憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
22話 二足のわらじ
イングラシア王国。
そこは近代的な国であり、
自由組合には各国との間に交渉権と相互扶助協定を確立されていて、組合員の冒険者は、組合が斡旋してくれる採取・調査・討伐といった任務を請け負っている。
その自由組合の本部は近代的な塔で、自動ドアが使われている。
そこに不自然極まりないピエロの格好の男が訪れていた。
「はー、随分とまぁ立派なところやな」
中庸道化連、副会長、ラプラスは最初疑いの目を向けられることを予想していたが、組合員は皆平然と対応をしてくれた。
逆に怖い対応だが、本当にここの主の正体があの人だということが伺いしれた。
金髪の美人のエルフの秘書に先導され、中庸道化連の三人はその主の部屋までたどり着いた。
そこは自由組合の頂点に位置する者、
扉が開き、室内の中心には机に二つのソファーを挟み、壁には様々な物が置かれている。ラプラス達にはよくわからない物であり、魔物?程度には思える人形、何らかの人物の絵――とりあえずそれは置いておき、ラプラスはソファーに優雅に座り、紅茶を飲んでいる者に目を向けた。
白銀の長い髪の少年で、白いYシャツとズボンというシンプルな格好だ。とても偉い人物には見えないが、ラプラスはその少年の正体を知っている。
「元気そうやな。アニス」
そう呼ばれた少年、アニスは紅茶を飲み干して立ち上がり、お辞儀をした。
「どうも。お久しぶりですね、ラプラスさん。どうぞ座ってください」
ラプラスは「ほな」とドスンとソファーに深く腰掛け、アニスも向こう側に座ると、手を組んで話を始める。まずは雑談から
「まさか総帥の座につくなんてな。わいも最初聞いたとき驚いたもんや。ま、何時も驚かされているんやけどな」
「大変でしたよ?ただの冒険者から正体を隠しながら有名になってここまでくるの。魔力もスキルも使えないから技術を磨く必要があって、
「それは大変やったな、で、何でこんな地位についたんや?」
「あぁ、それは簡単。質の良い情報の入手と魔物と人間の共存だよ」
「なるほどなぁ。意外と考えていたわけか――じゃ、本題いこうか。わいらの報酬はどうしたんや?」
魔物の人間の共存も気になるが、ラプラスは一番聞きたいことを優先する。
「ん?――あぁ、忘れていたよ」
「は?」
ラプラスは何回も言ってきたドスの利いた声を発する。怒鳴り散らすその前に、アニスは言葉を続ける。
「勘違いされるな。私が忘れていたのは、報酬の入手のほうではなく、事後報告のことだよ。グラマスになってからずっと忙しすぎて報告するのも遅れてすまなかったね」
「――え?そ、それってつまり!」
ラプラスは立ち上がり、仮面の下で破顔し、喜びで満たされる。
事後報告ということは、それはつまり魔王カザリームが既に復活していることに他ならない。今すぐに会いたい、ラプラスはアニスの言葉を立って待っている。
「はよ!はよ会わせてくれへんか!」
「落ち着いてくださいラプラスさん。それにもう既にいますよ?」
アニスが手を向けた先を、ラプラスは見る。
そこにはいつの間にか外に待機していたはずの先程案内してくれた秘書の美人のエルフがいる。
改めてラプラスはその人物を見ると、きめ細やかな肌、藍色の瞳、整った顔立ちはシニョンに纏めた金髪が合い、美人のエルフ――だと思っていたが、その藍色の瞳に目を凝らすと、何処か邪悪さが見え隠れし、それに気づくと同時にその人物の正体が何なのか直感的に理解できた。
「カザリーム……かい――ぶ、ぶははは!」
ラプラスは最後まで言おうとしたが、その前に戸惑いが笑いへと変換され、腹を抱えて爆笑をしてしまう。
