デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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後先考えずに書き始めたこの長ったらしい怪文書。

何となくですが、アニメの内容にも触れて書いていこうかなーと考えていたり。

ゴルシちゃんがなんかまともに見えるのはそのせいです。それ以外に理由なんてありゃしませんよ。絶対。


F.R.I.E.N.D.S.

食堂にて。

 

最近はデジたんと推しについて語らうのがルーチンと化した僕は今、先日仕入れたウオスカのネタを彼女に話している。

 

「ふぉぉ…上物の尊みをオカズに食べる白米のなんたる美味なことか…無理…しゅきぃ…語彙力がどんどん失われていくぅ…!」

 

ああ、尊みを摂取してにへらっとふやけるデジたんの口元のなんたる美しいことか。

 

「不良ぶっているけど中身は純情…優等生ぶっているけど本当は誰よりも負けず嫌い…そんな二人が互いに本当の自分を見せる瞬間…いいよね…!」

 

「ええ、ええ…ッ!まったく…!なんて良いネタを仕入れてきてくれたんですか…ッ!」

 

そう言って感涙にむせぶデジたん。目元でキラリと光る粒がただでさえ可愛いデジたんをさらなる高次元へと押し上げている。

守りたい、この笑顔。そのためなら僕はなんだってできる。

 

と、そのとき、誰かがいがみ合うような声が聞こえてきた。

 

「…あ、噂をすれば。二人が来たみたい」

 

「ッハ!?あの子たちが、その……?っ話に聞いた通りの最高に可愛い子たちじゃないですか、ヤダ〜ッ!」

 

 

 

「…ちょっと!何アタシのマネしてんのよ!」

 

「たまたまメニューが被っただけだろ?それに俺はお前と違ってヨーグルトも食べるんだ!そっちこそ、俺のマネすんなよ!」

 

ウオッカとスカーレット。

食べるものが被ったのが原因で言い争っているようだ。

…なんでそんな可愛い理由でケンカできるんだ、あの二人。

 

「ほぁぁ!?何ですか、何なんですかあれ!?あんなに言っておきながら、二人とも同じテーブルに座ってるぅ…今月の尊い大賞がもう決まりましたよコレェ…」

 

デジたんが僕の一番言いたいこと以外の言いたいことをほとんど言ってくれる。さすがはオタクの鑑。

 

「お互い、心の奥底に相手への信頼があってこそ築かれる関係性。…そしてそれを可愛い顔で眺めるデジたん…。世界って美しいよね…」

 

「ええ、二文目以外には完全同意です…!もう、ホントに、っあたしの目に映していいのかってくらい神聖で…ッ!くぅっ…美しい…!」

 

「免疫をつけておいて良かった…じゃなきゃ倒れてたかも…」

 

「あたしは、ダメかも、しれません…何かあったら骨は拾わなくて結構です…」

 

デジたんはもうそろそろ限界のようだ。

…本当に、免疫をつけておいてよかった。今の僕ならよほどの不意打ちでもない限りは耐えられる。同じ失敗はしない。むしろ僕が倒れたデジたんを運んであげたい。

 

 

「いい加減にしろよ、スカーレット!」

 

「っちょ、急に立ち上がったら危な……きゃあっっ!!」

 

「んあっ!?」

 

おっと、ウオッカが立ち上がったはずみにヨーグルトの器をこぼして……というより、打ち上げてしまった。器はスカーレットの頭上までくるくると宙を舞ってゆき、そして、その白くてとろみのある中身が彼女に……かかっ、て……

 

「ちょっと、もう…!やだ、中まで入ってる…!」

 

ぶふっ、という音が立て続けに二回鳴った。デジたん、僕の順に鼻の血管が破れた音である。次いで、押さえ付けられるような呻き声。

 

「ううゔゔ…!だめよデジたん…いくらあたしの心が汚いからって、それ以上は……ぅぅッ…!」

 

「大丈夫、多分僕の方が心汚いから…!」

 

さすがにこれはまずい。ヨーグルトまみれのスカーレット……を見て、興奮したデジたんが出した鼻血。それがデジたんの体内を巡りに巡って今、その整った鼻から垂れているものなんだと考えると、もう……!

 

「それは、ちょっと、…不意打ちすぎる…!」

 

免疫がついた、なんて…おこがましいにも程があった。デジたんの尊さが無限大であることくらいとうの昔から分かっていたはずなのに!

これだからオタクはやめられないんだよなぁ…!

