デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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こんなネットの場末に図々しく居座ってる怪文の羅列を、わざわざ覗きに来てくださる「本物」の戦士の皆様によって、コミケに関する知見がほんの少し深まりました。ありがとうございます(五体投地)



スワンプマンの手招き

「クリエーターとして、やるべきことは、情報の発信……。というわけで〜……。いきましょうか」

 

「どこへ?」

 

「決まってるじゃないですか同志よ!目指すはっ、そう!即売会っ!」

 

「こないだ日本最大の即売会に行ったばかりだよ。で、最終的にヘトヘトになって帰ってきた。それで帰りは仕方なく電車を使ったろ。何時間も戦場を渡り歩いて、スピードもスタミナもパワーも根性も賢さも全部鍛えられたばかりなのに」

 

「そもさん!鍛え上げられたその力を発揮する場所はっ?」

 

「せっぱ。そりゃ、もちろん……」

 

「答えは決まってます!次の、その次の!そのまた次の即売会!あたしは止まらないのでッ!オロールちゃんも、止まるんじゃねぇぞ……!」

 

「レースだよ、デジたん。レースで力出そうよ」

 

トレセンに通っている以上、レースに全力を注がねばならない。のだが、デジたんは趣味とレースを両立させるのがうまいから、そういう生き方ができるのかもしれない。

 

「……何でニヤニヤしてるの?ゴルシちゃん」

 

「いや、なぁ。スピカのクソボケモンスターことオロールがツッコミに回らざるを得ない状況があるなんてよ。恐ろしすぎて一周回って笑えてくるんだわ」

 

大分前から、達観したような目がデフォルトの表情に設定されているゴルシちゃんは、その笑いを誤魔化すように朝食のにんじんパンを口にかき込んだ。

 

「一旦落ち着こう、デジたん。君は多分、まだあの戦場の熱気に当てられてるんだ」

 

「えぇ、その通りですとも!だがそれでいい!まだこの熱気に浸っていたいっ!」

 

ただでさえここ最近は蒸し暑くて嫌になるのに、デジたんがトレセンの平均気温を引き上げるから、余計に暑苦しい。これはデジたんの放つ熱気なんだと思うと、僕もアツくなるし。もう脳みそは地獄蒸し状態だ。日頃から魂の発する欲求と情動で生命を繋いでいる僕でなければ死んでいるだろう。

 

「なぁ、マジで暑苦しいぜお前。さすがに頭冷やせよな」

 

「君が趣味に全力を注ぐ姿は見ていて心地いいけど、うん、暑い、文字通り。まったくゴルシちゃんに同感だ。一旦クールダウンしないと」

 

「いやぁぁ〜!今しかできないことをあたしはやるんだぁ!手始めにトレセンで同人誌イベントを開催しましょうかっ!えぇ!あたしはやると言ったらやるウマ娘ですから!」

 

「マズいデジたんが暴走してる!」

 

「……だが、まぁ、普段からこんなもんと言やぁこんなもんだな。そう思うと、アレ?あんまし事態は深刻じゃねー感じがする」

 

「いやいやいや!だって、ほら!見てよ!デジたんの目!完全にキマっちゃってるよ!それに体から蒸気が噴き出てる!それだのに、普段からあんな感じなわけ……!わけ……。ん?言われてみれば、いつも通りな気も……」

 

「だろ?だからよ、別にほっといてもいいんじゃね?」

 

どう見てもいつも通りの様子であるデジたんは、数秒間何かを思案し、それからおもむろに駆け出した。

 

「よぉし!プランは大体こんな感じで……!生徒会長様に特攻してイベント企画を通すっ!うおおおお!」

 

「ダメださすがに止めないとマズいッ!」

 

まったく。今日の君は本当にじゃじゃウマ娘だな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああああああああああああああ!」

 

ああああああああ!

 

「あああ!あーー!あーー!」

 

あああああ!

