憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
紹介も終わり、最後の議題、というよりは事後処理に近い内容だ。
「さて、最後にやるべきことがあるな。領土問題だ」
ギィに目配せされ、緑髪の女性の悪魔が大きな世界地図を持ってきて、それを皆に見えるように円卓の真ん中に広げる。
「そういえば傀儡国ジスターヴって東の帝国の近くだったわね。アニス、防衛設備、戦力はちゃんとしてるのかしら?」
呼んでいないのにいつの間にかフレイとカリオンがアニスの席の隣で地図を見ている。アニスは驚きもせずに防衛について話し始める
「あぁ、その辺は抜かりない。人形兵士もざっと三万は用意できたし、アダルマンのアンデッド軍団で下手な戦力で攻め切ることはできないだろうさ」
「ほう。その人形兵士がどの程度か知らないが、また今度見させてもらうとするか」
カリオンのその言葉に、アニスは何か思いついたような笑みを浮かべる。
「そうだな……やっておくべきか。カリオンさん、フレイさん、外交官を送り合わないかな?」
「ほう?」
「ふむ、聞かせてちょうだい」
二人の同意を得て、アニスは語り始める。
「目的としては相手方の民の信用、信頼を得るのもあるが、何か部外者にしかわからない穴とか、こちらに足りない設備とかいろいろと知るためにも、必要じゃないかって」
「なるほどな。その提案乗るぜ!」
「そうね。私達だけ貴方を信用しても仕方ないしね」
「おい!ならワタシも混ぜてくれなのだ!」
三人の魔王の問題に、ミリムが席から乗り出して手を挙げる。
「あぁミリムか。そうだな、ミリム領土も加えておかないと道が面倒だし。同盟を結ばないか?」
「いいぞ!」
即答で返ってくる。一瞬の迷いなくだ。流石に少しアニスも驚いていた。
「即決ですか。まぁそのほうが話が早いんですが、貴方のところにも一人外交官を送ったほうが良さそうですね」
「良いぞ。ギィも文句はないか?」
「好きにしろ。さて、これで領土問題は終わりか?」
「いや、最後に一つ、国の名前について私から」
「なんだ、アニス。また他の奴らから名前を決めてほしいのか?」
「いや決まってますよ。最初から傀儡国っていうのが気に入らなかったですから。これから私の国の名前は……人形国家ジスターヴにします。まぁそれだけです」
○
魔王達の宴も終わり、円卓にはギィ、ルミナス、そしてレオンが残っていた。
「どうだ?お前らから見てクレイマン、アニス・クレイマンは」
ギィはまず、レオンに目線を向ける。
「……勝つか負けるかはわからぬが、無事では済まない実力は伺えた。できれば敵対はしたくないものだな。特にあのダークエルフに似た化け物とは」
「なるほど。お前にそこまで言わすのか。確かにアニスは俺を僅かながら殺し得るからな。そしてあのダークエルフも、いや、ウルティマの魔素を取り込んだ悪魔の要素を持ったダークエルフ。確かアイリーンという名前だったか?あれが命を賭して来たなら俺でも無事とはいかないな、いや本当にとんでもないものを従者してやがるぜあいつ」
楽しげに語るギィに、ルミナスとレオンは驚いている。最強の魔王に届く、それはミリムを除いた他の魔王よりも強いということなのだから。
「ほう、おぬしにそこまで言わすのか、あやつは、そう言われると欲しくなってくるでないか」
「やめておけ。お前はアニスを敵にできるのか?」
「……冗談じゃよ。あのわらわが受けた光弾、加減されておったわ。それでも、わらわの手が焼けていたのだ。一発自体のコストを考えて、あれを連射できるだろうよ、考えたくもないの」
「くく、俺も勘弁願い――」
三人しかいない、強者の空間、そこに青く輝く渦が現れる、それはルミナスとギィを高揚させるに値する
「おいおいおいマジかよ!」
「おや、これはこれは久しいやつの登場よな」
「おい、一体誰が来るっていうんだ」
レオンだけがこの場では知らない誰か、しかしまだ現れていないというのに自身の体が震えているのがわかる。自身が心底で恐怖する相手、ギィと初対面以来の感覚だ。
「……ふーむ。久しい空気の味と香り、そして既知の者がと知らぬ者、時代の流れを感じるねぇ」
現れたるは、まず目立つのはふんわりとした濃い青の髪、次に深海のように先が見えず、吸い込まれる藍色の眼。
水色のゆったりとしたドレス、その顔は薄い水色のベールで覆われ、手には逆巻く水渦に、その先端には龍が3体の頭が大口を天に向かって開けている。
