デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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近頃はAIの進歩が著しいですね

──AIに文章力で負けそうな人間のことを
あなたはどう思いますか

いやぁ、まあ、ね?いいじゃないか、と。
カップ麺は美味いし、冷凍ピザも美味い。

ただ、たまには味が濃くて具の少ない味噌汁に冷や飯をぶち込んで食ったっていいじゃないかと。時代が進んでも人間がモノを書く理由ってそこですよ。
(ぶっちゃけAIに書いてもらうのが一番楽(殴)

だから誤字脱字は許されまぁす!(壮大な言い訳)



祭典前夜

「お前ら、愛知行ったら何食いたい?」

 

「うーん、味噌カツとか?名古屋じゃ何にでも味噌をかける、なんて揶揄されることもありますが、僕はそのスタイル嫌いじゃないですね。で?急になんですトレーナーさん」

 

「いや、お前らもうすぐ愛知行くからな」

 

「……は?」

 

「苦労したんだぜ?ベストの成績を残すためにも、お前ら2人を同じレースに出してやりたかったんだが、いかんせん枠を取るのが難しくてなあ。だが、やっと何とかなった。これにてようやく出陣だ!」

 

あぁ、そういえば僕は競走ウマ娘だった。

 

「っ!?って、もしかして!デジたんと一緒に走れるんですか!?」

 

「ああ」

 

「っしゃーい☆っしゃいしゃーいっ☆」

 

「引くレベルの喜びようだな。まあ知ってたけど」

 

しゃい!しゃい!

デジたんと走るためならば全てを投げ打つ覚悟の僕である。この気持ちは誰にも分かるまい。然るべき理由による激しい動悸と息切れ。肺と心臓がもう一つずつ欲しいくらいだ。

 

「俺から言うことはふたつ。絶対にぶっちぎってこい。お前ら二人でワンツーフィニッシュ。いや、同着か?とにかく、勝てるレースは確実に勝って、経験をモノにしろ。それと怪我だけはするな!レース後にはすぐファン感謝祭も控えてる。無事之名、これが最優先だ」

 

無事之名。耳にタコができるほど聞いているが、もっと聞いておきたい言葉だ。この世界の真理とも言えるその言葉を、僕は大事にしている。

 

スピカメンバーの脚には気を遣わなければならない。特にテイオーやスズカさんには。

ウチのトレーナーさんはたいへん優秀で、僕らの微細な体調の変化をも見逃さないが、やはり漏れはある。何より「いつ、どこを怪我するか」の視点を持っているのは僕だけだ。僕にできることは限られているが、それでも精一杯やっていくつもりだ。

 

「お互い、頑張ろうね!」

 

……ふぅ。

あああああ!しゅきいいいいいい!

こんな可愛い子が古今東西のレース場を制覇する偉業を成し遂げるんだよ?世界って素晴らしい。

 

「んっ!トッ、トレーナーさん。ティッシュありませんかね」

 

「ああ?ほれ、使え。どうしたんだよ」

 

「いや、ちょっといろんな場所が濡れそうで。あ、えっちぃ意味じゃないですよ?目とか鼻とか、感動のあまり少々見苦しいことになりそうでして……。ジュルッ、あっ、やばっ、あっ、あっ」

 

「ホントに感動してるか?見たことないなぁ、感極まって涎垂らすやつ」

 

そういうウマ娘がいてもいいだろう。世の中には興奮すると脳汁が出る陸軍中尉だっている。涎くらいは普通だ。

 

「ひっでぇ。レース中にお前のケツ追っかけるウマ娘が不憫でならねぇな。その調子じゃあ間違いなく……。うぇー、ばっちぃ」

 

「なんだよゴルシちゃん、さすがに僕もそこまでは……」

 

「言い淀むなって!怖っ!怖ぇーよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「実際のところ、モノクロでしか表現できない魅力はあるんです!」

 

「ほうほう!」

 

さて。

ロブロイ殿とデジたんには共通項が存在する。言ってしまえば二人ともヲタクではあるのだが、なにせ敬語口調だったりちんまこくて可愛かったり、そのくせone of the最強のウマ娘である。

 

「色味がないからこそ、読者は想像力を働かせる……。その上、視覚から得られる情報が少ない分、ダイレクトな感情移入への足がかりが生まれる!単調に見えてその実、変幻自在な存在なんですよねっ!」

 

「布教してわずか数日でその境地に至るとは……!ロブロイ殿、流石の御点前ッ!」

 

興奮すると喋りが止まらなくなるあたり、似てるなぁ。僕は二人の声を聞いているからいいが、文字に起こすとどっちがどっちか分からなくなりそうだ。僕は問題ないけど、一応注釈を入れておこう。僕は問題ないのだが、何となく。

