憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意)   作:謎のコーラX

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クソ遅投稿失礼しました。

かなりの人に忘れられてそう




31話 アニス・スワンプ

ブルムンド王国

 

人口百万人足らずの小国で、大都市は王都のみとなっている。そこにある目的のために、リムルは案内のもと向かっていた。

 

自由組合総帥(グランドマスター)

 

ギルドという冒険者の組合を統括する組織のトップの役職であり、ブルムンド王国にいるその人物に会うためにリムルは恩人の形見である仮面に触れながら、リムルは自由組合総帥のいる部屋までたどり着く。

 

リムルは呼吸を整え、ノックをしようとした瞬間、「入っていいよ」という、軽い声がドアの向こうから聞こえた。

 

「……じゃ、入らせてもらおうかな」

 

リムルはドアノブを捻り、ゆっくりと部屋へと入っていった。

 

内装は思ったよりも硬派というわけではなく、何処かで見たようなグッズに似た物が棚に並び、快適な空間が広がっている。ソファーで挟まれたローテーブルの左側には一人の男が優雅に何かを飲んでいた。

 

長く、綺麗な日本人特有の黒い髪を束ね、着崩したワイシャツの下の身体は鍛え上げられた筋肉が見える、偉くなっても鍛錬は欠かさずやっているようだ。その表情からは気苦労や悩みを感じさせない薄い笑みをたたえ、陶器のカップをテーブルに置くと立ち上がり、リムルを出迎えた。

 

「ようこそ、リムルくん。僕は……アニス・スワンプ、訳あって自由組合総帥を任された者だ」

 

アニス・スワンプ?リムルは全く初耳の名前に困惑を覚える。ユウキ・カグラザカ、それが聞いていた名前であり、会ってきた人達が嘘をついていた様子は無かったわけだが、目の前の男もまた嘘を言ってるようには見えないと大賢者――リムルの最初の頃からの相棒でありユニークスキルの結論も言っている。

 

「どうしたのかな、まぁとりあえず座るといい、敬語は不要だ」

 

「あぁ、そうさせてもらう……その前にこの姿は見せておかないとな」

 

リムルはその身体を溶かし、一瞬で真の姿であるスライムへと変身する。スライム体になりすぐに何が起きても対応できるようにスキルをフルで使い、アニスの反応を待つ。

 

「ほう、人間の姿から予想はしていたが、本当にシズさんを取り込んだみたいだね」

 

リムルは一切驚くことも怒る様子のないアニスに逆に驚かされる。人が違うとはいえ、これでもここに来るまでにどんな反応をされても攻撃を防ぎながら説得するつもりだったが、杞憂に終わったことにリムルは緊張を解いた

 

「受け継いだと言ってほしいな。よっと」

 

リムルは再び人間態へと変身し、反対側に腰を下ろすと、仮面をテーブルへ置く。

 

「それにしても、シズさんがどうなったか知ってるとは思わなかったな」

 

「貴方もよくご存知の方達から言伝だよ。それにすぐ怒り散らすのは浅慮ですし、わざわざ会話を挟む悪者はそういないでしょう……し!」

 

アニスは何処から取り出したのか刀を振るう、その先にはリムルの首。リムルはそれに反応せず、刀はそのまま――首筋に触れた辺りで止まる。

 

「避けないんですね」

 

「あぁ、ある人から殺意の無い攻撃(フェイント)と、ある攻撃の違いを叩き込まれたからな」

 

嘘である。いや、確かにハクロウから教えられていたが、ハクロウのどの攻撃もわざとらしいフェイントはなく、殺意の切り替えも一瞬過ぎて避けられたのは5回に1回とまだ完全にわかってはいないのだ。先程完全に警戒を解いたため大賢者も使えてなかっため、下手したら死んでいたためリムルの脳内はガクブルで冷や汗をかいている自分がいた

 

「ふーん、ま、いい。じゃあまずは軽い雑談でもしようか」

 

アニスに促され、リムルは雑談を始める。ここまで来るまでの道中で起こったこと、この国に来て美味しかったものなど当たり障りない話が続いていく。

 

