デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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デジたんマシマシチョモランマでお願いします。お願いしますって。あ、メニューにない…いやいや、だってデジたんですよ?ほら、デジたん。可愛いでしょ?あ、無理…ですか。そうですか…。


ヲタクズ•マニューバ

ある日の朝、眠そうに目をこするゴルシちゃんに、僕はある物を押し付けた。

 

「ゴルシちゃん。これあげるよ」

 

「なんだこれ?No.5って書いてるけどよ…」

 

「デジたんファンクラブの会員証。入っておくといつかいいことがあるよ」

 

「ほお、そりゃまた。だが断る。天地がひっくり返ろうとアタシはそんなもんに入らん」

 

「いやいや、入っておいた方がいいよ。ファンクラブ…とは銘打たれてるけど、実際は非公式のほんわかコミュニティで、会員費だとかそういう面倒くさいのはなし。強いて言うなら、オススメのブツの情報なんかを共有して同志たちを沸かせることが会員の義務…とまではいかないけど、まあそんな感じ」

 

デジたんには後でNo.1の会員証を渡すつもりだ。このファンクラブの存在意義からして、彼女は入らざるを得ない。

 

「つか会員証て。こんな立派なプラスチックカード…どこでこしらえたんだよ?」

 

「…そこは、ほら。デジたんのご両親のこと知ってる?」

 

「いや、知らねーけど。それが?」

 

「デジたんのお父様は印刷会社の社長さんでね。実はこないだご挨拶に行ったんだけど…」

 

「お前…デジタルのことになるとフッ軽過ぎないか?」

 

それはそう。デジたんのためならどこへだって行けるのが僕という生き物だ。デジたん本人に尋ねず探すのにちょいと手間取ったが、愛の力でなんとかなった。愛の力で。

 

「まあ、そのときにちょいとお話ししてね…。二人は僕のデジたんファンクラブ計画に大賛成、すぐさまツテをたどってカード印刷をやってる知り合いの会社に連絡。それから数日後、No.3とNo.4のカードを持って嬉しそうにしてた」

 

費用は全て彼らが持ってくれたので、感謝してもしきれない。会ってみた印象だが…デジたんはお二方の血をよく引いてる。それは間違いなかった。

娘さんを僕にください、と言いたいところだったが、さすがに自重した。

そのかわり、娘さんは僕のです、と言っておいた。

 

「なんかもう一周回っておもろく思えてきたぜ。あ、でもよー。そんなんに人集まんのかよ?」

 

「うん、それが結構集まったんだ。少なくとも三桁人はね」

 

ネットのウマ娘掲示板を全力でサーチしたり、デジたんがよく行く場所で探してみたのだが、やはりデジたんのことを知っている人はそれなりにいるようだった。

 

「ロマンが大好きなオタクたちは皆、先行投資だなんだと言ってこぞって加入したよ」

 

それに、美少女が嫌いな人はいない。まして自分と同じ趣味を持っているとなれば、オタクは簡単にオチる。

 

「ほえー…そりゃ、デジタルは期待を裏切れないな」

 

「デジたんなら大丈夫。期待を裏切るどころか超えてくるのがデジたんだから」

 

「…なるほどな。ちなみに当の本人には言ったのか?」

 

「まだ言ってない。デカい交渉材料は大事に取っておくもんでしょ」

 

「…あんまりアタシを巻き込むなよ」

 

「もちろん。ちょっとだけしか巻き込まないよ」

 

無論、完全に巻き込まないという選択肢はない。

 

「…おん、そうかよ。…朝飯食いに行こうぜ」

 

そう言ってドアへと歩き出すゴルシちゃんの目は、どこか遠い場所を見つめていた。

…それと、どうやら僕の知らぬ間に天地はひっくり返っていたらしい。ゴルシちゃんがポケットに何やらカードをしまい込むのを見ながら、僕は彼女に続いて部屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

