憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意)   作:謎のコーラX

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4話 優秀な部下は大切にするべし

ヴィオレの第一回スラム街での犯罪者で遊ぶから一日経ち、クレイマンはミュウランのいる部屋まで来ていた。

 

部屋の前まで来るとドアに二回ノックし、声をかけた。

 

「クレイマンです。入りますよ」

 

「ど、どうぞ」

 

畏まった震えたミュウランの声を聞き、クレイマンはドアを開く。

 

特に特徴のない部屋であり、最低限の家具しかなく、小物も少ない。生活感が無いと言うべきだろう、しかし掃除はされており、見た感じでは埃や汚れ、染みなどは見当たらない。ミュウランの真面目さが見て取れる。

 

ベッドには昨日アイリーンが保護してきたらしいリザードマンが三体が身を寄せ合って寝ており、部屋の中心には忠臣らしくミュウランが深いお辞儀をしてクレイマンを待っていた。

 

「わ、私の部屋に何か御用がお有りでしょうか。クレイマン様」

 

ミュウランは顔をあげる。その顔は真顔で、平静を装っているようだが冷や汗や体の細かな揺れがクレイマンを恐怖してるのだと感じられる。

 

「……これではまともに話せないでしょう」

 

クレイマンは懐からミュウランの心臓を取り出す。本来はガラスケースに入っていたが、それを取り出して持ってきたものだ。

 

ミュウランはクレイマンの秘術、支配の心臓(マリオネット・ハート)にて生殺与奪の権利を握られ、服従させられていた。

 

しかし今のクレイマンには必要ないものだ。下手に行動を縛るのは会社員だった頃から嫌だと思っていたことであり、言われた通りにこなすだろうが、部下の視野も狭まり、意見もできず適切な行動ができなくなる。

 

クレイマンは心臓をミュウランに近づけると、心臓はゆっくりとミュウランの身体に入り込んでいき、代わりに盗聴用だった宝珠が外に出てきた。

 

「え?……えっ?」

 

ミュウランは何が起きたか理解できていないようで、手を胸に置き、心臓の脈動を感じると、もうクレイマンに服従する必要が無くなったことを理解した。

 

「クレイマン、いったい何を――いや待って、()()()()()

 

「それはどういう意味かな?」

 

本心でのクレイマンの言葉だ。まさか別人が憑依してることに気づくなんて思っていなく、内心焦り気味になっている。

 

「とぼけないで。昔のクレイマンと、今私の目の前にいる貴方では魔素量が全く違うわ」

 

ミュウランは不審な目でクレイマンを見ている。冗談ではないのはわかるが、クレイマン、もといリョウマにはそこまで魔素があるとは思えなかった。あるなら名付けも気軽にできたし、ヴィオレに殺されないか警戒心を持つことも無かったからだ。

 

「うーん。良いか話そう。ミュウラン()()嘘偽り無く、私は話すぞ。実は――」

 

クレイマンは自分が一度死に、クレイマンに憑依したことを話した。ミュウランはその話を呆れる様子なく聞き、何か考え込む素振りを見せ、考えが纏まったようで話しだした。

 

「ラーゼンという最高峰の魔術師が憑依転生(ポゼッション)という魔法を使うらしいわ。けど精神を壊さないと発動できないし、異世界から、それも意志のある肉体になんて聞いたことないわ。貴方今どういう感じなの?記憶とか、肉体の違和感とか。小さなことでも構わないわ」

 

クレイマン本人ではないとわかり、先程までの恐怖はなく、微笑を浮かべ、若干砕けた口調で今のクレイマンに質問する。

 

「そうだね。身体に違和感は無いが、記憶はクレイマンの記憶があって、精神もちょっと寄ってるね。ただ人格は変わっていないからクレイマンではないね。ちゃんと人間の頃の記憶もありますしね」

 

「なるほど……とても特異なことが起きてるみたいね。違和感が無いとは言ってるようだけど、使えているのはクレイマンの魔素だけのようね。貴方自身の魔力は使えていないわ」

 

「ふむ?それってつまり体という宝箱の鍵穴に、私という鍵があっているとい言った感じかな?」

 