 

……。

 

ふーぅ。スッとしたぜ。

どうしようもなく叫びたいとき、この大樹のウロはなかなか便利だ。どんな思いでも受け止めてくれる。

例えば、デジたんに会えなくなった僕の思いとか。

 

「クソッ、ゴールドシップの野郎めェ……!」

 

落ち着けなくなったデジたんをどうにかしようと、僕たちはしばらくいろいろ試みた。そうしたら、あの芦毛の120億強盗犯は、あろうことか!

 

「何が『デジタルのやつ、お前が側にいるときだけテンション爆発してるみてぇだぞ。たまには距離を取ってみりゃいいじゃねーか』だよあのボンクラ……!」

 

なまじ反論ができないので、余計に苦しい。だが、僕とデジたんが離れ離れになることを是とするのだけはいただけない。

 

「フシューッ……!フシューッ!」

 

荒い呼吸は、蒸気となって僕の目にも映る。

視界が歪む。もはや慣れすら感じる感覚だ。

 

僕は完全にキマってる。

 

「あんにゃろう……!次に会ったら尻尾引っこ抜いて筆にして書道パフォーマンスしてやる!それからあのヘッドギアの耳当て部分をピロシキ製に改造してやる!それから寝る前にひたすら愛の言葉を耳元で囁いてやるからなァ……!」

 

首、とくにうなじのあたりを洗って待っとけよ。添い寝しながらたっぷり吸ってやるからなぁ、あの黄金船野郎めが。

 

「くっそぉ、かえって暑い……!」

 

何が問題かって、根本的な原因がおそらく精神面にあるから、いくら冷房の効いた部屋で涼もうが、決して暑さが収まらないことだ。

 

心の放熱をしなければいけない。

でも、どうやろうか。

 

とりあえず、あえてガンギマリ度を上昇させ、オーバーフローさせることで逆に冷静になれる気がするので、限界までデジたん成分を補給したいところだが、残念ながらそれは難しい。なぜなら彼女は今、ゴルシちゃんのもとで電気工事士資格の勉強に励んでいる。理由は分からない。

 

とにかく、ゴルシちゃんが厄介だ。僕が一度デジたんを拐おうと思って近づいたところ、エグゾーストゴルシちゃん号とかいう、さながらミニガンのような形状をした魔改造水鉄砲のようなものをぶっ放された。その水もただの水ではなく、パクチーの粉末が大量に混ぜ込んであるらしく、それはもう僕の鼻をひんまげた。しまいにはパクチーそのものを投げつけてきやがった。味は嫌いじゃないが、あの臭いが鼻にずっと残るのは勘弁だ。

 

今日は朝から調子がイマイチかも。

スピカのボケ筆頭といえば僕だったはずなのに、今朝はデジたん、今はゴルシちゃんにその座を奪われている。

取り戻さなければ。いや、むしろ不名誉な称号を手放せたから良いのか?

ああ、もう。頭が回らない。

 

「なんとかしなきゃ……」

 

とやかくいっても、全身が火照ってしょうがない。

なんだかエ○同人みたいなセリフだが、原因が主としてデジたんにあるので、あながち間違ってない。

 

ん?同人……。同人誌……。

 

「そうだ!学校で同人誌イベントをやろう!」

 

なんて名案なんだ!作業に勤しめば冷静になれるし、なにより面白い!デジたんも喜んでくれる!

 

「よっし!とりあえず生徒会に特攻するぞーッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおぉ、ッ!?おわぁっ!?いだっ!?」

 

「きゃっ!?」

 

ウマ娘が走行中に他人とぶつかるなんて。

曲がり角から始まる運命の出会い……。

などと茶化していられない。いささか危険すぎる。そういう理性はまだ僕にも残っていたらしく、一応徐行をしていたので、見たところ衝突相手に怪我はないらしい。

 

まあたとえぶつかったところで、この学園内で出会うのは、そもそも頑丈なウマ娘、その膂力から放たれる破滅的キックを顔面に喰らっても平気なトレーナー、パルクールがめちゃくちゃうまいトレーナー、覆面の調達や回線ジャックなど、犯罪スレスレの行為を平然とやってのけるトレーナー、絶対カタギじゃないくせに誓って殺しはやってませんとか言いそうなトレーナー、常に発光してるモルモットレーナー、短距離のスペシャリストことタイキシャトルの全力疾走になぜか追いつける事務員さんくらいなので、実は大して問題ないのである。

