憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意)   作:謎のコーラX

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自分の文章力試し


序章
死亡――そして憑依 (導入一部変更)


こういうことがよくあるとは思う。

 

自分ならこうしていた、自分ならこうできていた、自分ならこうはならなかった。

 

他人にできず、自分にはできる。逆も然り。

 

――だが、お前はそうなったら実行できるかな?

 

 

ある昼下り、太陽は落ちていき、暗くなり始める頃合いだ。ある会社員は帰宅途中、楽しみのある本を買おうとうきうきとした、スキップしそうな足取りで本屋に向かっていた。

 

本の名前は――「転生したらスライムだった件」、ある会社員が先輩から聞いた話から作られた小説であり、発行部数百万本に到達した今流行りの大人気小説である。

 

「ふんふんふーん」

 

会社員の名前は明沢涼真(アケザワ リョウマ)、そのある会社員の後輩にあたる男であり、転生したらスライムだった件、略して転スラの大ファンだ。

 

そのまるで非現実的ながらリアリティのある内容にリョウマはのめり込み、主人公が魔王へと覚醒し、ある敵と相対し、それを圧倒するところまで読み終えていた。

 

その敵キャラは「クレイマン」、小物としか言えないが頭のいいという設定の主人公と同じ魔王であり、その実力はその主人公の部下にも負ける弱さだ。

 

しかしリョウマはそのクレイマンは良いなと思っている。理由は様々だが意外と仲間思いなところもあり、だからこそあのような行動をしたのが残念でならない。

 

「あー、俺ならあの時自信過剰にならなかったと思うな、それに部下も大切にして、質も上げる。うーんこういうの良いな、色々と想像できて、もしやこういう楽しみもアリってか?」

 

考え事をしながら、駅へと入り、ホームの線の前で新幹線を待つ、それに乗って、降りた後、家の近くの行きつけの本屋で転スラを買い、また自分ならこうするなどを想像、妄想をするのが楽しみでもある。

 

――ところでだ、リョウマは優秀と言っていい、仕事はそつなくこなし、若いながらも成績は順調に伸びていき、このまま行けば偉くなるのは確実だ。しかし本人はそんなことは考えているわけではない。ただ本と家賃諸々を払えれば後はどうでもいい……だからこそ。

 

敵は多いというものだ。

 

「リョウマァ!」

 

ドスン、勢いよく背中を押され、リョウマは線路へと落ちていく。

 

後ろを向くとそこには、リョウマが来る前まで優秀と、部下からはハイエナなど呼ばれる偉そうな態度をとっていたが、今はリョウマの部下がいた。

 

その顔は人を落としたことの罪悪感より――愉悦感が顔に出ていた。

 

「……まじかよ」

 

地面に受け身を取れず激突し、脚から鈍い音がして、激痛が走る。折れた。そう認識できる痛みだ、つまり自分ではもう逃げることはできない。

 

新幹線の音が聞こえる、時間はない、まわりでは部下がとりおさえされ、パニックが起きている、誰一人として助けようとはしない、ただ見ているか、騒ぐだけだ。

 

「あの!駅員さん!助けてください!」

 

声を上げるが、パニックの声でかき消されているのもあるが、痛みで声を張り上げられない。肺にもダメージがあるのかもしれない。

 

「はは。くそ。こんな人生かよ俺って、まだ転スラ最後まで見れてないのに……」

 

《転生したらスライムだった件――検索――完了。世界座標指定――完了》

 

「ん?」

 

不思議な声が聞こえる。電子音声、あえてあげるならVOICEROIDというものに近い。

 

「幻聴?……はは、死に際ってこんな感じなんだな。なら今のうちに後悔を並べてみるか」

 

新幹線のライトの光が近づいてくる。距離からして新幹線到着まで――残り十秒といったところだが、異様なほど早い速度で冷静な思考で紡いでいく。

 

(まぁ最初はあれだな、人の見る目の無さ、もし悪意が見えたらこんなことにはならなかったなうん)

 

《人の業視認スキル受託――確認――完了。業視者(ミサダメルモノ)獲得》

 

(後、クレイマンだったか、俺もまさか怪しかったとは思っていたけど似たような末路だな。信じすぎたな……これさっきの考えと同じやん。後悔じゃないなうん)

 

《名指し個体への憑依への受託――確認――完了。個体名クレイマンへの憑依実行》

 

(あぁ、親族と呼べるものはもういないけど……心残りはやっぱり転生したらスライムだった件と、先輩とか、後先輩の先輩の人と会いたかったなぁ)

 

新幹線が目の前で近づき、時間が遅くなったかのように思考が加速していき、それは走馬灯と呼べるものだった。

 

「死にたくねぇなぁ」

 

そこでリョウマの意識は途絶えた。

 

 

天文学的確率だった、リョウマの魂は次元の穴へと縫い針に糸を通すように入り、勝手に、まるで吸い込まれるかのように移動していき、ある者の身体にはいりこんだのであった。

 

身体が痙攣する、玉座の上でその者は異物への拒否反応からか、最後の抵抗か、バタバタと身体を動かし、口からは言葉とは呼べない苦悶の声をあげる。

 

――目を開ける、そこは部屋で一番高い場所だった、玉座に座り、下には人、と言うには肌は黒く、耳は尖っていた。

 

「ここは……?」

 

「あ、あの、()()()()()()?」

 

クレイマン、その名を聞き、玉座に腰掛ける自分――クレイマンは驚いているが、何故か自分が冷静な思考だった。

 

え!?クレイマン!?。そう口から大声をあげると思っていたが、まさに自分の身体ではないような感覚である。

 

(むぅ、クレイマン、あのクレイマンだろうな。憑依?したのはわかるが、今がどの辺りだ?自分の実力は?いろいろとやることがあるが、とりあえず行動しないと始まらないか)

 

「あぁ、なんでしたっけ、そもそも貴方は?」

 

「……」

 

(あれ、まずったか?)

