デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

5 / 88
デジたん可愛い!TS見たい!どっちも見たい!
…ないやんけなら書いたろ(IQ2000)

いや素人が急に思い立ったところでプロットとか思いつかんって…←今ココ

あーあ、その辺に文才とか競馬の知識とか落ちてないかな……落ちてないかな(血眼)


ウオスカを。ステアじゃなくシェイクで。

「ええええぇっ!?ルドルフさんと話したんですかっ!?」

 

トレセン学園の廊下に、声が響き渡る。

 

「まあ、少しだけどね」

 

「いいなぁ…あたしはまだ見ただけでお話したことないんですよぉ…。……でっ!どんな方なんですかっ?見た目通り冷徹な方なのか、それともその雰囲気に反して意外と可愛いものが好き…みたいなギャップ萌えとかとかとか!!そういうのはありましたかっっ!?」

 

昼食を食べ終えたすぐ後。僕ら二人ともトレーニングまでまだかなり時間があったのだが、今は練習場に向かっている最中。もちろん、他のウマ娘を見るためである。

にしても、デジたんはウマ娘のこととなると本当によく口が回るな。

 

「…そのときのやりとりは一言一句違わず覚えてるよ、…聞かせようか?」

 

「何ですかそれ…?神すぎません…?ぜひっ、ぜひお願いします……って、なんでちょっと涙目なんですか?」

 

「…理由は、うん。聞けばわかるよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜…何ですかそれ…つまり、もっと気軽に接してほしくてそんなにダジャレを…?…尊いが過ぎるぅ…。そ、の、う、え!ダジャレに気づけず後悔するオロールちゃん…あなたも最っ高に尊いッ!はぁ〜…ぜんぶしゅき…」

 

分かる。ぜんぶ(ただいま悶絶中のデジたんも含めて)しゅき。

 

「その調子でどんどん発掘しましょうッ!尊みという…お宝をッ!」

 

「うん、そうだね…」

 

現在進行形で発掘してます。

 

「あぁ…トレセン学園って最高…いるだけで創作意欲が滾るぅ…」

 

創作意欲…そういえば、デジたんは生産する側のオタクだったな。自ら絵を描いて本を作り、当然のようにコミケに出向く。また、父親も本に関わる仕事に就いていて、そのツテで欲しい本を「正規ルート」で手に入れてるとか。

つまり彼女はかなりディープなオタクなのである。

 

というか、読みたいなぁ、デジたん先生の本。最推しが描く推しの本とか、神棚に祀る程度じゃ足りないレベルで尊い。よし、とりあえず新刊が出たら3冊くらい買おう。鑑賞用、保存用、祀る用だ。

 

「…ネタは提供する。だから新刊を出す際には真っ先に読ませてくださいお願いします」

 

「ンン゛ッ…あの高純度な尊みエピソードと同じようなモノがこれからも聞けると…?ハァ…あたし、死んじゃうかも…」

 

僕はデジたんが喜びに震える顔と例の本が見られて、彼女は創作活動がより捗る。

これぞまさにwin-winの関係だ。

 

 

 

そうこうしているうちに、練習場が見えてきた。今回はトラックには向かわず、観客席へと足を運ぶ。

 

「おお……」

 

改めてこうして見てみると、前世で見たウマ娘がちらほら。可愛い。もちろん見たことない子たちも可愛いが。

そして、この観客席にまで伝わってくる彼女達の熱気。

走るのも楽しいが、それを見るのも楽しい。ああ、ウマ娘という存在はどうしてこうも素晴らしいのか。

 

「分かりますか、オロールちゃん…?ここから見える風景には、ありとあらゆる尊さが詰まっているんです。…友人と切磋琢磨する子、孤独に己の道を征く子…時には喜び、時には悲しみ……そう、この世の全てがここにあるといっても過言ではない。ここにいる誰もが尊い輝きを放っている…!感じますかっ!?感じてますよね!この尊さをッ!!」

 

「うん、すっごくよく分かる」

 

「…では同志よ。さっきからなぜ真っ直ぐあたしを見つめているのですか?」

 

「僕の最推しはデジたんだからね。その瞳に映るトラックの景色を見て尊みを感じてるんだ」

 