 

「すみません!大丈夫ですか!?」

 

とはいえ、皆不死身ではない。怪我も病気もする。はず。うちのトレーナーなどは頑丈すぎるので、そもそも赤い血が流れているかどうか疑わしい、

 

まあ、特にウマ娘はアスリートであるがゆえにデリケートな存在だ。万が一にも僕のせいで怪我などされてしまったらマズい。デジたんに合わせる顔もない。これじゃヲタを名乗れないな、猛省せねば。

 

「え、えぇ、大丈夫……。って、あなたは……」

 

「あ、ドーベルさんじゃないですか!いや、すみません、ホント。ちょっとばかし心が急いでまして」

 

そして、僕が出会ったのは、クール系ツンデレでお馴染みのメジロドーベルさんであった。いやぁ、相変わらずお美しい。ウチのメジロとは大違いだ。

 

「いえ、大丈夫よ。アタシも注意が足りなかった。ごめんなさい」

 

互いに無事であると見るやいなや、どこかへ行ってしまおうとするドーベルさん。

 

「あぁ、ちょっと待って!せっかくなのでお話ししたいことがありまして。ちょっとだけでいいんです、時間あります?」

 

「え?えぇ、構わないわよ。でも、あなたこそ、急ぎの用があるようだったけど……」

 

「急いでるというか。ちょっと気持ちが昂っていたというか。いずれにせよ緊急性はないので。今はドーベルさんとお話しがしたいんです。その話ってのが、他でもない、いわゆる同人誌とか、推し活とか、そういうテーマに関するものなんですけども……」

 

「ンン゛ッッッ!?!?」

 

ガーン。と音が聞こえてきそうなほどの、見事なショッキングフェイス。さながら彼女が好む少女漫画のような。

 

「……ハッ!?あっ、えっ、っと!その!ごめんなさい、くしゃみを我慢したの。本当よ。何もやましいことなんかないから」

 

「そうですか。まあそういうこともありますよね。とにかく、話したいことが!」

 

「な、なにかな?」

 

「僕、思うんです。このトレセン学園で本の販売会をやったら面白いんじゃないかと!どう思います!?」

 

「どう、って。それだけ聞いても、まだ何とも。け、けど、そうね。確かに、トレセン学園は生徒も多いし、古今東西のお宝が集まる可能性を鑑みれば、なかなか魅力的な企画かも……。あっ!?い、今のは独り言!できれば聞かなかったことに……!」

 

「ですよねぇ!いやぁ、さすがドーベルさんだ、何もかも分かってらっしゃる!学園内のヲタウマ娘ちゃんたちが気軽に創作の成果を発表できるような場を設けられたらどんなに素敵なことか!もちろんソッチ系以外の文学作品も取り扱えるようにして……。そうだ、各々が本を持ち寄って開くバザーなんかも並行して開催できたら最高じゃないか!」

 

「素晴らしいアイデアだと思う。けど、どうしてアタシにその話を……」

 

「決まってるじゃないですか。あなたが『同志』だから。それだけですよ」

 

「どッッッ!?!?」

 

何を今更赤面することがあろうか。自分の趣味くらい大っぴらにしたって何も困ることはない。それに、彼女の密かな趣味は、実のところ一定数の人が勘づいている。

 

学園内で甘酸っぱいやりとりを見かけるたびに、メモ帳に何やら書き留め、乙女の微笑みを浮かべる彼女を、僕は飽きるほど見てきた。もちろん、僕以外にも、少なくともメジロ家の者達は分かっているだろう。

アイデア帳をスマホで作ればいいのに。手段がアナログだから、なまじ目を引く。

 

「同志!そうよね!このトレセン学園でトゥインクルシリーズに挑む同志よね!」

 

「いや、同志(ヲタ友)って意味ですが」

 

