雷ガ咲く花園デ   作:夢現図書館

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悲劇は忘れた頃にやって来る

 

 

 

 バスに揺られる事、3時間。途中でパーキングエリアに寄ったりしつつも特に此れといったトラブルらしいトラブルは無く滞りなく宿泊先のホテルへと到着した。

 ……最も、狐花と言う特大級の原子爆弾を抱えて置いてトラブル無く辿り着けたのが奇跡だと言えた。赤紐角と言う軛が有っても狐花の憎悪を抑え切る事は叶わない。強いて言えば細やかな猶予期間を設ける程度だ。だが、即座に即死級の攻撃が飛ぶまで僅かな猶予があるだけ以前と比べればまだマシだろう。

 そして、狐花の意識が隣に移ろうと言うタイミングで紫先生が長持ちするお菓子を狐花の口の中に逐一放り込んだ為に辛うじて持ち堪えた言える。寧ろ、紫先生が居なければ早々にバスの乗員は全て粉微塵になって土に還っていた。

 

 そして、もう1組の問題児達はと言うと……。

 

 

 

「此処が、宿泊先のホテルか……‼︎」

 

 今回、お世話になるホテルは東京都内にある大型のグランドホテル『アリス・ローズ』。

 現代風のホテルでありながら西洋寄りの雰囲気を持つエントランスからして広大な広さだと分かる。先に荷物を置く為やチェックインの為に先に済ませる事の様であった。周囲を見渡せば順番に生徒達がバスから降りて行き荷物等を下ろしている。

 

「おい、松田、元浜。感慨に耽る前に先ずやる事があるだろ?」

 

 その外見に圧倒される2人を諭すイッセー。そう、狐花と別ベクトルでの問題児組である三馬鹿変態組であった。

 

「お、おう‼︎ そうだったな、俺達には先ずやらねばならない事がある‼︎」

 

「今、鬼教師は他の生徒達の荷物を荷台から下ろす作業をしている……‼︎ 今が好機だ……‼︎」

 

「覗きポイントの下見だ……‼︎ 此処まで大きいならば露天風呂がある筈……‼︎ 其処にはまだ見ぬ桃源郷があるのだならな……‼︎」

 

 イッセー達は教師の視界から外れて一足先に移動する。目的地は大浴場……が、外部から見える場所であった。つまる所、覗き行為を行う為の場所の下取りであった。

 

「行くぞ、松田、元浜‼︎ 湯気に見え隠れする生のおっぱいを拝む為に俺達は行くのだ‼︎ だが、時間を掛けてはあの鬼教師に勘付かれる。行動は迅速にかつ的確に行われなければならない……‼︎ 分かるな?」

 

「「おう‼︎」」

 

 紫先生の手により更衣室の覗きポイントを全て潰された為に欲求不満が募るばかりの3人にとって今回のイベントは見過ごせない絶好の機会であった。3人はエントランスを通り抜けて奥の方へと進む。

 

「大浴場は何処だ……? ゲッ、最上階だと……‼︎」

 

「クソ、時間が掛かり過ぎる……‼︎ 如何する、イッセー。往復までの時間を考えるととても……‼︎」

 

「巫山戯るなよ……‼︎ 俺達の夢……こんな形で妨害するとは……‼︎」

 

 案内図を見て大浴場の位置が本館の最上階でありスペースが限られる。その上、下見しようにも時間が足りないと言う事実に打ちのめされる。

 

「あ、ヒョウたん、マツたん、モトたん‼︎」

 

 その時、後方から野太い声が聞こえて来て3人の背筋が急速に冷え込んだ。冷房が聞いているのに全身から冷や汗や鳥肌が止まらない。

 

「な、なぁ……元浜。今、聞きたくない声が聞こえたんだけど……?」

 

「は、ハハハハハ……何を言っているんだ松田。そんな訳ある訳じゃないか、なぁ、イッセー」

 

「そ、そうだぜ。こんな所に居る筈が……」

 

 振り向いた。其処に居たのは漲る大胸筋、迸る腹筋、唸り上げる上腕二頭筋……そしてはち切れんばかりの魔法少女チックな衣装をその身に纏った筋骨隆々なる大男の軍団であった。そう、以前に3人の心身共に強烈なトラウマを植え付けた『魔僧少女部』の皆さんであった。

 

「3人とも、久し振りうにーッ‼︎」

 

——ぎゃあァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎

 

 3人共、内心では恐怖の悲鳴を上げた。まさか、此処であの悪夢の軍団と出食わすとは思っても居なかったからだ。相変わらずの筋骨隆々な体格でありメルヘン衣装とは余りにもミスマッチ感が否めないまま。

 

「クミたん、クミたん。此処で再会は正に運命うにーッ‼︎」

 

「煩悩が再発してしまっているうにー。此処は一つ、更なる進化を遂げた新必殺技を披露するべきうにー‼︎」

 

「そして、新人達にも手本を見せる絶好の機会うにーっ‼︎」

 

 そして後方からズズイと現れて一言を告げる魔僧少女部の漢達。ビルドアップに勤しんだのか魔法力よりも物理攻撃力の方が上回って居そうなのは変わって居ない。

 

