憑依したらクレイマンだった件 (微量の転スラネタバレ注意) 作:謎のコーラX
クレイマンの城にある訓練場、本来は部下が戦闘訓練に使っているこの場所には二人しかいない。クレイマンとミュウランだ。クレイマンは仕事の合間をぬって魔法をミュウランから教えてもらっており、それは一年も続いている。
クレイマンは今まで成果を試す。イメージを固め、魔法を発動させる。
「
クレイマンの手のひらから氷の槍が放たれ、的の木の人形に命中する。
「お見事です。氷魔法が一番かかりましたね」
クレイマンは召喚魔法についてはわかっていた。ただ何故かこういう攻撃魔法に関しては上手いこと使えずにいたようで、知らない言語を喋ると書くとで違うというのがクレイマンが見解だ。
魔素の扱いはクレイマンの記憶からわかっているし、地脈も一ヶ月かけたがどういうものか理解し、扱えるようになった。
「ふぅ、改めて思いますが魔法ってこんなに難しいものなんですね」
「早すぎるほうではありますけどね。千差万別。魔力、魔素の扱いの高さって人によって違うわけだし、魔法が使えない人、なんだって使える天才、それしか使えない一点型とかいるわけだし。」
魔力とは魔素をコントロールする力、これが高い人は強い魔法が扱えるという感じらしい。
クレイマンであるリョウマはいわゆる記憶にはあっても身体には染み込んでいなかったようで、今では今回の氷魔法を含めて全属性をかなり扱えるレベルになっている。
「さて、これも試してみますか」
クレイマンは指先から糸のような細長いものが伸ばした。それは自由自在に動き、人形にそれを刺すと、ぎこちないが、ひとりでに動き始める。
「へぇ、なるほど魔素の糸かしら、それで人形に魔素を流して操るっていうわけね」
「まぁそれだけっていうわけでは無いんですよね、ふっ!」
クレイマンの魔素の糸、
「普通に攻撃としても効果があるんですよ。後こういうのもあります」
クレイマンは背中から義手を一本生やす、それは人間の手ではあるが、巨人の腕といった大きさのものであった。
クレイマンはもう一体の人形にその腕を振り下ろすと、強い衝撃と共に木片が飛び散った。
「名付けるなら
クレイマンが人形腕を消すと、ミュウランは感心したように首を縦に降る。
「……貴方、意外とこういう人形作りできるのね。クレイマンの記憶もあるのでしょうけどすごいわ」
「意外とやってみると楽しかったですね。図工みたいで」
「そういうものなのかしらね。そういえば魔法ならヴィオレちゃんが扱えるはずだったけど、何で私に?」
「教える気がまるで感じられなかった。バーとかドカーンとか抽象的な説明でしたよ」
「あー、あの子教えるの下手そうですよね。それじゃあもう魔法はマスターしたみたいだし、教えるのはこれで終わりかしら?」
「そうだね。お疲れ様でした。ミュウランさん」
ミュウランはさん付けにむず痒いものを覚え、体を震わせる。
「さん付けしなくて良いわよ。クレイマンの声でそれは違和感凄いのよ」
「わかりました。ではミュウラン、これからもよろしくお願いしますね」
「えぇ、貴方の言うその時まで付き合うわ」
クレイマンとミュウランは友好の握手を交わした。前のクレイマンではありえない光景がそこにはあった。
○
「これで最後の種っと」
アイリーンは最後の種を撒き終えると、一息ついた。
アイリーンは畑作りに勤しんでいた。広さは平均的な1.43ヘクタールで、墓地の一画を使用しており、元々汚染された土ではあったが、神聖魔法による自身のものと、アダルマンの手助けもあり、綺麗な栄養が高い土へと生まれ変わった。
食料確保のための畑作りは、別の部下がやる予定ではあったが、アイリーンはその任務に立候補した。
自分でもよくわかっていない。何故畑をしようと思ったのか、何故楽しくやれているのか。疑問を思いつつも一年の間に畑は今完成へとなっていた。
《確認しました。ユニークスキル、『
頭に声が響く。それは世界の声と呼ばれる者だとアイリーンは知っている。
「こんなことで手に入るんですね。それもユニーク」
あまりに簡単すぎることに苦笑しつつアイリーンはとりあえず新しく手に入ったスキルを使用してみた。その効果は土操作と体力、身体能力の上昇と言った具合だ。