盃を交わした魂の同志(引くに引けないヲタク仲間)!?!?」

 

「そこまで言ってないですよ」

 

彼女の発言が、同志であることを証明しているような気がする。

 

「とにかく、僕、生徒会に掛け合って企画通すんで。それから少し手伝っていただきたいんです。あなただって、このイベントには少なからず魅力を感じているでしょう?ドーベルさんは優しい人ですし。お願いする立場でこんなことを言うのもなんですが、ぜひ手を貸していただきたいんです」

 

「それくらいなら、構わないけど……」

 

「ドーベルさんのブースも作りましょうか!?メジロのご令嬢直筆の作品ともなれば飛ぶように売れること間違いなしですよ!」

 

「……えっと。アタシが時々絵や漫画を描いてることは、できれば秘密にしてほしい、かも」

 

「そうですか。でも、いつかドーベルさんの作品を皆が読んで、いろんな感動が生まれる、そういう時が来るといいですね。だって、せっかくドーベルさんの心の景色を絵や言葉として現実に表したんです。伝達ツールの形をなしている以上、他の誰かに知ってもらうことこそが大切なんじゃないでしょうか」

 

「タンスの中にしまっておくだけじゃダメってこと?」

 

「もちろん、最終的に決めるのはドーベルさんですけど。先に言っておくと、僕は人並みに自己中なヲタクなので、手の届く範囲にオイシそうな創作品があると味見したくてたまらないんですよ。ドーベルさんがあと一歩踏み出すだけで救われる命だってあるんです」

 

「……考えてみる」

 

「はい、考えてください。なんたって、後戻りできませんからね」

 

世界よ、刮目せよ。

こうして人は沼に落ちていくのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「たのもー!」

 

「ん……?あぁ、久しぶりだね、オロールフリゲート。元気が有り余っているらしいが、生徒会の門戸を叩くときはもう少し静かにお願いできるかな?」

 

「あ、スミマセン」

 

「うむ。反躬自省の心意気は大切だ。いや、しかし、ふふふ。こうして堂々とした態度のまま生徒会室を訪れる娘はなかなかいないから、私も少し和ませてもらったよ」

 

というわけで、久々にやってきた生徒会室。

会長様が快く出迎えてくれた。

 

「せっかく来たのだから、ゆっくりしていくといい。今日は生徒会も少々暇を持て余していてね。エアグルーヴなど、てんとう虫を眺めに花壇へ出向いたほどだ。というわけで、よければお茶でも飲むかい?」

 

「はい、いただきます」

 

見たところ、この場にいるのは会長、それと……。

あ、奥の方でブライアンさんがあくびをしている。ありゃあ相当に退屈しているらしい。

 

会長自らお茶の準備をするのだが、なんともいえない覇者のオーラとミスマッチで、少し面白い。

彼女は手を止めぬままに、世間話のようなものを始めた。

 

「成績優秀、将来有望、まさしく理想の道を征く者だね、君は。私はどうすべきだろう。時折報告される奇行に関しては大目に見るべきか」

 

「あー……。そうしていただけると助かります」

 

「他人に迷惑はかけないように。それで問題はない。……っと、お茶ができたよ。アイスティーではないから、少し暑苦しいだろうか。最近は暑くてかなわない。まったく夏サマサマというものだ」

 

「……?そうですね」

 

「……ふ、ふふっ。そうだったね。いや、うん。ほとんどの子は私に話しかけられると萎縮震慄してしまうんだ。だから私は、いわゆるアイスブレイクのために、ちょっとしたギャグを言うことにしているのだが……。君には必要なさそうだ」

 

会長殿はそういう人だったな。つまり、これから例のクソ寒ダジャレが飛んでくるところだったのか。危なかった。ギャグセンが壊滅的でも、頭が良すぎるせいで、なまじそれなりに良い仕上がりのギャグだから、注意しないと気づけないのだ。

 

ションボリルドルフを阻止できてよかった。

 

「さて。それで、今日はどんな用かな?」

 

「えっと。実は、生徒会の皆様にお願いが……」

 

かくかくしかじか、僕は企画について話した。

 

「ふむ。面白い発想だね。それに賛同者も多いらしい。アグネスデジタルはともかく、あのメジロ家のご令嬢も一枚噛んでいるなんて。ああ、実を言うと、我々の間でも似たような話がこないだ出てね。いわゆる古本市などをやってはどうか、というアイデアを出してくれた子がいたんだ。図書委員のゼンノロブロイというウマ娘が企画を話してくれて……」

 

ふむ、なるほど。

彼女は、コッチ側だろうか?