 

驚きは一瞬、すぐに目の前で跪く家臣というには幼なすぎる褐色の少女は感極まった表情となり、笑顔で涙を流し始めた。

 

「あぁ!クレイマン様!ワタクシのような下賤で卑しい雌の名前を聞いてくださるとは!あぁすみません、ワタクシ無名のダークエルフなので……そういえばクレイマン様、前に貴様には名など必要ないと言っていたような?」

 

(え、なんなのクレイマン、こんな少女?いやダークエルフだから年上の可能性がありますか。いや精神年齢は年下かもしれないけど、とりあえずは)

 

「えぇ、覚えていますよ、少し不便だと思い名付けをしようと思います」

 

咄嗟とはいえ、滑るように口が回る、流石クレイマンだと自分の今の身体を褒めると、更に少女はなんとも凄い表情になる。言ってしまうと顔の体液が全放出状態。

 

「名付け!?わた、ワタクシめにそのようなことを!?ワタクシ何もしていません、何も貢献できておりません!雑務や掃除程度の当たり前のことです、あぁ、でも嬉しく思いますぅ」

 

(し、知らない、こんな濃いキャラ転スラにいたか?)

 

その少女に疑問を思っていると、まるで完全にこのクレイマンの身体が馴染んだかのように、いやそうなのだろうが、知らない記憶が脳を焼くような勢いで溢れ出てくる。

 

「ぐぅっ!」

 

流石に平静にはいられない痛みで頭を抑える。少女は心配そうに慌てているが、その痛みもやはり身体のおかげか徐々に慣れていき、痛みは続いているものの冷静な思考ができるようになっている。

 

(……ふぅ、とりあえず目の前の少女について思い出した分の情報を出していこうか)

 

ダークエルフの少女、名無し。元のクレイマン曰く奴隷254号。

 

唐突に自分を売り込みに来た少女であり、家事全般を幼い見た目ながら平均以上にこなしていく。

 

その忠誠心が何処からくるのかクレイマンも悩んでいた様子のようで、しかし便利な奴隷ということで今でも使い潰す勢いで働かせていた。

 

この場に呼んだのは労うためではない。鬱陶しく思い気まぐれに殺すためだ。

 

「あの……二度目ですが大丈夫なのですか?」

 

その瞳は純粋そのものの青さであり、とても殺す気にはリョウマはなれない。

 

「いえ、少し疲れが出てるだけです、それよりも」

 

(なるほど、うーん命が軽いね本当に。ようするに謎のダークエルフの少女っていうのがわかった。たぶん転スラにいないのはこうやって消されたからですね)

 

「名前……そう名前でしたね、何か望む名はありますか?」

 

「ご自由に、ワタクシなどに選択など恐れ多いというものですゆえ」

 

「そうか、それなら勝手に決めさせてもらいますね」

 

肌も髪も黒く、その中で輝いているのはその青、というより藍色の瞳であり、まるで闇夜に浮かぶ月のようだとリョウマは思う。

 

「……蒼月……いや藍色だから藍月……丸い瞳……月輪……よし」

 

リョウマ――クレイマンは名前を決め終わり、大きな声で少女に告げる。

 

「お前の名前はアイリーンだ」

 

藍色の月輪でアイリーン、なんとも考えた結果としては単純な名前だ。

 

(確か名付けって魔素取られるとかだったか、オーガでもない普通のダークエルフだから安く済むとは思うがどうなるか)

 

そんな甘い考えはすぐに覆る。

 

名付けの瞬間、クレイマンは身体から大量に抜けていく感覚を覚える、献血のようだなと思いつつ、頭がクラクラとしながらも少女、アイリーンを、見据える。いったいこれほどの量の魔素を取り込み、どんな美女になるのかと期待してはいるが。

 

魔素が抜けるのか終わり、アイリーンから発せられた光が消えてもいっこうにアイリーンの姿は変わる様子はない。

 

「――ありがとうございました。このアイリーン、これからも粉骨砕身の覚悟をもってクレイマン様にお仕え、いえ隷属します!」

 

気絶する様子もなくハキハキとアイリーンはそう言葉を途切れることなく紡ぐ。

 

(おかしいな、ゴブリンとか老人がムキムキになるとかあるのに、いや何も変わらないやつはいるにはいるか)

 

――遠いようで近い将来、このアイリーンという少女が最高戦力の一人になるとは一ミリともこの時のクレイマンは思いもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




(´・ω・`)導入部分変更しました。ツッコミありがとう、多分まだ粗がある
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