「まぁだいたいそうね。とりあえずはこのことは保留ね。で、貴方のことなんて呼べば良いのかしら?」

 

「クレイマンで良いですよ。私もクレイマンとして生きているわけですし。それで今日来た理由なんですが」

 

「何かしら?」

 

「まず待遇は改善する。頼みも無理の無い範囲で聞く。だから()()()()まで私の元で働いてほしい」

 

「来たる日って言うのは?」

 

「それは話せませんね。それまでは従ってくれると助かります」

 

少し不満そうな表情はしつつ、ミュウランは了解したようで頭を縦に降る

 

「で、もう一つなんですが……魔法を教えてください」

 

「え?」

 

ミュウランはあまりに意外な台詞に驚き、すぐに笑いへと変わった。

 

「は、あはは。あははは!まさかそんなことをクレイマンから聞くなんてね!いいわ、何時でも教えてあげるわ」

 

「ありがとうございます……で、そこで寝ているリザードマンは回復しましたか?」

 

「えぇ、傷は完治させたわ。ただ魔素が枯渇していてまだ目が覚めるのに時間がかかりそうね」

 

「ふむ、なら手っ取り早い方法がありますね」

 

クレイマンはリザードマン達のいるベッドまで歩いていく。

 

「あ、貴方まさか!」

 

「左からアイン、ツヴァイ、ドライってところか」

 

クレイマンは三体のリザードマンに名付けをした、確かにそれなら魔素を回復できる。相手はリザードマン、格下の魔物だ。しかしクレイマンは忘れている。

 

――アイリーンという底辺であっても魔素を大量に使った部下がいたことを。

 

「よし、これで目覚め――」

 

言い切る前にクレイマンの体は魔素切れで後ろに倒れ、最後にミュウランの呆れた声を聞いてクレイマンは眠りについた。

 

 

クレイマンと同時刻、アイリーンは再び墓場に訪れた。前ほど汚れてはいないが臭いはどうしてもキツく、不快感が出てくる。敵が侵入したときは霧が発生するらしいが、現在侵入者はいないため視界は良好だ。

 

来た理由は五本指、示指のアダルマン。彼に本当の忠誠を誓わせることだった。

 

前にクレイマンが業視者(ミサダメルモノ)では善人ではあるが、欲求が自害で、精神状態は諦観だった、知っていたが、これではいけないと悟り、アイリーンを向かわせた。自分が言っても本音は聞き出せないだろうと考えた結果であり、それにアイリーンなら必ず達成できると信じて送り出された。

 

「五本指、中指のアイリーンです。アダルマン、姿を見せなさい」

 

そう告げると、墓場の奥から一体のアンデッドが姿を見せた。

 

骨だけの身体に、白亜の法衣を着こなし、その放つ気配はクレイマンに匹敵するものが感じられた。

 

「おぉ、アイリーン殿、何用でこのような場所に?」

 

「貴方にかけられた呪縛を解きに」

 

「……それは偉大なる魔王、クレイマン様に反旗を?」

 

「クレイマン様の命令で、ですよ」

 

「ふ……ふははは!そのようなことできるとは思えんな!この呪縛は神聖魔法でなければ」

 

「使えますよ?」

 

「は?」

 

アダルマンには顔は変えようが無い骸骨なのだが、アイリーンには真顔になったような気がした。

 

「ありえん、そのようなことが、魔物にそのようなことができるわけがなかろう!」

 

「本当にそうかな?」

 

アイリーンは手に力を込める、すると手が光り始めた。アダルマンは知っている。その光は神聖魔法のものだということを。

 

「ありえん……」

 

アダルマンは口を大きく開け、本来神を信仰する者だけが、聖なる者だけが使える魔法を魔物が使えることに驚愕している。

 

「ま、欠片程度しか使えないんですけどね。だからついでに教えてもらおうと思ったんですよ。その法衣がルミナス教の司祭以上が使えると知りました。ですがその様子だとダメみたいですね?」

 

「ぐぅ……小娘、余をなめるなよ?」

 