トレセン学園、生徒会室。

今日はトレーニングを終えてすぐここにきた。

 

「…ふぅ、なんだろう。この妙なドキドキ感…」

 

普段は立ち入らない部屋に入るとき、別にやましいことはないのに変に緊張してしまうのは僕だけだろうか。

…そんなことを考えながら、ドアをノックしようと手を伸ばしたとき、向こう側からドアが勢いよく開かれた。

 

「…ッ!?邪魔だッ!?」

 

「ごぁべすっ!?」

 

中から飛び出してきた何者かによって、僕は思いっきり吹っ飛ばされる。かなりの勢いだったので、ぶつかった相手諸共床に寝るハメになった。

 

「…オイ、大丈夫か」

 

「あ、ハイ。大丈夫で…」

 

「そうか分かったそれじゃ私はこれで…っ」

 

飛び出してきたウマ娘の顔を見る。

 

鼻に絆創膏、ハンターのような特徴的な目つき。それに生徒会室から飛び出してきたところをみるに、彼女の名はナリタブライアンで間違いないだろう。

 

「おい、ブライアン、貴様…!このたわけが!他人にぶつかっておいて、その態度は何だ!走行中のウマ娘との衝突は命に関わるのだぞ!今回はそれほどの速度ではなかったからまだいいが、生徒会たるもの、廊下を走るなどあってはならないっ!」

 

間髪入れず部屋から出てきたエアグルーヴさんに捕まえられ、ばつが悪そうにしている。

 

「ッそれと、この忙しい時期に、よりによって生徒会副会長のお前に職務を放棄されるとな、会長は大変お困りになる。お前はそれを理解していないようだな…?」

 

「…チッ、分かった、分かった。悪かったな」

 

「謝る相手は私だけではないだろう?」

 

それを聞いて、僕の方に向き直るブライアンさん。うわっ、正面から見ると…何だ、このイケメンは。

 

「……すまなかった」

 

「あ、いえ、僕のほうこそ注意が足りませんでしたし…」

 

と、僕は生徒会に用があるから来たのだった。

 

「あの、それよりも、僕ちょっと生徒会の方とお話ししたいことがあって…今いいですか?」

 

「我々に用事が?なら中で聞かせてくれ。今は会長もいらっしゃる」

 

それはちょうどよかった。ぜひとも会長と話しておきたかったので助かる。

ブライアンさんを押し込むエアグルーヴさんに続いて、僕は生徒会室に入った。

 

「ははは。やはり彼女からは逃げられなかったろう、ブライアン。サボりもほどほどにせねば、そろそろ一発痛いのが飛んでくるぞ」

 

…夕日を背にしてなお一層輝いて見える、生ける伝説ことシンボリルドルフ生徒会長。いつ見ても、この人の纏う覇気は凄まじい。のだが、いかんせん僕は彼女のお茶目な一面なんかを知っているので、ギャップで脳がやられそうだ。可愛いよルナちゃん、カッコいいよルドルフ会長。

 

「会長…。会長はコイツに甘すぎます。サボるな、と何度言っても懲りずに、まったく…」

 

「まあまあ、いいじゃないか。…それで、しばらくぶりだね、オロールくん。何の用だい?」

 

さて、本題に入らせてもらおう。

 

「会長。実は、今度のファン感謝祭について、ちょっとした要望…いえ、かなり大きな要望があるんです」

 

「大きな要望…か。そうだね、ここ最近君らにはよく助けられている。できる限り聞き届けよう」

 

詳しく話す前からずいぶん嬉しいことを言ってもらえたが、実のところこれは狙い通りだ。

先日から、僕とデジたんはそれはもう身を粉にする思いで生徒会のために働いた。特にデジたんは、一切の誇張抜きで、生徒会に一番貢献した一般生徒だろう。

…もっとも、こんなことをしなくても会長は聞き届けてくれるかもしれないが。まあ今までの行いは生徒会に対する僕なりの日頃の礼でもある。

 

