デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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トップガンマーヴェリックももうすぐ公開ですよへっへっへ(ヲタク特有の笑い)
ウマ娘世界にもトムクルーズが存在しているのかと思うとなんだか嬉しくなってきますね(?)




賊の誇りとドレスコード

「ゑ?」

 

「だぁーかぁーらぁー、お前もうデビュー戦明日だぜ?いつまで現実受け入れられてねぇんだよ?」

 

え?

だって、あれじゃないか。デビューって。

ウマ娘が、レースに初めて出るアレだろ?

 

「あぁ僕ウマ娘だった」

 

「当たり前だろ」

 

いや、しかし、ねぇ?

僕は決して緊張しているわけじゃない。本当だ。ただちょっと唐突すぎたものだから、ここ数日の間放心状態だっただけであって。決して緊張してない。緊張とか、ありえない。

 

「お前めっちゃ震えてんな。緊張するなんてらしくねぇ」

 

「いやいやいやいやこれは緊張じゃないんだよゴゴゴルシちゃん。何と言うかな、ついにあの大舞台でデジたんとやり合えるって思うとさっきから脳みそ掻き回されるような気分でさぁ……!んふふふふふ……」

 

「ああ緊張はしてねぇな、うん。もっと重症だわ」

 

正直に言うと、不安がないわけではない。

ただし、僕はレースに負ける予定はない。勝ち続けてG1戦線を駆け抜けるのだ。デジたんの勝負服姿を拝むために。

 

……勝負服?

 

「そうだ、勝負服!」

 

「お?いきなりどした?」

 

「いやぁ、さ。ウマ娘が一番輝くのって、やっぱり勝負服を着てる時だと思うんだよ」

 

限られた強者のみが着用を許される、この世にまたとない、自分だけの衣装。中央トレセンに通う生徒は、それを着ることを常々夢に見ている。

そんな勝負服だが、デザインに関しては、着用するウマ娘の希望が反映される。思い入れのある色や、強い決意や意志が現れた装飾など、かなり細部までこだわりを入れられる。

そういうこともあって、勝負服というのはたとえどんなに袖が長かろうと、厚着であろうと薄着であろうと、ウマ娘はそれを着るだけで不思議と力が湧くらしい。

 

「あぁ?勝負服がどーしたって?」

 

「……いいデザイン何か思いつかない?ゴルシちゃん」

 

「アタシに言われても困るぜ」

 

緊張……ではなく興奮のせいでまともに働かない頭を冷やすには、デビュー戦以外のことを考えるのが良いだろう。さて、今から何かアイデアを思いつくだろうか。

うむ、これは難しい。原案が頭の中で浮かんでは消え、また浮かんでは消え、確実な形を成さない。どうも、自分が着て走るのにふさわしい衣装がなかなか分からない。

 

「つか、G1に出るのは確定事項ってことかよ?」

 

「そりゃあね。並のウマ娘ごときに、僕が止められてたまるか」

 

数日前に決まった覚悟を口にするだけで、自然と眼に力が入った。眼窩の奥で何か熱いものがちりつく。

 

「……っ。なるほどなぁ。つか勝負服のことならデジタルにでも聞けよ。アイツ絵心あるし。あとお前アレだろ?どうせアイツにもっと好かれるようなデザインにしたいんだろ?勝負服着てるウマ娘が一番輝いてるんだもんな?」

 

「すごいね、的確すぎるよ。君もだいぶ染まってきたんじゃない?」

 

「そりゃ御免被るぜ。ま、この天才ゴルシちゃんにかかれば他人の心を読むなど容易いものよのぅ」

 

彼女の言う通り、デジたんに直接聞くのが手っ取り早い。デビュー戦前夜である今現在、デジたんに会うことはすなわち僕の精神を安定させることに繋がる。

 

「よーし行ってこよ」

 

僕がベッドから跳ね上がり、窓を開けて外へと飛び出すまで、その間わずか2秒。

 

「おー、脱走慣れしてんな。よし、今夜はもう戻らなくていいぞー」

 

「ごめんねゴルシちゃん。寂しくさせちゃう」

 

「早く行けよ!アタシは今から最高の夜を過ごすんだよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

僕にもやはりメンタルというものがあって、人並みに起伏する。デビュー戦を控えた今、月明かりと街灯程度じゃこの漠然たる不安は消し飛ばない。

ただ、とある一室のカーテンの隙間から漏れ出る光は、それらよりもずっと素早くかつ強烈に、僕の目に眩しさを感じさせる。

 

