デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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UAとかお気に入り登録者数とか思ってたより多くて夜しか眠れなかった…。本当にありがとうございます。


ガチャ実装三分後に初めて育成した際、デジたんの尊さに頭をやられた作者が見切り発車で、デジたんメインで書いておりますゆえ、設定だとかは大分適当です。覚悟の準備をしておいてくださいッ!


いわゆる、皇帝の神威だとか

昼、食堂にて。

 

「…食べないんですか?」

 

「さっきからあなたがその可愛い声であたしのことを…尊っ、尊いとかなんとか言うたびに箸が震えて止まらないんですよ〜ッ!?!」

 

「可愛い声…ありがとうごさいます。でも先輩の方が可愛いですよ?」

 

 

 

 

次の日の昼、同じく食堂にて。

 

「今日はパンですか。両手で持つの、ハムスターみたいで可愛いですね」

 

「ううぅ……!」

 

 

 

 

さらにその次の日。

 

「僕などが毎日貴女のご尊顔を拝し奉り、まことに恐悦至極に存じます。」

 

「あ、ッあたしは崇め奉られるような存在ではありませんしむしろ崇める側ですゆえッ!!…敬語とか、あのっ、ホントに…いらないですから…!」

 

「…!…じゃあぶっちゃけるね。すっごい可愛いよ。デジたん。そのキラキラした宝石みたいな目とか大好きだし、推しを見てるときの表情とか仕草が小動物みたいですごく好き。それに____」

 

「…ハァッ!?突然のファンサァ!?……きゅぅ」

 

「あ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

唐突だが、今の僕は無敵だ。なぜならば免疫がついたから。

3日間、デジたんと食事を共にし、その光景を暇さえあれば脳内リピート再生することで効率的に免疫を獲得した僕は、本人に直接「大好き」と言えるほどの超越者となった。

先ほどなど、敬語不要の言質を取った瞬間に攻めに転じ、ついにはノックアウトさせて寝顔を拝むというファインプレーだ。入学の日と合わせると2キル目だな。

 

入学の日……あのときの僕は事あるごとに限界化していて、それはもう気持ち悪かった。

…ホンットに気持ち悪かった。思えばよくソレからこのスピードでここまで進歩したものだ。

 

 

そんなことを考えながら、僕は現在練習場に向かっている。

中央トレセン学園は超のつく名門アスリート育成校である。だから、体を動かす時間が多い。今日のように、座学は午前のみで午後がまるまるトレーニング、といった日がほとんどらしい。

トゥインクルシリーズにデビューした後は、それこそ休日は丸一日トレーニングする、なんて話もよく聞く。

トレーナーもウマ娘もハードスケジュール。それがトレセン学園であり、中央で戦う競争ウマ娘になるということなのだ。

もっともその分、潤沢な資金によって整えられた非常に豪華な設備が使えるのだが。食堂は食べ放題、ランニングマシーンやバーベルなどがあり、なぜか瓦割りまでできるトレーニングジムや広いプール、大きな図書館もあるし、その横の視聴覚室では過去のレース記録が全て閲覧できる。他にも様々な設備が広大な敷地の中に数多く存在している。

 

そう、ここは本当に広い。現に、さっきから数分間歩き続けているが、いまだ目的地に着かない。

時間にまだ余裕はあるが、僕は少し足を速めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「次、600mダッシュ!これでラストよ!」

 

既に傾きつつある太陽に照らされながら、ダートの上を駆けるウマ娘。つまり僕。

 

600mという短い距離でも、手は抜けない。

記憶の中のフォームと実際の体の動きを一致させようと、脳をフル回転させる。

 

「……っ………!ふぅっ……」

 

ゴール板を駆け抜けて、速度を緩めながら思わず息を吐く。

 

「よーし!頑張ったわね!…すごいわね、芝とタイムがほとんど変わらないなんて…。フォームも目に見えて形になってきてるし、この調子で頑張ってね」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

今日はダートコースで、フォームの矯正に特に力を入れてトレーニングした。

僕はもともと、歩幅を大きくして走る癖があった。俗にストライド走法と呼ばれるもので、スタミナの消費が少なく、速度を保ちやすいという利点があるのだが、いかんせん加速力に欠ける。

