【悲報】転生したらしいんだけど秒でオークと鬼ごっこしてる【どこここ?】   作:火壁

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明けましておめでとうございます(5ヶ月半経過)
アクション対魔忍で舞華実装なので初投稿です(1ヶ月経過)


初任務の結果

 安価によって基地内を探索していた賢斗は先に侵入し捕まっていた神村舞華を救出する。しかし彼女を牢屋から出した直後に姿を表したのはゆきかぜを脇に抱えた大柄な男だった(前回のあらすじ)。

 

「お前がここのボス……でいいんだよな?」

 

「察しの通りだ。部下がこの短時間で半分以上もやられたからどんなやつが現れたのかと思えば、対魔忍で強いのと言えば女ばかりと思ってたんだがまさか男とはな」

 

 男の体躯は賢斗より一回り大きく、入り口の扉を覆わんとする程である。

 

「まあいいさ。得意先の中にはお前みたいな顔の良い男を犯すのがいいとかいう変態もいる。顔は狙わないでおいてやるよ」

 

「ヒェッ」

 

 男の台詞を聞いて賢斗は尻を引き締める。対魔忍は女性が凌辱されるシーンが多いが、中には自らの男性上司を狙う男も存在している。

 

「まあ慌てるな。最初は誰しも嫌がるもんだからよ、まずはゆっくりと調教してやる。挿れる穴はキツいのが人気だが、そもそも入らねえと意味無いから穴調教しねえとな」

 

 男は下卑た笑みを浮かべ賢斗を見る。十人中九人の男が見かけたら振り返るようなボディを持つ舞華を無視して賢斗に卑しい視線を向けたこの男はホモなのではとスレが沸いた。

 

「それはお断りだ。俺はヤるんなら女が良い」

 

「それは俺もだっての。だがお前が俺の邪魔をするってならお前らを帰すわけにはいかない。だったらどっちかがぶっ倒れるしかあるめえよ」

 

 男はゆきかぜを抱えたまま拳を構える。賢斗も舞華を庇うように術を撃つ構えをとる。舞華は自身の武器が無い為、歯噛みしながら賢斗の後ろに隠れた。

 

「じゃあ……いくぜええええええええええええええ!!!」

 

「ラウザルク!!!」

 

 身体強化の術を唱えた賢斗は男の拳に合わせるように自身の拳を突き出す。生身の男と身体強化をかけている賢斗では賢斗に軍配があがるのは明白であった。

 

「ぐうおおおおお!! な、中々やるじゃねえか」

 

「……お前、どうやってゆきかぜぶっ倒したんだ」

 

 男にそう聞いたのは舞華であった。ゆきかぜと同級生である舞華は、ゆきかぜの能力やその活躍を知っており、【雷撃の対魔忍】と称される強さからただやられるとは思えなかった。

 

「勘が良いじゃねえか嬢ちゃん。俺の力だけじゃ確かにこのチビを仕留めるのは無理よ。だがここは魔族のお得意さんもいるんだぜ」

 

「まさか、クスリか!」

 

「こんなチビに使う事になるとは思わなかったけどな。おかげで身体はガタガタな上にお前に向けてそのクスリも使えねえ。だから!」

 

「っておい!さっきの脅しはどうしたんだよ!」

 

 先程までの威勢はどこへやら。男は翻って反対方向へ走りだす。その男を守るように生き残っていた構成員が賢斗の前に立ちふさがった。

 

「な!まだこんなに……」

 

「くそっ!ゆきかぜ!起きやがれ!!」

 

 舞華が叫ぶが、聞こえないのかゆきかぜは目覚めない。そうしている間にも男は賢斗たちとの距離を開けていく。

 

「くそ!ザケル!!」

 

 賢斗が構成員に向かって術を放つが焼け石に水。わらわらと群がる構成員によって文字通り肉壁が形成されていす。

 

「ザケル!! ザケル!! ああもう邪魔くせえ!ラウザルクで一気に」

 

 賢斗も『金色のガッシュ!!』原作を読んでいた為、自分が術を放つ為に必要な力が魔力か原作になぞらえた『心の力』か、それともこの世界に準じて『対魔粒子』なのかを見つけられずにいた。構成員を倒す際には消費を抑えて立ち回っていたが、この場では悠長な事は言っていられない。未だ蟻の如く増え続けている構成員に舌打ちをする。

 

