デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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デジたんSSRが欲しいなぁと思う今日このご……

…………。

……イ゛ャ゛ォ゛ヴッ゛ッ!!!


リメンバー•パフェタワー

冬にしては暖かい、そんなとある朝。

 

「うぅむ……んー……?」

 

「どうしたよ、朝っぱらから小難しい顔して。飯くらい笑って食えよ」

 

「……あ、ごめん。ちょっと考え事してて」

 

「へぇ、すっげえ。お前って悩めたんだ」

 

「僕だって年頃のウマ娘だ、悩むこともある」

 

ゴルシちゃんは僕のことを何だと思ってるんだ?

それにこの悩み……というより考え事は、ゴルシちゃんにも関係があることだ。

 

「つかお前、飯それでいいのかよ。もっと腹に溜まるもん食えばいいじゃねーか」

 

「や、ほら、甘いもの食べた方が頭回るし」

 

「どう考えても摂りすぎだろ。逆に頭悪くなるぜ?そこのデジタルくらいで十分なんだよ」

 

それは知っている。ただ、僕の朝食がデザート類で埋め尽くされているのは、目的があってのことだ。食堂の豊富なデザートメニューの味を全て覚えるという目的が。また、デジたんの朝食がまさしく一汁三菜、味の薄いものが多く、古き良き慎ましさの中に美を感じるようなメニューになっているのも、僕のせいだ。

 

「オロールちゃん、最近やたらとあたしに餌付けしようとしてきますよね。手作りのスイーツを毎日提げてこられると、口の中が甘ったるくて……それに、それに!たっ、体重計に乗るのが恐ろしくなってきて……!」

 

「いやぁ、ごめんね。でもさ、しょうがないんだよ。だってさぁ!僕お手製のスイーツをああも美味そうに食べてるのを見ちゃったら、もう……!もうっ!」

 

考えてもみてほしい。僕が作ったのだから、それは実質僕だ。そういうことにしておこう。とにかく、それをデジたんが食べる、となれば実質そういうコトゲフンゲフンゲッフンッ!

それと、デジたんには安心していただきたい。

なぜなら、デジたんの体重その他身体データ、日々の食生活や行動パターンを元に許容できる栄養素を算出することなど、僕にとってはたやすいからだ。

 

「けど、君のおかげでかなり上達した。そんじょそこらのお店に出しても恥ずかしくない程度には、料理の腕がついたと思う」

 

デジたんに食べてもらえる、彼女に美味しいと微笑んでもらえる。僕がキッチンで狂喜乱舞することになったのは言うまでもない。デジたんが三ツ星料理を食べたいと望むのなら、僕が応えよう。

 

「なんだ、料理の練習してたのか?……今このタイミングでそんなことやるってこたぁ、お前もしかしてアイツの……いや、マックイーンのこと調べたか?」

 

「まあそんなとこ。ターゲットに最も効果的なのは間違いないでしょ?」

 

「いや、そうだけどよ。何で知ってんだ、どんなリサーチ能力だよ、ったく」

 

もともと知っているからだ。別にそう言っても構わないが、言う必要はない。

 

「あの、そのマックイーンさん?という方はどんなウマ娘ちゃんでしょうか?」

 

「お前は知らねーのな。んじゃ軽く説明してやる。名前はメジロマックイーン、芦毛で貧に……ステイヤーらしい機能美がある体形で、お嬢様っぽいオーラが漂ってるだけの変人。んで、アタシとちょっとした繋がりがある」

 

「ちょっとした繋がり……?」

 

「気にすんな。とにかく、アタシはマックイーンをよく知ってる。泣き落としすりゃチームに入ってくれそうなヤツだから、そうしようかとも思ってたが、もっと効果的な手段が使えるみてーだからな。だから、トドメはオロールに任せる」

 

「おっけー、任された」

 

「えっと、つまり、甘いもので釣るんですか……?」

 

「おう!拉致ってブチ込むだけだ!楽勝だな!」

 

まあ、何とかなるだろう。マックイーンだし。

 

 

 

 

 

 

 

 

数時間後、学園のとある並木道にて。

 

「こちらG、ターゲットを確認。WとSは即座に進路を塞げ」

 

「こちらO。ひとつ問題がある、G。僕らそもそも無線機も何も持ってないから君の声がWとSに届いてない」

 

「……WとSがポジションについた。O、A、行け」

 

「言いたいだけだよね。でも気持ちは分かる」

 

マックイーンには気の毒だが、さっさと済ませてしまおう。既に彼女の眼前には謎のウマ娘二人が立って道を塞いでいる。ちなみに、今回はグラサンとマスクからランクアップし、何気に防寒も兼ねたバラクラバで顔を隠しているので、絶対に誰かは分かるまい。

