デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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っしゃあラージャンハート2枚抜きィ!!
コレクトオトモ強すぎるて……ゾルデ○ック家か?

……ハッ違うんです決して一狩り行きすぎて睡眠時間が削れてるとかそんなことはなくてですね


博徒流浪漫砲

晩夏の風が頬を撫ぜる。

屋上で寛いでいるときなんか、特に。

 

「なー、なー、なーなー、なー」

 

「……っ」

 

「なー、かー、やー、まー」

 

「……なんだよさっきから。ウルセェなゴルシ」

 

「ナカヤマ、今日はノリ悪いじゃねーの。なんか遊ぼーぜぇ。ヒマだしよ」

 

「大いに賛成。だがゴルシ、とりあえず一旦私の半径1m以内から離れてくれるか?」

 

「そりゃまた情のない……。って、あぁ、うん。なるほどな。納得したわ、ゴメンなナカヤマ」

 

希代のギャンブラー、ナカヤマフェスタ。

の肩に手を回すゴルシちゃん。ここからしか摂取できない栄養がある。愛さずにはいられないな。

 

確かナカヤマさんの同室はシリウスさんだったか。こうして見ると彼女も最高のイケメンだ。2人のイケメンが同じ部屋で毎晩寝ている、というのは、ひょっとして年齢制限をかけられるべき案件ではないだろうか?

 

「アッ、アッ、ンンッ……!」

 

「あーあ、一足遅いよゴルシちゃん。デジたんが壊れちゃった。ただでさえ君、スキンシップに抵抗がないから、絵面が美味しいんだよ。分かる?」

 

「分からん。分かりたくもねぇ」

 

デジたんは永く短い旅に出た。合掌。

 

「暇だー……。あ、いいこと思いついた!なぁお前ら、ちょっと賭けをしようぜ!」

 

「なにさ、薮からスティックに」

 

「ほう、賭けか」

 

「カッ、ケホッ……!」

 

一人だけ断末魔だったが、まあともかく。

 

「学生の余暇といやぁ、コレだろ!」

 

ゴルシちゃんが取り出したのはトランプ……。ではなくUNO……。でもなく、麻雀卓。

 

「全自動だぜ」

 

「いいねぇ。アツい勝負になりそうだ」

 

「……って!どこで手に入れたのさ、コレ」

 

「アタシもよく分からん。サトノのご令嬢の前で全自動卓欲しいな〜つってボヤいてたら次の日届いた」

 

この学園にはヤバいやつしかいないのか……?

あ、僕が言っちゃダメだなコレ。

 

「そもそも、麻雀に興じること自体、学生の休み時間っぽくないんじゃないの……?」

 

「んなことねーだろ。そいつぁちと古典的な考え方だな。麻雀は立派なインテリジェントスポーツだぜ?相手の手の内を読んだり、緻密に確率論を練ったり、考えることがたくさんある。こんなに頭を使うんだから、むしろ学生こそやるべきだろ」

 

「なるほど……」

 

確かに、ある種の論理思考能力が問われるゲームであることは間違いない。そして、運次第で全てが変わることだってある。思考トレーニングと面白さの両方を兼ねたゲームと言えるかもしれない。トランプも思考力は必要だが、カードが52枚なので麻雀ほど考える必要がない。僕は大天才なので、それしきの枚数はすぐに暗記できる。

 

麻雀は萬子(マンズ)筒子(ピンズ)索子(ソーズ)が1から9まで、風牌と三元牌が7種、それぞれ4枚ずつだから……。136枚か。全ての牌の流れを把握するのは至難の業だ。運すら味方にしなければ勝てない。

 

「……ん?待てよ?もしかしてゴルシちゃん、トランプだと自分が勝てる確率低いから麻雀を選んだね?」

 

「お前みてーな勘のいいガキはキライだぜ」

 

「もっと言うと、イカサマしやすいからだね?」

 

「活きのいい牡蠣はフライだよな」

 

「はぁ?どう考えても生だよ。ウマ娘は滅多なことじゃ食中毒にならないんだから、生に限る」

 

夏場に危険物を喰らう快感はウマ娘の特権だ。

とはいえウマ娘とて無敵ではない。人間よりリスクは少ないが、油断は禁物である。真のブラックホール胃袋を持っているのはオグリさんくらいだ。彼女なら多分フグの内臓も食べるだろう。

 

「さっさとやろうぜ。実を言うと私はお前ら2人に前から興味があったんだ。どこにでも現れる万能の監視者、それと近頃台頭してきたダークホース。最高にカオスじゃねーの。……さて、何を賭ける?」

 

獰猛に笑うナカヤマさん。

 

「決まってんだろ!最下位は購買のにんじんゼリー全員分奢りな!」

 

何……だと……?

