マジで楽しいです。オススメ。(ウマ娘二次創作の前書きとは思えない内容)
「なあ、オロール。俺に言わなきゃならんことがあるだろ?たった一つのシンプルな言葉だ。分かるよな?ご、から始まるやつだ」
「ふぇえ〜……?」
「だーかーらー!お前っ、ライブゥ!なぁ!?」
うーん、そう言われてもわからない。いったいなんのことだろうなー。
あっ違う。僕は仮にもイケウマ娘を目指す身、こういう時は華麗にしらばっくれるべきだ。
ああ!と、爽やかに口に出しつつ手をポンと叩いてみる。
「……フッ。そういうことですか、トレーナーさん。僕の流麗な足捌きに見惚れてしまった、と。そう言いたいのですね?」
「よぉし分かった、オイデジタル。お前あれ持ってこい。あのムダに綺麗で神がかったカメラワークのライブ写真。ウマ娘雑誌に載ってたやつ。それがありゃあ、コイツも自分が何やらかしたか言い逃れできんだろう」
「了解ですトレーナーさん!いやはや、それにしても、分かってらっしゃいますね!実はあの雑誌の記者、ウマ娘特集を手掛けてるだけあって大のウマ娘ファンの方だそうで。なんとデビュー以前からオロールちゃんを推していた歴戦のカメラマンさんなんですよ!」
「んなこたぁ聞いてねー!?つかお前ら、ええっ?何で俺の知らないところで着々とファンが増えてるんだよ……?」
へえ、ウマ娘雑誌の記者ねぇ。
トレセン学園に入ってから、取材に来るマスコミを何度か見かけたことがある。しかし、その数回だけで、実を言うと僕は記者に対する負のバイアスを抱くこととなった。
なんたってアイツら、我らが愛すべきウマ娘に失礼な物言いをすることが多いものだから。
「ハイ!持ってきましたよー!」
とはいえ、この『月刊トゥインクル』の記者は非常に好感が持てる。文章だけでもウマ娘への愛が伝わってくる。実際に対面したことはないが、ヲタク談義などしてみれば、さぞかし楽しいだろう。
乙名史悦子……。我らが同志。
ぜひ一度会ってみたいものだ。
「ああ、ありがとさん。……んで、ホラ。ココ見ろ。この写真!お前がステージ上で空中きりもみ3回転してるときの写真!」
「ハァ、見てます。それがどうかしましたか?」
「いやおかしいだろ!?なんで『Make debut!』歌っててこんな振り付けになるんだよ!?」
「だってー!デジたんが可愛いんです!」
「まともな文脈で喋っていただけるかなぁ!?俺、一応お前のトレーナーだから!会話は論理的にやろうぜ!?」
「なんで今のが理解できないんですかッ!?いいですか、耳の穴かっぽじってよーく聞いてください。まず、デジたんは可愛いです。ライブ中に僕を応援してくれたデジたんは、もはやビッグバンを越えてます。次に、それを見た僕は、興奮のあまり、とても公共の場で見せられない顔になります。だから!それを隠すためにブレイクダンスを踊ってカメラが捉えきれないほどのスピードで動いたんです!」
「なぁゴルシ、論理ってなんだっけ」
「いやそこでアタシに聞くかぁ?……つっても、一応、アレだな。コイツの日々の態度を鑑みた場合、コイツの言ってることはまったく筋が通ってないわけでもないよな。認めがたいけどよ」
この世の共通言語を知っているだろうか。
ひとつは数学、ひとつは論理。そしてそれらよりも重要なのがデジたんだ。それをこのトレーナーときたら、デジたんよりもワンランク低い共通言語である論理で会話を成り立たせようとしている。まったく。せいぜい精進してほしいものだ。
「だがまあ、踊れないよかマシか……?いやそんなことないな。曲がりなりにもこれからお前は競走ウマ娘として、ウイニングライブでファンに恩返しする必要がある。ファンの心をしっかり掴めるようなライブを心がけてだな……」
「あの、それでしたら。激しい動きで僕のライブ用衣装のスカートがスレスレのラインまで捲り上がるので、ファンには大ウケでしたよ。興味深いことに男女問わずバイブスが上がってたみたいです。いやぁ、ファンの皆さんも随分と食指が所構わず動き回ってるご様子で……」
曲の中盤あたりで、なんとかデジたんを拝んだことによる蕩け顔から回復することができた。その際に、シリウスさんやブライアンさんといったイケウマ娘たちの表情を可能な限りトレースしたおかげだろうか。歓声には甲高いものも多く混じっていた。