「いいえ、ここは私に任せてください」

 

「な……?」

 

「なんだ!?」

 

 この中の誰とも違う声音が響く。賢斗と舞華が振り返るよりも速く紫色の線が幾本も構成員の身体に絡みつく。

 

「うーん、初めてにしては及第点といったところですね。敵を倒すのは確かに重要ですけどそれで足元を掬われたら本末転倒です。役割分担をしていったのは良い策だけどそれは基地内の情報が正確な時、その作戦に適した子がそれぞれいてその子の欠点をカバーできる子を組ませられる時が望ましいです。……まああそこじゃそんなの望めようもありませんが」

 

「あ、あんた……まさか」

 

「えっと、リアルでははじめましてですね。イッチさん

 

 

 

 

 影糸姉貴と言えばわかりますか?」

 

 賢斗の後ろにいた女性はこの場に似つかわしくない修道服の出で立ちであった。しかし、その修道服も布ではなく鎧のような光沢が見える。先程伸びた線は彼女の背中から伸びていた。

 

「あ、貴女が……影糸姉貴?」

 

「はい。本名は『井河核原(いがわかくげん)』と言います。女性らしくない名前なのは後で説明するということで、大丈夫でしょうか?」

 

「は、はいそれは……ってゆきかぜ!」

 

 突然の助っ人の登場に呆気に取られていたが、まだ男はゆきかぜを背負い逃走を続けている。見れば男は奥の突き当りを曲がるところであった。賢斗もそこから牢屋まで来ていたため、その先に地上への階段がある事を把握している。

 

「まずい!ラウザルk「大丈夫ですよ。あそこにも仲間がいますから」え、まだいるんですか?」

 

「というよりあなた達と入って来たのですから、覚えてあげてください。今ここにいないのは誰でしょうか?」

 

「俺達と……あっ」

 

 ここまで話題に出なかった少女を一人思い出す。ゆきかぜと共に探索をさせていたが、自分なりに人でなしだと頭を抱えた。

 

「ぐうああああああああああああ!!」

 

「……噂をすれば。ってやつですか」

 

「あの子だって対魔忍ですから。ゆきかぜちゃんの判断はある意味では正しかったですよ」

 

 男が吹き飛ばされた先にはゆきかぜと行動を共にしているはずの篠原まりであった。しかしゆきかぜを背負い、自身もそれなりの重量があるであろう男を殴り飛ばすまりの膂力はどこから来るのだろうかと賢斗は思案した。

 

「ゆ、ゆきかぜさんを離してください!」

 

「ま、まだ仲間が、いたってのかよ……」

 

「なんかトントン拍子だけどヨシ!ラウザルク!!」

 

 身体強化の術を唱え、残りの構成員を殴り飛ばしながらまりの下へ飛ぶ。男は既に戦える状態では無いが、ここで油断してはいけない。

 

「えっと……この後ってどうすりゃいいんだ?」

 

「奴隷商人の場合は売り飛ばした奴隷の皆さんの情報を吐かせるために五車へ送ります。後は顧客情報がどこかにあると思うのでそれを探しておしまいです」

 

「そうなのか。ということで教えてくれるとありがたいんだが」

 

「へへ、部下も粗方やられちまったし、分かったよ。地下二階の書庫にある。そこまで量はねえから一度でいけるはずだ」

 

「それを信じられる要素は?」

 

「こんな状況で嘘言ったら殺されちまうって。それに俺だって所詮は組織の末端。そっちである程度身の安全を保障してくれりゃ鞍替えだってやぶさかじゃねえ」

 

「随分とあっさり見限るんですね」

 

「元々上のやつが嫌いだったからな。こうなりゃお前らに潰してもらった方が気が楽になるってもんだ」

 

 男はカラカラと笑うが、情報を話した後この男は少なくとも奴隷として売り飛ばされた女性の家族に袋叩きにされるのは別の話。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 地下二階には男の情報通りに奴隷を買い取った顧客リストが見つかり、男含め生き残った構成員は回収班に連行された。意識が戻ったゆきかぜとまりは、舞華同様基地で監禁されていた女性たちを五車の医療班へ連れていくために山を下りた。賢斗は行くところがあると理由をつけ、核原と山に残り、賢斗が最初に目覚めた場所に賢斗の荷物を取りに来ていた。

 