素晴らしい。大変素晴らしい。どのくらい素晴らしいか分からない人のために説明すると、デジたんがウマ娘以外で「じゅるりら」する数少ない代物の一つだ。

 

「あ、でもさ。こんなことしてるの生徒会に見つかったらマズいんじゃないの?」

 

「安心しな。こんな辺鄙な場所にわざわざ見回りにくるヤツはいねぇ。ただし、ブライアンがサボりに来たときにゃ、もう1人の副会長が追っかけてくるから注意だな。まあ今日は問題ないだろう。暇を持て余したバクシンオーが来るかもしれんが、アイツはオツムが弱いから大丈夫だ」

 

と、さすが歴戦のナカヤマフェスタである。

 

「アイツは自己言及のパラドックスをクリアできないからな」

 

「……どういうことです?」

 

「簡単だぜ。まず、どうしても聞きたいことがある、と勿体ぶって言う。するとアイツは『ハイ!この私が責任を持ってお答えしましょう!』と自ら足元に地雷を置く。でもって、私は嘘しかつかない。本当のことは何一つ言わない。するとこの発言は矛盾している。私はたった今真実を語ってしまった。もし今の発言が嘘なら、私は普段真実しか言わないことになる。さて、この矛盾をどうすればいい?と聞く」

 

なんだかバカみたいな話になってきた。

 

「バクシンオーは、真実しか言わない、を地で行くタイプだから、責任を持って答えると言った手前、しばらくこの問いについて考え続けてフリーズするんだ。面倒な時に出くわしたらコレで対処できる」

 

語り口を引き継いだ歴戦の悪戯戦士ゴルシちゃんは得意気である。

というか対処方法がアホすぎる。サクラバクシンオー、ロボットかお前は。

あ、ブルボンさんも同じ方法でフリーズさせられるかも。

 

「ああ、ちなみに聞くぜ。オロールフリゲート」

 

「あ、オロールでいいですよ」

 

「雰囲気出してんだよ。なぁ、オロールフリゲート。お前は今の質問にどう答える?お前はこの矛盾に答えを出せるか?」

 

そんなことであれば、僕は考えるまでもなく答えられる。

 

「数字や記号でシンプルにまとめようにもなかなか答えが出ない問いが存在すること、それ自体が問いでしょう?全ての事象を数式で表すのは不可能だ、少なくとも今は。僕の答えは決まってます。だからこそこの世界は面白い。これに尽きる。ふふっ、ナカヤマさんがギャンブラーなのもよーく分かりますよ。僕も似たようなタイプですし」

 

ウマソウルなんて不確定さの塊みたいなモノを飽きるほど使い込んでおり、その上気合でゴリ押すのが趣味の僕である。

確かにこの世はある一定の法則に従って動いているが、必ず隙がある。ナカヤマさんが好むギャンブルも、一定のルールのもと数学的に限りなく正しい道のりを辿っても、最後はカオスによって盤面が揺れ動く、素晴らしい性質を持っている。

 

「フッ、お前とは気が合いそうだ。面白くなってきやがった!早速やろうじゃねぇか」

 

「望むところッ!」

 

ナカヤマさんの目には龍が宿っていた。

 

「えー……お前らちゃんとシリアスするじゃん。すっげーな、ゴルシちゃん見惚れちまったよ」

 

「そう言いつつちゃんとボケてくれるゴルシちゃんのこと、僕は好きだよ。でもさ、とりあえずその透明な牌と革手袋と採血器具は一旦……採血器具!?しまってくれよ早く!?」

 

「チッ、つまんねーな……」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの、あたし、ドンジャラくらいしかやったことないんですけど……」

 

「マジかよ。麻雀はギムキョーだぜ」

 

「大丈夫!僕が手取り足取り尻尾取り教えてあげる」

 

なにせ僕は暇なときにとりあえずムダな知識を覚えるウマ娘である。般若心経や讃美歌を唄えるし、なんならハカとかケチャもいける。その流れで麻雀についてもあらかた予習済みだ。

 

「お前は教える側に立てる腕前なのかよ?へっ!勝負はこのゴルシ様が貰う!終わってから泣いて教えを乞うなら、酌量の余地は残しといてやんぜ」

 

「あんまりナメないでほしいな?」

 

麻雀はもちろん、将棋やオセロで勝ってイキリたいがために、僕は数々の戦術を習得した。チェスや囲碁、果てはバックギャモンまで、そこらの囲碁将棋部よりは強い自信がある。全てはこの時のため。