「……あー。なんか、もういいか。お前が一番楽しくやれる方法でやればいい。それでファンが喜ぶんだからな。ったく、ウチのメンバーの中でもとびきりクセが強いヤツだなぁ……」
「褒め言葉として受け取っておきます」
クセが強くてなんぼだと、最近は特にそう思っている。カッコよくて可愛い自分を目指そうと思っていたら、自然と自分のことが大好きになってしまった。無論デジたんが一番だが。
自己肯定感が高いと、その分幸福ホルモンなんかが分泌され、結果加速度的に自己肯定感が増してさらにカッコよくなる、なんて話も聞く。オペラオーさんがカッコいいのだって、おおかたそんな理由だろう。なお根拠はまったくない。
しいて根拠のようなものをあげるならば。
デジたんに毎日可愛い尊いマイ女神、と囁き続けてはや一年が経とうとしている今日この頃。僕の主観では、彼女の美しさは日々増していっている。
「あ、そーいやお前、左手怪我したとか言ってたろ?もう治ったのかよ?」
「心配ありがと、ゴルシちゃん。怪我ってほどでもない。勢いよく振り抜いた手がラチに掠って少し擦れただけ。唾でもつけとけば治るって感じ。だからデジたんに舐めてもらったら2秒で治った」
「……は?」
民間療法は偉大なり。
良い子はマネしないように。
「いや、あの、誤解です!?舐めたというよりは、背後からおもむろに近づいてきて口を塞がれたんですっ!」
「とにかくッ!今の僕は健康体!レースの疲れはそれなりに取れてきたし、何より勝てて気分がいい。ってことで、代謝が良くてお腹が空いてる。ゴルシちゃん、パドックの約束、ちゃんと覚えてるよね?僕が勝ったらラーメン奢ってくれるって」
「しゃーねーなぁ。けどラーメン一杯な。チャーハンとか頼むんなら自腹だかんな!」
「あ、じゃああたしも行きます!オロールちゃん、遠慮しないで他にもいろいろ食べて!というか貢がせてっ!」
ヲタク特有の「金出すぞオラ」とかいう脅迫だ。
「いいの?ありがとう。じゃあ君がデビューしたときには、最高級のレストランを予約しておく」
先日のデビュー戦で受け取った賞金は、中学生である僕にはちょっとした大金だ。一度くらい豪遊したところで、生活に支障は出ない。
メイクデビューでこれなのだから、G1レースの賞金などはさぞとんでもない額になるだろう。生々しい話だが、我らが生徒会長殿の懐には、一生暮らしていけるだけのお金が貯まっているに違いない。
ふと思ったが、賞金のうち、僕の手取りだけでこんなに貰えるのなら、多くのウマ娘を抱えるトレーナーという職業は、それはもう大金持ちのはず。スピカのトレーナーさんはいつも貧乏だが、いったいなぜなのだろう。
「ウチにもデビュー済みのウマ娘が増えてきたなぁ!よぉし、お前らなら絶対にG1を獲れる!誰かが最初にG1獲ったら、そんときは全員俺の奢りでたらふく美味いもんを食ってもらおう!」
ああ、そうだった。この人、お金が入るとすぐに景気良く浪費するタイプだった。
◆
「なんか、たまらないね。レースの後にカロリーお化けの料理を食べるってのは」
食券機のボタンを押し、しみじみと呟く。
「あ?お前なに言ってんだ、ラーメンは飲み物だぜ?」
脂っぽく、ニンニクの香味が満ちた空気。だがこれがいい。ラーメンは庶民の流儀だ。それでいて、老若男女を問わずあらゆる人を惹きつける力がある。
そう、たとえ一国の王女殿下でさえも、その魅力には抗えないのだ。
「ん?あそこにいるの、シャカールさんとファインさんじゃない?」
店内で箸を片手に眼を輝かせている、高貴さ漂うウマ娘。その横でぶっきらぼうに麺を啜っているオラついたウマ娘。シャカファイで間違いないだろう。
「おー、マジじゃん。よっしゃ、突撃してやろーぜ」
「あっちょっ、ゴルシさんっ!お二人の間に挟まるのは重罪で……!」
デジたんの制止むなしく、既にゴルシちゃんは移動していた。速い。なんて爆発的な脚。
「なあなあ、シャカールちゃんよォ。お前の食ってるラーメンにラー油ぶち込んでいーい?」
「……は?ふざけンじゃねえぞ。ゴルシ、てめぇ。なンの用だよ?」
「ちょっと2人とも!神聖なるラーメンの前で喧嘩は御法度だよ?まずは落ち着いて深呼吸して、ラーメン啜って」
あーあ、シャカールさんがなまじこの面子で最も常識人だから、ゴルシちゃんがボケに回ってしまった。あと姫、どんだけラーメンジャンキーなんだよ。