いや、なんだっていい、そうでなければ引きずり込めばいいのだから。

 

「彼女は落ち着きがある上に、能力も高い。無論、オロール君の実力も目を見張るものがある。前途洋々の君たちならば、快刀乱麻の活躍も期待できよう。イベントの詳細はこれから相談していこうじゃないか」

 

「……っ!ありがとうございます!」

 

なんやかんやで、イベントの開催が決まってしまいそうである。

 

「ブライアン!少し頼めるかな……」

 

「そいつらに手を貸してやれ、とでも言うつもりならば、私は断るぞ。面倒くさい。暑いし」

 

「ああ、そうだね。近頃は暑い。それに我々は日々運動するわけだから、余計に汗を流す。ということは、我々は塩分やミネラルを十二分に補給する必要がある」

 

「……なんの話だ」

 

「ブライアン。ミネラルの補給には、やはり野菜を食べるのがいいだろう。だがここ最近の君ときたら、随分と肉ばかり食べている。心配だよ、私は。だからビワハヤヒデと相談しようと思うのだが……」

 

「分かった!やるよ。生徒会としての義務くらいは果たす……」

 

クールでワイルド。そして妹属性。

欲張りすぎじゃないか?

 

と、ブライアンさんが僕を睨む。

 

「あ、えと。よろしくお願いします」

 

「ハァ……。なんだか前にもこんなことが……」

 

そういえば、以前も彼女の協力のもとでイベントを企画したことがあったな。

 

彼女はやっぱり僕をじっと睨んでいる。

 

「おい、オロール。この後は暇か?」

 

「え?まあ、それなりに……」

 

「そうか。では、ひとつ賭けをしないか?」

 

「賭け、というと?」

 

「簡単だ。お前と私がレースをする。もしお前が勝てば、私はプライベートの時間を割いてそのイベントとやらの手伝いをしよう。ジュースの差し入れもしてやる。私が勝った場合、今後私は最低限の義務のみを遂行し、あとはサボる」

 

「ブライアン……」

 

会長が呆れた視線を送る。

 

「このくらいは構わんだろう。サボると言っても、まったく手を貸さないとは言っていない。ちょっとしたお遊びだ。最近は暑いだろう。だから“乾き”を癒したい」

 

「……ほどほどにな」

 

「やりたいです!G1ウマ娘とレースができるなんて貴重な機会だ、こちらからお願いしたいくらいですよ」

 

「ほぉ?乗り気とは。面白い」

 

「ただ、ですよ。かたや数々のG1を勝ち進んできた歴戦のウマ娘、かたやデビューホヤホヤの中等部。ハンデ欲しいんですけど……」

 

「いいだろう。お前は私よりも先の位置からスタートする。怪我に繋がらない程度であれば、いかなる妨害行為も許可する。こんなところでどうだ?」

 

「文句なしです!あのブライアンさんとレースができるなんて……!素敵だ!」

 

ちなみに、いわずもがな、誰もが理解しているだろうが、改めて宣言しておく。

 

僕は本気で勝つ。

 

必勝法を思いついた。

いかんせん姑息すぎるが、まあブライアンさんがジュースを奢ってくれるらしいので、今回はレースに正々堂々勝つことよりも、勝利そのものを重要視しようと思う。

 

こうして、僕たちはトラックに歩みを進めた。




あ、ありのまま、最近起こったことを話すぜ……
『俺は ロイヤルビタージュースを飲んでいたと思ったら、回復薬グレートだった』



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