憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
「……お前たち、ここから離れろ」
「リムル様!?」
リムルは鬼人達に撤退を命じる。鬼人達は戦う気満々であるが、リムルはもう一度同じ言葉を大声で言うと、渋々ながらも撤退していく。
「それとだ。絶対に俺らの戦いに魔物も魔獣も近づけさせるな。あれに喰われるだけだからな」
鬼人達は頷き、魔物や魔獣を離れさせるように四散していき、この場に残ったのはリムルとコウガだけとなっている。
そのコウガはというと、魔王になってから少しも動かずに下を向いており、死んでいるようにも見えるが、魔力がちゃんと感じられ、むしろ徐々に膨れ上がっているまである。
(大賢者。さっきの世界の声からするとオーガディザスターって言っていたよな。鬼人ではなく。あれはどういうことなんだ?)
《解。正体不明の物質の活性化、拒絶反応により魔素が消失、次いで
(なるほどな。まぁ予想外ではあるんだが、やることは変わらないから良いんだけどな)
リムルはコウガへと視線を向け、刀を構える。
「ぐ……う……ウガァ、クトゥン、ユフ」
その言葉と共に、コウガは動き始め、背中からは4本の腕が生え、そのどれにも鋭い牙を持った口がついている。
「ウガァァァァ!」
コウガ――オーガディザスターは咆哮し、手のひらの口と、頭の口から涎が垂れ流し、まるで獣のように睨みつける。
「俺を餌と言った感じで見たやがるな。いいぜ、こいよ」
オーガディザスターはゆっくりとその巨体の重さを感じさせる音を立てながら近づいてくる。
(お前の倒し方は既にわかってる。ただ俺がそこまで持つかだが……それは既に解消されてる。大賢者!任せたぞ!)
《了。大賢者へ主導権の一任を確認。
「ウガァァァァ!」
オーガディザスターの手がリムルに向かう。それをリムルは刀に黒炎を纏わせて切り落とした。
「グッ……グ?」
オーガディザスターは再生させようとするが、黒炎が傷口を焼き続け、再生を阻害されている。
「ハラ……ヘッタァァァァ!」
背中の四本の腕が伸び、リムルに襲いかかるが、それらも避けられ、黒炎が纏われた刀で切り落とされる。
「……」
リムルは油断する様子もなく、無機質な顔でオーガディザスターを見る。
「ウガァ……クトゥン、ユフ!」
オーガディザスターは残ったの手で五つの腕を食いちぎり、黒炎の部分を分離させる。直後、腕が再生を始め、元通りとなった。
「ウガァ……
続いてオーガディザスターの六つの手のひらから大量に雷の玉が発射されていき、それらはリムルへと降り注いだ。
冷静に、機械的に、効率よくリムルは避けていく。
「ガァァァァ!」
更に増やしていくが、リムルに当たることはなく、徐々にオーガディザスターの体躯が小さくなっていく。
「クソガァァァァ!」
オーガディザスターは頭と手の全ての口から雷を放射してくるが、リムルはそれを上空へと飛んで回避する。放射したままリムルへと手を向けるも、全て避けられていき、リムルはそのまま刀をオーガディザスターの額へと突き立てた。
「ガァァァァァ!」
黒炎で内部から焼かれていき、オーガディザスターは苦悶の声を上げる。
そのままオーガディザスターは黒焦げとなり、地面へと倒れ伏した。
リムルは額から刀を抜き、こびりついた血液を払うと、じっとオーガディザスターを凝視する。
「ゆ、ユダン、シタナァァァ!」
オーガディザスターは脳を焼かれたはずだが、その手を伸ばして六つの腕でリムルを覆い隠すように掴んだ。
「ウガァクトゥンユフ――腹、ハラヘッタンダァァァ!」
リムルをその口で喰らおうとするが、肉が裂ける音がせず、ただ何か粘体のような食感に違和感を覚える。
「――もう、終わりにしようぜ」
リムルは意識を大賢者から交代し、スライムへと戻り、オーガディザスターに逆に覆いかぶさる。
手からぬるりと抜けていき、オーガディザスターは藻掻くが、再生によってもはや殆どの魔素は無いに等しく、七つもあるはずの口でも対処しきれていない。
「グァァァァァァ!」
自滅覚悟の雷を身体から放射しても、リムルには一切効いている様子はない。
「無駄だぜ。俺にそういう雷に耐性があるんでな」
喰われていく。喰うはずのオーガディザスターが。あれほどあった巨体が減っていく。
――リムルはまず、全快のオーガディザスターに勝てる確率はかなり低かった。
例え雷が効かないとはいえ、あの膂力を相手取るのは自殺行為だ。
だがオーガディザスター、コウガが持っているだろうあの超強化、長続きはしないことは読み取れた。
発動条件は十中八九、
餌である魔物や魔獣がいれば、その発動条件は簡単に発揮できる。だから鬼人達、ひいては控えているホブゴブリン達に向けて思念伝達を送り、魔物や魔獣を近づけさせないと命令を下した。
正直満腹が何処まで続くか不安はあったものの、無事その予想は当たり、弱体化していき、捕食者で喰らえるレベルにまで落とし込めた。
――そんなリムルが勝利を確信しながらも油断せず、捕食を集中していると、声が聴こえてくる。
『――俺は、何をしているんだろうな。俺はただ、あいつに勝って、あいつに認めてもらいたかった。ベニマルって言うみたいだな今は……俺は、妹――シュナ様に惚れていたよ、しかしそれはベニマルへの対抗心もあったからかもな』
リムルの視界が変わる。
そこにはコウガが魔獣に襲われている姿だ。リムルは知らないが、ここでギンレイと会う場面なのだが、何故か違う展開が待っていた。
コウガを救ったのは、オーガのベニマルとシュナだった。シュナがコウガの怪我を治癒し、ベニマルが魔獣を追い払っている。
会話の内容はわからないが、リムルは少なからず違和感を覚える。
「なんだ?大賢者、この状況ってどういうことだ?」
《解。個体名コウガの記憶――の、はずです》
「はず、か。確かにおかしいよな、確かコウガは里を飛び出したっきり戻らなかったはずだし、ベニマル達が探しに行っても見つからな――」
何かに気付こうとした瞬間、リムルに頭痛が走る。本来痛みなど感じないはずのリムルがだ。
《告。何らかの思考妨害が起きました。解除を実行……失敗しました》
「な、何なんだよいったい……」
『――俺はこの後●●●達の侵攻によって●●●●だったんです。ですが短い間ですが、利用されたとはいえ、生きながらえ、こうしてシュナ様の恩人であるあなたと話せる機会ができました』
オーガのコウガがリムルの前に現れ、何か言ってるが、ノイズが激しい。
『リムルさん。俺はあの人を裏切れません。ですがこれだけは言っておきます……シュナ様を頼みます』
曇りなき満面の笑みを浮かべたコウガのその言葉を最後に、リムルは現実に帰ってくる。
《確認しました。
唐突展開(二度目)