 

「……あの。私に何か用でも?」

 

突然道を塞がれたのだから、当惑するのは仕方がないことだ。だが、その隙をプロは見逃さない。

 

「……フンッ!」

 

「あっ!?えぇっ、ちょっ!?何しますのっ!?」

 

WとSが息の合った動きでマックイーンの脚を抱える。混乱をさらに深める彼女の腕を僕とデジた……Aが掴みとる。

 

「ウオッカ!スカーレット!オロール!デジタル!やっておしまいっ!」

 

「っ!?その声は、ゴールドシッ……ひゃあっ!?」

 

そしてゴルシちゃんがちょいと手を加えてやれば、あっという間に袋詰めのマックイーンが完成だ。

 

「私ちょっと何が何だか……何なんですの貴女たちっ!?何してるんですのっ!?貴女たち、ちょっと!?」

 

ウマ娘が五人もいれば、えっさほいさとやるまでもなくスムーズに運ぶことができる。絵面は率直に言ってかなりヤバいかもしれないが、まあトレセン学園じゃこれくらいの事件がしょっちゅう起こってるから問題ない。こないだ僕がキッチンにいたときに、背後で爆発音が鳴り響き、何かと思い振り向いてみればそこには「原因不明のエラーが発生しました……」などと言いながらションボリするサイボーグみたいなウマ娘がいたりもした。

 

「いやこれもう拉致ですわ!ちょっ、離して、どなたか、助けっ……」

 

こうして、僕らはわずか数分の間に、またしても何も知らないメジロマックイーンさんを拉致することに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

華麗な誘拐劇ののち、部室に戻ってから後ろ手に縛られ、呆然と口を開けるマックイーン。そんな彼女が、かろうじてひと言をこぼした。

 

「……あの、ここどこですの?」

 

「ここがどこか、アタシが誰であるかをお前が知る必要はない。そのことを理解してもらおう。いいな?分かったらイエッサーゴルシ様と言え」

 

「貴女が誰かなんてとっくに知ってますわ、ゴールドシップ。というかマスクを取ってから言うセリフではないと思いますの。あと貴女の後ろに”チームスピカ”と書かれた貼り紙がありますわね。……それよりも、他の方々はどなたで?随分と手荒な真似をしてくれたようですが?」

 

おお、怖い怖い。真に貴い人の持つ、相手を有無を言わせずに従わせるような、気品と冷酷さ漂う眼差しだ。まあ僕はマックイーンのことを知っているので、脳に伝達される情報は「可愛い」のみなのだが。

 

「初めまして。僕らは、まあお察しの通り、スピカってチーム所属のウマ娘。僕はオロールフリゲート。ーでも゛でも好きなように呼んで」

 

「選択肢が絶望的すぎませんこと?何ですの、゛って。情報があまりにも少なすぎますわ。……オロールさんと呼ばせていただきます」

 

「え、ちょ、あの。マックイーン?マックちゃん?ちょ、マックちゃんもソッチ側かよ……?ウソだろ……?」

 

さて、自己紹介を終えたからには、すぐさま例のブツの準備に取り掛かることとしよう。といっても既に作ってあるので、あとは持ってくるだけだが。

 

「あっ、ハイ、アグネスデジタルと申します!しかしあたくしめのことなど路端の石程度に思っていただいて構いませんのでっ!どうぞ、゛でも ’’ でもお好きにお呼びくださいっ!」

 

「絶望的な選択肢を提示するのが流行りなのですか?゛と ’’ で微妙にニュアンスが違うのも紛らわしいですわね」

 

「なあなあマックちゃん、お前それやめろって。そのツッコんでると見せかけて高威力のボケかますのやめろって、収拾つかねぇから」

 

うんうん、仲が良いようで何より。

では、その絆をさらに深めるアイテムをご覧に入れよう。僕は鼻の奥をつつくような香ばしさのソレを、テーブルの上にそっと置いた。古臭いドラマに出てくる、取り調べ室の刑事が浮かべる、犯人が思わず自供してしまうくらいの寄り添うような優しさを含む笑み、それを意識しつつ。

 

「嬢ちゃん、これ食うかい?」

 

「……は?カツ、丼……?ですの?」

 

「あぁ、マックイーンの分は別にあるよ。コレは、えっと、そうだな……。ゴルシちゃん、どうぞ召し上がれ」

 

「え、アタシ?いやつーかよ、なんでそんなもんがあるんだよ?お前が作ったのか?」

 

「いやぁ、初めはそんなつもりなかったんだけどね。料理を練習してるうちにだんだん興が乗ったというか。いろいろ作ってみたくなっちゃって」

 