「つか、なんかおもろいな。こんな商店街の一角にあるお財布に優しいラーメン屋で麺啜ってんのが、仮にも一国の王ぞ」
「ゴルシちゃんっ!?額にレーザーサイトが!?」
「ッス〜……。アタシ、喋りすぎたか?」
青ざめた顔にポツンと浮かぶ赤い点は、数秒後にようやく消え去った。ふと窓の外を見ると、グラサンとスーツを着こなしたクールなウマ娘が、ネコの肉球があしらわれたレーザーポインターを持ってサムズアップしていた。
いやなにしとんねん。
「あぁ、あたしはどうすればっ!願わくば壁になってこの光景をずっと眺めていたいぃ……!」
「いや、デジたん。普通にこっち来てラーメン食べようよ。まさか君、水だけで乗り切るわけにもいかないでしょ。それにどうせ、シャカファイは何があろうと不滅だよ」
運命、という言葉をあまり好んで使う僕じゃないが、やはり切っても切り離せない関係というものは存在する。僕とデジたん、ウオスカ、テイマク、そしてシャカファイだ。
「あ?シャカファイ……?なァんか寒気のする言葉だな。どうにも不穏な法則性がありそうだ」
「シャカ、シャカール……。ファイン、あっ?そういうことだね、分かった!こういうのを日本語でなんて言うんだっけ……。そうそう、ニコイチ!」
「テメッ……!どこでンな言葉覚えてきやがンだよ!?」
「私、君以外にも友達はいるよ?ふふっ、妬いたりしないでね?シャカファイの片割れさん♪」
殿下はお茶目だなぁ。それと、てっきり僕は、殿下の交友関係についてはSPさんが厳重に管理しているものと思っていたが、どうやら色々と緩いらしい。
「……な、なあシャカールちゃんよォ。さっきは本当にごめんな。アタシが言えたことじゃねーかもしんねえけどよ、困ったことがあったらいつでも相談乗るぜ……?」
「俺としちゃア、テメーが急に優しくなったこの現状が1番困るけどな。ホント急だな。ったく、どーして俺の周りには論理のカケラもねェ連中ばっか集まンだよ」
このラーメン殿下もなかなかな性格だからなぁ。
ちょっとしたライフハックを紹介しよう。ゴルシちゃんの態度を見れば、場の狂気度が分かる。その数値はゴルシちゃんのハジケ度と反比例しているのだ。
「まあとりあえず、注文しよっか」
シャカファイが尊く、僕がデジたんを愛することが不変の真理であるのと同様に、ここはラーメン屋である。
常日頃から甘ったるい口の中を丁度いい塩梅にする、というわけでもないが、僕は先ほど買った塩ラーメンの食券を店員さんに手渡した。
◆
「……なぁ、マジで気ぃつけろよシャカール。あのデジタルとオロールとかいうヤツらはな、同級生ですら平気で妄想の材料にするんだ。いいか、こりゃ貴重な経験者からの言葉だからな」
「お、おう……?」
「正直に言う。アタシももう染まってきちまってるのかもしれねェ。さっきのお前とファインのやりとりを見てるとな、なんか、胸のあたりがむず痒くなってくるっつーか……。あったまるんだよ!アタシでさえこれなんだぜ?……あとは言わなくても分かるよな?」
「おーい、バッチリ聞こえてるよゴルシちゃん。というか、なんだよ、別にいいじゃないか。妄想に耽ったって。何も害を与えるわけじゃないし」
「マジで言ってんのかよ?なんか、嫌だろ。自分が他人の頭ん中で好き勝手扱われてるってのは。例えば、ソイツがいちファンだったら、まあ仕方ないと思うけどよ。顔見知りがそんなんだったらなんかアレだろ」
「そうかなぁ。僕はむしろ興奮する」
「お前に何言ってもムダだったか。ハァ……。あ、胡椒取ってくれ。ん、センキュ」
トレセン学園に通う僕の知り合いは、やはりトレセンの関係者がほとんどだ。つまり美少女ばかり。もしも、その彼女らが各々の脳内で僕に関してあれやこれやと妄想しているのだとしたら、実にたまらんシチュエーションじゃないか。同時に、僕が記憶に残るウマ娘であるということを意味しているわけだし。
まあなんと言っても、デジたんが僕の妄想をしてくれていたのなら、僕は発狂する自信がある。
「あたしは、もしウマ娘ちゃんがあたしの妄想をしている〜なんてことになったら……。自刃します」
「えぇー……。覚悟決まってるねぇ。どうして?」
