デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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AIが小説を書いてくれるサイトで遊んだことがありますが、ふとFF7の工口小説を書けないかと思い試したところ、AIは「クラウド、私とリユニオンしないか」をちゃんとエッティなセリフと認識したので、畏敬の念を抱くばかりです。




死をも除ける病

「頼む、もうこれ以上あの緑色の毒薬を見たくない。野菜不足で寿命が縮もうが構わん。もう二度とあれを飲ませないでくれ。然らずんば……死を」

 

「命と天秤にかけるほど不味いんですか、ブライアンさん。せっかくタキオンさんが『ロイヤルビタージュース・参型』の開発に成功したのに」

 

「また随分物騒な名前だな」

 

「彼女曰く『更なる改良を加え、効能が上がったのみならず、愛が重めのツンデレになる確率も1%以下になった!ただし、2%の確率で表皮が緑色に発光するが、まあハズレを引くことはないだろう。ところでさっき指についたプロトタイプの薬品汚れがなかなか取れない。それどころか手全体に広がっているなぁ、エイリアンのようで愛嬌のない緑色だ、まったく困ったものだ、ははっ。モルモットくんに舐め取ってもらおうかねぇ……』だそうです!」

 

光合成できたりします?と聞いたところ、キョトンとされた。タキオンさんにとってトレーナーさんとは?と聞いたところ、見たこともないほどに顔を赤らめ、それからモゴモゴと口を動かした、とだけ言っておこう。あとは想像で補うべきだ。

 

「確かに私はターフの上でしのぎを削ることを好むし、レースは戦の場だと考えている。しかし死の危険と隣り合わせの学園生活は普通に嫌なんだが」

 

「死にはしませんよ。まぁ、ひどい場合は死にたくなるんでしょうけど。それにしても、まったく可愛かったですよ先輩、こないだはお姉ちゃんにびったりでしたもんね」

 

「……」

 

「ゴメンナサイ」

 

可愛いの権化だった。いくらまともな状態ではなかったといえ、ブライアンを知っている者なら満場一致で「誰?」と感想を抱くに違いないほどに。

ところで国会は早急にタキオンさんの行動を制限する法を立法すべきだと思う。まあ僕が焚き付けている場合が多いが。

ん?ということは国家権力によって規制されるべきは僕の存在……。いやいや、舐めないでほしい。デジたんをこよなく愛する僕が、国ごときに負けるわけないだろう。

 

「はぁ、何でもいい。せっかくわざわざ手間暇かけて骨折り遠路はるばる労力を惜しまず手伝いに来てやってるんだ。作業を進めるぞ」

 

さて、現在僕たちが何をしているかと問われれば、宴の準備だ、と答えよう。

要するにファン感謝祭の設営である。

トレセン学園秋のブックマーケット、と銘打たれた即売会を開催するにあたり、立案者である僕やデジたん、そして生徒会側の協力者であるブライアンさんその他の面々と共に、仕事に精を出している。

 

「ったく、なぜ私がこんなことを……」

 

「会長さんに言われたからでしょう。もっと他人を思いやろう、って」

 

「あれは私を体よく働かせる口実だろう。やはり納得できんな」

 

会長殿曰く「ブライアン、君は他人に配慮するべき場面で些か不適切な行動をとることがある。いやなに、貶しているわけではないよ。ただ君は元来優しい子だ。ほら、こないだのツンデレ事変で……ブフッ!すまない、失笑だった。とにかく、君の愛情は皆分かっているのだから、もっと行動で示していこうじゃないか」とのことだった。

 

「会長さんが言ってたじゃないですか。『アグネスデジタルは他のウマ娘たちのことを思いやり尊重できる、素晴らしい子だ。他に優しく己に厳しい。彼女の持つ篤実温厚の心を、私は尊敬している』って。あの皇帝様がそう評するデジたんはやっぱり最高存在なんです。この際デジたん沼にハマりましょ。心が浄化されて思いやりを学べますよ」

 

