憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
あれから一日が経過し、ミュウランとアダルマン、ピローネの五本指。
「いったい、どうなるのかな」
「わかりませんな、我はどのようなクレイマン様でも、構いませんが」
「ジブンは何時ものクレイマン様かなー」
「オレも同じく。ツヴァイはどうなんだ?」
「アタシはそうだねー、ちょっと意外性あってもいいかもとか思ってるね」
各々がクレイマンがどうなるか喋っていると、繭に変化が起こる。
それに皆気づき、再び沈默する。
繭が輝きだし、糸がクレイマンに戻っていく。
糸が全て戻ると、クレイマンの姿が顕になる。
オールバックの髪は地面に届くほど長く、より透き通るような美しさが。容姿が特に変化している、スーツがかなりブカブカになっており、元のクレイマンが二十代後半の大人なら、今のクレイマンは十代の少年となっていた。
知的な雰囲気を残しながら、顔立ちもかなり変化し、面影が殆ど無い。しかし
ゆっくりと降下していき、玉座へと鎮座する。放たれる
神経質そうな目つきは鳴りを潜め、瞳の色は銀色に変わっており、その見た目も相まって神々しさすら感じさせる。まだ起きていないのかその視線は下を向いている。
視線がミュウラン達に向き、皆緊張しながらも綺麗に跪く。
ミュウランはあの無機質な声が頭をよぎり、より顔は強張り、冷や汗が流れる。
「う……」
「う?」
瞬間、クレイマンの目から大粒の涙がこぼれ始めた。
「うわぁぁぁ!みんなごめんよぉぉ!」
声も高くなり、まさに子どものようだと皆一様に驚きの声を上げる。
クレイマンは身体能力が上昇してるせいか、一瞬にしてミュウラン達のほうへ距離を詰め、ミュウランを抱きしめた。
「ミュウランごめん!今まで苦労かけたね、これからはより待遇もよくするよ」
「え、えぇ」
次にアダルマンに。
「こんな私を神と慕ってくれてありがとう!私もっと貴方の期待に応えるよ!」
「あ、ありがとうございます」
続いて三人のドラゴニュートをまとめて抱き寄せる。
「三人も私は何もしてないと言っていいのに仕えてくれてありがとう!こんな私だけどこれからもお願いしたい」
「お、おう、大将?」
「み、皆ジブンみたいになってる。いや確かにこれはこうなるよね。クレイマン様どうしたの?」
「あらやだクレイマン様カワイイ」
アインとドライが驚く中で、ツヴァイはクレイマンの容姿に頬を染めていた。
「あ、ピローネもお疲れ。貴方がいなかったら魔王になれなかったよ」
「なんか雑ですね……」
一通りお礼を言い終わるとクレイマンは玉座へと再び座る。
ミュウランはクレイマンに皆が思ってる質問を投げかける。
「クレイマン、貴方性格変わった?」
「何も変わってないよ?というよりこれが私の
「い、いやいいわ。別に嫌ってわけではないんだし」
「そ、ならいい。あ、アイン、ツヴァイ、ドライ、貴方達強くなったね。ヴィオレとも戦えるんじゃないか?」
「そうですね。アタシ達も
「ふむ、そういうものかな。あぁそういえばミュウラン、アイリーンは無事か?正直今すぐ会いに行きたい気持ちで満たされているんだが」
「あぁ、それなら」
ミュウランが言う前に、ミュウランの後ろの扉が開かれた。入ってきたのは
一人はヴィオレ、もう一人はクレイマンは見覚えがない。いや、身体の関節部分が球体、腕が六本もあるから魔人形なのは間違いない。
しかしその顔は
「え?誰?」
クレイマンにそう言われると魔人形らしき女性は驚きの顔となり、涙は出てないが悲しそうな表情を浮かべる。
「エ、ワタシのことをゴゾンジナイ!?ワタシですよ!
「え!ビオーラ!?」
その名前は知っている。ゴテゴテの武器防具もりもりの魔人形、曰く、クレイマンの最高傑作らしいが、やはりセンスが合わなく、余計な武器防具を外して放置していた。
それが今、目の前で喋り、悲しむというよくわからない事態が起きていた。
〘お伝えします。
まったく知らない声が脳内に響く。いや、クレイマンは、リョウマは知っている。
(死ぬ前に聞いたあの声か?)