 

それに対し、今日使ったのはピッチ走法、歩幅を小さくしその分脚の回転数を上げる走り方である。ストライド走法と対象的に、スタミナの消費は多いが、加速力に優れている。さらに、強力なパワーで地面をしっかり捉えて走ることができるので、足を取られやすいダート向きの走り方でもある。

 

難易度は高いが、レース中に上手くこれらの走法を切り替えられれば、より速く走れるだろう。

そのためのトレーニングだ。

 

長年ほぼ無意識でやっていたストライド走法の方はそれなりに綺麗なフォームで走れるが、ピッチ走法の方はまだまだ荒削りな部分が目立つ。

まったく練習してこなかったわけではないのだが、それでも教官というトレーニングのプロのもとで初めて浮き彫りになってくる問題点というのが数多くあった。

 

ちなみに教官というのは、僕ら新入生をはじめとした、チーム未所属でデビュー前のウマ娘をまとめて指導してくれる人たちのことを指す。しかし、だからといってチーム専属トレーナーより大分腕が劣っているなどということはない。大人数を指導しながら、こうやってある程度個人に対応したメニューを組めるあたり、十分すごい人達である。

 

「じゃ、今日はこれで終わりよ。追加で自主練してもいいけど、オーバーワークには注意して。じゃ、また次回ね」

 

「ありがとうございました!さようなら!」

 

その教官がトレーニングの終わりを告げたので、僕はトラックの外へと歩き出した。

 

さて、この後はどうしよう。ジムに行って筋トレしようか、それともプールでスタミナを伸ばそうか。

 

そんなことを考えながら歩いていた僕の前に、誰かが立ち塞がった。

 

 

 

「突然すまない、オロールフリゲート。このあと少々時間はあるかな?」

 

…白い三日月模様の入った鹿毛の髪に、凛々しく気品のある顔。何より特徴的なのは、その凄まじい威圧感。

 

 

皇帝シンボリルドルフが、僕の目の前にいる。

 

 

「…はい、特に予定はありません」

 

「そうか。私はこの学園の生徒会長を務めているシンボリルドルフという。実は君と少し話したいことがあってね。すまない、本当ならもっとゆっくりした場で話したいんだが。最近は忙しくて、ようやく時間がとれたんだ」

 

「いえ、別に大丈夫ですよ。…それで、話したいこととはなんでしょうか?」

 

生徒会長がわざわざ直接会いにくるとは、一体何だろうか。別に何か悪いことをしたわけでもない。せいぜい視聴覚室の全スクリーンを使ってレース映像を多数同時上映したくらいだ。…まさか、それか?

 

「君は入学時のテストで、全教科満点だったらしいね?」

 

「…え?あ、はい…」

 

そういえばそう。最近は主にもっぱらデジたんをはじめとした推し達の尊いシーンを夜な夜なリピート再生するために使っている完全記憶能力だが、勿論勉強にも惜しみなく使用している。

 

「それだけじゃない。君は芝とダートの両方を走るつもりだとも聞いた。こんな新入生がいたら少し気になるだろう?だから来たというわけだ」

 

「……」

 

なるほど。それが来た理由か。

しかし、先ほどからずっと冷や汗が出るほどの強い威圧感を感じる。僕はもしかして試されていたりするのだろうか?

 

「最後の走りを見させてもらったが、とても良かったよ。先ほどから見る限り、自分の能力を過信しすぎているわけでもないようだし、このまま努力を続ければ、G1も夢ではないだろう」

 

「…!あ、ありがとうございます!」

 

おお!あのシンボリルドルフのお墨付きを貰えた!正直すごく嬉しい。なんだかモチベーションが上がってきた。この後は自主練が捗りそうだ。

 

「ただし、レースの世界では実力だけが勝負を決するわけではない。時には運など、自分ではどうにもできないものが必要になってくる。…今でこそ私は皇帝などと呼ばれているが、ここまでの行程は決して楽なものではなかった」

 

