を突かれた顔のまま、黒狼の体はどうっと音を立てて崩れ落ちた。

 

 尽きずの(フラッド)アラクネや【群狼形態(ギャラルホルン)】のような群体は個々で消滅演出が発生するが、基本的に複数の個体で形成されたエネミーはすぐに消滅しない。その代わりのように、猗々冴々の目の前には「DEAD」というウインドウが表示された。

 横たわる黒狼の傍らに四月一日が着地しても、大きな体躯はぴくりともしない。

 

人間(プレイヤー)をナメんなよ、犬っころ」

 

 動かなくなった黒い獣を見て、猗々冴々は笑いながら息をついた。そして、ゼロ距離射撃の余波を浴びて焦げついた腕を、もう一頭の獣の方へと向けようとする。

 

 直後、眼前には白い獣の咢が迫ってきていた。

 

『ガルァッ!』

「うおっと!?」

 

 荒々しく跳びかかってきた白狼に、猗々冴々は慌てて飛び退く。

 だが、先ほどまでに比べて一段と速くなった爪牙は、短い間合いを瞬く間に埋める。容赦ない追撃が振るわれ、猗々冴々の脇腹には大きな裂傷が生まれた。

 

「アーサーちゃん!」

「くそっ、相方潰れたら即発狂モードかよ……!」

 

 舌打ちをしつつ、狂ったような連続攻撃の回避に専念する。

 猗々冴々の俊敏さ(AGI)はレベルカンストらしく高ランクではあるものの、遠距離攻撃使いであるため、回避特化(ヨシツネ)に比べるとプレイヤースキルは一歩及ばない。受け流し(パリィ)に使える武器ではないのもあいまって、零れる赤い血霧(ダメージエフェクト)は増える一方だった。

 

「アーサーちゃん……っ!」

 

 想定以上の猛攻を前に、より焦ったのは四月一日だ。

 ロールプレイでは泰然自若としたキャラを演じる一方で、四月一日というプレイヤーのメンタルは凡人に傾いている。HPを減らされ続けている友人を目の当たりにした彼女の意識は、猗々冴々の救援に向けられた。

 

 それは迂闊な行為ではあったが、完全に四月一日の落ち度だったとは言い難い。

 ――――なぜなら。

 

「ぐぅ――!?」

 

 突如背中に衝撃が走り、四月一日の体を前方へと押し出す。

 たたらを踏む暇もなく、駆け寄ろうとした猗々冴々の方に転がりこむ形となる。ぶつかってきた四月一日をとっさに支えようと視線を向けたところで、猗々冴々の顔が引きつった。

 

「復活早すぎだろ……!」

 

 そこには、嗤うように目を細めながら咢を開く黒い獣がいた。

 想定以上に早い復帰に、思考の歯車が凍りつく。だがそれは、術中にはまった四月一日を嘲るような笑みを見て、瞬く間に氷解した。

 

 前門には狼、後門にも狼。

 挟み撃つように迫りくる獣たちにこの時、猗々冴々は初めて敵意の表情を向けた。

 

「Mob風情が俺の親友(ダチ)を馬鹿にするとはいい度胸だなぁ!」

 

 怒りを露わに吠えながら、胸を使って器用に四月一日を抱き留める。そして、狼たちの鼻先を殴りつけんばかりに、ショットガンを持ったままの腕を勢いよく前後に突き出した。

 二人の人間(プレイヤー)を噛み砕かんと、二頭の狼は咢を開いている。

 そこに向かって、腕を突きだせばどうなるか。

 

『グルッ……!?』

『……!?』

 

 口腔に突っ込まれた銃口と腕に、白狼は無論、黒狼も驚愕の唸り声を零す。その様子に目を細めながら、打って変わった冷ややかさで猗々冴々は口を開いた。

 

「腕はくれてやる。代わりに、口ん中めいっぱい使って味わいな」

 

 ――――直後。

 くぐもった銃声が轟き、それにわずか遅れて肉が引きちぎれる音が辺りに響いた。

 散弾の衝撃を受けた二頭の狼が、弾かれるように後方へと吹き飛んでいく。それでもまだ、十分に間合いをとったとは言いづらい。

 

「四月一日!」

「と、【A・TELEPORT(トリック)】っ!」

 

 猗々冴々の呼びかけに、どもりながらも四月一日は術式を唱えた(シングした)

 戦闘の余波で生まれた瓦礫と、二人の体が入れ替わる。そうして十分な間合いを稼いだところで、四月一日は青ざめた顔を猗々冴々に向けた。

 

「腕っ!!」

「リスポーンしたら生える。お前を馬鹿にされた仕返しができたなら安いもんだ」

「アーサーちゃん、誰にでもそういうこと言ったらダメだよ」

「相手を選んで言うに決まってるだろ」

「そういうとこだよ!」

 

 そんなやりとりをして、お互いに張りつめすぎた気を緩める。

 しかし、欲しいものは得られたものの、状況は最悪に近かった。

 特に両腕を失った猗々冴々は戦力外も同然で、かといって四月一日だけではさすがに二頭を相手取れない。足があるなら攪乱という手もあるものの、狡猾な獣たちは武器(うで)をなくした猗々冴々になど目もくれないだろう。