「そのデジたん沼とやらにハマったあげく、姑息でいやらしい搦め手を平然と使うウマ娘を私は知っている」

 

誰だその罪深いヤツは。きっとゴルシちゃんに違いない。

 

「何にせよデジたんは可愛いんです!今だって、ほら、きっとブライアンさんに『デジたん』呼びされたせいで、完全に逝っちゃってます。可愛いなぁ」

 

「……それだけで?」

 

「そういう生き物なんです。何を隠そう、この僕だって入学当初はフジキセキ寮長様の顔面に視神経を灼かれた身です」

 

「……何なんだ、お前ら」

 

「デジたんは最高のウマ娘にして誉れある同志。そして僕は、そんな彼女のファンの一人(常時限界ヲタク)ですよ……」

 

ああ、そうそう、同志といえば。

 

「薄い本に詰まったロマンを味わって日々を生き繋ぐ人種は僕たちだけじゃない。ね?ロブロイさん」

 

「えっ、あっ、あのぅ、私、そちらの方面には少々疎くて……」

 

ゼンノロブロイ。

地味。メガネっ娘。しかし見た目で侮るなかれ。こう見えて化け物みたいな戦績を残した名馬のウマソウルをしっかり受け継いでいる。あとデカイ。どこがとは言わないが。スズカさんやマックちゃんあたりにちょっと分けてやるといい。

 

「そうですかそうですかハハッいつでも待ってますからねぇ」

 

素質はある、と僕は思っている。古今東西の本を読破し、近代文学、SF、ラノベ、とにかく例外なく書物を好む彼女は、間違いなくこの界隈にハマる。ただ強引に引き摺り込むのはよろしくない。ドントタッチイエスウマ娘ちゃんの精神に基づこう。

あっ、と。ただしデジたんは別。彼女はいかなる手段をつかってでも愛でなければならない。

 

「んほあっ!?何か、今、頭蓋を何か尊みのようなもので殴られた感触が……」

 

「クリティカルヒットだったね。さすが三冠ウマ娘と言わざるを得ないイイ当たりだったよ」

 

「そうですか、なるほど。ありがとうございますブライアン様」

 

「……なぜ、感謝する」

 

「あっなんといいますか。あたしめは常にウマ娘ちゃんに対し全身全霊を捧げ命も惜しまぬ気持ちでして、本来であればお話しさせていただけること自体が控えめに言って心臓爆発案件で、それがあたしの凡なる名を呼んでくださった日にはもう……!Bomb A Headッ!YEAHッ!」

 

熱い魂の叫びが飛び出した。だが共感できる。毎日デジたんを眺めている僕の目と、彼女の粒子を感じる鼻腔、肺、会うたびに煮えたぎる血液と血管、あと心臓。そろそろメンテが必要な時期である。

まあデジたんと触れ合うと僕の身体は健康になるので問題はないが。

 

「意味が、分からん……」

 

当のブライアンさんは唖然とするあまり、咥えていた謎の葉っぱを落とした。

 

「アッ、あのぅ、いくらで買い取れますかねコレ」

 

「は?」

 

「あっいえ、何でもございません。ただ落としたものをもう一度咥えるわけにもいきませんし、よろしければこちらで引き取らせていただきたいなぁと……」

 

「知らん、何なんだ、本当に。勝手に持ってけ……。いや持っていくな、待て待て待て!何か嫌な気分だ!何か、そう、極めて重大な精神的不調に繋がりそうな予感がする」

 

「そうともデジたん。さすがによくない。僕というものを差し置いて。キスしたいなら言ってくれよ」

 

「キッ!?キキッ、キッ!?それって、あのっ!?お、お二人はもしかしてそういう関係で……?」

 

混沌が場を支配する。

 

「ッ止めろォ!!もう止めるぞこの話はッ!!」

 

刹那、ブライアンさんの一括により場は静まった。さすがは生徒会副会長にして最強の一角。放たれるオーラは尋常でなく、まさしく鶴の一声である。

 

「……ブライアンさんってちっちゃい頃お姉ちゃんとキスしたことあります?」

 

「なんだお前はっ倒すぞ」

 

「ゴメンナサイ」

 

聞きたかったんだ、なんとなく。

 

「ウマ娘同士で、キス……。そういうシーンのある本は何度か読んだけど、でも、現実ではどうしてこんなにドキドキするのでしょうか……。胸が火照ってくるような、そんな感覚が」

 

おや……!?ゼンノロブロイの ようすが……?