「……」

 

「まして、君は芝とダート、どちらも走るつもりなのだろう?だが、未だかつて両方のG1を勝利したという話は聞いたことがない。その道のりは非常に険しいぞ。

それでも夢を掌握したいという覚悟があるのなら、歳寒松柏の心で努力を続けるんだ…。時間をとってしまってすまない。これだけ伝えたかったんだ」

 

「…分かりました。ありがとうございます」

 

うーん、難しいとは思っていたけど、それほどか。しかし諦めるつもりは毛頭ない。ゲームでデジたんがやってのけたように、決して不可能なことではない。

そう思うと、より覚悟が強まった。

…さすがはシンボリルドルフ。言葉に重みがあるというか、それ自体が大きな力を秘めているようだ。

 

にしても、それを言うためだけにここまで足を運ぶとは。

…こういう行いが、彼女に対する周囲からの絶大な信頼や尊敬を形づくっているのだろう。

 

「…ふふふ。オロールフリゲート。これから君がどんどん面白いレースをクリエイトするのを期待している。君のレースを頭の中でシミュレートしてみたが、いつか実際に私と競い合ってほしいと思ったよ…」

 

「……」

 

「……」

 

奇妙な沈黙が流れる。

なんだろう、嫌な予感がする。何か気づくべき事に気づいていないような。

 

「……」

 

「……あの」

 

「では!また会える日を楽しみにしているよ」

 

僕が口を開きかけたところ、彼女は少々食い気味にそう言ったのちどこかへ行ってしまった。

 

 

なんとなく耳と尻尾がうなだれているように見える後ろ姿は、心なしかションボリとした雰囲気を醸し出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、寮の部屋にて。

 

「あ゛あ゛あ゜ぁ゜……」

 

「死にかけの木星人みたいな声出してどーしたよ?変なもんでも食ったか?」

 

「いや…実は今日生徒会長と話したんだけどさ…」

 

「なんだよ?緊張して気疲れでもしちまったのか?」

 

「……まあそんなところだよ……はぁ…」

 

実際、緊張していたがために取り返しのつかないミスを犯してしまった。

 

僕にはアドバンテージがあった。それも大きなアドバンテージが。

 

前世の記憶。そこで知ったシンボリルドルフというウマ娘に関する知識。

 

そう、シンボリルドルフというダジャレ好きのウマ娘に関する知識を、僕は確かに持っていた。

 

 

「……クソッ…!気づけなかった……!」

 

「あぁなんか察したわ。すっげぇ下らねぇ理由じゃねぇか」

 

「思い返せば、至る所に仕込まれてたんだ…!最後の方に至っては、ダジャレを超えてもはやラッパーばりに韻を踏んでた…!」

 

「……あほくさ」

 

なぜすぐに反応できなかったんだ…!そのせいで、帰り際の彼女の後ろ姿にはそれはもう哀愁が漂っていた…!

 

……エアグルーヴも、こんな気持ちだったのかな。

 

 

 

 

オロールフリゲートのやる気が下がった!

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、いろいろあってオや下(オロールフリゲートのやる気が下がった)してしまった。せめてもの救いは自主練を終えた後だったことか。

 

とにかく、オや上のための一番手取り早い方法はもちろん、デジたんの尊みを摂取することである。

 

というわけで例のごとく、食堂にて。

 

「あ、こんにちは。オロールちゃん」

 

「こんにちは。…なんか、今日は落ち着いてるね」

 

「四日目にもなればさすがにあたしといえど慣れましたとも。それに、あなたはどうやら“こっち側”の同志みたいですし…。もはやシンパシーを感じるほどですよ」

 

そういって少し自慢気な顔をするデジたん。新たな表情を見せてオタクを飽きさせない…やっぱり女神じゃないか。

 

「…可愛い。すごく可愛い。ちょっとその可愛い表情キープして。今から多角的に記憶するから」

 

「…………ヒュッ…っぅぅあ顔近ッ!むむむ無理です!あたしは推される側には向いてないんです!」

 

そしてこの押しへの弱さ。推し、すなわちウマ娘の押しにはもっと弱い。なんとかわゆいことか。

 