「トレセン学園には、多くの未デビューウマ娘が所属しています。特に中等部一年生はほぼ全員がデビューしていない…。だからファン感謝祭でも、基本的に裏方に回ります。ですよね?」

 

「ああ。彼女たちあってのファン感謝祭だ。特に君のような自発的に働いてくれる娘は非常にありがたいよ」

 

「お褒めに与かり光栄です。それで…僕が言うのもなんですけど、感謝祭を裏から支える彼女たちに、何かご褒美を与えるのはどうでしょう?」

 

「ふむ…例えば、どんな?」

 

この場にいる全員のウマ耳が、興味深そうにピクリと動く。いいぞ、なかなか好感触だ。

 

「感謝祭では多くのファンが集まります。彼らの応援はウマ娘にとって大きな力となり、それがモチベーションであるウマ娘もいる。ですので、未デビューのウマ娘でもファンと接することができる機会…例えば模擬レースとか、ミニライブとか、出店の接客…そういった機会を設ける、というのは?」

 

正直、僕はデジたんの走る姿や、ステージの上で輝く姿、接客するデジたんを拝みたいだけだ。

 

「ほう…。面白そうだね」

 

「…ですが、コストや人手の問題もあります。なかなか難しいのでは?」

 

「私が面倒くさい役をやらなくて済むなら、なんでもいい…」

 

反応は三者三様。だが、要望が通る可能性はある。

 

「人手に関して言えば、素人の意見ではありますが…イベント要項に、ファン感謝祭準備への貢献度が高い生徒は模擬レースに出走できる可能性が高くなる…的なことを書いておくのはどうでしょう。そうすればきっと人手が得られますよ」

 

ふと、エアグルーヴさんが手を挙げる。

 

「かかるコストはどうするつもりだ?お前が今提案したもの…特にミニライブなんかには多くの費用が必要になるぞ」

 

「それについては…すいません、考えつきませんでした。強いて言えば、カンパでなんとかならないかなーなんて…」

 

資金問題の良い解決策は、僕じゃ思いつけなかった。結局、そこは生徒会頼りになってしまう。

 

「いや、諸君。コストは大丈夫さ。…ふふふ、今年は誰かさんがとても頑張ってくれたおかげで、少しだけ浮いた資金がある。軽く計算してみたが、もっと人手が集まるのならば叢軽折軸。資金にかなりの余裕ができるだろうから、それくらいのイベントには十分事足りるだろう」

 

…!なるほど。誰かさんとは何者か、なんて聞かなくとも分かる。

いやあ、さすがデジたん!やはり彼女の優しさは宇宙一だ。

 

「ってことは、それじゃあ…!」

 

「ああ。やってみようじゃないか!では、早速諸々の準備を…」

 

「会長!ダメですっ!…それは!」

 

気合を入れて立ち上がる会長に、エアグルーヴさんが待ったをかける。

 

「…む、どういうことだエアグルーヴ?」

 

「会長は…その、最近働きすぎです!それくらいの仕事なら私に任せてください!どうかご自愛を…!」

 

「いや、エアグルーヴ。君の方こそ、少し休むべきだ。学園のために刻苦精励する姿は私も尊敬している。が、ほどほどにしたまえ。君自身のため、そして私のためにも、体を壊してほしくはない」

 

…仕事の取り合いが始まった。

こんなことが起きるのも、二人がひとえにトレセン学園の生徒たちのためを思って、日々生徒会業務にあたっているからだろう。

…僕はどちらも休むべきだとは思うが。だってエアグルーヴさんはクマが浮き上がってカラフルなアイシャドウを形成しているし、会長も睡眠不足のせいだろうか、…「中央を無礼るなよ」のセリフが似合いそうな目つきになっている。

 

「フッ、また始まった。…あれは仕事バカどもの習性のようなものだ」

 

「習性、ですか…」

 

