デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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ウマ娘の大幅な仕様変更……?

来たな、「鋼の意志」の時代が……!


お前も「家族」だ

「あ、デジたん。お帰りー。いやぁ、それにしても大晦日や正月のテレビってなんかこう、つまらなく感じちゃうんだよねぇ」

 

「ああ、ちょっと分かる気が……って、ファッ!?なんでオロールちゃんがここにいるんですか?」

 

「年末年始は家族で過ごすものだよ、デジたん。僕と君は家族だ、何もおかしいところなんてない」

 

「トゥデェイッ!イズッ!ニューイヤーズイブッ!ンなのにッ、ホワィッ!?どうしてオロールちゃんがマイハウスにっ!?」

 

家族だから、と説明したのだが。

 

「お義父さんからは『うちの娘と仲良くしてやってくれ』とさっき言われた。君がどこかに出かけている間、いろいろお話しさせてもらった。相変わらず素敵なご両親だね」

 

僕らはお互いに良い両親に恵まれていると思う。大晦日だから恋人の家に行ってくる、と伝えたら「それじゃ今年の初詣はそちらのご家族とご一緒させてもらいましょう」なんて言っちゃうのがマイマザーだ。

 

「お義父さっ……いや、それはともかくっ!えっと、そのっ!……ああぁっ!言いたいことが多すぎて頭がまとまらないぃ……」

 

「トレセン学園のウマ娘には、デビュー前に思い人を家族に紹介するという伝統芸がありまして。明日は僕の家族と一緒に初詣に行くことになってるから。ぜひ僕の着物姿を見て恋に落ちてくれたまえ!」

 

「はっ?ちょっ、待っ……ほぇえええ?」

 

「何さほぇえええって。正直になろうよ、デジたん。君だって楽しみなんでしょ?お義母さんから聞いたけど、君も着物着るんだって?最高じゃないかっ!着物デートっ!」

 

「お゛義母゛っ……いやっ、というか、デッ!?デデデ、デート!?着物デートですかそうですかそうですかふむふむなるほどなるほど……いやどういうことですか?」

 

「そういうことです」

 

「はぁ、なるほど、左様で……」

 

デジたんは理解を放棄した。それはつまり、僕とのデートに異存がない、という解釈でいいだろうか。いいよな、うん。

 

と、現在僕が居るのはデジたんの実家のリビングルームである。それはつまり、彼女のご両親が日常を送る空間なわけで。

 

「はい、ご飯できたわよ。大晦日といえば年越し蕎麦。ささ、オロールちゃんも遠慮せずに食べて」

 

「あ、ありがとうございます。いただきます」

 

お義母さんの言葉からは、たったひと言、ふた言の中にも人柄の良さを感じる。デジたんはこんな素敵な人の娘なのだ、それはそれは美しいのも当然というものだ。

 

「なんか、恥ずかしいっ……!」

 

そう言ってデジたんは顔を手で覆ってしまった。尻尾がせわしなく揺れているのがまた可愛い。

そして、これまた優しい笑みを浮かべているのが彼女の父、つまりお義父さんである。

 

「娘からいろいろ聞いているよ。お互い、すっかり骨抜きにされてしまってるみたいだね」

 

「ハイ、ですので娘さんは僕が貰い受けようかと」

 

「ははっ、君よく正直すぎるって言われない?まあそれはともかく、こんな風に娘が照れるのは珍しい。この娘はなかなかメンタルが強くてねぇ。私が印刷業をやってるのは知ってるだろ?だから時々……そう、趣味の本の印刷を頼まれるんだ。それで『中はできるだけ見ないでね!』なんて言われるんだけど、やっぱり見ないわけにもいかないだろう?」

 

「ちょっと待って!お父さんッ!?なんの話しようとしてるのぉッ!?」

 

「それで、こないだも印刷を頼まれたから内容を見てみたんだ。そこに描いてあったのが、まあ。いわゆる、オロ×デジってヤツだと思われるんだけど……」

 

「どぅわああああああああああっ!?いやあああああああああああッ!?ヤメロォ!死にたくないッ!死にたくなぁぁあ゛ぁぁぁあいッ!」

 

ほほう、実に興味深い情報だ。

つまり、デジたんは日頃僕のアプローチをかわしたりしているけども、実際は僕のことが大好きってわけだ。そうに違いない。

あと敬語が取れたデジたんが可愛いやばいしぬ。尊すぎる。魂が浄化される。

 

「……それはつまり、合意とみてよろしいかな、デジたん。僕とそういうことしたいって!君自身!そう思ってるわけだ!ねえお義父さんッ!見た感じ、どんな内容でしたかッ!」