戦闘向きかは相手がいないとわからないため、アイリーンは相手を呼んだ。
「ヴィオレ!」
「……原初の悪魔を気軽に呼ぼうとするのは君くらいなもんだよ。アイリーン」
即座にヴィオレは姿を見せる、空から勢いよく着地し、土が飛び散る。
――それがアイリーンの逆鱗に触れたのだ。
「おい、何、人がやっと完成させた畑を荒らしているんですか」
「ごぉめんご!」
ヴィオレは煽るような声音と舌をぺろりとだした舐め腐った謝り方をする。
アイリーンは早速
空中でヴィオレは笑みを浮かべながら思考する。
(やっぱり凄いねアイリーン。まだ一年しか経っていないのに新しい、それも結構強めのスキルを手に入れたみたいだね。これは
考え終えて、ヴィオレは手頃の広い場所まで降り、続いてアイリーンも飛んできて、着地する。
「練習台になりなさい」
「いいよ!ボクも戦いたくてウズウズしていたところだし!」
それから一時間ほど地形が抉れるほどの戦闘が行われた。今回はヴィオレは魔法を使用し、アイリーンも
遊び程度であり、アイリーンは
二人共に息を切らすようになると、戦いは終わり、アイリーンは怒りも消えたのかヴィオレに何時もの声音で話しかける。
「ねぇ、ヴィオレ。貴方魔法を使えるのよね。どうせなら教えてくれないかしら?」
「あぁ、そういえば君って魔法が使えないんだったっけ、別にボクが教えなくても勝手に使えそうな気がするけど、まぁ良いよ!」
笑顔で返答し、ヴィオレは快くその提案を受け入れ、アイリーンに魔法を教え始める
しかしそれはアドバイスと言って差し支えないものであったが。
「まず魔素をかんじることから始めようか」
「魔素、魔素かぁ」
アイリーンは目をつぶり、まわりに漂う魔素を感じ始める。次第に目をつぶっているのに景色が見え始め、目を開けているのと同じ景色が瞼の裏に広がった。
《確認しました。エクストラスキル、『魔力感知』を獲得……成功しました》
目を開け、再び脳内に声が響いたのをアイリーンは感じた。
「魔力感知っていうの獲得したみたいです」
「え?、早いねホント。じゃあ次は魔法、簡単に言うなら“何らかの効果を生じさせるイメージ”かな?特定の法則に沿って具現化させるもので、例えば物を燃やすイメージをエネルギーとして放出させる。で、その付随効果で火の玉が出てくるんだよ」
ヴィオレは頭が良くないように見えるが、長年生きているだけあって頭はいいほうだ。本の中身をまるまる暗記などもでき、教えることなど造作でもない。
「なるほどね。じゃあやってみます」
アイリーンは手を掲げ、手のひらに意識を集中させる。
物を燃やすイメージ、そこには最初のヴィオレの放った魔法、
すると手のひらに火が灯り、徐々に大きさと熱量が増していき、巨大な火の玉が出来上がった。
「やっぱりボク必要ないじゃん」
「そうですかね?ほい」
アイリーンは自然な動きで火の玉をヴィオレ目掛けて投げつけた。
「そう来るとは思っていたよ」
ヴィオレは火の玉を手を振っただけでかき消した。アイリーンはそれを笑みを浮かべて馬鹿にするような軽い拍手をする。
「すごいすごい、やっぱり原初の悪魔ってすごいですね」
「あはは!バカにしてるでしょ?」
「まぁね。ちゃんと受けないところがなんかワタクシの魔法を怖がっている感じがして」
ヴィオレはそれに若干イラッとしつつ、提案をした。
「じゃあ今度は受けてあげるよ、うってみてよ」
「あ、良いんだ、じゃあいきますよー!」
アイリーンは火の玉を一個――ニ個、三個、四個と増やしていき、合計十個の大きな火の玉が出来上がった。
「オリジナル魔法、
それを全てヴィオレにぶつけ、巨大な火柱がヴィオレから舞い上がった。
しばらくして火は収まり、ヴィオレは服がボロボロになったくらいで、無傷で立っていた。服はすぐに元の綺麗なものになり、ヴィオレは拍手をアイリーンに送る。
「けほっ、本当に才能が豊かだよね、君。どこかボクと似てる気が……いややっぱナイナイ」
「それには同意見ですね。悪魔と同じとか無いですよ」
「だよね?」
アイリーンとヴィオレは見つめ合った後、笑い声を上げる。楽しげな様子がそこにはあった。
「じゃあ畑治しに行こうか?」
「え?」
この後めっちゃヴィオレは畑の種を回収させられたのであった。