「久しぶりじゃねぇか、ザパァ、外界に出てくるなんてどういう風の吹き回しだ?」
「おひさー、ギィ。まだつまんない調停者とかいうことしてるのかな?ルミナスも侍従頑張っているのかな?」
「貴様も狭いのか広いのかわからぬ場所で頑張っておるようじゃの。」
「まぁねー。余、いろいろと
ギィとルミナスと対等に話す少女、レオンはそんな存在など聞いたことが無かった。
レオンは未知の古き存在に冷や汗を流しながら、何時もの口調と声音で問いただす。
「何者だお前は」
ザパァと名乗る少女は、強気の態度をとるレオンのほうへ視線を向ける。
それだけで自身の全てが見透かされたかのような感覚に陥り、座っているのに無意識に後ずさりをしてしまうほどだ。
ザパァは天女と見紛う微笑を浮かべ、胸に手を置き、お辞儀をした。
「始めまして、こんにちは、新参の魔王さん。余はザパァ・インディゴ。ヴェルダのやつから
どれも知らない情報ばかりで、レオンはより頭が混乱する。
「もはや何が何やらだな」
「ま、知る必要は無いからね。余の存在は秘匿されているし。で、ルミナス、前に話したこと、解決したの?」
ルミナスはバツが悪そうな苦々しい表情をし、まったく解決していないのがわかる。
「おや?意外と大変のようだね。
「やっと知ってる情報が出てきたな」
星の智慧はレオンでも知っている。昔から世界中に隠された教会があり、そこでよくわからない存在を信仰しており、度々小さな争いを起こしては消えるという知られているが、謎の宗教団体だ。
「あ奴らは本当に虫のようにしぶとくてな。よく我が信者が勧誘されておる。早めに消しておきたいが、どこにおるのか検討もつかんのでは撲滅のしようがない」
「ふーん。ま、余の領域に侵入してこないなら何でもいいよね。さてさて、こんな雑談は切り上げて、教えてほしいな。あのアニスとかいう小僧のこと」
「俺らもあまり知らないが、まぁ良いだろう」
ギィは自分から見てアニスがどういう存在か語った。ザパァはそれをふんふんと頷きながら聞き、満足したようで再び空間を開き、帰ろうとする。
「うん、よくわかったよ。面白いね。特別に入国させても良いかもね。ウフフフ、楽しくなりそう。
そう言ってザパァは空間の中に消えた。
「……何なんだあの女は」
レオンの疑問に、ギィは横に頭を振る。
「俺もさっぱりだ。あいつの考えは俺でもわかりかねる」
「とりあえず……敵対はしないようにしないとだな」
○
「ただいまー、ギルギル、ドラドラ」
玉座に転移の空間から直接座し、幼げな満面の笑みで目下で跪く二名は最初の従者であり、この国の最高戦力を見やる。
男女で別れ、男の方は六メートルの巨体。全身を所々を覆う魚のような鱗は龍を思わせる頑強そうな輝きを放ち、顔は分厚い唇に淀んた目が人間からしたら嫌悪感を覚えるもので、手足には水かきがつき、まさに魚人と言った姿をしている。サイズが異常なのだが。
女の方は、血のように赤い長髪の美人ではあるが、口から見える歯はギザギザとした獣のような鋭い牙であり、瞳は魚を思わせるギョロリとした動きをし、腕は人間ではなく、龍のような鱗と鋭利な爪を持ち、足も水かきがつき、こちらも床に食い込むほどの爪がある。
魚人、というよりは角や翼がない
「オハヤイ、オカエリ、デシタネ」
無理矢理言葉に置き換えたような不自然な声で片言に喋る男、ギルギル。
「姫様、今後の予定はどうしましょうか」
流暢に、耳に心地よく入ってくる美声の女、ドラドラ。
「そだねー。久方ぶりに客人を呼ぼうって思ってるよ」
「キャクジン?ドンナ、デス」
「珍しいですね。ザバァ様が外界の民に興味を持つなど」
「まぁねー。けどどうやら」
ザパァは水晶を取り出し、それに映るアニス達を観察していた。
「どうやらやることあるようだね。それが終わったら呼ぼうと思うんだ。反論はある?」
「アリマセン。ザバァサマニハムカウ、カミニサカラウ、ドウギ」
「ザパァ様のお言葉です。我らでも個人的なことには反論など無いことなど、ご存知のはずです」
「まねー。じゃあそん時までのんびり楽しく過ごしましょーってことで――スヤァ」
ザパァは宙に水球を作り出し、その中で眠り始めた。
「外界は疲れるなぁ――」
(´・ω・`)たぶんわかるやつにはわかる。別に今知らなくてもいいけど。
てか転生したらスライムだった件の海に関すること、本編で出たらどうしようね。まぁオリジナル設定ということでいいか。
それに伴いタグを増やしました。