 

「うーん、そうだね。そこまでキツい描写はなかったけど……ああ、そういえば即売会は今日だっけ?それで出かけてたのか。どうだった、売れ行きの方は?」

 

「やめてええ゛ぇええ゛ーーッ!平然と聞かないでよぉぉぉぉおッ!?」

 

「よぉしデジたんッ!それが君の望みかい?あいわかったッ!そうだなぁ、やっぱり最初はキス、か、ら……えっと、デジたん?大丈夫?」

 

サンゴの白化現象というものがある。あれはサンゴと共生し、光合成でエネルギーを供給している褐虫藻という藻が、何らかの原因でサンゴから抜けてしまった状態なのだが、まあ詳しいことはともかく。今のデジたんはソレにそっくりである。何か大切なモノを失って、真っ白になっている。

 

「この広い宇宙に比べたら、あたしは所詮ちっぽけな生き物……。この胸に宿る虚しさもちっぽけなモノ。ふふっ、そう考えたら、ダメージもそこまで……あぁあ゛ぁあぁぁ゛あっ!!恥ずかしいッ!死ぬッ!恥ずか死ぬッ!」

 

「大丈夫だよデジたん。生配信中に告白したって生きていけるんだから。それに、君にはいつも僕がついてる」

 

「違う、違うんですよホンット、あの、絵描きの端くれとして、作品にリアルさを求めてただけで、それで一番身近なサンプルを使ってみたというかっ!ぁぁあぁ゛あうぅ゛うっ!なっ、なんか、あれっ、おかしいなっ?目から水が……ぁっ」

 

「ああ、涙が溢れてる。大丈夫だよデジたん。もうさ、こうなったからには僕と……」

 

「ハイ、ソウデスネ。イイトオモイマス」

 

「えっと、デジたん?」

 

「ハイ、ソウデスネ、イイトオモイマス」

 

デジたんの羞恥心がオーバーフローしてしまった。

 

「ねぇデジたん」

 

「ハイ、ソウデスネ。イイトオモイマス」

 

「ロッテルダム」

 

「ハイ、ソウデスネ。イイトオモイマス」

 

「クーベルタン」

 

「ハイ、ソウデスネ。イイトオモイマス」

 

「結婚しよ?」

 

「ハイ、ソウデ……ほあああああぁッ!?!」

 

ああ、残念。そしてお帰りデジたん。それにしても今日はよく叫ぶな。やっぱり実家だと気を抜いているんだろうか。

 

「ハァ……可愛い」

 

「っ!?何!?何ですかっ、その……目!目がすごく怖いっ!というか、ああ、家族の前だとどう接していいか分からないっ……!」

 

「僕だって家族だよ。何が問題なの?」

 

血は繋がっていないけど。

大人になっても、皺が増えても、デジたんはずっと可愛い。だからずっと一緒にいたい。

……けど、ひとつ気になることがある。

 

「デジたんってさ、学園じゃ誰に対しても丁寧で優しくてさ。一応後輩の僕に対してもそうだよね。ねぇ、どうして?」

 

「っそれは、その、染みついた性分といいますか。それとやっぱり、尊み溢れるウマ娘ちゃんにあたしみたいなのがあんまり馴れ馴れしく接しちゃうのは、なんか……」

 

「じー……」

 

「あ゛っ!また目で語ろうとしてますね!?あの、それっ、普通に怖いっ!怖いですからっ!」

 

食らえデジたん、最近習得した目力トークを。目は口ほどに物を言う。僕の想いは言葉にせずとも伝わるだろう。

 

「な、なんというか。今更タメ口で話すのも恥ずかしい……かも」

 

「え、なんて?最後がよく聞こえなかった」

 

もちろんバッチリ聞こえている。僕がデジたんの声を聞き逃すはずがないから。

 

「……あーもー!なんでお父さんもお母さんもずっとニヤニヤしてるのぉっ!?」

 

ご両親が非常に良い笑顔でこちらを見ている。僕にはあの笑顔の意味が分かる。まあ、つまり、デジたんのヲタク気質は遺伝だったのだろう。

 

「はぅぅぅ……」

 

「ねーえ、デジたん。デジたんってば」

 

「っ……な、え、あっ。どっ、どうしたの?オロールちゃ〜〜…ぁあムリッ!やっぱりまだ心の準備がッ!」

 

「そうやってズルズル引き延ばすから余計に恥ずかしくなるんだよ。ていうか、そんな風にされるとなんだか心の距離があるみたいで……僕、ちょっと悲しくなるかも」

 

ほら!見るんだデジたん!この放っておいたら確実にマズい方向に突き進んでしまいそうな美少女ウマ娘の姿を!斜め下に視線を向け、どこか諦めの窺える表情をした僕をっ!