そんなことをやっていると、いつの間にか横に座っていたゴルシちゃんが口を開いた。

 

「…自分で言うのもなんだがよ。アタシが霞んで見えるレベルって…相当やべーぞ。お前ら」

 

「うん、確かにデジたんの尊さの前には全てが霞んで見えるよね」

 

分かってるじゃないかゴルシちゃん。デジたんは女神で、僕の世界の頂点だからな。その尊さを理解しているとは、さすがだ。

 

「……これアタシがおかしいのか?」

 

「?確かにゴルシちゃんはいつもクレイジーだけど、どうして急に今さら?」

 

「……いや、やっぱなんでもねえわ」

 

そう言って彼女はサラダを口に運んで、顔をしかめた。ピーマンでも入ってたのかな。

 

「…前も言いましたけど、あたしまだデビューすらしてないんですよ?それにこんなのより、もっと他に推すべきウマ娘ちゃんはたくさんいますし…」

 

「僕がデジたんを推すのは魂に刻まれた宿命なんだ。デビューしてるかどうかは関係ない」

 

むしろデビュー前だからグッズを買ったりペンライトを振ったりできないので、その欲求のシワ寄せがデジたんに対する言動に表れている。

 

「…魂に……そうですか……むぅ」

 

僕の言葉を聞いた彼女は、俯いて唸りながら考え始める。

 

しかしすぐにパッと顔を上げて僕の方を向き、こう言った。

 

「…オロールちゃん!あなたはまだ分かってないんですよ!ウマ娘の本当の尊さというものが!!」

 

尊いやつがなんか言ってらあ。

 

「あたしなんかよりもよっぽど素晴らしいウマ娘ちゃんがいるっていうことを、このあたし自身が教えてあげますともッ!!」

 

急に瞳に炎を宿して語り始めるデジたん。今にも立ちあがりそうな勢いだ。

 

しかしやっぱり自分が尊いことを認めようとはしない。

…デビューが待ち遠しいな。ファンがもっと増えれば分かってくれるだろう。いっそ今から学園内で非公式ファンクラブでも作ってやろうか?

 

「…いいですか、同志オロール。あなたはまだ未熟です。よりにもよってこのデジたんを推すなど愚の骨頂ッ!!もっと視野を広くするべきです!!そのためにも、他のウマ娘ちゃんの魅力を頭からつま先まで全てあたしが語ってあげましょうッ!!…そして、あなたが新たな推しを見つけることができたなら、そのときはあたしという同志とその尊さを分かち合いましょう…。それがっ!ウマ娘ちゃんオタクというものですっ!!」

 

「要は推しを語り合おうってこと?」

 

「ハイ、そうともいいます。または推し活とも。

…とにかくっ!そうすればあなたも自分の過ちに気づけるでしょう!」

 

「…僕は他のウマ娘ちゃんの尊さも十二分に理解してる。推してる子だってたくさんいる。その上で!最推しがデジたんなのは変わらないってことを証明するよ…!」

 

なにせ、生まれ変わっても変わらないほどだ。

 

「あたしなんかより他の子の方が何兆倍も魅力的ですっ!例えばそこにいるゴルシさんなんかは…………あれ?」

 

ふとさっきまでゴルシちゃんがいたはずの場所を見ると、そこに彼女はいなかった。

 

代わりに「宇宙の危機を感じたので帰ります あとお前ら声デカい」と書かれた紙がぽつんと一枚。

 

…辺りを見ると、それなりの数の視線がこちらに集まっていた。

 

「……」

 

「……」

 

僕らは互いに顔を見合わせ、同時に頷き合ったあと、昼食を食べ終わるまで黙々と箸を動かした。




ダジャレ大好きお姉さんという
皇帝の設定を肯定する行程
んでこの手で暴く脳内の根底
「お前のギャグセンス、敵わぬ到底」
そんなの so fake.本音はこうね
「ぶっちゃけダジャレ考えるのちょっと疲れた」


なんかゴルシがまともに見える不思議。一体なぜなのか。コレガワカラナイ。
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