 

 

…昼食は大分鉄の風味がしたが、それでもこれまでトレセン学園で食べた食事の中で一、二を争う美味しさだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「徳、積みましょう」

 

食堂を出たあと、デジたんは開口一番にそう言った。

 

「先程、我々は大罪を犯しました。キリスト様も助走をつけて殴るほどの大罪をっ!……実際のウマ娘ちゃんに対してそういうことを考えるのはアウト!限りなくデッドに近いアウトです!…ウマ娘ちゃん同士ならまだしも、あれは………ダメですっ!」

 

「僕は鼻血を出すデジたんに萌えて自分も鼻血を出したんだけど、それもアウトかな?」

 

「え゛ぇっ…?ちょ、それは……ア、アウトっていうか……というか、なんでそんなとんでもないことを言ってるのに目が爛々と輝いてるんですかっ!?」

 

「そりゃあ、デジたんという光を見ているからね」

 

「…あたしは他のウマ娘ちゃんのような神聖な存在じゃないって何度も言ってるじゃないですか!?ダメですよ、推しちゃぁ!…とにかくっ!罪を拭うためにも、徳!積みましょう!」

 

デジたんは存在しているだけで徳なのに。

にしても…徳、ねぇ…。

 

「…徳を積むって、具体的に何をするつもりなの?」

 

「そりゃもう、世間様に善行の限りを尽くすに決まってるじゃないですかッ!あとは、推しのために貢いだり、推しのために貢いだり、貢いだり貢いだりとかっ!」

 

めちゃくちゃ貢ぎたがってるじゃないか。

でも、…見てみたいな。グッズを買って萌えるデジたん。うん、絶対可愛い。

 

「じゃあさ……その、次の休み…っ一緒に買い物とか、行かないっ?」

 

「ヒョエっ…?あたしと、ですか…?」

 

「うん。一緒にウマ娘グッズを見たり、ウイニングライブ鑑賞用の道具を買ったりしたいんだ。同志として!…ダメかな?」

 

「同志…ッ。いい響きですねぇ…!もちろん!断る理由などありません!むしろ、ぜひお願いしますともッ!」

 

 

 

こうして、休日にデジたんとお出かけできることが決まった。

というか、実質デートでは?これ?うん、デートだ。

デジたんとショッピングデートだ。最高すぎる。

 

 

 

 

 

 

 

 

待ちに待った休日の朝。

 

外では小鳥達が歌い、開いた窓からは暖かな春の朝日が差している。

 

今日はいい日だ。

 

「ある詩人は云った。愛してさえいれば、それは無限を意味する、と。」

 

「どうした急に」

 

「愛だよ、ゴルシちゃん。愛。それさえあれば、限界なんて超えられる。そして、愛する資格は誰にだってある。だから僕はウマ娘を愛して、愛し続ける」

 

「なるほどなあ」

 

何人たりとも、ウマ娘を愛することを咎めることはできない。

そう。この世界は、愛に満ち満ちている。

 

「そして、ウマ娘を愛し、そして愛されるデジたんの存在とは、すなわち愛そのもの!」

 

「おっ、そうだな」

 

世界を包む愛そのものである彼女は、つまるところやっぱり女神なのだ。

 

「ところでゴルシちゃん。さっきから返事が適当じゃない?」

 

「おっほほ…そんなことありませんわ。ではあたくし、チームの方に顔を出すのでこれにて失礼しますわ!ご機嫌よう!」

 

そして、彼女はそのまま窓から飛び降りた。そんなに急いでいたのだろうか。

 

「…っと、僕もそろそろ行こう」

 

デジたんとの待ち合わせに遅れるわけにはいかない。といっても、同じ屋根の下に住んでいるので待ち合わせとは言い難いが。

 

しかし言葉の響きというのは大事だ。僕らはこれからデートに行くわけだから、たとえ寮の玄関で合流するだけだとしても待ち合わせ、と言った方が雰囲気が出るだろう。

 

準備もできたし、行くか。もちろん、ドアから。

…ああ、待ちきれない。

 

一刻も早く会いたい、という思いを抱きながら、僕は早足で歩き出した。たったった…と、軽い足音を寮の廊下に響かせながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

玄関に着いたが、まだ彼女の姿はなかった。

 

履き替えた靴で床を鳴らしながら周りを見ると、ジャージを着たウマ娘の姿がちらほらうかがえる。

 

今日のような休日もトレーニングに費やす彼女達の瞳には、決して消えそうにない闘志の炎が見える。

 

