憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
ある日の12月。雪が大量に降り注いで白一色となった人形国家ジスターヴ。雪かき作業で励む大人達、雪で遊ぶ子供達、この世界においても珍しい大雪の日の朝に、アニスの配下であるウルティマとアイリーンとはいうと――めっちゃ遊んでいた。
二人は仲良く雪合戦ならぬ氷玉投げをして遊んでいて、お互いの顔を狙っていた。
ちなみに二人とも魔法を使っていないがゴリラ顔負けの握力のせいで雪が氷玉となっており、もはや遊びではなく、れっきとした物理攻撃だ。
広場に氷玉の破片が散らばり、いくつかが建物に当たっており、めり込んでいる。
「ふっ……まだまだですね」
「あーもう!!また負けた!!」
ウルティマの顔に氷玉が勢いよくぶつかり、下手な魔人なら顔が吹き飛ぶ威力だが、ウルティマはなんとも無さそうである。どうやら今回はウルティマの敗北らしい。悔しそうにして地団駄を踏み、頬を膨らませる。
そんな様子を横目に見ながら、もう一人の配下であるアイリーンは涼しい顔をしている。
「あら?まだやります?」
挑発するように言うアイリーンに対して、普段では見せないであろうウルティマは更に怒りを募らせていく。
「当たり前じゃん!」
そして再び戦いが始まる。今度は先程よりも激しい攻防が繰り広げられており、お互いに一歩も譲らない状況だった。しかし、徐々にウルティマの方が押され始めてきたのか劣勢になり始めたようだ。
(くそぉ~こうなったら……)
何か思いついたようで、ウルティマは手を叩いて背中から羽を生やし、それらを手にして雪を掻き集め、巨大な雪――氷玉が出来上がった。
「これでも喰らえぇえ!!!」
それを思いっきり投げる。もはや最初に言っていた顔に当てれば勝ちというルールは何処に行ったのか。
大きさに豪速球のスピードで飛んでいく様は大砲だ。
それを見たアイリーンは不敵に笑い、右手を前に突き出す。すると手が悪魔のような黒い巨腕となり、巨大氷玉を軽々と掴み、粉々にした。
「はい終わりですわね」
余裕綽々とした態度を見せるアイリーンを見て、ウルティマはさらに怒ったように歯をギリギリと鳴らし、羽十二枚を手にして、十四の手で氷玉をむちゃくちゃに投げまくった。
―――結果は言わずもがな、アイリーンの勝利だ。
雪も殆どなく、三本勝負だったはずだが二回アイリーンの連勝で、幕を閉じた。
○
罰ゲームとして提示されていたのはケーキ作り、ウルティマは一人大きなホールケーキを作ろうとしていた。
「ふんふふ~ん♪」
鼻歌を歌いながら楽しげに材料を入れている姿を見ると本当にあの残酷な性格なのか疑うくらい無邪気に見えた。負けたのに思ったよりノリノリである。
「…………」
一方、アイリーンは無表情のまま黙って見ているだけだった。
ちなみにこの世界において砂糖は非常に貴重品である。失敗は一応許されているが、本人はアイリーンにほくそ笑むのが目に見えているため失敗する気はない。
「ふふふ……ふっふっふ……見ててねリーン。君の驚く顔が目に浮かぶよ……」
ニヤリと笑うウルティマ。作るケーキはフルーツケーキ。取り寄せた新鮮な獣王国の果物を使用するケーキで、ケーキ本体もどれもアニスを半ば脅迫して用意した最高級品で作られる。
ウルティマはこれでも割と何でもできる。ケーキの作り方は本を読み込み、あまりしない練習をしてプロでも通用するレベルにまで上がっている。
ケーキのはつつがなく丁寧に進んでいき見事なケーキが出来上がった。しかしここで一つ問題が発生した。
「……あれ?これどうやって運ぶ?」
そう、あまりにも大きすぎるため、このままでは運べないのだ。
「わぁ驚きました。そんなことも考えずに作っていたなんて……ふふ」
アイリーンはほくそ笑む。ウルティマはどうしようかと頭を悩ませていると、そこにアニスが姿を見せる。
「私が運びましょう」
「え!?いいの!?」
ウルティマは目を輝かせて言う。本人もこれだけのケーキを無事に運び出すのは難しい。だがアニスは転移する術があるため、ケーキなどすぐに食事場に持っていける。
「じゃ、ほいっと」
○
ケーキは無事に食事場に食事場の中央に置かれ、五本指と三龍、アニスとウルティマとアイリーンはクリスマスのための料理をテーブルに並べ、食事が始まった。
アニスは食事をしながら、ウルティマとアイリーンにプレゼントの話をする。
「本来はイブではなく、明日のクリスマスに配るんですが、まぁサンタ、というのもこの世界にいるか怪しいから、これらを渡しておく。他の者は後ほどね」
アニスは指を弾くと、アイリーンとウルティマの膝の上に、プレゼント箱が落ちてくる。
「中身は貴方達が望んでいた物ですよ」
「あ、ありがとうございますアニス様」
「ん、ありがとうねアニス様。本当なら威勢のいい人間が良かったけど」
ウルティマはチラリと横目でアニスを見る。
「いや生きた生首は入ってないよ。割と普通のやつ」
「あはは!冗談だよ。ま、ありがとうねアニス様」
「どういたしまして」
こうして、ジスターヴのクリスマスイブは、過ぎていくのであった。
クリスマスにも投稿されるかは未定