少し自慢させてもらうが、僕というウマ娘はそこそこ良いスペックをしているのである。レシピ本を流し読みすれば、そこに載っている料理は全て作れるし、例えば調理中にレシピを再確認する必要もないので、自分で言うのもなんだが手際が良い。できる、ということはイコールで楽しさに繋がる。

……というのは、実は建前のようなものだ。

正直に言うと、デジたんが喜ぶ顔を想像しただけで、いつの間にか僕の手は勝手に動いていた。改めて言うが、彼女が三ツ星レストランの料理を望むなら僕が応えよう。彼女が宇宙に行きたいと言うのなら僕が応えてみせよう。それくらいはできる。

 

「どれ、一口……。うわっ、普通にうめぇ……。でもアタシ今腹減ってねぇからな。ウオッカ、やるよ。食ってみたらけっこううめぇぞ」

 

ゴルシちゃんには好評のようだ。ところで、同じ箸を使ってしまうと大変なことになるのだから気をつけてほしい。主にデジたんがヤバい。思いっきり涎が垂れている。まあ気持ちは分かるが。確かにこれは美味しい、いろいろと。

 

「え、俺?ま、まあ、とりあえず一口……っ!ホントだ、うめぇ!ふむ、カツのサクサク加減からして、卵は別で……いや、出汁の染み込み方もかなり……って、ああ!?違う、違うからな!別に俺料理とか、くっくく詳しくねぇから!?適当言ってみただけだ!」

 

ずいぶんと詳しい解説をしてくれた。そういえば、このギュルルンギュルルンとか鳴くウマ娘は料理が得意だったな。しかし、なんかカッコ悪い気がするから隠しているのだったか。しかし今、一番知られたくないであろう相手の目の前で自爆してしまったわけだ。

 

「へぇー……アンタってもしかしてけっこう料理できるの?」

 

早速聞かれたか。だが、スカーレットの目は純粋な興味と感心の念で満たされている。聞かれた本人は気づいていないようで、こちらは真っ赤な顔に浮かんだ目をグルグル回しているが。

 

「スッ、スカーレット、お前!ち、違うって言ってるだろ!大体、俺はもっとワイルドで……ッ!そう、料理なんてのは、焼くだけで十分だっ!そう、直火焼き!ああ、えっと、炭で焼くときはあまり近火にならないようにして、それから……」

 

「ちょっと、ウオッカ?大丈夫?アタシはただ、料理ができるなんて、なんだか少しカッコいい、って言おうと思ったんだけど……」

 

「コゲに気をつけさえすれば、脂が落ちる分ヘルシーで健康に……え?い、今、なんて言った?」

 

「だから、料理できるなんてちょっとカッコいいわねって……」

 

「そ、そうかな……?」

 

「そうよ、アンタは十分カッコ……あっ!?か、勘違いしないでよ!?あ、あくまでもちょっと!ちょっとアンタを見直しただけであって!ライバルとしてっ!ほんの少し認めてあげなくもなくもなくもないってことよ!?」

 

「は、ちょっ、お、お前っ、顔真っ赤にしながらんなコト言うなよっ!?たっ、ただ、その……ありがとよ」

 

「……〜ッ!な、何よっ!真面目な顔しちゃって……っ!」

 

おい、おいおい、おいおいおいおい。

死人が出るぞ、それ以上はよしてくれ。というかもう出てる、死人。

あぁ、デジたん。君はもう其方に行ってしまったのか。気持ちは分かるよ。だから僕も、今から君の元へ向かおうか。

 

「あの〜……?私を放っておかないでくださいまし?人を拐っておきながら、当人をそっちのけで茶番に勤しむのはどうかと思いますわ」

 

おおっと、そうだった。今日の目的はマックイーンの勧誘だった。忘れるところだった……なんてね。既に用意はバッチリだ。

 

「ほい、マックイーン。これ君の分」

 

「なっ!?なななんでっ、なんですのソレッ!?」

 

僕が持ってきたのは、天を貫くほど高くそびえ立つパフェ。まさに甘味という名の天国への道そのもの。季節限定パフェを全て網羅した、春らしさのあるベリー類から始まってメロンなんかを通り、メがマに変わって最後はしっとりチョコレート。減量中のアスリートの天敵であるこのパフェタワーは、まさにソッチ方面が少々気になるこのマックイーンというウマ娘を、別の意味でも天国に連れていってくれるだろう。

 

「ご覧のとおりだよ、マックイーン。もし君がウチに来てくれるなら、コレを……」

 

「はい!これからよろしくお願いいたしますわ!」

 