休日にトレーニングか…。僕もトレーニングは大好きなので、ぜひともやりたいとは思っているが、最近はデジたんとトレーニングの天秤が前者の方に傾きすぎているので難しいところだ。左右平行になるまで…二年くらいかかるかもしれない。

…ちっちゃいデジたんが、揺れ動く天秤の一方の上に乗ってあわあわとバランスをとろうとするイメージが浮かんできた。可愛い。

 

僕がくだらないことを考えている間にも、真剣な表情で靴紐を結ぶ子、「よしっ!」と、気合を声に出す子、そして他の子を眺めながらハァハァ言っている子……って、あれは。

 

「…お待たせしました、オロールちゃん…!もう少しこの光景を眺めていたいところですが、時間は待ってはくれませんからねっ、早速行きましょうッ!」

 

案の定デジたん……なのだが。

 

「…ッ!…う、ん…行こう…」

 

これはもしや犯罪では?オロールは訝しんだ。

 

…というのも、彼女が着ているのは私服なのだ。それも、前世で何度も見たあれ。

 

ピンクやライトブルーなどの明るい色を基調とし、ところどころに可愛らしい図柄や虹色の装飾、彼女らしい「UMA」の文字などがあしらわれている服で、全体的に幼い印象を強く受ける。

 

ところで、デジたんの身長は143cm。ちなみに小学生五年生女子の平均身長とほぼ同じだったりする。

 

これはやっぱり犯罪だ。オロールは確信した。

…まあ、僕がいやらしいオッサンの姿などであった場合だが。今の僕は彼女と同じウマ娘。…少なくともガワは。

だから罪には問われない。ウマ娘に生まれてよかった。

 

それと、僕の私服だが、下はネイビーのジーンズ、上は白の無地にライトブラウンのカーディガンといった、落ち着いた春らしさがあるものになっている。これくらいシンプルで大衆的であれば目立つことはないだろう。デジたんを引き立てるのが僕の使命であるからして、目立たないことは重要だ。

…もっとも、彼女が例の女児コーデを着ている時点でその使命は達成されたようなものだが。

 

「お手洗いは済ませましたか?神様に感謝のお祈りは?並べられたウマ娘ちゃんグッズの前でガタガタ感動に打ち震える心の準備はオーケーですか?ではッ、出発ですッ!」

 

拳を握りながらそう言うデジたん。なんだこのようぢょ。めちゃくちゃ可愛いな。

 

そんな内心を表すようなふわりとした足取りで、僕は彼女とともに歩き出した。

 

「それで…最初はどこに行くの?」

 

「もちろん……コンビニですッ!!」

 

もちろん、と言うには少し珍しい選択肢を選んできたな。

 

「実は今、ウマ娘ちゃんの限定コラボチョコレートが販売されているんです!これを全種類コンプしないことがあろうか?いやっ、ないッ!というわけで、最寄駅構内のコンビニへ向かいましょう!」

 

「全種類…って、多くない?帰りに買うのじゃダメなの?」

 

「そりゃそうですよ!今日は己の徳が試されますからね…。ウマ娘ちゃんグッズの入手、特にぱかプチなんかはかなり徳が必要でしょうから。先んじてチョコを買うことで徳を蓄積し、さらには昼食代の節約にも繋がって一石二鳥ッ!というわけです!」

 

…徳云々はいいとして。昼食代の節約?デジたんはもしかして昼にチョコを食べるつもりなのか?

 

「ねえ、まさか、昼ご飯をチョコで済ませようとしてる?」

 

「あっ!つい一人で推し活するときの感覚でものを言ってました。オロールちゃんは自分の好きなものを召し上がってください!あたしはそれを見ながらチョコを食べますので!」

 

…いやいやいや…!

 

「いやいやいやいやいやッ!!ダメ、絶対!!ご飯はちゃんと食べないと健康によくない!それに、せっかく二人で来たんだし、どこかへ食べに行こうよ!節約したいなら僕が持つ!だからチョコは帰りに買おうっ!」

 

僕の最推しがとんでもなく不健康な昼食をとろうとしている…!そんなことは僕の目が黒いうちはさせない!まあ黒どころか左右で色違うんですけど。

とにかく。デジたんは押しに弱い。だからこのまま押し切ってきちんとした食事を食べてもらおう。

 

「いっ、いえいえッ!そんな、奢ってもらうなんてとんでもないッ!…それに、あたしは、そもそも…デビューするかどうかすら迷ってるようなどうしようもないオタクですから、健康がどうとかは別に____」

 