 

「もーおー!わかった!わかったから!あたしも、そのっ!えと、頑張る!ハイッ!この話はこれで終わり!」

 

デジたんはウマ娘に弱い。

そして僕はウマ娘だ。

つまり、この手に限る。

 

「……んふふふふふっ」

 

「笑い方が怖いッ!?」

 

おおっと、変な声が漏れてしまった。嬉しさのあまり。しょうがないね。

さて、得てして大晦日や正月の夜というのは長いものだ。

つまり、物語はまだ始まったばかりだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あのぉ、なぜおフトゥンがひとつだけ……?」

 

「ああ、お義母さんの素敵な御計らいさ。デジたん。初日の出が、僕らの新しい門出を祝福してくれるようにって」

 

「あーね、なるほどね!そうね!うん!」

 

デジたんの全てが神がかっているのは当然として、いわゆる一般的な彼女の長所として認識されるべきところがある。要は彼女は切り替えが早い、ということなのだが、最近はどうも切り替えが早いというよりヤケになっている印象が強い。

 

「オロールちゃん、やっぱりあたし、似合わない……よ。その、キャラ的に!限界ヲタは限界ヲタらしく慎ましくしているべきというか〜……」

 

「デジたぁんッ!今のままの君でいてくれッ!僕の中で『心を許した相手には敬語なしで嬉々としてヲタトークするデジたん』概念が超絶旋風を巻き起こしてるんだ!あの、もうッ!今後数ヶ月はそれだけでいい……!ご飯食べなくていい!ふひひはははッ!」

 

「目が怖いッ!」

 

そんなことない。ただちょっと血走っていて焦点が合っていない自覚はあるが、特に問題はない。

 

「それで、どうする?まだ寝るには早いけど。僕としては、君が望むなら今夜は寝かせないぜ的な展開もオッケーなんだけど……」

 

「いやいやいや。あの、確かにあたしそういう本読んだり描いたりしたことあるけど!自分がどうこうってのは……違うッ!」

 

違うッ!の力の篭りようがすごい。ちょっと残念だけど、そういうところが彼女の魅力だ。

 

「じゃ、さ。ほっぺとかは……?」

 

「えっと……?そっ、その!それなら……」

 

え、ホントに?

 

「いいのかいデジたん?僕は遠慮しないよ?ねぇ、もしかしたら、唇が滑っちゃうかも……」

 

返答は言葉ではなく、彼女の眼差しだった。彼女のアクアマリン色の瞳は静かに波立っていて、それが僕を受け入れる準備をとうに済ませている何よりの証明だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……このまま、あと時計の針が二、三回回るまで時間を潰す?僕は構わないけどね」

 

「……別のことしようよ」

 

彼女はそう言ってパソコンに手を伸ばす。

 

「んー?なに、動画でも見る?」

 

「いや、あたしたちが配信する!ふひっ、大晦日オロデジ生配信……!」

 

「……大丈夫?正気失いかけてない?」

 

おそらく要因の99%を占めている僕だが、さすがに少し心配だ。ついさっき心を共にした数分間から、明らかに彼女は動揺している。

 

「今ッ!お正月テンションに侵されている今しかッ!できないこともあるッ!オロールちゃん、明日の朝我に返って赤面するあたしのことは、いくらでも笑っていいから……!」

 

えっ何それめっちゃ見たい。

 

「よしデジたん。配信の準備は整ったかい?普段とは少し違う状況だからトラブルには気をつけてね」

 

「大丈夫だよ。もう慣れてるから。ウマッターでの告知も済ませた!」

 

配信の待機所には、既に数百人が集まっている。大晦日、それもあと数十分で年明けだというのにご苦労なことだ。

 

「ライブ開始5秒前ー!4、3、2、1……!」

 

あとデジたんのテンションがヤバい。

 

「大丈夫ですか〜?映ってますかねコレ……お、大丈夫みたいですね。ハイ、突発的に思いついたので配信です。もうすぐ年越しですよ皆さん、年越し蕎麦食べましたか?」

 

『突然始まるパーリーナイト』『一緒に年越せるの普通に嬉しい』『年越しもやしラーメン食ったよ……』ふむふむ、予告もなしの配信に集まるようなヤツらは、やはりイカれたメンバーばかりのようだ。

 

「僕も側にいるよー。蕎麦だけに……うっわつまんな、何言ってんだ僕」

 

