まあそれはそれとして(罪の意識0)。
個人的な好みの話なのですが、短編小説が好きなんですよね。短いからこそ沢山の情報がムダなく隙間なく、されど窮屈にならないよう綺麗に並べられている感じが好きなんです。
……人は自分にないものを求め好くといいます。
つまりこの怪文書読んでる時間はムダだよ!
電気給湯器式のシャワーの蛇口を捻ってから適温になるまで待ってるあの時間と同じくらいムダだよ!
コレで人生楽しめちゃう酔狂なヤツだけ見ろよな!
「鬱憤が溜まっています。どうもゴールドシップです。最近胃薬のありがたみを知りました。ゴールドシップです。芦毛です」
「声のトーンが低いね。大丈夫?」
「アタクシ、とってもストレスが溜まっていることを実感しております。……こないだ、ニンジン食べても、味、しなくてさ。アレ。おかしいな。そう思ってもうひと口食べたら、やっぱり味しなくてさ」
「絶不調じゃないか!?」
「最近寝不足気味で疲れてたってのもあるかもしれねー。けどアタシ怒っていいと思うぜ。だってよ、夜な夜なデジたんとの理想のシチュがうんたらかんたら……と隣でブツブツ呟く声が聞こえてくるんだからな」
「ごめんなさい。妄想が捗りすぎて声に出ちゃったんです。謝罪致します。しかし反省はしません。僕の大いなる愛の発露なのだから、何ら後悔はない」
「あっぶね、今殺すって言いそうになった」
「言ってる言ってる、言っちゃってる」
うぅむ、ゴルシちゃんに殺されてみるのもまた一興。最期に見る顔が美少女とはなかなか風流だ。しかし僕が死ぬときはデジたんと一緒なので、僕は死なない。なぜならデジたんという存在は永遠だから。
「まあともかくよ。アタシのストレスどうこうを抜きにしても、たまにはこうパーっと溜まってるもんを出す機会が必要じゃねーかって思うわけよ」
「確かにねぇ。僕も定期的にデジたんに想いを叫ばないとビッグバンを起こしちゃう体質だから、その気持ち分かるよ」
「おう日本語喋れや」
「デジたんすき!ゴルシちゃんもすき!」
「うーん、まあ及第点。感情がよりシンプルに表れていて読解しやすいから、ギリ日本語だな」
「やったー!ゴルシちゃんすし!」
「すしか。そっか。寿司食いてえなあ」
「……オッケー、僕が悪かった。これ以上会話のIQを下げるといよいよマズいことになりそうだ」
「そうだなぁ。アタシは寿司ネタの中だと暗黒星人握りが好きだぁ」
「そっか。僕は鰤かな」
「ところでよ、どうしてフグの肝握りって流行んねぇんだろーな」
「毒だからね、しょうがないと思うよ」
「……な?オロール、分かるか?疲れるだろ、こういうことやってると」
「なんかゴメン」
しかしデジたんへの愛は止められないものであり、それによって僕の論理思考能力がマイナスになってしまうので、やはり会話をシームレスに成り立たせることはこの上なく至難の技だ。
「疲労回復もアスリートの務め!疲労に関して一家言ある上、たった今から意識の高い系ウマ娘になったゴルシ様が、スピカには休息が必要であると提言するぜ!」
「疲労回復?走ればいいじゃん」
「は?走るから脚に疲れが溜まるんだろーが」
「でも、走ると気持ちいいから、疲れが取れるよ?」
スズカさんなら深く深く頷いてくれるだろう。
「アタシは一般的な話をしてんだよ。つまり、鬱憤晴らしにちょうどいいものとくりゃあ、やっぱカラオケじゃね?って思うわけだ」
「なるほど……!つまり、ウイニングライブのトレーニングってことだ!いいね、それ!俄然やる気が湧いてきた!」
「お前がそれでいいならいいけどよ。常にトレーニングをやっていたいウマ娘ってのもなかなか珍しい……。あ、スズカはずっと走ってたいとか言ってたか。あとデジタルもウマ娘を眺められるならいいと思ってるフシあるな。なんなんだよお前ら、なんなんだよスピカ」
うーん。
ジャンルを問わない選りすぐりの変態の溜まり場?