「というかアニスさん、あなた髪が日本人みたいだたからてっきりユウキカグラザカだと思ったよ」

 

「あぁ、いや間違ってはいないな。アニス・スワンプというのも偽名でね、本名はリョウマ・アケザワ、ま、転生してるからあながち前者の名前も本名?あとこの髪は気分で黒髪にしてるのと日本人ってわかりやすいだろ?」

 

「おぉ!あなたも転生していたのか!」

 

人間から人間になったとはいえ、同じ転生者に会えて気分が高揚する。

 

更に会話は弾み、両者の死因の話になっていく。片や部下を守っての死、片や部下の妬みが原因での、それもほぼ自業自得の死。

 

リムルはアニスの自身の元の世界での行いの後悔を黙って聞いていた、自分ももしかしたら通り魔が現れずに彼女持ちということで妬み、どこかで対応を間違っていれば――いや、そんなこと考えていても気持ちが沈むだけだとリムルは嫌な考えをすぐに思考の外に追いやり、アニスの話に耳を傾け続けた。

 

話を終え、アニスは清々しい表情で伸びをした後、手を重ねてソファーに深く腰掛ける。

 

「……ふぅ、いやぁ吐ききったよ。同じ転生者ってまず会う機会が無かったからね。さて、本題にそろそろ入ろうか」

 

「あぁ、そっちから振ってくるってことは」

 

「うん、シズさんの教え子達のことでしょ。ユウキの名前が出てきた辺りでそうだろうとは思ったよ」

 

そうしてアニスは今死へと向かう子供達のことの話し、リムルを新たな先生として託したのだった。

 

○ 

 

リムルがドアの向こうへと消え、アニスは足音が完全に聞こえなくなった辺りで、指を弾いた。

 

その瞬間、部屋の空気が一変し、窓から見える景色が極彩色となり、淀んだ色が部屋を染め上げた。

 

「いやぁ、嘘がお上手だね、アニス」

 

明らかに普通ではなくなった部屋に、先程リムルが入ってきたドアから一人の何者かが入ってくる。

 

黒いフード付きローブで全身を隠し、仮面までつけたいかにも正体を隠してますといった服装に声まで無機質、しかしその話し方はフランクで、友達に会ったかのような手を上げる仕草でアニスの前に現れた。

 

「別に間違っていないでしょう?自由組合総帥を任されたのも本当、アニス・スワンプも偽名だし、リョウマ・アケザワという名前も実質本名、ま、転生ではなく憑依なんですが別に誤差でしょう」

 

「よく言うよアニス、アニス・クレイマン、魔王の一人が人間として暮らしているなんてさ」

 

その者はリムルがいたアニスの反対側のソファーに勢いよく腰掛け、ローブと仮面を脱ぎ捨てた。

 

その下からは短い黒髪にあどけない少年のような顔立ちの男が出てくる。薄い笑みを浮かべているが、アニスとは違った圧を感じる。

 

最も、それよりも気になるのは首筋だろう。首には一周するほどの傷跡がついており、明らかに即死、生きている人間がついているはずがない傷だ。

 

姿を見せたその人物にアニスはわざとらしく驚きの表情を作り、じっと顔を見つめる。

 

「おぉキミはユウキ・カグラザカ。自由組合総帥で冒険者シズの教え子、突如行方不明、いや片腕が見つかったことから死亡として扱われギルドはそれを隠すために私に新たな自由組合総帥を任せた。ということになってるんだっけ」

 

「やっぱ嘘つきじゃん」

 

「いや事実でしょ。だってユウキ、あなた()()()のだからさ」

 

「あはは!ま、そうだね――さて、東の帝国についてだけどさ――」

 

笑みを消し、ユウキは淡々と話し始める。できるだけ早口で、深刻そうに。

 

この空間はアニスの力で作られた完全に隔離された部屋。

 

その存在は配下にすら明かさず、この場の二人だけの秘密になっている。

 

アニスとユウキ、二人は内密に東の帝国について調べていた。

 

――この異常な世界で最も異常なことになっている帝国について。

 

 

 

 




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