 

「というわけでルールとか教えたげる。君は要領がいいから、すぐにゴルシちゃんをぶちのめせるよ」

 

「は、はぁ。ところでなぜ二人羽織を?」

 

「デジたんと僕が一心同体になれば最高効率を実現できるからね!」

 

「あっハイ」

 

そんなこんなで、うまうまぱかぱかとルールを説明すること数分。

 

麻雀は136枚の牌から手牌を14枚取って役を作り、アガリ……勝利を目指すわけだが、その役の形や点数を覚えるのは一苦労だ。何せたくさんある。

しかしデジたんはすぐに理解したようで、僕はその天性のセンスに脱帽するばかりであった。

 

「っし、始めるか!」

 

僕の正面にいるゴルシちゃんが言う。左手にはナカヤマさん、そして右手側には我らがデジたん。

 

「さて、んじゃ早速サイコロを……」

 

「待てよゴルシ。それはバレるに決まってるだろ。順番も全自動で決めてくれるはずの全自動卓だってのに、わざわざ手動でサイコロ振るたぁなんだ。こだわりが強い、ってわけじゃねえな?間違いなく仕込んでんだろ」

 

「チッ」

 

あの芦毛、油断も隙もあったもんじゃない。

ナカヤマさんは鋭い眼を持っているようだ。

 

「きちぃな、ちくしょう。まあやるか。あ、そうそう!とりあえず持ち点は25000な!」

 

デジたんが初心者だったので、今回の対戦は一般的なルールに基づいている。

 

「あ、あたしが親ですか。それでは……」

 

手元の牌を一瞥するデジたん。

しばらくうーんと首を傾げる。

 

「お、デジタル?どうかしたかよ?」

 

「分からないことでもあった?それなら僕がもう一度手取り足取り、つま先から舌の先まで教えてあげるけど……」

 

「あ、いえ、その……」

 

ここが、こうで……と、首を傾げたまま牌を入れ替えるデジたん。

 

それからやはり何度か唸ったのちに、彼女はおそるおそるといった様子で手牌に指をかけた。

 

「えっとぉ、アガリ、ました……?」

 

「は?」

 

「お?」

 

「ん?」

 

なんて?

 

「あ、コレ、アガリ、でいいんですよね……?」

 

パタン、と、少々情けない音を立てて倒された牌。

 

「えっ、マジ?つーことは、あれか?」

 

「天和……。マジかよ。やるじゃねーか」

 

天和(テンホウ)。という役がある。

最も得点の高い役満、そのひとつに数えられる役だ。

麻雀は本来、最初にランダムで牌が配られたのち、山から新たに牌を取っては捨て、取っては捨てを繰り返し、アガれる形を作るゲームである。

 

今起こったことは説明するまでもないだろう。

最初の手牌でアガッた。それだけだ。

 

だが確率が凄まじく低い現象である。ポーカーでいうロイヤルストレートフラッシュ!某狩ゲーで言うところの報酬枠が全部宝玉!宝くじが当たった帰りの足で億馬券を当てるようなもの!

 

って。おい、待て、待て待て待て。

彼女が倒した牌をよーく見てみろ。

 

「コレ、アガリですよね?なんだか漢字ばかりでやたらゴツい見た目ですけど……」

 

「大三元!?いや、待て、字一色(ツーイーソー)四暗刻(スーアンコウ)もノってんな!?あっ、あっ、え、はっ?んんん?」

 

全部役満じゃねーかオイ!

 

「デジタル、お前……。死ぬぞ?」

 

「うわぁああぁデジたぁん!?死ぬなぁぁあ!?よぉし僕が守護るぞお前バカ野郎かかってこいよ死神コラァ!?ボクのデジたんに手ぇだしたら地獄までぶっ飛ばしてやるからなーっ!?」

 

大三元。

出したら死ぬ、とまでは言わずとも、腹を下す。

字一色。

死ぬわけではないが、電車で痴漢に間違われる。

四暗刻。

死にはしないが、両手両足を捻挫するだろう。

 

天和。

出したら死ぬ。

 

「あぁ、そんな、デジたんが、デジたんがぁ……!うわあああああん!?」

 

「おいナカヤマぁ!?早くしねぇと死人が出るぞぉ!?お祓いできる場所調べろぉ!?」

 

「へっ、まさか生死に関わる事件が起こるとは、これだからギャンブルってやつは面白い!」

 

どうしよう、フクキタルさんあたりに頼むべきか。いや、あの人は胡散臭すぎるからダメだな、もっとちゃんとした人……!