決断が早い。僕でなきゃ見逃しちゃう早さだ。

 

「お!じゃ今日からお前も家族だマックイーン。ようこそっ、スピカファミリーへっ!」

 

「なんですのそれ。というかやめてください。貴女にそれを言われるとなんだか寒気が……」

 

「ヘイヘーイッ!固いこと言うなってマックちゃーん!マイブラザーッ!もっと気楽に接してくれていいんだぜ?」

 

「ブラザーではなくシスターでしょう、まったく。それに私、これでもかなり気を抜いているつもりなのですが……」

 

僕はよく、ゴルシちゃんのことを”美しい”と評するが、しかしどうだ、今の彼女は。マックイーンにかまっている彼女の、ハジケるような笑顔は。

……なんだ、あの可愛い生き物。

 

「つ、つまり、ゴルマク……?」

 

さすがだデジたん。一瞬で真理に辿り着くとは。そんな君が、やっぱり一番好きだ。

なにはともあれ、メジロマックイーンがスピカに無事加入した。

……かなりチョロいんだな。

 

「あ、そういえば。このタワー、けっこうな値段がしそうですが、そのお金はいったいどこから?」

 

「勧誘の必要経費だよ、デジたん」

 

「あっ……」

 

 

 

 

 

 

 

「こんばんは、タキオンさん。ちょっとデジたん借りていきますね」

 

「おや、そうかい。楽しんできたまえよ。そうだ、クスリは必要かい?」

 

「いえ、大丈夫です。それじゃ、また」

 

デジたんの部屋の扉から顔を出し、タキオンさんと軽く言葉を交わしたのち、呆気にとられてポカンとしているデジたんを抱き上げる。

 

「……あのー?オロールちゃん?どういうことです?今日は動画配信の予定もありませんし、わざわざあなたの部屋に行く必要は……」

 

「僕が嫌いなの?デジたん?」

 

「い、いえっ!そういうわけじゃありません。ただ、いつも配信の日には結局流れで一緒に寝てるじゃないですか、なのにどうしてわざわざ……」

 

「別にいいじゃないか。そういう日もあるさ」

 

彼女を抱くのももう慣れた。スイスイと通路を進み、さほど時間も経たぬうちに僕の部屋のドアまで辿り着いた。

 

「お、帰ってきたか。何やろうがアタシは見て見ぬふりすっけどよ、あんまりうるさくしないでくれよ?」

 

「何もやましいことはありませんよゴルシさんっ!?」

 

「別にやましいこととはひと言も言ってねぇよ。それとも、心当たりあんのか?」

 

「残念ながらないんだ。ホントに。ただ、僕は別に構わないと思ってるんだけどね。ほら、ゴルシちゃんが昼間に言ってたでしょ?チームスピカは家族。なら僕とデジたんも家族ってことになる!」

 

まったくゴルシちゃんは素晴らしいことを言ってくれたよ。つまり僕とデジたんは正式に婚姻関係にあるのだ。

 

「は、はぁ、そうですか……。ちなみに続柄は?」

 

「配偶者」

 

「でしょうね!!」

 

「さあっ!さあ、さあ!マイハニー!デジたん、一緒に夢を見ようじゃないか!」

 

そうだとも。僕とデジたんが家族であるのなら、寝床を共にするのは当然のこと。そう思うと居ても立っても居られなくなったので、先ほどデジたんの部屋にお邪魔させてもらった。

 

「よし、それじゃアタシのことはいないものだと思え。いいな?」

 

「……ふふっ、二人っきりだね、デジたん」

 

「適応が早ぁいッ!?」

 

なんて可愛いんだろう。ああ、一家に一台デジたんがあれば世界が平和になるのに。

 

「あぁー……ヤッバイ、超フィット感」

 

「あの、あたしは抱き枕ではないのですが……」

 

「なんだよ君だってウマ娘抱き枕カバー何十種類も持ってるじゃないかそんなものより僕を見てくれよ僕を抱いてくれよ」

 

「ハイハイハイハイハイ分かりましたッ!ですからその……目!ドロッとした目をっ!やめてくださいっ!急にしっとりしないでっ!」

 

やっぱりデジたんは僕の腕の中にいるべきだ。

すごくキモチいい。うん、明日もやろう。




あの、何がすごいってまず私服。デジたんといったら143cmのちっちゃくてカッコかわいい存在だったのがもう一気に大人びちゃって……いったい何人の脳を破壊するつもりなんだ。それでいてウマ娘愛も忘れず、さりげなく推しカラーに染めたアクセなんかつけちゃって、しまいには「尻尾編み込み」とかいう概念を持ち込んでくる、まさにオタクの鑑。

新サポカ、最高では?
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