——何で、何で此処に世紀末覇者のミルたんシリーズが⁉︎ と言うか前見た時よりも人数増えてませんかッ⁉︎ と言う新必殺技って何⁉︎ 毎回、新必殺技を考案してんの⁉︎

 

 更に恐ろしい事に前回目の当たりにした人数よりも倍以上に膨れ上がっていた。一クラス分の筋骨隆々のゴスロリ世紀末覇者軍団。威圧感が半端なく剃り上げた頭にはゴスロリチックな飾りが付随しており、明らかにこの場で浮きまくっている。

 

「い、イッセー‼︎ に、逃げるぞ‼︎ あんな地獄、二度と食らいたくない‼︎」

 

「あ、待て、松田‼︎ 俺1人じゃ無理だ‼︎」

 

——どんな防御力を持っても確実に一撃で死ねる‼︎ ハーレムの夢、此処で終わって堪るかッ‼︎

 

「此処で会ったのも運命うにーッ‼︎ また一緒に真の魔僧少女への道を邁進するうにーッ‼︎」

 

——全身全霊全力でご遠慮しますッ‼︎ そう言うのは俺達には早すぎる‼︎ だから、今直ぐに魔界へお帰り下さい‼︎

 

「クミたん、クミたん。マッスルエステ部やマキシムシスター部に捕られる前に勧誘するべきうにーッ‼︎」

 

「煩悩を取り除けばきっと立派な魔僧少女になれるうにーッ‼︎ ユリたんが確証するうにーッ‼︎」

 

「迷えるヒョウたん達を救えるのは私達しか居ないうにーッ‼︎」

 

「皆の気持ち、確かに受け取ったうにーッ‼︎ 此処は部長であるクミたんがヒョウ達を救ってあげるうにーっ‼︎」

 

——救ってねぇぇぇぇ‼︎ 寧ろ地獄へ叩き落とそうとしている‼︎ と言うかマッスルエステとかマキシムシスターとか、明らかに最悪な組み合わせな部活もあんのかよ⁉︎ 嫌過ぎる‼︎

 

「ぎゃああァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎ 松田ァァァァァァァァァァァ‼︎ イッセーェェェェェェェェ‼︎⁉︎」

 

「「も、元浜ァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎」」

 

 逃げ遅れた元浜は魔僧少女部の部長であるクミたんに頭を鷲掴みされる。身長差がある為に軽く持ち上げられ足が地上から離れる。そして——。

 

「クミたん、新必殺技……」

 

 

 

 

嘛旹神榴(マジカル)蘇虚流医々娜翹(そうるいーたー)‼︎‼︎」

 

 

「ギィヤァァァァァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎」

 

 

 目を見開いたクミたんはそう技名を叫ぶと同時に元浜の悲鳴が響き渡る。そしてその身体が上下左右激しく暴れ揺れる。その動きに合わせて叫び声も激しくなる。と言うか以前に松田が食らった技と殆ど同じ光景。違いがあるとすれば眼鏡が割れかけて居ると言う事か。

 

「「も、元浜ァァァァァァァァァァァ‼︎⁉︎」」

 

——何か、口から煙らしきモノが出ているんだけど‼︎ まさか霊魂⁉︎ 霊魂を搾り出されているのかッ⁉︎

 

 クミたんの手から離れた元浜は力無くその場に倒れ込んだ。

 

「も、元浜‼︎ しっかり、しっかりしろ⁉︎ 此処で死ぬ運命じゃないだろ⁉︎」

 

「そ、そうだぜ⁉︎ 俺達のハーレム道は始まってすら居ないんだぞ‼︎」

 

 倒れた元浜に駆け寄る2人。身体を強請ると意識を取り戻したのか元浜が身動ぎしながら起き上がる。

 

「お、俺は……元浜。い、いや……違う……? 魔僧少女のモトたん? って、違う‼︎ 俺は元浜‼︎ 絶対に魔僧少女になりたくねぇ‼︎」

 

——嘘だろォォォォ⁉︎ 洗脳されているぅううぅうぅぅ‼︎⁉︎ 自分が魔僧少女だと思いかけて居るゥゥゥゥ‼︎‼︎ 洗脳を物理的にやるとか鬼かァァァァ⁉︎

 

 一瞬であっても元浜は自分が魔僧少女だと思い込みかけていた。その事実にイッセーは戦慄した。以前は煩悩を奪われるだけだったが、今回は完全に洗脳されかけていた。物理攻撃で洗脳とか最早、訳が分からなくなる。前回よりも明らかにパワーアップしているのは確かだった。

 

「新必殺技はまだまだ改良の余地ありうにー」

 

「此処は1つ、魔僧少女部の初代部長が編み出した究極魔法しか、効果が無いのかも知れないうにー」

 

「しかし、その魔法は真の魔僧少女にしか使い熟せない……極めて高度かつ熟練が必要な真の魔僧少女にしか許されないうにー……私達は未だにその片鱗すら辿り着いていないうに」

 

——何か言っているけど、恐ろしい内容だから聞きたくねぇ‼︎ って、今がチャンスだ‼︎

 

 イッセーは会話して相談している魔僧少女達を尻目に松田と元浜を引き摺る様な形でその場を離脱したのであった。

 

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