憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意)   作:謎のコーラX

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短めが続く(´・ω・`)


25話 飽食者

「これから貴様らは俺の駒だ」

 

金髪の鬼人、コウガはリザードマンの首領の前まで現れると、そう告げた。

 

ここまで素通りで彼はたどり着いている。それは首領がいち早くに鬼人の気配に気づき、配下のリザードマン達に言い聞かせていたからである。

 

「……我々は何をさせられるのでしょう」

 

首領は自尊心をかなぐり捨て、跪いてコウガに問う。その様子にコウガは満足し、まわりの配下達は怒りが増大している。

 

「なに、簡単なことだ。今から戦力が集まり、準備が整い次第、ある村を襲い、桃色の髪のオーガ以外は皆殺しにする。貴様らはそれに参加するだけ。簡単だろ?」

 

「オーガ!?わ、我々にそのようなことを……そもそもリザードマンは沼地が戦場、普通の地面では……」

 

焦る首領の様子を意に介さず、コウガは反論に答えずに言葉を続ける。

 

「それでは、いい活躍を――」

 

「親父殿!」

 

コウガが去ろうとした瞬間、一体のリザードマンが姿を見せる。

 

リザードマンの首領の息子だ。その後ろから走り出したのは息子を慕う者達。武器を構えてコウガを取り囲む。

 

コウガはそれを鬱陶しげに一瞥し、首領の息子のほうへとゆっくりと歩を進める。

 

「親父殿!このような者の言うことなど耳を傾けてはなりませんぞ!この親父殿の息子である吾輩がこの狼藉者を成敗して見せましょうぞ!」

 

「邪魔だな、貴様」

 

コウガは首領の息子に手を伸ばす。それを一匹の息子を慕うリザードマンが割って入る。

 

「おい!お前歩みをと――」

 

バクン!

 

瞬間、リザードマンの頭がそのような音と共に消え、首から血液が吹き出る。

 

「なっ!?――」

 

目の前にいる首領の息子だけが視認できた。コウガの手のひらにある……鋭い牙を持った大きな口を。

 

ボリボリと音を立て、何かを噛み砕く音が耳元に響き、先程のリザードマンの頭の居場所が嫌でも理解させられる。

 

「息子よ!逃げるのだ!」

 

首領の一声よりも早く、息子は素早く逃走を図る。

 

息子は走る横には、妹が追走している。息子には届いていなかったが、首領が共に行けと、命じられていたが、言われずとも妹は追いかけていただろう。

 

息子は妹が来てるとは未だに気づかず、出口まで走っている。

 

何も聞きたくない。何も見たくないと、あの異常な光景が脳裏に焼き付いている。

 

数秒ほどで出口の光が見え、外に出ると……そこには何体ものオーガが道を塞いでいた。

 

「くっ……どけいっ!」

 

――なんとか二人で傷つきながらも、倒せずとも道を通すことができた首領の息子は、何処に向かうでもなく走っている。

 

後ろからはあれほど突き、切り裂いても倒れることのなかったオーガ達が無言で追いかけてきている。

 

息子もその妹もリザードマンの中では上位に入る実力がある。それでも死を恐れないオーガを何体も相手するとなれば、いや、どのジュラの大森林の種族でも苦戦は強いられる。

 

倒せはするだろう、しかし体力は無限ではない。他のオーガ――数えれば七体はいたそれらを全て相手できるわけがない。

 

走る、走る。何処に向かうでも、ただ、逃げるために。

 

 

コウガは手のひらを見る。そこには()()()より頂いた力である鋭い牙を持つもう一つの口がついている。

 

なんと発音していたかは聞き取れなかったが、なんでもあの方と同郷の者の力の一部らしい。見たわかった通り、リザードマンを簡単に殺せるこの力は、とても興味深い。食べた物がどこにいくのか気になるが、なかなか都合がいいと言える。

 

飽食者(ムサボルモノ)。それがコウガが得たユニークスキルであり、能力は喰らった相手の力の一部を得るというもの。事実、コウガは沼地でも余裕で動けるようになり、身体からは薄っすらと鱗が出始めた。

 

それほど能力がついているとは思えないが、今のところユニークスキル、エクストラスキル持ちを喰っていないからわからないかもだが、それはあの憎き赤髪のオーガどもを喰えばわかると結論づけ、コウガはもうすぐ訪れるバラ色の未来にほくそ笑むのだった。

 

 

ジュラの大森林の何処か。片手に持つ水晶から見えるコウガの様子を、白い髪の鬼は眺めていた。

 

「ふむ。全然喰おうとしないな。一気にオーガ共を皆殺しにすればすぐに強くなれるというのに。ま、()()に関しては知らないけど」

 

白き鬼もまたほくそ笑む――飽食者(ムサボルモノ)、その真価をコウガは知らない。

 

飽食者、その名の意味を、近い未来コウガは知ることになるだろう。

 

「ねー!ねー!ねぇ!なに面白いことしてるのー?銀嶺(ギンレイ)!」

 

鎌から鮮血を滴り落とす少女、クイーンは白き鬼、ギンレイの耳元で叫びながら、水晶の様子を見ている。

 

「うるっさ。何だクイーン。また殺してきたのはわかるが、此方の()()()()を邪魔しにでも来たか?」

 

「あー、それもいいね。わたくしそういう熱中して遊んでいる盤面をかき乱したりぶっ壊すとかだ~いすきなもんで――」

 

ギンレイはクイーンの首を落とさんと手刀を振るうが、クイーンと鎌を振るい、首元で両者の攻撃が止まる。クイーンは口元を歪め、ギンレイは何事もないような真顔である。

 

「じょうだーん。冗談だよギンレイちゃん。本気でやるならもっと楽しい時に、敗北を完璧に味わえるときじゃないとわたくし困るからねー」

 

「……本当にそなたは人生楽しそう、いや、愉しそうだな」

 

両者、首元の兇器を引っ込める。クイーンは笑みを元に戻し、血を撒き散らしながら鎌を振り回し始める。

 

「そういえばクイーン。今回は何を殺してきたのだ」

 

「んー?そだねー、よく覚えていないけど、ゲル……あー、やっぱ駄目だねー。今まで食べてきたパンの名前を言えってくらいには無理難題だよ」

 

「……聞いた此方がバカだったよ」

 

ギンレイは軽蔑した視線を送りながら、クイーンから離れるように森の中を進んでいく。

 

「クイーン。余計なことはするなよ」

 

「了解りょうかーい。信じてよギンレイちゃーん」

 

クイーンはギンレイとは別方向に歩きだし、ギンレイか

ら去っていく。

 

クイーンのその後ろ姿が見えなくなった辺りでギンレイはつばを吐く。

 

「ちっ。狂人が。あれが元()()()()、人間というのが恐ろしいところだな。特に元からあのような性格というところがな……まったく、何を考えて引き入れたのか」

 

ギンレイはクイーンの凶行に警戒しつつ、コウガの様子を見ているのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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