 

「アッ、あの、ロブロイさん!お聞きしたいのですがっ!攻めの反対はっ?」

 

「えっ、と。受け……?」

 

おやおやおや?おやぁ?

 

「っこれは……!いや待ちなさいっ!早まっちゃダメよ、デジたん!囲碁将棋界では攻めに対して受けの語を使うことがあるっ!ここは様子見を……!」

 

「あ、あの、どうされたんですか?」

 

「ロブロイさんっ!!」

 

「はいぃ!?」

 

「あ、あの、ネッ、ネコの対義語は……?」

 

「うぉいデジたぁんっ!?アウトォッ!?ダメだよそれは!?僕でもそこまではしないよ!?」

 

「えっと、タ」

 

「ゼンノロブロイィィィィッ!?ロブロイさぁん!?あんたなんで知ってるんだ!?」

 

くそっ、デジたんが暴走した!

数少ない僕がツッコミに回る機会だ!

 

「ああ、ロブロイさん……!ようこそ、領域(こちら側)へ」

 

「はっ、はい……?なんだかよく分かりませんけど、不思議と悪い心地はしませんね……」

 

あーあ、入門(はい)っちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ですからこれは公式が最大手でして、まごうことなき真の愛があるんですコレ!すごくないですか?」

 

「CP解釈に対しての答えが存在している。にも関わらず、多方面に渡る関係性が他の解釈を潰すことなく、無数の作品全てが矛盾を含有しないものとなっている。奥深い世界ですね……!」

 

やばい。やばいぞ。

 

「さすがロブロイさん!鋭い!それで、こちらはですね、当該の関係性を軸に据えつつ、王道から少し逸れたストーリーをボリュームたっぷりで描ききった神作なんでしゅっ!愛しているのに……!そんなもどかしい気持ちが心をノンストップでくすぐり続けて、もうっ、あぁっ……!」

 

「ほう、ほう……!登場人物の葛藤に起伏をもたせ、読み手を没頭させる。その上で度肝を抜かれるラスト!奥深いどころじゃない、終わりの見えないほどにのめり込めそうな……!この界隈が沼、と形容されるのも頷けます。とことん引き摺り込まれてしまいたい、抗い難い魅力がありますね!」

 

「ですよねッ!?」

 

これはやばい。

どっちが喋ってるか分からん。

 

「変態が増えた、のか……?」

 

「ブライアンさん。確かに僕とデジたんはその言葉に当てはまるタイプです。しかしロブロイさんをそうと決めつけるのは早計ですよ。彼女はまだ()()()()()()()()のですから」

 

とはいえ、見ていると到底そうは思えないのも事実。もしかして僕よりも界隈人だったりしないか。造詣が深すぎる。

 

それにしても、二人とも楽しそうだなぁ。

デジたんは仲間が増え、ロブロイさんは本好きと語り合える。うぃんうぃん、というヤツだ。

 

「ハッ!?デジたんの良き理解者としての僕の立場が危ういのではっ!?」

 

記憶力には相当の自負がある僕。しかし本の虫……。いや、活字の海を休むことなく泳ぎ続ける、いわば本の魚と言うべきほどの情報収集力を誇るロブロイさんに、ヲタク知識で勝てるかどうか。今はまだしも、来年頃にはどうなっているやら。

 

「オロールちゃん。狂ったようにあたしに執着している貴女なのに、あたしを信頼していないのですか?このデジたん、断じて浮気性ではございませんとも。あたしにとってのオロールちゃんが何か、それは分かってますよね?」

 

「デジたん……!つまり恋び」

 