「あたしみたいなウマ娘ちゃんの踏んだ石ころにも劣るようなのなんか見ちゃダメです!それだったら鏡を見たほうがウン億倍もいいですよ!今あなたが見るべきはあたしじゃなくてトラックにいるウマ娘ちゃんですッ!!…ほら!丁度今、オグリキャップさんとタマモクロスさんが併走してます!」

 

それはぜひ見なければ。もちろんデジたんの目を通して見よう……と思ったが手で隠されてしまったので、僕はトラックの方に向き直る。

 

そこにあったのは二筋の白光。

 

芦毛の二人が、直線でデッドヒートを繰り広げていた。現在ハナを走っているのはオグリキャップだが、その差は僅かだ。

 

「オグリさんは地方のカサマツトレセンから単身でやってきて、数々のレースを制したすごいウマ娘ちゃんです。ですが、そんな彼女も私生活では数々の天然発言をかまし、その上超がつくどころではないほどの大飯食らいで…毎日ぽっこりと膨らんだお腹をさすりながら、ごちそうさま、というときのその幸せそうな表情…が…っくぁぁぁぁぁッ!?思い出しただけでこの威力ッ!…そうっ!とにかく、可愛いのなんのってね!ッハァ〜…尊いッ!」

 

芦毛の一方、オグリキャップについてデジたんが尊死しつつ解説してくれた。

ちょうどそのとき、二人が最終コーナーを曲がり始めた。先頭は依然オグリキャップだが、すぐ後ろにタマモクロスがつけ、機会をうかがっている。

勝負は最終直線にもつれ込んだ。

 

「タマモクロスさんはいつも明るくて元気で、関西弁が特徴のウマ娘ちゃんです。見た目はちっちゃくて可愛らしいですが、その体躯から放たれる爆発的な末脚で数々のレースを制したすごいウマ娘ちゃんでして……って!?ぉおお?!タマモクロスさんが内ラチ側を突っ切りました!…でもオグリさんも追い縋って…この勝負ッ、熱いッ!…うおぁぁぁ!!とにかく頑張れーーーっ!!」

 

「…頑張れーっ!二人ともーーっ!」

 

同じように解説をしていたデジたんだったが、レースが佳境に入るにつれ、大声で応援し始めた。それにつられて、僕も応援を始める。

 

ゴール板までの距離はじわじわと縮んでゆき、しまいに二人はほぼ同時にゴールした。

 

非常に熱い勝負だった。二人が巻き起こした風が、この観客席まで伝わってくるような気さえした。

 

「…すごい」

 

あまりの衝撃に、思わず純粋な感嘆の声を漏らす。

 

 

ここからでは差はほとんど見えなかったが、どうやら僅差でタマモクロスが勝ったようだ。彼女がガッツポーズしながら何やらオグリに言っているのが見える。

 

「…『うちの勝ちやオグリィ!今度なんか奢ってもらうで!』『やるな、タマ。だが次は私が勝つ』」

 

「うぇっ?」

 

突然横からデジたん以外の声が聞こえてきたのでびっくりした。

…と思ったが、どうやら今の光景をみてデジたんがアテレコしているようだ。声も雰囲気もまるで別人のようだった。さすがデジたん。可愛いだけでなく、そんな才能まで持ち合わせているとは。

 

「…きっとあの二人はこんな会話をしているでしょう。元気系関西っ子と天然クール…正反対の二人ですが、心は誰よりも通じ合っている…ンンンン゛ッ!たまりません、たまりませんよ〜ッ!ウマ娘ちゃんは単体でもイイですが、やはりCP間で生まれる尊みは二倍、二乗どころか…もう、インッ!ッフィニティッ!!」

 

いやはやその通り。すごく分かりみが深い。デジたん自身の尊みが無限大であることを自覚していればなおのことよかったが、それは僕がおいおい教えてあげることにしよう。

 

「CP…いいよね…いくらでも眺めてられるもん」

 

「うんうん、ですよね。二人いるからこそ、絶えず変化し続けるシチュエーション…そこから続々と繰り出される破壊的な尊み…いいですよねぇ…。…オロールちゃんは、今イチ推しのCPとかありますか?」