〘半、正解です。リョウマ様にお与えしたユニークスキル、
(なるほどね……完全ではないがどちらも納得した)
驚きはあったが、ようやく最後の一人に目線を向けられる。
「……良かった。復活したようだね、アイリーン」
その姿には変化はない、ただ部分的には変化はある。瞳には紫色の瞳孔、髪の先端部分は紫色に変わり、
クレイマンが駆け出す前に、それよりも早く駆けてアイリーンがクレイマンを抱きしめた。
「ご無事でなりよりです。クレイマン様」
「あぁ、これからはもう貴方を心配などさせないよ」
「……あのー、進化おめでとう。クレイマン様」
ヴィオレの声で我に返り、アイリーンとクレイマンは離れ、アイリーンは玉座の下で跪く。
「あぁ、ヴィオレ、貴方は進化してないみたいですね」
「まぁね。そもそも名付けもされていないんだけど」
「ふむ……」
クレイマンは少し思考した後、ようやくできそうだと思い、それを口にする。
「名付け、今ならできるかもね」
ヴィオレはそれに嫌な顔をせず、むしろ笑みを浮かべ、初めてクレイマンの前で跪く。
「……うん。今の君ならボクも賛成できるよ。なんて名前にするのかな?」
「そうだな……」
クレイマンはヴィオレを見て、すぐにその名前が思い浮かんだ。少し不自然なくらいに。
「
その瞬間、ヴィオレ改め、ウルティマの身体が紫色の渦の中に消える。
(既に強かったウルティマが、いったいどのくらいなるのか。もしかしたら私より強かったりするかな)
「――改めて、ボク、ウルティマはクレイマン様、君に忠誠を誓おう」
渦が消えると、そこにはスカート付きの紫の軍服を着たウルティマが立っていた。
容姿こそ変わりはないが、やはり
「さて、残りの二人の悪魔にも付けるとして、進化してすぐに思っていた提案をする――名を変えようと思っていたんだ」
「名をですか?」
「あぁ、アイリーン。クレイマンの名前は残すつもりだ。いわゆるファミリーネーム的な感じでな。でだ」
クレイマンは立ち上がり、手を突き出した。
「私はこれより、アニス・クレイマンと名乗ることにする!異論があるなら立って示してほしい」
それに皆は何の反論もなく跪き、アイリーンが賛同の声をあげる。
「承りました。アニス・クレイマン様。これからも我ら、絶対の忠誠をここに」
○
クレイマンの進化の日の夜、アイリーンとウルティマはベランダにいた。
「アイリーン、君、ボクに言ったよね。クレイマン様は大成する。百年以内って、百年もかからなかったね」
酒を飲みながら、ウルティマはクレイマン、いや、アニスの物理的な力によって晴れた星々を見ながら、アイリーンと雑談を交わしていた。
「えぇ、ワタクシも予想以上に早い進化でしたよ。正直言ってしまうとワタクシが死んだあとだと思ってました」
「それはまた、随分と長い目で見てたみたいだね。でも今の君には寿命がないようだ。姑息にもボクの魔素を喰った影響かな?その進化も含めて」
アイリーンは笑いながら、いたずらっぽい笑みをウルティマに向ける。
「あはは!それは貴方が与えていたからでしょう?知ってるからね。貴方がワタクシが死にかけの時に手を繋いて魔素を分け与えて延命させていたこと」
「なっ!そんなことボクがしてるっていう証拠は……あぁうん、その姿が証拠だったねうん」
アイリーンは
「……感謝してるよ。ウルティマ。ワタクシが今ここにいるのはクレイマン様、いや、アニス様と呼ぶべきでしょうか。ワタクシはアニス様だけの力でここにいるのではなく、ウルティマ。貴方がいたからここにいると思っています」
「――!」
ウルティマは何も言わずにそっぽを向く。その耳が赤くなっており、アイリーンはそれを今まではしなかったであろう小悪魔的な笑みを浮かべながら、酒を飲む。
「初めてお酒飲みましたけど、意外と美味しいんですね」
○
大団円の裏側。ジスターヴの地下牢獄にてコウエイは囚われていた。
「クソが、俺がこんなことになるなんてな。これも全てあいつのせいだ!」
コウエイは瞬きをする、その瞬間、一人の人影がコウエイの目の前に現れた。
黒いローブで体を隠し、顔はフードで見えないが、コウエイは見覚えがあった。
「シッパイシタヨウデスネ」
その声は老若男女、あらゆる人の声が重なった不可思議な声で、コウエイはやはりと思い、声を荒げる。
「てめぇがあんなやつのいる場所を教えたからだろうが!今なら俺をここから出すなら許してやるよ」
「……イイヨ」
「へっ、なんだよ話が――」
コウエイは悪寒が走る、しかし逃げることはできず、それは始まってしまう。
目の前の者の身体から黒いスライムのような粘液が放出され、コウエイを飲み込んでいく。
その黒い粘液には目や口が存在し、なんとも言い難い声が発せられる。
「うわぁぁぁ!?な、なんだよ、なんなんだこれはぁ!」
悲鳴を上げても助けはこず、鎖によって魔法を使えないため抵抗もできずにコウエイは飲み込まれていく。
顔だけになり、ついにコウエイは許しを請う。
「た!、助けてくれよぉ……ナイ……ア」
無慈悲にコウエイは飲まれ、黒い粘液は持ち主に戻っていく。
あるのは黒い液体のみ、その者は踵を返し、牢獄を出ていく。
「少しは使えると思ったのに残念残念。ふふ、テケ・リリ」
一人の中性の声が発せられ、不思議な笑う声が木霊し、その者が消えると、牢獄に再び静寂が訪れるのであった。
To Be Continued……
(´・ω・`)転生したらスライムだった件でいう一巻目の章完結です。
たぶんここまでの人が見てなかったら途中でエタッてる。
アニス・クレイマンになったけど憑依したらクレイマンだった件というタイトルです。
まぁ転生したらスライムだった件もスライムが人に擬態してるからセーフ?