◆
「デジたんは歌が上手い。そして僕はデジたんが好きだ。では僕がデジたんの歌を間近で聞いた場合どうなると思う?」
「おう。後始末は任せろ。鳥葬でいいか?」
「随分マニアックな葬儀だ。僕の希望としては、遺灰でダイヤモンドを作ってほしいかな」
それをデジたんに一生持っていてほしい。
いや、彼女より先に死ぬつもりはないが。もしもそうなるとしたらって話だ。
「あの、ちょ、えっ?激重感情を平然と吐露していくスタイル……?」
「ああ、デジたん。君への愛、そして君を育んでくれた世界への感謝を音に乗せて、歌います。初っ端からテンション上げていこうよ皆ァ!世界はそれをオォーッ!愛と呼ぶんだぜェーーーッ!」
最初はやはりテンションをあげねば。
サンボマスターの名曲、世界はそれを愛と呼ぶんだぜ。
愛と平和を唄うシンプルなテーマ。
曲調も一見シンプルだが、その実かなり技巧的で、人の心を容易く掴むギターが魅力のひとつである。
って、なぜ僕は解説をしてるんだ。
まあいっか。
「うわぁっ!?いい歌が始まりそうなのに前口上が鳥肌モノだったせいで素直にアガれないっ!?」
気持ちのこもった歌って、やっぱり胸に響くわけですよ。だからこう、叫びたいんですわ、僕の愛を!
「世界じゃそれを♪愛と呼ぶんだぜ♪」
「フゥーッ!普通に上手いなチクショウ!前口上キショかったクセに!」
◆
「お、アタシ入れたヤツか。んじゃちょっくらマイクよこせ。ゴルシ様が最強だってことを教えてやるよ!」
「お、言うねぇ。ちなみに何歌うの?」
「スキャットマン」
「Oh……Crazy……」
「曲のクセ強っ!?デジたんも思わず日本語を忘れちゃってるよ!?」
音楽界の鬼才、スキャットマン・ジョン。
その代表曲と言えるのが、ゴルシちゃんが歌おうとしている、自らの名と音楽スタイルを冠した楽曲、スキャットマンである。
スキャットとは、シャバダバ、ドゥビドゥビ、など、主にジャズで使われることの多い、いわゆるデタラメで即興の発声のことである。ジョンは言葉が詰まったり何度も繰り返してしまう吃音症という病を患っていたものの、それを逆手に取り、意味を持たない発声であるスキャットを早口で歌うという芸当を曲に組み込むことで独特な世界観を演出した、屈指のミュージシャンである。
僕はなぜ解説をしたんだ?
まあそれはともかく。ゴルシちゃんの歌を聴いてみた感想だが、やはりこの黄金船はよく分からない才能をやたらと持っているなぁ、というものであった。
◆
「じゃ、次俺だな。やっぱ歌うならカッケー曲っしょ」
「アンタらしくていいんじゃない?で、何歌うつもりなのかしら?」
「いくぜ……!VOLT-AGEッ」
「アンタ字面で選んだわね。でなきゃそんなふうに必殺技っぽく言わないもの」
「ちっ、ちげーし!」
ああ、こりゃ図星だ。
だが、まあ。彼女の歌は聴いていて心地がいい。
「心繋ぐのは♪そのheartbeat♪」
VOLT-AGEは、日本のロックバンドSuchmosの楽曲である。彼らの歌う曲は、ロック、R&B、ジャズ、ヒップホップなどの様々なジャンルから影響を受けたメロディや、日本の都会の夜、としか形容できないような独特のダークかつ洒落た雰囲気が特徴で、近年の日本の音楽シーンに大きく影響を与えたバンドであると言っても過言ではない。
だから僕はなぜ解説をしてるんだ?