 

「あの、皆さんどうされたんです?そんなに慌てて」

 

「デジタル!お前、今日の晩は部屋から一歩も出るなよ?誰かが入ってこようとしても、絶対にドアや窓を開けたらダメだかんな!オロールみたいにお前のことが好きなわけじゃねぇが……。身内から死人は出したくねぇ」

 

「えっ」

 

「デジたん。大丈夫、僕がついてるから。何があってもついていくから」

 

こんなことで最愛の人を失いたくはない。

 

「すまねぇデジタル!アタシが麻雀やろうなんて言い出したばっかりに……!」

 

「えっ」

 

「僕、とりあえずなんとかできそうな人を呼んでくる!」

 

「ああ頼むオロール!お前に懸かってるぜ……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで……。そんなくだらないことで私を呼び出したんですか……?」

 

「くだらないとは何ですかカフェさん!デジたんが死神に取り憑かれてるんですよぉ!?」

 

「バカなんですか……?貴女が強引に私を連れ出した私のコーヒータイムがお釈迦になってるんです……。それなのに、バカですよね?」

 

「あっ、えっ、カフェさーん……?」

 

口の悪いカフェさんからしか摂取できない栄養を見つけてしまった。それはそれとして、むしろ彼女こそが死神と言わんばかりの剣幕である。

 

「なんなんですか、もう……。私帰りま……。え?何ですか?はぁ……。なるほど……?」

 

携帯電話を取り出したかと思えば、誰かと通話を始めるカフェさん。

 

「何ブツブツ独り言喋ってんだよ?」

 

「君こそ何言ってるんだよゴルシちゃん。明らかに電話してるだろ、今話し中なんだから静かに……」

 

「電話なんて持ってねーぞ?」

 

「え?」

 

おかしいな、カフェさんの手元には確かにブラックカラーのスマホがあるのだが。

 

「これ、視えるんですか……。やっぱり貴女“持ってる”方なんですね……」

 

「妙な言い回しですけど、ひょっとして……」

 

「これ、お友達から渡された電話なんです……。やむをえず私のそばを離れていても連絡できるように、と……」

 

なんだその謎技術。ゴーストフォンってわけか。

 

「あぁ、なるほど。けど残念だなぁ、せっかくならお友達さんに会いたかったのに」

 

デジたん一筋である僕だが、他のウマ娘ちゃんのことも大好きである。カフェさんのお友達は、この世のものではない。しかし、一応前世の記憶が残っている僕と相性がいいのかなんなのか、とにかく僕はその姿を視認することができるのだ。

 

幽霊って、いいよなぁ。僕の言いたいことが分かるだろうか。要するに、決してその肉体には触れられないものの、「重なる」ことができるのだ。カフェさんのお友達の手が僕の身体に入ってきたときの、あの妙にゾクゾクする感覚をもう一度味わいたい。

 

「あの、多分貴女がいるから離れているんだと……」

 

「え?どうしてですか?」

 

「自覚ないなら……。いいです……」

 

僕がいるから、と。はて。

きっと照れ屋さんなんだな、お友達は。

 

「それで、私のお友達が教えてくれたんですが……。デジタルさん、貴女相当ヤバいそうです」

 

「えっ」

 

「ジョン•マクレーンくらいヤバいらしいです……」

 

「えっなんですかぁ……?誰ぇ……?」

 

「うわあああデジたんがぁぁぁあ!?」

 

「めっちゃヤベェじゃねぇか!?」

 

「フッ、不運(ハードラック)(ダンス)っちまったか……」

 

「えっ、だから誰……」

 

クソッ、一体どうすればいいんだ!

 

「カフェさん!なんとかできないんですか!?」

 

「いえ、残念ながら……。私にできるのは、あるべき場所にあるべきものを戻すことだけです……。今のデジタルさんは、いわば死ぬほど運の悪い状態……。私は運を操るなんてことはできませんよ……。タキオンさんの変な薬、あるいは神様でもないかぎり、運を変えることはできないでしょう……」

 

神様の野郎が僕たちを見捨てやがった!ハナから期待はしてないけど。まったく不便なことに、野郎にしかできない仕事があるらしい。タキオンさんなら幸運をもたらす薬くらい作れそうだが、調合するのに時間がかかりそうなので彼女を頼ることは難しいだろう。

 

「なぁ、ちょっと思いついたんだが……」

 

「ナカヤマさん!何かいいアイデアが!?」

 

「本当に単なる思いつきだが。死ぬほど運が悪いなら、逆に小さな不運にたくさん見舞われればいいんじゃないか。小銭落とすとか、それこそ麻雀で負けるとか」

 