「そうは言ってないですけども!とっ、とにかく、まあ、ハイ、えっと、えっと……!ロブロイさんはおっしゃいました!底まで堕ちていきたい、と!深淵を覗いたのならば、すなわち相応の覚悟があるということ!」

 

「そ、そんなに厳しい世界なんですか……?」

 

「あっ、いえいえ。解釈を押し付けるようで申し訳ないのですが、あたしとしてはロブロイさんには文学少女としての奥ゆかしい魅力を保ったままでいてほしいので、そこまでディープな場所には連れ込みませんけど。覗きたいとおっしゃるのなら、その一端をお見せすることも吝かではありません!」

 

デジたんの声には歴戦の重みがある。あれは深淵を知っているどころか、深淵の住人だ。僕もだけど。

 

「ロブロイさんのヲタク道を切り拓くためならッ!オロールちゃんがあたしに何をしようが受け入れるつもりですよ!」

 

……?

 

ん。

 

んん?

 

ん〜……。うん。うん?

 

ぎゅるるん!ぎゅるるーん!

 

「ッハァ〜最高だよ君は!そうかそうか。でもさ、それって結局ただのかこつけだろ?君の本心はむしろ、僕と触れ合いたいって気持ちでいっぱいなんだよね?言えばいいさ、いつだって。僕は拒まない。君もね」

 

「アッ?あたし、調子乗っちゃった……?」

 

「そうかもね。よくないよ、それに乗っちゃあ。君はむしろ乗られる側の素質がある」

 

「ふぇっ……」

 

赤面するデジたんは可愛い。真理である。

 

「これが、総受け……!?」

 

「ふぁっ、あっ、学びが早いですねロブロイさんっ!それで、できれば助けていただきたい!いえ、何でも受け入れるとは言いましたが、何でも受け入れるとは言ってない!とにかく、オロールちゃんがパブリックスペースでも容赦なくスキンシップを試みることを失念していたあたしの責任ではありますが、この状況は一人でどうにもならないというかあっあっあっあーっ!?」

 

うーん、役得役得。大変美味だ。

喰ってないぞ。ちょっと抱きしめただけだ。

……少なくともロブロイさんに見えないよう配慮はしたとも。

 

「……私、帰っていいか?」

 

完全に置き去りのブライアンさんなのであった。

 

「ごめんなさい。もう少し残ってもらえますか?作業がまだあるので」

 

「……了解」 

 

かの猛きウマ娘も、新たな扉を入門(くぐ)り抜け、なぜか鋭くなったロブロイさんの眼光に射止められ、静かに作業に復帰した。

 

「デジタルさん。興味深いお話をありがとうございます。ですが、そろそろ休憩も終わりにしましょう。副会長さんもいらっしゃっているので、作業は手早く終わらせてしまいませんか?」

 

圧があった。覇気があった。

彼女の好む英雄譚の、英雄のような。

 

「急にカッコよっ、ハッ、しゅき……」

 

デジたんがまた倒れ……てない!?

いや、意識は飛んでいる。白目を剥いて涎を垂らしながら意識を保つヤツなんてこの世にいない。

 

それだのに、なぜか彼女は立ち続けるどころか、そのまま作業を開始した。

英雄の力による奇跡だろうか。

 

「ふふっ、何だか、新しい世界を知ったことで、ほんの少しですけど、自分に自信が持てたかもしれません!さあ、仕事を片付けてしまいましょう?」

 

「ラジャ、ボス」

 

「ボス……?」

 

新たな世界を知った彼女。

あるいは、以前から読みこんでいた英雄譚に対し、ヲタク的視点、ある種のメタ的な解釈を知った結果、より英雄への理解度が増したのだろうか。

 

うーん、考えても仕方ない。

 

「あ、ちょっと手を貸していただきたいのですが」

 

「ラジャ、ボス!」

 

「ボス……?」

 

僕はボスについていくことにした。

 




図書室で騒ぐちょい悪ウマ娘ちゃんを鬼も泣いて逃げ出すような目で睨み黙らせるロブロイの姉御はいる(確信)
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