まあそれはともかく。ウオッカというウマ娘は、その厨二じみた態度とは裏腹にかなり可愛らしい声をしているのだが、彼女は上手に声色を変えて、クールな曲を華麗に歌ってみせた。
端的に言おう。そういうの大好きだ。
◆
「これは……。アタシが入れたやつかしら」
「ハナミズキ、か。なんか、捻りがねーな」
「まったくゴルシちゃんったら、何かこう捻りを入れないと気が済まないのかな?」
「アタシに捻りは必要ないわよ。正々堂々とカラオケでも1着になってやるんだから!」
「あぁ、そっか。だから歌いやすい曲持ってきたってわけだ。なあスカーレット、それ逆にセコいんじゃね?」
「そんなつまらない理由で選んでないわよ!歌いたいから歌うの!」
言わずと知れた名曲、ハナミズキ。
平成に最も歌われた曲。平和を願って創られたこの歌は、今や誰も予想しなかったほどに人の心を揺り動かし、原始の時代から続く人の心の共鳴を促進したのである。
……なぜ、解説を。僕は、どうして。
まあいいか。
ふむ、なるほどスカーレットの歌声は実に透き通っていて美しかった。点数も高得点、今のところ暫定1位だ。
◆
「おいスペ。さっきから全然歌わずにひたすら食いもんを頬張ってるからよ。アタシがお前用の曲入れといたから。歌えよホラ」
「ふぇっ!?そ、そんなぁ!まだパフェが10個残ってるのに……!」
「ちなみに何入れたの、ゴルシちゃん?」
「襟裳岬」
「北海道出身だからって北海道の歌を歌わせるってのはどうなのかなぁ?しかも昔の歌謡曲じゃないか!安直すぎる、とかそういうレベルの話ですらない!スペちゃんが歌えるかも分からないのに……」
「歌えますよ!」
「あ、歌えちゃうんだ……」
北海道の岬として、いの一番に名を挙げられることもある、日高南の岬が襟裳岬である。その名を冠した歌では、襟裳岬に春が訪れた時分の景色を唄っており、いつまでも変わることのない、北海道の原風景を「襟裳岬の春は何もない」と表している。
ちなみにこの歌は競馬とも関わりがある。
エリモジョージ、という馬を知っている人はそれなりにいるだろう。襟裳の名を背負い、数奇な運命を辿ったその馬が、1番にゴール板を走り抜けた際に生まれた名実況がある。この歌にちなんで「何もないえりもに春を告げた!」とは、なるほどよく言ったものである。
ん?また解説してしまった。
「スペちゃん、すごいわ……!」
スズカさんェ……。
とりあえず褒めて伸ばす方針なのかな。
「あー……なるほど。皆ハメを外すからツッコミが追いつかないんだ。それで君はいっそボケ側に回ってしまおうと考えたわけだね、ゴルシちゃん」
「おっ?もう1スキャットいっとくか?それとも次は華麗なゴルシちゃんラップがお望みか?ゴルシちゃん、エミネムとか入れちゃうぞ!」
「どうして君はそういうよく分からない才能を持ってるんだ……」
◆
「で、デジたんが……!いつの間にか逝ってる」
「まあ要するに、めちゃラブウマ娘ちゃんのライブを超至近距離で拝んでるようなもんだろ?アタシでもこの結果は予想できたぜ」
「どうやって蘇生しよう……。あっ、そうだ!テイオー!ちょっとライブ用の曲歌ってくれない?いや、とにかく、何かコールをしやすい曲がいいな」
「コールがしやすい曲……?うーん、恋はダービー、とか?」
「そんな感じ!とにかく、お願い!」
勘の悪い人でも分かるだろう。デジたんはこれにて蘇る。
「恋は〜♪ダ〜ビ〜♪」
「ハイッ!ハイッ!」
「む゛っ……胸が〜♪ドキドキ〜♪」
「T!E!I!O!テイオーさん!ひぃっ、最高でしゅッ!」
……うん。
「ヨシ!」
「ヨシ!じゃないが?」
ヨシ!