「……ッ!…っレースがどうとかは関係なく、僕が今デジたんにちゃんとしたものを食べてほしい、一緒に食事をしたいって思ってるんだ!僕のためだと思って…ね?僕を幸せな気持ちにさせることで徳を積んだことにもなるし…!頼むよっ!」

 

「ッッ!分かりましたッ!オロールちゃんのためならば!喜んでッ!そうしましょう!あっ、もちろんお金は自分で払いますよッ!」

 

よし、勝った。

今回の決め手は、僕のためだと思って…のあたりかな。デジたんはウマ娘に弱いから、非常に効果的だったようだ。これからも使おう、これ。多分一生対策されることないだろうし。

 

…さて、そういえば、彼女はどうも聞き捨てならないことを言ってくれたな。

 

 

「…ねえ、デジたん。さっき、デビューするかどうかすら迷ってる…って言ってたよね?」

 

「ヘッ…?あの、…それは…てか、顔がちょっと怖くなってませんか…?」

 

「…まあ、今は詳しくは聞かないよ。…この後、昼食べるときにみっちり聞かせてもらうから」

 

「ひぁっ…あっと、その…ハイ、ワカリマシタ」

 

「よし。…じゃあ、そろそろ駅に行こうか。徳積みながら」

 

「そう…ですねっ。徳積みながら」

 

こうして、デジたんのアレな部分がいろいろ分かったところで、僕らの休日が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

駅への道中にて。

 

「あっ…!重そうな荷物を持ったおばあさんが…!」

 

「…お助けしましょうッ!」

 

もちろん目的地まで付き添ったので、結構な時間をとられた。

 

 

 

駅構内のコンビニにて。

 

「お釣りがちょうど百円だったけど、とりあえず募金したよ!」

 

「おお!なんかよく分かんないけどいい感じじゃないですか!」

 

 

 

 

 

駅の構内図前にて。

 

「あの方は…外国人でしょうか?何やら困ってるみたいですが…ってあれ?オロールちゃん?一体どこへ…」

 

「Hello,sir. Do you need any help? 」

 

この後道案内をしてあげたので、もちろん乗る電車は予定より何本も遅れた。

 

 

 

ホームにて。

 

「結構徳は積めたんじゃないかな。時間も積まれたけど」

 

「そうですね…って、あの人…大丈夫でしょうか?なんかフラフラしているような…」

 

「…疾ッ!」

 

「あっ、オロールちゃん!?…って!あの人、線路に飛び降り……!…かけて、オロールちゃんにキャッチされてる…」

 

「…んなっ、何しやがる…!離せェ…俺は助けられたくなんてなか____」

 

「うるさァい!そっちの事情なんて知りません!そんなことをしてる暇があったらウマ娘を応援し……じゃなくて、…僕が助けたかったから助けただけです!ただそれだけ!それじゃ、時間も押してるので僕はもう行きますから!」

 

 

…こんな具合で、人助けやらなにやらをやっていたら昼までの時間は潰れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ふぅ、なんだか疲れたなぁ」

 

「オロールちゃん、あっちこっちに走り回ってましたもんね。」

 

現在の時刻は12時半ごろ。良さげな喫茶店を見つけた僕らは、そこでパスタをつついている。

 

「というか、今日はいろいろと濃かった。徳を積むとか以前に、あれは見過ごせない…みたいなのが多かった」

 

「飛び降りようとしてた人とかいましたもんねぇ…」

 

おばあさんの荷物を持ってあげたり、外国人に道を教えてあげたり、ダッシュで飛び降りを阻止したり…なんで僕、今日は休日のはずなのにパワーと賢さとスピードのトレーニングをしてるんだ。

 

「こういうのって見返りを求めるものじゃないけどさ…さすがにここまでやったら、なんか良いことがある気がするんだよね…」

 

「情けは人の為ならず、といいますし、きっといつか何かありますよ」

 

そう言ってデジたんは僕に天使のような微笑みを向けた。あっ、いい事ってこれかな。うん、あの働き分の報酬を軽く超えるものを拝めた。

 

「じゃ、本題に入ろっか……」

 

「いっ、いやー!それにしても、ここのご飯は美味しいですねっ!このにんじんなんか、とっても甘くて…」

 

「めちゃくちゃ話逸らそうとするじゃん。でも僕、ものを忘れることがないからね。…しっかり聞かせてもらうよ」

 

デビューするかどうかすら迷っている。

 