いつの間にやら横にいたブライアンさんと言葉を交わす。

 

「…ああ。特にこの繁忙な時期に、ああやってちょっとした口論をやる。お互い、相手を休ませるためにな…」

 

理解できない、とでも言うように肩をすくめるブライアンさん。

 

「でも、そういうところがきっと、あの二人に対する周囲の信頼や尊敬に繋がっているんでしょうね…」

 

「だろうな。ハァ…まったく、見てられん」

 

やがて、ブライアンさんが二人の方へ歩いてゆき、最高にカッコいい言葉を言い放った。

 

「私がやる。…たまには仕事をしないとな。だから二人はのんびりしているといい…」

 

「…っブライアン、お前…いいのか?」

 

「ああ。今の死にそうな顔のお前らが見てられなくてな」

 

「…ありがとう、ブライアン。君には一言芳恩の念を常々感じているよ」

 

実に良いものを拝ませてもらった。まったくウマ娘というのは、すぐにてぇてぇを生み出すから最高だな。

…しかし待て、このままでは僕の提案が発端で生徒会にさらなる負担をかけることになる。最低限、生徒会に頼らなければいけない部分は別として、僕はその負担を可能な限り減らさなければいけない。

 

「あの!僕言い出しっぺなんで!どうぞこきつかってください!たかが一生徒である僕の要望を聞き届けていただけたからには、バ車ウマのごとく働きますのでッ!」

 

「フッ…元気があるな。…今日はもう遅い。明日からその元気を生かせ」

 

…なんだか、ムズムズするというか。

こう、イケメンウマ娘を拝んだときの感覚というのはどうにも独特なものがあって、未だに慣れないのだ。まして今のブライアンさんは、それはもう不器用な優しさが表面に現れたような表情だったものだから、もっとムズムズ…いや、キュンとする、と言えばいいか?

 

…分からないな。デジたんを見るときは全身がキモチよくなるのだが、それとはまた違う。何なんだろうか。

 

「ふふ…エアグルーヴ。ブライアンもすっかりやる気のようだ。私たちは…そうだな、足湯に行って疲れをふっ飛ばすとするか。ふふふ…」

 

「足湯…?はい、そうですね。疲労をこれ以上溜め込まないようにしましょう」

 

二人もしっかり休んでくれるようで良かった。

…しかし、足湯か。見たことも聞いたこともなかったが、会長にはそういう趣味があるのだろうか。

 

「…今日はありがとうございました!それでは、失礼します!」

 

何はともあれ。

雲一つない空を照らす夕日を眺めながら、僕は帰路についた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「るなああああぁぁぁぁーーーぁッ!!」

 

「どうした急に」

 

「ゴルシちゃん…。僕はもうダメだ。またやっちゃったんだ。前回の反省をちっとも生かせてない、最悪だ…!」

 

「は?」

 

僕ってなんてダメなウマ娘なんだ…!今考えればすぐに気付けることだったのに!

 

「…また会長のギャグに気づけなかったんだ。今回こそは気づきたかったんだ…!それなのに…!」

 

若干不自然ではあったけど、話の流れには沿っていたので反応できなかった…!

 

「すっげーなおい。これほどくだらねぇと思ったことはなかなかないぜ。…つかお前疲れてんじゃねーの?もう寝ろよ」

 

確かに、疲れのせいで気づけなかったのかも…いや、これ以上の言い訳はよそう。

 

「……足湯で疲れを……フットバス……!」

 

「寝ろよ!オメーもう寝ろ!早く寝ろ!」

 

…結局、今日は自分の未熟さを知る一日だった。




どうも、danger zone聴きながらマヤノとナリブを育成して勝手にエモに浸ってる一般トレーナー兼トレーナーちゃん兼トレーナーさん兼トレーナー君兼モルモット兼お兄様兼お姉様兼お兄ちゃん兼お姉ちゃん兼マスター兼たわけ兼同志兼etc.…………です。
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