◆
「あっあっあっあっあっ!ゴボッ」
「オイマズイぞ。デジタルがマイクを手に取った瞬間1人死んだ。口から血を吐いてやがる」
「きっ……!ガハッ、気にしないでくれ。ちょっと過呼吸が過ぎて気道でカマイタチが暴れただけだから」
「お前は何を言ってるんだ?」
「逝ってるんだよ……。ゴフッ」
「えっ、と……。大丈夫ですか?」
「君もヲタクならよくあることだろう。心臓が止まるのに比べれば全く問題ない。さあ、僕が完全に向こうに逝ってしまう前に君の歌を聴かせてくれ」
「は、はぁ……。それでは、不肖アグネスデジタル!マイクを握らせていただきます!」
はぁデジたん、デジたんだ。すごいなぁ。
デジたんが。デジたんだ!
「うまぴょい伝説っ!」
「よっしゃああああああ!」
キタァァァァ!
言わずと知れたあたおか電波ソング!
ちなみに今のは最大級の褒め言葉だ。電波ソングを作れと言われて作れる作曲者はそうそういない。そう、うまぴょい伝説は本物の天才によって創られた曲なのだ。
「いちについて……♪よーい、どんっ♪」
「ウオオオオオオオオッ!」
「うまだっち♪」
「いや、コールうるせぇな。今際の際だってのに無理すんなよ。いややっぱ無理しろ。んでそのまま大人しく寝とけ」
溢れ出るリビドーは止められない!
これで声を上げずにいられるものか!
「風を切って大地蹴って君の中に光灯す♪」
「ドォォォーァキッ!ドキ!ドキ!ドキ!ドキ!ドキ!ドキ!ドキッ!」
『オレの愛馬がッ!』
「そこでハモるなよッ!?!?」
◆
「ゴルシちゃん゛ッ……。のど飴とかない……?」
「うわっ、声キッショ。死にかけの猫みたいな声だな」
「調子に゛乗って゛叫びすぎた゛……」
「オ゛ロールちゃ゛ん、大丈夫……?」
「おい、お前も負けじとヒドイぜ、デジタル」
結局、デジたんと僕は互いにコールをし続けた結果、見事に喉を使い切ってしまった。治るかどうかの不安すら感じる。
ああ、ちなみに1番得点が高かったのはデジたんだった。なんだよあの美声、本当に万能ヲタク娘の称号が似合う。
「ゴールドシップ。結局のところ、貴女、ライブの練習などという名目で皆を連れ出しておりましたが、その練習で2人燃え尽きてしまった件についてはどうすればよいのでしょうか?」
「ほっとけ。そいつらは命を沢山持ってるからいくら死んでも再生するナマモノなんだ」
「まあ、でもこれで……。どこまで声を張れば喉が枯れるか完全に分かった。この経験はライブに活かせる」
「ウマ娘ちゃんが最後に辿り着く、もっとも神聖な場所……。それがライブステージなのです。あたしたちがそこで最高のライブを披露できなかったら、ライブステージ、ひいてはウマ娘ちゃん界隈全てに泥を塗ってしまうことになるッ!そのためにも、この感覚は忘れませんッ……!」
「努力の方向が間違ってるようで間違ってないようで、やっぱり間違ってるんだよなぁお前ら……」
「褒め言葉として受け取るよ……!」
まだまだ僕の競走ウマ娘生活は始まったばかりだ。
学びは大切にせねば。
……それと、喉も。
キ ャ ラ ソ ン 歌 え よ
テイオーしか歌ってないじゃないか!
……は?
デジたんのキャラソンがないんだから、しょうがないじゃあないですか。
カラオケの話でも書きたいなーと、思うわけです。
しかし、ウマ娘たちはどんな曲を歌うのだろうか、などと考えているうちに、ね……。
ウチのが変な電波を受信し始めまして……()
電波といえば、電波ソングのうまぴょい伝説。
作曲者様の他楽曲も名曲揃いですので、まだ聴いていない方はぜひとも聴いてください。聴け(面倒くさいヲタクムーブ)
『heavens divide』オススメです。