『同じ布団で寝ている二人が俺を狂わせる』『匂わせどころの話じゃねぇぞオイ』……確かに、僕らは今、掛け布団の中からこんにちは状態で配信している。我ながらすごくえっちだと思う。

 

「と言っても、急に配信始めちゃったので、十分に語れることはあんまり……あ、こないだの有記念見ました?見ましたよねもちろん?もう終始大っ興奮で……!」

 

「『エアグルとマベちんのウイニングライブの温度差で芝生えた』ね。分かる。確かにあの二人、真逆の性格だからなぁ……。っていうかリスナー、聞いてくれよ。このデジたんって子が急に配信しだした理由なんだけどさ。絶対に照れ隠しだと思うんだよね。だってさっき僕がキ……」

 

「ねえオロールちゃん。そのことは二人だけの秘密にしたいんだけど……?」

 

は?誰?デジたん?

ちょっと小悪魔すぎやしませんか?

僕が若干動揺している間にも、コメント欄がざわついている。『キ……え、何?まさか?』『二人の距離感縮まった?』『カップルチャンネルなのか推し活チャンネルなのかはっきりしてほしい。まあ可愛ければ何でもいいけど』……ふむ、デジたんはこの世の真理であるからして、このチャンネルは全ての叡智が集まるチャンネルだ。見るだけで世界を理解できる。

 

「こほん、まあとにかく。年越しまでダラダラおしゃべりするだけですので!」

 

「……それじゃデジたん。いつもは直近のレースについて語ったりしてるけど、たまには僕らのことでも話してみない?多分、いや確実に、デジたん需要はめちゃくちゃあるから」

 

今のデジたんなら、自分の可愛さを分かってくれる気がする。ただ、僕が耐え切れずにオチる可能性もある。まあやってみなければ分からない。

 

「それ、すっごくいいアイデアだよオロールちゃん!ふふっ、あたし今正月テンションですから、何聞かれても答えちゃいますよ〜ッ!」

 

大丈夫だろうか。さすがに危険な情報を口にしようとしたら僕が全力でフォローしよう。

 

「『二人は付き合ってるの?』……ふむ、そうですねぇ……」

 

オイオイ。初手から随分と飛ばしていくなぁ。ホントに大丈夫だろうか、まるでデジたんがデジたんじゃないみたいだ。

 

「ぶっちゃけよく分からないです!あえて言うなら、親友以上恋人未満……?みたいな!」

 

「ふぐぉ゛ッ……!おほぉ゛っ……!」

 

僕の心にクリィンヒットッ!危うく脳髄が鼻から漏れそうになるくらいの衝撃だった。デジたんの口から親友以上恋人未満なんて言葉が飛び出すとは。

 

「『ぶっちゃけそういう目で見れる?』……うーん、難しい質問が……。まああたし、自他共に認めるウマ娘ヲタではありますけども、オロールちゃんはまた別の存在といいますか……。でも、イエスかノーかで言えば、イエス……?」

 

「あっ゛はぁ゛ッ!!ぅうぅィエ゛アッ!」

 

ヤバい。なんか濡れた。脳溶けたかも。

 

「『後ろすごいことなってるで』『変態が変態してる』……オロールちゃん、なんかビクビクしてますね。あ、いつもと立場が逆転してる感じで面白いかも!よし、リスナーの皆!どんどん質問送ってきてッ!」

 

待って。しんどい。ムリ。しぬ。

 

「『この際愛してるゲームでもしてしまえ』……ほほお?それはアレですか。お互いに『愛してる』って言って先に照れた方が負けになる……。ふふ、いいでしょう。今宵のあたしは無敵ですからね!さあ、オロールちゃん!愛してますよっ!いっぱい愛してます!」

 

「はっ?えっと……愛して……ァ゛ッ」

 

なんだろう。目の前が白く霞んで見える。

 

「オロールちゃん?オロールちゃーん?……あの、相手が気絶してしまった場合勝敗はどうなるんでしょうか?あ、あたしの勝ち?」

 

薄れゆく意識の中、デジたんの声だけがはっきり聞こえる。僕のシナプスはすっかり焼き切れてしまった。

 

デジたんと出会ってからは毎日が幸せだった。

けど、ああ。

今、僕はもっとも幸せだ。




スピカの変態度合いってどんなもんでしょうね。

ウチの≒デジたん>>>>>沖野T>>>>>
>マックイーン>ゴルシ>>>越えられない壁>>>…

…>>ススズ>>>ウオスカテイスペ

くらいかなぁ?
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