 

今のイチ推しか。それはもうすぐに答えられる。なんせ同クラスにいるからな。

 

「僕のクラスにいるウオッカとダイワスカーレット。この二人が今キテるかな」

 

「むむっ…、まだあたしがチェックできていない子たちですな…しかし果てしない尊みの波動を感じますっ。ぜひ詳しく教えていただきたい!……の、ですが…どうやらそろそろあたしもトレーニングに行かなければいけない時間のようです。ですからまた明日!改めて聞かせていただきたくッ!」

 

「じゃあ、今日はその二人のネタを集めておくよ。トレーニング頑張ってね」

 

「ふぉぉぉっ!ありがとうございますッ!みぃなぎぃってきたぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

僕の言葉を聞くやいなや、彼女は奇声を上げながらトラックへと駆け降りていった。

 

では、僕も早速行動を始めるとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

僕のクラスのトレーニングももうすぐ始まるため、例の二人もそろそろ移動を始めているだろう。そうあたりをつけて探したところ、案の定校舎から練習場へ続く道に彼女達はいた。あいも変わらずなにか言い争っているようだ。

 

とりあえず近くの木の後ろに隠れて様子を見てみよう。

 

「だから!ラストスパートでギュゥーン!って加速してブッちぎる方がカッケーだろ!?」

 

「別にアタシはかっこよさなんて求めてないのよ!それに、最初から最後まで一番を譲らずに勝つ方が絶対イイわよ!」

 

どうやらレースの走法のことでケンカしているようだ。理由が既に可愛いな。ていうか、ウオッカさんや。なんだよその「ギュゥーン」て。カッコいいと思って言っているのだろうが、すごく可愛い。

 

「つーか!大体お前はいっつも……」

 

おや。すごい剣幕だったウオッカが突然黙り込んだ。一体どうしたのだろう。

 

そしてスカーレットになにか小声で言ったのち、校舎の方へ走って行ってしまった。なにか忘れ物でもしたのだろうか。

 

残されたスカーレットは、しばらくウオッカが走っていった方向を見つめてから、何かを確かめたように二、三度頷き、……僕のいる木の方へと向かってきた。

 

もしや見ているのがバレたか?と思ったが、彼女は僕のいる裏側へと回ってくることなく、そのまま木に背中を預けるだけだった。

 

バレてなかったぁ…。

ふぅ、と、心の中で安堵の息を吐く。

 

しかし、どうしてウオッカは突然彼女を置いて走っていったのだろう?

 

理由を考えようとした瞬間、僕の肩にぽん、と手が置かれた。

 

「…よしっ、捕まえた!」

 

振り返ってみれば、そこにはさっきいなくなったはずのウオッカがいて、僕の肩をむんずと掴んでいた。

 

「うわぁっ!?」

 

咄嗟に後ずさりしようとしたがそれもできない。なぜなら、さっきまで木に寄りかかっていたスカーレットが僕の背後にいるから。…これは、図られたな。

 

「くっ…なんでバレたんだ?」

 

「アンタがブンブン尻尾振り回してるのが見えたんだよ。…あれで隠れてるつもりだったのか?」

 

…無意識のうちに尻尾が感情と連動して動いていたようだ。…もしかすると、気づいていないだけでいつもそのくらい動いているかもしれない。デジたんといるときは特に。気をつけねば。

 

「もう言い逃れできないわよ…こないだもアタシ達のことつけてたわよね?目的を聞かせてもらおうかしら?」

 

普段クラスでは見られない、彼女本来のツンツンした表情でスカーレットが僕に問いかけてきた。

…この場から逃げだすのはさすがに難しそうだ。

 

「…君たちがあんまりにも可愛いから、後をつけてただけだよ」

 

というわけで、正直にストーキングしていたことを言ってみた。

 

「んなっ……思ってもみないことを言ったって俺は騙されねーぞ!」

 

とウオッカ。ただし頬には少し赤みが差している。

 

「…ちょっと、こっちは真面目に聞いてんのよ?」

 

と、さらにツンツンしだすスカーレット。

 