怒りの感情をぶつけられていることにアイリーンは気づき、笑みを浮かべる。

 

「ならぶつけてくるといいでしょう。ワタクシに見せてください。司祭以上の実力の神聖魔法を!」

 

「貴様ごときにはこれで十分よ、侵蝕魔酸弾(アシッドシェル)!」

 

無数の水弾が展開され、アイリーンに放たれる、それは骨をも溶かす酸性を秘めているが、アイリーンはそれを真正面から受けた。しかし溶ける肉の匂いも音も聞こえてこず、様子が変わることはなかった。

 

「汚いですね。ただの元素魔法じゃないですか」

 

「くっ、怨念の亡者どもよ、生贄を授けよう、呪怨束縛(カースバインド)!」

 

今度は生気を吸い取る亡者が召喚される。魔人にも効果のあるその魔法さえも、アイリーンは受け止める。

 

「今度は死霊魔法ですね。で?」

 

アイリーンは神聖魔法の元である霊子を込めた手で虫を払うかのように死霊達を消してみせた。

 

「何故だ……何故魔法が効かぬのだ!」

 

()()()()()()んですが、何故かワタクシ魔法を受け付けない身体みたいなんです。神聖魔法は知りませんが」

 

「そんな、そんなことが……!」

 

アダルマンは狼狽え、体をよろめかせる。それでもアイリーンは語りかける。

 

「クレイマン様が言うには、神聖魔法は奇跡を信じ、願う者であるなら善も悪も関係なく、思いに応え、思いが強ければその分力になる。と、言っていました。貴方はどうなんですか?」

 

「余は……そうだな」

 

覚悟が足りなかった。自分にはもう資格が無いと諦めていた。ルミナス様から見放されたと考え、神聖魔法は扱えないと、だが目の前にいるアイリーンという魔人が目を覚まさせてくれた、カザリームにかけられた呪縛は解けない、自害もできず、あのクレイマンに従っていた。

 

「アイリーンよ。余をどうやって開放するというのだ」

 

「簡単ですよ。ただ神聖魔法をぶっこむだけです」

 

アイリーンはアダルマンの近くまで移動し、その霊子を込めた手で体に触れた。そのまま神聖魔法を発動させる。

 

「ははは、これではとても呪縛など」

 

手に込められた霊子は増大していき、強い光を帯び始める。その光はアダルマンを飲み込み、アダルマンの身体から何が消えていく感覚が現れる。

 

光が収まると、アダルマンは倒れ伏し、普通なら浄化され死ぬものだが、その口が言葉を発した。

 

「今のクレイマンという男は、それほどまでに信仰を捧げる価値があるのか?」

 

「ありますよ、ワタクシの信仰の対象はクレイマン様ですので、殆ど知識なしでもこれほどの神聖魔法を使えました」

 

「神聖魔法?……く、ふふふ、ふははは!違うぞアイリーン殿、あれはただの大量の霊子をぶつけただけに過ぎん、神聖魔法とは到底呼べん!」

 

アダルマンは起き上がり、アイリーンの肩に手を置いた。

 

「良いでしょう!余はこれよりクレイマン様に本物の忠誠を!信仰を誓おう、そして巫女であるアイリーン殿よ、貴方様に神聖魔法をお教えしましょう!」

 

「み、巫女?よくわからないけど忠誠を誓うのね。ありがとうございました。それではワタクシはクレイマン様の元に戻るますゆえ」

 

「余、いえ僕もついていきましょう!」

 

「やめてください僕とか!、余でお願いします。アイツが頭をよぎるので」

 

「ふむ、巫女様がおっしゃるなら、余はそれで、では参りましょうぞ!」

 

こうして、ミュウラン、アダルマンの忠誠を得たクレイマンであった。

 

ちなみに小指のピローネは普通に忠誠心を持っていたようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




クレイマンの状態をあえて例えるなら初期の名無しリムルの身体にヴェルドラが人格の主導権握って入っている感じです。元のクレイマンの人格消えているのでちょっと違いますが

九頭獣は本編から二十年前なのでまだいません。五本指とは
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