…前世でも似たようなセリフを聞いたことはある。

キャラストーリーなんかは、そんな考えを抱くデジたんをレースに出走させるためにトレーナーが奔走する…みたいな話だったし。

 

一生推す側でありたい、そう思うくらい彼女は筋金入りのウマ娘オタクで。分かってはいても、その言葉を聞いたときにどうしても我慢できなくなるくらい僕はデジたんオタクで、彼女の走る姿が見たいと思っている。

 

「うぅ…たしかにあたしは初め、ウマ娘ちゃんを特等席で見たい、一緒に走りたいって思ったからトレセン学園に入りました。…でも、いざ通ってみるとあっちにもこっちにも尊い子ばっかり。そういうの見てると、こんな不純な動機で入学したあたしなんかがここにいていいのか、って思うわけですよ…。それに、走らずとも、ウマ娘ちゃんを応援できさえすれば、あたしは満足ですし…」

 

「…」

 

たとえ理由がなんであれ、トレセン学園に入れる彼女の実力は確かなものだし、不純な動機といったら僕もだろう。

それと…、走ってほしい理由は、もう一つ。

 

「…ねえ、デジたん。僕は君のことを崇めるレベルで好きなんだけど、デジたんは僕をどう思ってるの?」

 

「へっ!?…えっと、それは…オロールちゃんは思わず推したくなる可愛くてカッコいいウマ娘ちゃんで…しかし、こんなこと言うのもおこがましいのですが…同じ業を背負った同志!そう、思ってます」

 

…彼女の口からそういうことを言われるとさすがに恥ずかしいな。だが、つまりだ。

 

「僕らは互いのことを好ましく思ってるわけだ。で、こうやって一緒にお出かけしたりする…こんなこと言うのもおこがましいんだけど、こういう関係ってさ…なんて言うと思う?」

 

「…一般的には…その、トモダチ…とか、デスカネ」

 

「…うん、はっきり言おう。僕らは友達だ。…よね?」

 

「…ッ!ええ、それは、もちろん…そういうことになりますね…」

 

こういうのには僕も彼女も慣れてない。だから思わず言葉が詰まる。

 

…最推しに、友達だ、なんて言う日がくるなんて。思ってもみなかった。

しかし、前世で彼女を推した長い月日よりも、実際に会ってからの数日間の方がはるかに楽しく、そして…憶えている。

 

「僕がデジたんの走っているところを見たいって思ってる。…友達って、走る理由にならないかな?」

 

「…走りたくないわけではありません。だから…あたし、デビューくらいはやってみます。…そうと決まれば、トレーニングにももっと気合を入れていかなきゃいけませんねっ!」

 

 

彼女の目には、今までよりも多くの輝きが灯っていた。

 

 

「やった…!それで、いつごろデビューするつもりなの?」

 

「うーん…まず入るチームを決めて、芝とダートをどう走るかとかも考えて…それと、体が本格化を迎えてからにする予定なので、もしかしたら来年以降になるかも…」

 

「おお…!楽しみに待ってるよ!」

 

デジたんがデビューを決意してくれたようだ。もしかするとこれはまだ見ぬデジたんのトレーナーの役目だったかもしれないが、我慢できなかったから仕方ないね、うん。

 

「じゃっ、じゃあ……友人らしく、来週の休みもまた一緒にお出かけしますかー…なんて…あはは〜っ…」

 

「ヒュッ…あ、うん…イイネ…」

 

 

心なしか、さっきよりも彼女との間が縮まった気がする。

 

…照れ隠しの笑いが非常に尊かったのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

パスタを食べ終えた頃。

 

「ところで、とっ、友達が最推しっていうのはいかがなものかと思いますよっ。この際推し変を……」

 

「僕はデジたんが最推し。この先ずっと変わることないから。そこは絶対譲らないから」

 

「ッフゥ〜…!そ、そうですか…。分かりました…いえ、納得はしてませんけどねっ!」

 

「…可愛いなぁ」

 

 

言うまでもなく!少し顔を赤らめてムッとした彼女は非常に尊かった!





突然詩人の言葉を引用するヤベー奴が主人公の怪文書です。



自己啓発、人生を変えるだなんて銘打たれた昔の人達の言葉ばかりに気を取られて、自分の人生を歩けなくなる人間にはなりたくない。


それはそれとして哲学書とか詩集とかの名言をやたらめったら引用したらなんか頭良さそうだし日頃からどんどんやっていきたいです!

でもああいう本ってなんか難しそうだから、ネットでテキトーに名言調べてそれを言うことにしよっと!

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