いやぁ、どちらの反応も大変趣があってすごく良……じゃなくて。

僕は正直に言ったのだが、二人には信じてもらえなかったようだ。

 

「…物的証拠は出せないけど、それがホントの理由なんだ」

 

「…じゃあ、どうしてクラスではアタシ達に話しかけたりしないのよ?」

 

「っ…それはー、…その、うん。やっぱり、推しは遠きにありて思うもの、というか。ある一定のラインがあるというか…」

 

ウオスカをはじめとした尊いCPは基本的に禁足地というか。…とにかく、そんな感じだ。

 

「これ以上嘘を言っても意味ねぇよ。…アンタ、ホントは何か企んでるんだろ?」

 

まずい。どんどん場の空気が険しくなってきた。

…かくなる上は!

 

「より具体的に言うと、スカーレットのことは可愛いと思ってるけど、ウオッカのことはカッコいいと思って見てたんだ。例えばウオッカのその言葉遣い、すごくワイルドな雰囲気があっていいと思う。その片目を隠したヘアスタイルとか、最高にイカしてるよ。バイクに乗ったら映えそうな見た目だよね」

 

 

「…なあスカーレット。こいつそこまで悪いやつじゃないんじゃないか?」

 

「…アンタ、チョロすぎない?」

 

よし!ウオッカは落ちた!

 

「チョロいってなんだよ!俺はチョロくねぇ!」

 

「チョロいわよ!大体この前だって____」

 

「二人とも、落ち着いて。…スカーレット。君が僕を疑ってかかるのは当然だけど、それでこうやって僕を問い詰めるっていうのは、自分がなんとかしなきゃ、っていう強い意志の表れだよね。そして君はクラスでは一番他人のことを気遣えて、一番責任感がある、一番の優等生だ。…その上、一番カワイイ」

 

 

「…たしかに悪いヤツではないようね」

 

勝った。

うん、二人が自分自身の魅力をちゃんと理解してくれてよかった。

 

「とにかく、そんなこんなで…遠くから二人の自然体な様子を見ていろいろ学ばせてもらおうかと思ってあとをつけたんだ」

 

嘘はあんまり言ってない。

 

「…まあ、そういうことならいいわ」

 

「おお…俺も貫禄が増してきたってことかな…」

 

二人ともまんざらでもないようだ。特にウオッカ。さっきからずっとニヤニヤしている。

 

「じゃ、僕はこれにて…」

 

「あ、どうせ同じ時間からトレーニングするんだから、一緒に来なさいよ。…何気に一番勉強ができるアンタのこと、前から気になってたし。そっちの話も聞かせてよ」

 

おっと、そう来たか。まあさすがに入学の日のように限界化はしないし、別に構わないか。一番いいのはCPを遠くから眺めることだが、二人はクラスメートだし、その辺のラインはうまく調節していこう。

 

「…それに関してはちょっとした理由があるだけなんだけどね」

 

予定とは少し異なったが、僕の話や他愛もない話をしつつ、三人で練習場へと向かった。

ちなみに、別に隠す気もないので記憶能力について話したところ、ウオッカが「すげぇ!…なんかカッケェーな!」と言ったのが、何というか…彼女らしいな、と思った。主な用途は尊い会話や推しの表情を記録することなんだけどね。

まあ、とにかく。その後のトレーニングでターフの上で争う二人を真横という特等席で見られたので、終わりよければ全てよしとしよう。

 

 

そのとき、ふと閃いた!

この尊みは、デジたんとの交流に生かせるかもしれない!…なんつって。

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。ふと確かめなければいけないことを思い出したので、ゴルシちゃんに尋ねてみた。

 

「…ねえゴルシちゃん。僕の尻尾って結構動く方だったりする…?」

 

「…秋頃のクマくらい動いてるな」

 

…つまり、かなり活発に動いてる…ってこと、か?

 

「…マジかぁ」

 

マジかぁ…。今まで気づいてなかった。

なんか急に恥ずかしさが込み上がってきた。

 

…いつもより少し暑いベッドの中で、僕は眠りについた。




ウマ娘の尻尾専用のシャンプーとかあるみたいですけど、心配だなぁ…。
デジたん、グルシャンとかしないよね…?

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。