「さて、では改めて自己紹介ですね。私の名前は井河核原。井河本家の遠縁にあたる家系の出で、影遁を使います。イッチさんのライブから近場だと判断できたので挨拶も兼ねて助っ人に来ました」

 

「さっきは助かりました。イッチの高嶺賢斗です。でも井河さんはその感じ憑依……って感じですよね?」

 

「そうですね。過去にスレで相談したらそこでは憑依転生と判断されました。まあ前の名前覚えてますし死に際も覚えてて……最初は何度も吐いてましたね」

 

 頭を掻きながら笑うが、賢斗にとっては笑い事ではない。死に際については自分も覚えており、その事についてはあまり思い出したくない。熊に腹部を切り裂かれた痛みは五体満足の今でも感覚を覚えている。

 

「そういえばスレで五車学園に近づけないって言ってましたけど、ここは大丈夫なんですか?」

 

「丁度任務も終わらせたので今はオフなんです。それで後輩がどんな戦いをしてるかなと思って来ていたんですが」

 

 核原はふうと息をついて真剣な表情になる。これから戦いに身を投じる者へ安い台詞は無用。今回の反省だけを伝える。

 

「さっきも伝えましたが戦って敵を倒すというのは確かに肝要です。しかし、それに気をとられて仲間を人質にとられてはどんな優勢もあっさり返されます。相手はこちらのカードを奪ってそれを交渉に使えるんですから。自分が暴れることでヘイトを集中させ、その間にボスを叩くのはゲームでは優良手ですが実際の戦闘となれば実力が無い、又は返される手段を抱えられている可能性がある場合は消耗戦覚悟でもまとまって行動しなさい。今回はゆきかぜちゃんがまりちゃんに指示したそうなのでイッチさんが把握できていなくても仕方ありませんが、そこまで考えてこそ指示を出せるというものです」

 

 賢斗としてはゆきかぜがなぜまりに離れるよう指示をしたのかは想像できた。自分の雷撃に巻き込まれないようにするためなのだろうが、それで負けてしまってはネット民の玩具となるのは仕方無い。

 

「まりちゃんも常人よりは強いので多少の無理はききますが、責任感が強い子です。今回の件もゆきかぜちゃんについていればと感じてしまうかもしれません。そこまでのケアもできてこそブレーンですよ」

 

 遠まわしに「お前指示出すの下手過ぎん?アフターケアまでやって一人前ってそれ一番言われてるから」と煽られているように感じるが、実際傍から見ればそのように映っていたのだろうと歯噛みした。

 

 自分は同じ苗字でも清麿のようにはなれないのだと突きつけられているように感じたのだ。

 

「しかし、それは追々考えていきましょう。どうせまともな訓練もできずに放り出されたのでしょう?」

 

「え?」

 

「アサギさんの考える事です。善は急げと言わんばかりに貴方を試したかったんですよ。私の時もそうでしたから」

 

 聞くところによればアサギは自分の後進育成ができずに焦っているとのこと。アサギの若い頃、若さ故の過ちを犯してきた。それ故にこれからの世代には慎重さを持って欲しいようだが、皆の憧れは悪を絶つ最強の対魔忍。必然的に任務はパワープレイで押し切るようになってしまった。今回の事態はもしかすれば若い対魔忍への刺激になるのではないかと核原は考えているようだ。

 

「ですのでイッチさん……高嶺さんには今回のようなパワー依存の戦略よりもジケルドなんかの搦め手を頑張ってほしいです。折角色々あるのに使わないのは勿体ないので」

 

 勿論私も訓練には付き合いますよ!と付け加えてくれる辺り、彼女も対魔忍の現状は憂いているようだ。

 

「分かりました。その時になったら連絡させてもらいますね。……あ」

 

「どうしたんですか?」

 

「こっちに対応してる携帯持ってない……」

 

 そう、昨日の今日で即任務に連れ出された賢斗は生活必需品はおろか、連絡手段の一つも確保できていない。核原も頭を抱えていた。

 

「まあそうですよね……ではこれ私の携帯番号です。電話環境が整ったら連絡してください」

 

「……何から何まですいません」

 

 賢斗はアサギからどうにかして電話できる術を確保しなければとこれからの予定を定め、核原と共に山を下りていった。




お久しぶりです。仕事のストレスで死んでました。ちょっとずつ慣れてきたのでRPGのストーリー読みながらやっていければと思います。
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