「ハァやばい……。逆に興奮してきた。精神安定を求めてやってきたのに」

 

例によって限ヲタと化した僕の呟きは、どうやらその部屋の内側に届いたようだ。

カーテンが少し開き、そこから伸びた手が窓を開ける。

 

「おやぁ、君、性懲りも無く毎度窓から来るんだねぇ。……静かに入りたまえ、すると面白いものが見れる」

 

「あ、タキオンさん、こんばんは。……面白いものって?」

 

「ク、ククク……。まあ入りたまえよ。そのまま気配を消して、静かにね」

 

何をそんなに面白がっているのか、笑いの絶えないタキオンさん。言われたとおり足音を立てぬよう部屋に踏み入る。すると聞こえてきたのが、何かを激しく紙の上で滑らす音。次いで目に入ったのは、おびただしい数のウマ娘応援グッズ。

……僕の名前が描かれている。

 

「……デジたーん?」

 

「フゥ、フゥッ……!気合いでどうにかッ……!フルカラー誌と応援グッズの同時制作はさすがに無謀だったか……?いや、そんなことはないッ!あと少しッ!明日はオロールちゃんのデビュー戦、徹夜などあってはならぬゥ……!」

 

何をやっとるねん、君は。

 

「ク、ククク、ハハハ……!非常に興味深いだろう?なぜ彼女は左手で応援うちわを作り、右手で精巧な漫画を描けるのか。いったいどういう脳構造をしているのだろうねぇ」

 

既にかなりの数のうちわ、そしてムダに巨大なのぼり旗、その他諸々、おそらく僕の名前が書かれた物品が置かれているが、彼女はそれでも作る手を止めない。まさかスピカメンバー全員分を作っているのか?

プラス、もう一方の手は目にも止まらぬ速さで薄い本を描いている。しかもカラー。

 

単刀直入に言おう。

頭がおかしい。

 

「ッシャァァー〜ーーッ!終わったァー〜ーーッ!ふおおおおお!……おっと、大声を出すと他のウマ娘ちゃんの迷惑にぃ……」

 

完成するのかよ。

 

だが、なんだろう。とても感動した。

顔が濡れている。雨は降っていないのに。

 

「うぅっ、デジたん、お疲れっ……!がんばったね、とっても偉いよ!!」

 

「ハァ、ハァ……。えへへ、ありがとうオロー……ゥルウオロールちゅわんっ!?」

 

ちゅわん。

 

「僕は嬉しいよ。君の想いがひしひし伝わってくる!んふふふふふ!明日は絶対ぶっちぎるからっ!ふふふ……!」

 

「はっ、えっ、ア゛ッ!ちょ、一旦あっち向いてて!すぐ片付けるから!」

 

そう言って原稿らしきものが置かれている机の上を必死に片付けるデジたん。ふむ、沈黙は時に雄弁なり。彼女がどうしてあんなに顔を赤らめているのか、そんなの僕でなくたって分かるだろう。

 

「あぁ、君。さっき私がわざわざ君のために窓を開けてあげたのだよ?まあその代わりといってはなんだが、ここにひとつ面白い薬品があってねぇ。一杯試してみてくれないかい?」

 

「ドーピング検査に引っかかると困るので断固拒否します」

 

「はぁ、そうかい。確かに万が一があっては困るか」

 

うん、飲まなくて正解そうだ。

 

「ハァッ、片付けたぁ。これでひとまずあたしの恥ずか死は避けられる……はず」

 

「お疲れデジたん。オロデジ?デジオロ?」

 

「いやぁ、さすがにプライドを打ち捨ててるあたしでも、自分を攻めにする勇気は……ハッ!?」

 

うむ。マヌケは見つかったようだな。

 

「ちょっ、あああ!?嘘でしょオロールちゃん!?」

 

「クックック、シブいねェ、オロール君」

 

ああも簡単に自爆するとは。大変可愛らしいが、ひょっとするとデジたんはかなりお疲れなのかもしれない。労ってあげねば。具体的には、そうだな。肌と肌とで触れ合って、オキシトシンに溺れようか。

 

「ハメられた……!ん、ふぁー〜あ……」

 

「ありゃま、欠伸までしちゃって。今日は早めに寝た方がいいね。僕も明日に備えてそうしようと思ってたんだ。ほらおいでよ」

 

「どうしてあたしより先にあたしの布団に……。まあ、今さらかぁ」

 

デジたんの寝床が僕の寝床であることくらい、トレセン学園じゃあ常識だ。ゴルシちゃんももちろん知ってる。

 