 

 絶望的な状況を前に、こめかみから汗を流したのはどちらだったか。

 無論、焦燥を抱く二人の退魔士(プレイヤー)に、獣たちは容赦などしない。片や痛みの怒りに体を震わせ、片や策を弄されたことに不快感を露わにしながら、後ろ脚に力を入れ――

 

「四月一日ぃ!! ()()()()()!!」

 

 不意に聞こえた()()()が、全員の動きを止めた、

 

「……く、ふ」

 

 そんな中、真っ先に動いたのは名指しされた四月一日だった。

 クライマックスに興奮する視聴者の如く頬を緩めながら、念のためにと預かっておいた二振りの脇差を天高く放り投げる。自ら武器を手放した姿に狼たちは術式を警戒するが、それに対応するより早く状況が動いた。

 

『グルッ!?』

 

 だんっ! と。

 狼たちの前に立ちはだかるように、横合いから人影が跳びこんだ。

 勢いよく地面に叩きつけられた片足の横を、もう片方の足が踏みしめる。そのまま流れるように、その華奢な人影は太刀を構えた。

 

 そこに立つのは、白銀の髪と紅い瞳を持つ少女。

 先ほどまでと持つ武器が異なることを怪訝に思いつつも、刀を構える佇まいから感じるプレッシャーに、二頭の狼の意識は否応なく釘づけにされた。

 

「――――【()()()()()】っ!!」

『ギィア!?』

『――ッ!?』

 

 それが囮だったことに気づいたのは、頭上から襲撃を受けた後だった。

 先ほど上空に放られた二振りの脇差が、白と黒、二頭の狼の胴体を切り裂く。傷口からは黒い血霧(ダメージエフェクト)が勢いよく噴き上がり、襲撃者を覆わんばかりに辺りに広がった。

 

「四月一日っ! こいつら遠くに飛ばせ!」

「人使い荒いなあ! もうっ」

 

 黒い霧の中から、低い声が響く。それに文句を返しつつ、四月一日は唇を動かした。

 

「【A・TELEPORT(トリック)】!」

 

 紡ぐのは、対象の位置を入れ替えるユニーク術式(まほう)

 本来ならば対象が半径二十メートル以内にいなければ適用できないが、【効果拡大】というスキルのブーストを受けた術式は、残り少ないSANの大半を犠牲に目的を果たす。黒い霧の中からごとっという落下音が聞こえた後、アトラクションエリアの方から怒り狂ったような咆哮が聞こえてきた。

 

 霧が晴れれば、【群狼形態(ギャラルホルン)】との交戦で壊れた木馬が二頭、地面に転がっているのがわかる。

 そしてその間には、二振りの黒い刃を持った少年が立っていた。

 

 少年は、両腕を失った猗々冴々を見てぎょっとした顔になる。そんな少年に思わず笑みを零しながら、猗々冴々は荷が下りたとばかりに肩をすくめた。

 

「遅いぞ、ヨシツネ」

「わりぃ、諸事情あった。アーサー、四月一日、恩に着る」

「ヨシツネちゃん、さっき朔くんのスキル使ってたよね!? なになにっ、レアスキル!?」

「後で話す!」

 

 そう言うと、ヨシツネと呼ばれた少年は会話もそこそこに駆け出す。それを追いかけるように、刀を持っていた少女もまた走り出した。

 

「ヨシツネちゃん! 片方倒しても復活した!」

「撃破ギミックは同時撃破だ!」

 

 その背に向かって、二人はほぼ同時に声を張り上げる。

 二人の情報に、ヨシツネは視線だけを向けてから大きく片腕を振った。

 

「検証サンキュー!」

 

 最後に謝礼の言葉を残し、二つの背中はアトラクションエリアの方へと消えていく。その後ろ姿を見送ったところで、二人はその場に座りこんだ。

 そのまま、相手の肩を支えに脱力する。

 

「つっっっかれたぁ……」

「ぼく、夜魔堕ち寸前だよ……」

「マジ? 出血デバフ治すアイテムあったかな」

「それくらいなら、普段使いのSAN回復アイテムでなんとか……」

「……ぷはっ」

「……くふっ」

 

 疲弊しきった声で会話をする一方、どちらの顔も難事をやり遂げた達成感に満ちている。互いの顔を見て噴きだした後、視線はアトラクションエリアの方へと向いた。

 

「参戦は……いっか」

「あとはお若い二人でなんとかするだろ」

「おっさんくさい言い方だなあ」

 

 そんなやりとりの後、もう一度笑みを零す。

 今晩の主役(メイン)は、ヨシツネという友人(プレイヤー)だ。

 助演(ゆうじん)の役目はこれで終わったとばかりに、二人は地面に倒れこむ。どちらの表情にも、友人と、彼が恋した少女(エネミー)が負けるという不安はなかった。

 

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