憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
ハロウィン。という行事がアニス様のいた国にはあるらしい。
ワタクシからしてみればよくわからない、菓子を配るのはまぁわかるですけど、トリック・オア・トリート?とかいうのを言わなければいけないのがわからない。意味はお菓子くれなきゃイタズラするぞ、らしい。
「……まぁこんなところですかね」
ワタクシは仮装、というものに着替えた。自室で何か違和感が無いか鏡を見て確認したけど、流石は有名な服屋さんが作っただけあって完璧だ。
狼男、もといライカンスロープの仮装みたいだけど、これもよくわからない。アニス様が考案したから文句は口にはしないけど、何が良いのかやはりわからない。
「さて、外に出ましょうか」
ワタクシは部屋を後にして、外へと向かう。
その前にアニス様の前まで来たけど、何か声が聞こえる。
「きゃー!可愛いですよ!アニス様」
「メチャカワですの!」
「あの、なんで私が?私男だよ?」
扉の隙間から部屋内を見ると、アニス様がメイド達に囲まれ、何やら仮装をしておられた。
今はヴァンパイアの衣装を着ており、恥ずかしそうに顔を赤らめながらも、ポーズを決めている。
「へっへっへ、男の子も女の子の扱いをすれば女の子になるというものですわ!」
「ですわですわ!ささ!次はこの服にお着替えくださいませ!」
「えっえっ。あ!アイリーン!た、助け――」
「……お楽しみ中、失礼しました」
ワタクシはお楽しみ中のアニス様にお辞儀をした後、何か声が聞こえましたが、街へと向かった。
街は飾り付けされており、南瓜にいかつい顔を彫った被り物、飾りが見え、仮装した子供達がトリック・オア・トリートと言って、菓子を貰っている。
念の為、ワタクシも大きな空間がある魔法の袋の中に、たくさんの菓子を入れて持参してきた。
「トリック・オア・トリート!」
そう言ってると、ワタクシにそう話しかけてくる子供達が現れる。
「はいはい、これですね」
ワタクシは菓子を取り出して、一人ずつに渡すと、満面の笑みを浮かべて散っていった。
「はぁ、ま、楽しそうなのは嬉しいですね」
「トリック・オア・トリート!」
またそのような声が聞こえる。いや、ずっと聞こえていたが、聞き覚えのありすぎる声だったため、反応してしまった。
そちらに目を向けると、そこにいたのは、大人に向かって可愛げな仕草をする、ゴシックドレスのヴァンパイアの仮装をした、ウルティマだった。
「さぁ!お菓子をくれないとかぷかぷしちゃうぞぉ!」
「うわキツ」
そうワタクシは小声で言ったのだが、ウルティマはこちらに迷いなく頭を向ける。
「あ?」
ウルティマはドスドスという音が聞こえそうな足取りで、ワタクシの目の前までくる。
「誰がキツイって?」
「実年齢考えろって話ですが何か?」
「あはは――誰がババァだ!」
ウルティマが怒り散らしてワタクシに向かって攻撃しようとした瞬間、ワタクシとウルティマの動きが止まった。
「アイリーン、喧嘩売る時は考えてほしいな。今日は祭りなわけだし」
ワタクシとウルティマは聞き覚えのあるあの方の声の方向に目を動かすと、そこには白いワンピースを着こなし、長い白銀の髪の美少女が立っていた。
しかしその美少女が指を動かすとことでワタクシとウルティマが動くことができたことで、やはりあの方なのだと理解しました。
「アニス様、そのお格好、お似合いです」
「うん、似合っているのはわかるけどなんか男としては何とも言えないよね」
「ぷっ。あははは!なにその格好!君男なのにめっちゃ似合っているじゃん!」
大爆笑のウルティマである。腹抱えて笑い涙流してめっちゃアニス様を指さしている。まぁこの反応は予想できていたし。別にどうとは思わないんですが。
「はぁ……ねぇアイリーン、貴方メイド達の着せ替え人形にされていたとき、よくも無視してくれたね」
「命の危険ってわけでもないですし。メイド達も悪気があってやっていたなら止めてましたが、それにワタクシ自身、今のアニス様の容姿で女装したらどうなるか見たかったのもあります」
「えぇ……。ま、まぁいい。とりあえず貴方達、一勝負してみないかな?」
「ひぃひぃ――え、勝負?どんなのかな」
「ワタクシはアニス様が望むなら、どのような勝負でも」
「よろしい。じゃあ二人にルールを説明する。題して、菓子集め競争!」
「まんまじゃん」
「まんまですね」
「うるせぇやい。今日ハロウィンなわけで、お菓子が配られる。で、今から夜にかけてこの街を回って、どれだけ人から菓子を貰えるかの競争ってわけ」
「ふぅん。で?勝ったらどうなるの?」
「相手を好きにできるってどうかな」
「ふーん、なるほどね。うん、ボクはやるよ」
「ふむ、ならワタクシも良いですよ」
ワタクシとウルティマの了承を得て、アニス様は頷き、ルールを説明に入られた。
「まず前提として、脅しや強奪は禁止、見てなくても私には丸わかりだから注意するように」