布団の中に二人っきり。部屋の照明が消え、常夜灯のオレンジ色で暖かな光だけが残る。

……いや、常夜灯じゃない。

 

「なんでそんなオシャレな光を発してるんです?タキオンさん」

 

「仕方ないのだよ。君たちが実験に協力してくれない様子だったから、自分で薬液を試したらこうなった。目に優しい光だねぇ、ハハハ。なんだか眠くなってきた。ふむ、安眠効果はバッチリだ。これならすぐにでも……。夢の、中だ。うん、私はもう、寝、る……」

 

布団を被ってしまったので、完全に間接照明と化したタキオンさん。なんだか良い雰囲気だ。

ふと思ったが、僕に飲ませようとしたのは安眠効果のある薬だったのか。もしかすると、彼女なりに明日デビュー戦を迎える僕を応援してくれるつもりだったのかもしれない。……いや、あのマッドウマ娘に限ってそんなことはないな。絶対自分の作品を早くテストしたかっただけに違いない。どっちにしろ光るのはご勘弁。

 

「んー……。あったかい」

 

「あたし、抱き枕の気持ちが分かったかも」

 

「ふふ。何度も言うけど、サイズ感がちょうどいいんだ、君。僕にピッタリ」

 

こうしていると落ち着く。だが、やる気も湧いてくる。きっと触れ合っているせいだ。手放したくなくて、心が昂るのだ。明日は万全のコンディションで勝負してやる。

 

「……あ、そうだ。ひとつだけ話したい事があったんだ」

 

「話したい事?なになに?」

 

「明日のデビュー戦は体操服で走るわけだけど。ウマ娘たるもの、いつかは勝負服を着たいでしょ?僕は疾い。そして強い。だから絶対に勝負服を着るよ。……ま、デザインとかなんも考えてないけど」

 

「随分と自信満々だね。けどあたしも信じてるよ。負けるはずないって」

 

ここまで自分の勝ちを確信していると、逆に負けフラグが立っている気がしないでもない。だが、フラグなんて所詮はただの運命だ。そんなもの簡単にへし折ってやれる。

 

「で、寝る前に少しだけ聞いておきたくてさ。僕の勝負服だけど、君はどんなのがいい?ひと言くれるだけでいいんだ。何か、君の要素が欲しくてさ」

 

「おおぅ……。責任重大。でも、そうだなぁ。やっぱりオロールちゃんにはカワイイを押し出した衣装より、カッコいい衣装が似合うと思う」

 

「よし……。目指すはシリウスさんだ。僕はイケメン路線で売り出す。実際はただの限ヲタなことは、物好きな一部のウマ娘ファンしか知らない、はず。まだギリギリ間に合うよね」

 

「うーん……。見た目と中身のギャップが話題になる未来しか見えないなぁあたし」

 

そんなぁ。

いや、しかし、僕は可愛いしカッコいいのだ。言動が完全にナルシストではあるが、デジたんと未だ出会わぬ幼少期の時分、鏡に大変お世話になった僕が言うのだから間違いはない。

クールな見た目とは裏腹に中身がただの純情乙女であるウオッカでさえも、世間ではイケメンウマ娘として話題になっている。

要するに、ファンは見た目に騙されやすい。だから、少し化粧っ気を出すだけで、僕は天才ナンパ師にだってなれるはず。いや、トークの才能をもう少し磨くべきか。

 

「何にせよ、僕の勝負服は最高にクールなやつで決まり。僕に似合うカッコいい色といったら……黒?」

 

「最高に厨なカラーリングだね。でも青毛だし、メインカラーは黒がいいのかな。あたしの勝負服は白メインだから、対になってて……ア゛ッ、やっぱり何でもない!」

 

僕の髪色は青毛、要は薄ら青みがかった濃い黒。デジたんにばかり目がいくので、自分の容姿を忘れがちだが、目の色はターボ師匠と同じくオッドアイ。右が青で左が金。レア度高いな。もうこれだけでカッコいい気がする。ふふふ、世の中学二年生の性癖をぶっ壊してさしあげよう。

 

「ところで、最後。何て言おうとしたのかなぁ?んー?そういえば君はもう勝負服のデザイン考えてるんだっけ?あれだよね、白ベースに青やら黄色やら赤やらのフリフリが付いてる、めちゃくちゃロリっぽいやつ」

 

「ロリちゃうッ!?え、というかなんであたしの勝負服のことを知って……?まだ誰にも言ってないはずなのに……」

 