「会長、そ、その姿なんなんですの?めっちゃ美人さんになってんじゃないですか!や、ヤバい、くくく、今までのイメージとのギャップでワイ、笑い殺されてしまうわ」
「五月蝿いぞ十年かけてやっと動けるようになったんだ。今更姿形にこだわってはいられない状況だしな」
不敵な笑みを浮かべ、お淑やかな雰囲気は消え、アニスの横に座り、堂々たる様子で、元だが魔王の風格が出ている。
「俺をこいつに引き合わせたってことは、もう演技は必要ないってことか?」
「いんや、表向きは演技は必要だよ。理由は必要かな?」
「いやいい、わかってるからな。ボスがそう言うならこのまま続けることにしよう。何せ今の俺は弱すぎるからな」
今のカザリームは、人間レベルにまで力が落ちている。それは本人も苦々しげながらも理解しており、前に冒険者と模擬戦したときも苦戦を強いられていたため、今は力を取り戻すのに専念している。
今から五十年前、ある場所でアニスはカザリームを発見し、即座に自身の身体に保護し、十年前にようやくホムンクルスに
その間にアニスの事情、世界の事情を知り、長年の付き合いもあって、今はボスとしてアニスに従っている。
「早いところ、強い身体が欲しいものだ」
カザリームが愚痴をこぼしている間も、ラプラスは笑い転げていて、流石にカザリームが睨んできたため、呼吸を整え、ソファーに座ると冷静に話し始める。
「なるほど。カザリーム様がボスと呼ぶなら、ワイもアニスのことをボスと呼ぶことにするわ。それでや、ワイを呼びつけた理由を聞こうやないの。ボス」
アニスは笑顔を作り、指を弾くと、和風の格好のこれまた美女が、ラプラスそっくりのホムンクルスを米俵を運ぶように持ってきて、それをラプラスの横に置いた。
「えっと……なんやこれ?」
「保険だよ。これからする話のね」
「……帰ってええ?」
「駄目に決まっているだろう」
カザリームにそう言われ、覚悟を決めた様子で、ラプラスは話の続きに耳を傾ける。
「これから貴方に言ってもらうのは――東の帝国。そこで皇帝の正体を探ってほしい」
「皇帝?それってルドラってやつではないんか?」
「うん。それが一番良いんだけどね。ただ私が何故東の帝国を探れって言ってるのはな。消去法でもあり、百年前に魔物ではない何かと遭遇したのが大きいんだ」
「消去法?それに魔物じゃないってどういうことや?」
「消去法はまぁ、怪しいところがそこしかないからだ。地脈とかじゃわからない唯一の場所だからな。魔物ではないというのは、それはラプラス、貴方の目で見てきたほうが早いかもね。なに、死んでも器はある。カザリームも復活してるし憂いなく探ってきてくれ」
「……はぁ」
ラプラスはあまりによくわからん依頼だが、カザリーム様が信頼している人物の頼みだとため息を漏らしながらも、受ける覚悟を決めた。
「ええやろ。その代わり報酬はたんまり貰うで?」
「ありがとうラプラスさん。それじゃあ準備が出来次第、向かってくれ。できれば死なずに帰ってきてくれると助かる」
「そんなの言われんでもわかっとるわ。ほな、ワイはもう行かせてもらうで」
「あぁ、それじゃあね」
ラプラスは立ち上がり、部屋から出ていった。
それと同じタイミングで、先程ラプラス用のホムンクルスを持ってきた和服の美女が現れる。美女は跪き、報告を行う。
「アニス様、ジュラの大森林にて動きがあったでありんす」
「そうか。やっと動き出してくれたわけだ」
アニスは楽しみでもあり、不安でもある感情を押し殺し、大森林に潜ませた部下の様子を取り出した水晶で見ながら、状況を確認を始めた。
「さて、何処まで変化しているのかなっと」
異聞 転生したらスライムだった件編 スタートです。
魔王達の様子がかなり変わったので、リムル達の展開も変わってるのでほぼオリジナル展開になるかと思います。
主にオーク。