「なるほどッ、その手があった!」

 

「ああ、だからもう一回、いや、何度だって麻雀をやろう。まあ勝敗のつくゲームならなんでもいいんだがな」

 

「カフェの話が本当なら、デジタルは確実に負けるってことか?なんかつまんねーな。いや、何もしなかったらジョンマクレーン状態になるわけだから、そんなこと気にしてられねーけどよ」

 

「ああ。だがそれがどうした。天佑は諦めないヤツのもとにやってくる。私は、ありとあらゆる事象に『絶対』など存在しないと思っている。アグネスデジタル、お前はどう思う?私の見立てじゃ、お前は不運に屈するようなウマ娘じゃないはずだ。たとえツイていようがなかろうが、お前は勝ちを求めつづける。信念は貫くタイプだろ?」

 

「えぅっ……。あ、あのぅ、誠に、慙愧の至りではごさいますが、あたくし、いまいちノリについていけてないというか……」

 

「勝負に乗るか?乗らないか?今ここで決めろ」

 

「っ!ハイ、ハイ!や、やります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、ロンです」

 

「お?まだ東二局だぜ?もう不運は消えたか?」

 

「はぁ、あの、コレ……。なんだかヤバい気が……」

 

「どわぁ九蓮宝燈だぁぁぁ!しかも純正だぁ!?」

 

「デジたぁぁぁぁぁん!?」

 

「おいおいマジかよ。不運とやらも随分仕事が溜まってんじゃねぇの。アグネスデジタル。お前、このままだと不運にメチャクチャにされちまうぜ」

 

「はぁ!?デジたんをめちゃくちゃにしていいのは僕だけだッ!?」

 

待てよ、いっそ不運とやらに蹂躙される前にデジたんを完全に僕のものにしてしまえばいいのでは?

そうだ始めっからそうすればよかったのになんで気づかなかったんだちくしょう僕のバカ!

 

「あ、オロール、ちゃん……?目が怖いんだけど。あ、あははっ、あたしこの後の展開が分かってまいりました。もはや恒例ですしねぇ……」

 

「なぁデジタル。もしかしてよぉ。とんでもない不運ってのはソイツのことなんじゃねぇの?ある意味悪の化身だろ、オロールって」

 

「どうでしょう。こうなってしまっては、むしろ今まで焦らされていた分の時間こそが不運だったのかもしれません」

 

「ふふふふふ嬉しいこと言ってくれるねえデジたん。ゾクゾクするなぁ」

 

「おいナカヤマ。向こうでタイマンしようぜ。アタシ不運の正体分かったわ」

 

「ほう?なんだよ、そりゃ」

 

「蜂蜜で溺れる方がマシってくらいの惚気を見なきゃならねぇことだ。だが幸いなことに、アタシたちはトレーニングで鍛えた健脚、それと生まれつき瞼っつーもんを持ってる。つーわけで逃げるぞー!」

 

「まあ待てよ。目ぇ閉じんなって。なかなか面白そうじゃねえか。なあゴルシ、ありゃどっちが上に乗ると思う?参加費ははちみー濃いめ硬め多めだ」

 

「低俗すぎて賭ける気にもならんわ!つーか、こういう時はオロールが主導権握るって決まってるんだぜ」

 

「ほう?なら私はデジタルに賭ける」

 

外野が何か言っているな。しかし僕は目の前の幸福の権化を貪りたい衝動で一杯なのである。

 

む?今日のデジたん、どこにも隙がない。

 

「あの、あたし、ふと思ったんだよねぇ。いっそ最高の幸せに浸れば、不運なんてものは押しつぶせるんじゃないかなぁ〜……って」

 

「えっと、デジたん?なんだか掛かり気味みたいだけど大丈……わっ!?」

 

ふむふむ、そうか、そうか、そうきたかぁ。

どこまでも堕ちていけそうなほど深い碧色の瞳。僕より背が低いはずの彼女が、その瞳で僕を見下ろしている。

 

よし、享受しよう!

 

「……」

 

「空いた口が塞がらんってとこか?私の勝ちだゴルシ。はちみー買ってこい」

 

「ハァ、あれ地味に高ぇんだよなぁ……」




新シナリオはTSクライマックスの逆を行く感じでしょうか?ウィニングライブにフォーカスするのなら、私のようなURAで温泉行きまくる人種と相性が良さそうで嬉しいばかりですああああ(限界化)

ゴルシがやりそう、って理由で麻雀を出したはいいがそもそも麻雀をよく知らないというガバをやらかしていくゥ!

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