「知ってるから知ってるんだ。細かいことはいいじゃないか。それよりも、対になるってそういうことか。僕のを黒ベースにすれば、白黒になって、互いに互いを引き立たせる色合いになる。つまり僕が一番輝けるのは君の隣にいるとき、逆もまた然りってわけだ」

 

なんとも粋なことだ。二人揃っていなきゃどちらも魅力を最大限まで引き出せない。こんなに気持ちのいいことが他にあるか。

 

「……まあ確かに?オロールちゃんがいたら、あたしだってレコードタイムくらいは狙っちゃえるカモ……なんて」

 

「そんなものかい?僕は世界記録狙うけど」

 

「じゃあ、あたしは車より速く走る」

 

「新幹線」

 

「飛行機」

 

「ロケット」

 

「……ザ•ライトニィング」

 

「やるねぇデジたん。じゃ僕は……宇宙の膨張速度を超える。でもって次元の一つや二つ、超えてやるから」

 

思えば、僕はそうやって生まれた。何の因果か、他所の世界からここまで流れ着いた魂が、今や最推しと同じ布団にくるまっている。

この世界においては、もしかすると僕の存在は異常かもしれない。いや、確実にそうだろう。きっと僕がレースに出走することで、本来の競馬史とのズレが発生する。

 

だがそれでいい!本来勝つはずだったウマ娘にとって、僕の存在は紛れもなく侵略者だろう。絶対的な運命を覆す。これしきのこと、スズカさんだってやってのけたろう。だったら上等だ。スピカメンバーたるもの、運命ごときに遅れをとってどうする。レースに……この世に「絶対」などないことを証明してやる。

 

さて、この侵略を何に例えよう。ああ、さながら国取りの賊か。大砲をわんさか積んだ軍艦(フリゲート)を引き連れて、門戸を乱雑に打ち鳴らし、僕を迎え打とうと出てきた獲物を完膚なきまでに叩き潰す。本来勝つはずのウマ娘を強引に蹴落として、僕がトロフィーを手にするのだ。

 

 

そうだ。海賊をやってやろう。

 

「ふ、ふふ、ふふふ……。どーしよ、寝る前に楽しくなってきちゃったよ」

 

勝負服はそれでいこう。黒を基調とした海賊装束。青と金色の洒落た装飾をあしらおう。

強気にフリントロックでも構えてみようか。

肌の露出は抑えめで良いだろう。僕が目指すのはイケウマ娘だ。見た目に落ち着きがなければ。

 

「えっちょっ、なんで目が光ってるの?セルフでタキオンさんと似たようなことしないでよぉ!?」

 

僕は賊だ。飽きるまで大砲をぶっ放して、大地をまっさらにしてやる。水平線の向こうからやってくる夜明け(オロール)がはっきり見えるように。

 

「……イメージがはっきり湧いてきた。うん、勝ちフラグ立ったなぁ」

 

「せっかくいい感じに強キャラ感出てたのに、今の一言で台無しだよ」

 

「そう?アレだよ、ほら……。いっつもお気楽に過ごしてるけど、いざってときは目つきが変わるタイプの一番強いキャラ、的な?」

 

体が震えてきた。だが、今までの震えとは違う。いわゆる武者震いだ。心臓が火を噴いている。

 

「なんだか暑苦しくなってきた……」

 

「あぁゴメンゴメンゴメン!?つい気持ちが燃えてきちゃって、それで……!待って、僕から離れないで!?僕の勝利の女神は君なんだ、いなくなられちゃ困る!」

 

「……勝利の女神?あたしが?」

 

ふと悪戯な笑みを浮かべるデジたん。

 

そして、ゆっくりとその唇を僕の頬へと寄せる。

 

「これで絶対に負けられなくなっちゃったね?オロールちゃん?」

 

「……してやったり、みたいな顔だねデジたん。実際その通りだ僕は今激しく混乱していると同時に幸福の絶頂を迎えてるあぁヤバい普通に尊すぎて昇天しそうだあああぁっ!」

 

その瞬間、僕の意識は瞬く間に虹色の渦巻く混沌へと沈み込んだ。

 

まあ、なんだ。

快適に眠れそうではある。

 

明日はきっと万全の状態でレースに臨めるだろう。




小説(怪文書)作ることの何が楽しいって、そりゃあ自分の性癖をぶち込めることですよ。その結果約20話に一回しか走らないウマ娘が生まれたわけですが()
次回は走るんじゃないスかね、多分。

性癖を詰め込んだ結果無事にイカれたうちのオリ主の容姿については、作者が画伯なため視覚的にお伝えすることはできませんが、まあその辺は皆様方のご想像にお任せします(適当)
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