「だって、ウマ娘ちゃんの貴重な思考リソースがあたしに割かれるなんてことあっちゃいけないでしょ?……あ、オロールちゃんは別。というか何を言ってもあたしのことしか考えてないし」
「なぁ分かるだろ?コイツらマジでイカれてんの。目ぇつけられてご愁傷だぜ、シャカール」
「……テメーが言うな」
「そう硬くなんなって。今やお前の味方はアタシ1人だとも言える」
「コッチ見ンな。俺は味方なんていらねェ」
「え、そうなの、シャカール?私のことはどう思ってるの?私たち、ニコイチでしょ?」
「だー!やかましい!いちいち言わせんなッ!」
おアツいな。本当にアツい。そんなに温度を上げてどうする。こちとら、ただでさえデジたんが麺をフーフー冷まして食べる様子に喜び悶えて体温が上昇しているのに。
「……ふぅ、ごちそうさま。私たちの方が先に居たから、早く食べ終わっちゃった。ねぇシャカール、実は私、もう一軒行きたいラーメン屋さんがあるんだけど」
ヒェッ。ファインさんの目がなると巻みたいになってる。
「ハァッ!?マジかよっ!ラーメン1杯ならまだしも、2杯分のカロリーを摂取する予定はねェぞ!なァ、また来週とかで……」
「ダメ、かな……?」
「……チッ、仕方ねェなァ」
うむ、尊い。尊いのだが、同時に恐怖を感じた。ラーメンにはああもウマ娘を狂わせる力があるのか、それともファインモーションというウマ娘にもともと素質があったのか。
「ふっひょおぉ〜ー!今の聞きました!?ラーメン1杯ならまだしも〜って、つまりシャカールさんはラーメンを必ず食べる前提でカロリーを計算してたってことですよねェッ!?シャカファイの運命は既に定められてた……ってコト!?」
「お前よくそんな細けーことで興奮できるな」
ゴルシちゃんはそう言うが、実際、その事実ひとつだけで想像が膨らみまくるのは確かだ。
例えば、ラーメンの誘いが来ることを見越して食事の量を調節していたのに、一向に誘われない。思い切って自分から誘ったところ、案の定ファインさんにからかわれる……。そんなシャカールさんは実在する、はずだ。
「つーか、随分美味そうに食ってるけどよ。大丈夫なのか?デジタル。お前来週デビューだろ?」
「……ほえっ?」
「え?」
「ん?」
「ほゑっ?」
「なぁんだよ、変態のお前が忘れてたってのか?ハッ、んなわけねーよな?お前の大好きなウマ娘チャンと一緒に走れるってのに、なぁ?」
「ゴルシちゃん!ダメだ、尊みを摂取したばかりで許容量スレスレな今のデジたんに、待ち焦がれてるメイクデビューの話なんかしたら……!」
「マ゜」
「あぁ遅かった」
どうか安らかに。
「ありゃまあ、完全に白目剥いちゃってさ……。けどデジたん、僕がいないレースだってのに、よくそんなに興奮できるね。僕以外のウマ娘に限界化したことに悲しむべきか、それとも、僕と共に出走することになったときのリアクションを想像して楽しむべきか」
「……カヒュッ、ハイッ、復活!デジたん復活!そしてただちに言いたいことがッ!たった今あたしが妄想したのはメイクデビュー戦ではなく、オロールちゃんとのレースや、スピカの皆さんとのトレーニング風景ですので!ご心配なくッ!」
「むしろ心配だわ。まだレースで出会うことになる未知のウマ娘に興奮してますって言ってくれた方がマシだったぜ。まだアタシらでイケんのかよ。ガムだったらもう溶けてるレベルだろ」
「つまり!僕たちの愛は永遠なのさっ!ゴルシちゃん!エターナル・ラヴッ」
「やかましい!」
何にせよ、メイクデビューときたら、その愛の一切合切を燃やして祝ってやろう。実際、デジたんは心身を削ってまで僕のことを応援してくれた。となれば僕は、当日レース場を訪れる予定の人全ての家を回ってデジたんを布教することも辞さない。
まあ、その覚悟があるだけで、実際には物理法則的な限界に阻まれてしまうが。だからこそ、この現代社会における、物理的に最速の伝達手段、すなわちインターネットだとかをフルに活用すればいい。幸いにも、このウマ娘住まう美しき世界には、イカれた
待ってろデジたん、数の暴力で褒め倒して推し倒して、2人っきりのときに押し倒してやるから。
ゴルシウィーク、去年は東方仗助スタイル、今年はDIO様スタイルだったので、来年はジョセフスタイルで来ると予想。ゴルシーン!
ジュエル564個はありがたいですねぇ。神じゃないかゴルシちゃん。ゴールシンカムイ。