アニス様は電波信号や地磁気を利用して情報を得て、更にクレイマン――さんにはできなかった息のかかった部下だけではなく、国民全ての耳と目から得た情報を得ることもできる。
アニス様に隠し事は無茶というものだろう。
「はーい」
「元よりするつもりもありませんよ」
「よろしい。で、もし私の部下から貰う場合は一つが原則だ。ウルティマ、ヴェイロンやゾンダから巻き上げようとは思わないことだ。というか事前に言ってある」
「ちっ」
ウルティマは聞こえるくらいの音で舌打ちをした。流石アニス様、念入りですね。
ちなみにヴェイロンは執事、ゾンダは料理人の悪魔。ウルティマと一緒に来た従者で、アニス様が覚醒したときに名を貰った者達だ。
「ま、気軽にやるといい。集まる場所は今いるここ、同じ人から貰うことは無いように。じゃあもう始めていいぞ?」
「よーし!めっちゃ集めるよー」
「ではアニス様、失礼いたします」
アニス様に手を振られながら、ワタクシとウルティマは別方向へ別れ、お菓子集めが始まった。
……七時から始まり、今は十二時ほど経過した。
集まった菓子は百五十二個、そこそこ溜まったきた感じだ。
ワタクシが配るために持っているお菓子とは違い、特殊な包装がされており、これで見分けがついている感じだ。
ベンチを腰掛けて、ワタクシは一息ついた。
「今どのくらいウルティマは集めているんだろうね。正直目安無いからわかりませんね」
「……あら?貴女アイリーン?」
休んでいるワタクシの元に、魔女の帽子を被っているだけで、何時も通りの格好のミュウランさんが現れた。
手にはいかつい南瓜頭の絵がついた飲み物を持ち、ワタクシにそれを渡してくる。
「ありがとうございます」
ワタクシが飲み物を飲んでいると、ミュウランさんが隣に座った。
「お疲れのようね。確かアニスからお菓子集めの勝負してるんだったっけ?」
「はい。でも少し楽しいですよ。ミュウランさんも楽しんでますか」
「えぇ、かなり新鮮の気持ちね。今まで楽しいとか考えられない人生してたから」
ミュウランさんはその辛かった過去を悲しげに語るけど、アニス様の話になると笑みが出てきて、今が楽しいのだというのがわかりますね。
「アニスには感謝してるわ。魔法の研究も昔魔人じゃなかった頃以上に進むし、皆優しくしてくれて、命の危険もなくて、本当にいい環境にいるって感じられるわ」
「それは良かったですね。ワタクシも働くのが楽しいです」
「貴女は何か違うような気がするけど……まぁいいわ。はい」
ミュウランさんは南瓜のカゴからお菓子を一つ取り出して、ワタクシに渡した。
「お菓子集めするのでしょう、早くしないとウルティマに抜かされるわよ」
「ん、あぁもう結構たってますね。そうですね、ではワタクシはこれで、ミュウランさんも楽しんでくださいね」
「えぇ、それじゃあ」
ワタクシは飲み物を飲み干し、立ち上がり、ミュウランに見送られながら、菓子集めを再開した。飲み物は甘い南瓜で、意外と美味しかった。
……いつの間にか夜が訪れ、街の様子もかなり変わった。
灯りはいかつい南瓜の形になり、昼は何ともなかった仮装も、何処か怖い感じに見えてくる。
露店にはハロウィンらしいというのか、そういうおどろおどろしい雰囲気の装飾がなされている。
「トリックオアトリート!」
「はい、お菓子ね」
もはや慣れたその言葉を言い、時間的に最後のお菓子を大人の人から貰うと、
「さて、そろそろ終わりですね、確かここでしたっけ」
数分くらいしたら、アニス様が先に現れ、続いてウルティマも現れた。
「さて、どっちが多いのかな?」
ワタクシとウルティマの菓子用の袋には、数がわかるように数字が現れる。
「アイリーンは……五百五十八。で、ウルティマが……お、こっちも五百五十八か!」
引き分けだということを知り、ワタクシは大変驚いた。まさかこんなことになるなんてね。
「ふーむ。ま、いっか。リーン、この後どうするのかな?」
「その様子だと貴方も何もない感じですか」
ワタクシとウルティマは数秒沈黙が続く。
「
ワタクシとウルティマの声が重なる。正直同じことを思っているのだということはわかる。
「……引き分けか。なら貴方達、どちらも好きにすればいいんじゃないかな?」
「なるほど、それ良いね!」
ウルティマは満面の笑みでワタクシの手を引き、露天が並ぶほうへと走り出す。
「……ふふ、本当に勝手だよね」
ワタクシはウルティマと共に露天へと走り出した。
「本当に仲が良いことで。さて、私もそろそろ着替え――」
アニス様が城へと向かおうと後ろを振り向くと、多数の女物の服を持った仮装したメイド達がいた。
「――」
あまりの驚きに、言葉が出ないご様子。
「ふふふ、見つけましたわ。さぁ次はこの服に」
「いえいえこちらもこちらも」
「はっはっは……」
その後、アニス様はワタクシ達を追い抜き、全速力で逃げる様を見ながら、ハロウィンの夜は過ぎていきました。
(´・ω・`)クリスマスもこういうの執筆したいけどその時まで続けられているのか不安である。