 

「なぁアタシ帰っていいか?」

 

「だめ」

 

「おう……」

 

数日学園を空けることになるので、その前に感謝祭の準備をあらかた済ませておくことにした。野生のゴルシちゃんも捕まえたので、作業効率は良好。

 

「つーか、妙なメンツだな……。変態二人は神出鬼没として、ロブロイはなんでいるんだ?」

 

「いち本の虫として、この波には乗っておこうと思いまして。感謝祭で行われる古本市……、いや、ブックバザー?うーん……?」

 

ロブロイ殿が答える。

 

「即売会ですね」

 

穿った訂正をするデジたんである。

 

「即売会!よい響きですね!まだまだ私にとって未知の本が遍く界隈ですから。ふふ、忙しくなりそうです」

 

染まりきってしまったロブロイ殿は止まらない。

 

「は?つーことはよぉ……。オイお前ら。道徳心ってものがねーのかよ!?ロブロイはまだ中等部だぜ!?それをお前、重い業を背負わせやがって……!」

 

「ゴルシちゃん。僕らも中等部だよ」

 

「おあぁ、そうだな、うん。すっかり忘れてたぜ、あまりにも中等部らしくねぇから」

 

美少女JCを捕まえておきながらなんたる狼藉。デジたんなど、まさに中等部の魅力を体現した存在だろうに。

 

「んで?ロブロイは分かった。それよりメジロドーベル……。こりゃまた。なんでコイツらなんかと一緒にいるんだ?」

 

「ッッ!?!?」

 

「いや、そんな『なぜバレた!』みたいな目で見られても。フツーおんなじ部屋にいたら気づくだろ」

 

我らがどぼめじろう先生は、なぜか影を薄く保とうと努めていた。

 

「いっ、いや、その、アタシも巻き込まれただけなのよ!だから何一つやましいことはないんだからね!?誤解しないこと!」

 

「なんだコイツ」

 

「あぁゴルシちゃん。ご存知のとおりドーベルさんは繊細な方なんだ。その上多趣味でね。こうして顔を覗かせているのも、その趣味の一環で……」

 

「わあああ!?ストップ!ストップ!?」

 

「あ、すみません。つい興が乗って。でもドーベルさん、貴女の()()()()()()は、誇っていいものですよ。羞恥心は個人の問題ですからとやかく言いません。ただ仮にバレたとして、尊敬されることはあれど、引かれるなんてことは絶対にないですって」

 

「あー、なるほどな。なんか察したわ。やっぱメジロ家っておもしれーや」

 

ムダに察しがよく、案外空気の読めるゴルシちゃんはこのリアクションである。というかどぼめじろう先生の作品は感謝祭にて一般公開される予定なのでウダウダ言ってもどうにもならないのだ。腹を括ろう、ドーベルさん。

 

「別にそんな恥ずかしがることでもねーと思うけどなぁ。節度を守ってれば、だけど」

 

「なぜ僕を見るんだい」

 

「いよっ、変態!お前はもっと羞恥心を学ぶべきだと思うぜ!」

 

「愛の衝動の発露を恥ずかしがる理由はどこにもない!」

 

「なんだコイツ」

 

自分で絵や小説を書きました、というとき、知り合いに見せるのはなんだか恥ずかしい……というような羞恥心。それが不要だとは言えない。創作品を世に出す際の心的ストッパーとして重大な役割を果たすから。それにより様々なリスクを避けることができる。

 

とはいえそのまま引き出しに封印するのはもったいない。身近に神絵師がいるのに、どうしてその才を放っておけよう。ナメてんのか、金出すぞコラ。

 

「確かに、そういうイベントに興味がないわけじゃないわ。けど、勝手が分からないし……」

 

「いいんです!それで!今回の即売会は、学業やレースで何かと多忙なため趣味に時間を割けずにいるウマ娘ちゃんたちのためといっても過言ではありません!何一つ分からなくても大丈夫ですから!」

 

デジたんの熱弁である。

 

「でも、アタシが描いた絵なんか見ても、皆はきっと喜んでくれないわ。それに、今までずっとそんな素振りを見せなかったアタシが、急に絵を描き出すのもなんだか……」

 

「ここだけの話、マックちゃんはお前の趣味に気づいてるっぽいぜ?」

 

「ッッ!?!?」

 

「つーかメジロ家は全員知ってると思う。一つ屋根の下暮らしてるんじゃあ、バレるのも当然だろーし」

 

「ッッッッ!?!?!?!?」

 

「そんなショック受けなくてもいいだろ……。でもよ、ウケは悪くねぇからな?」

 

「えっ……?」

 

「マックちゃん曰く、『どうして他人に見せたがらないのか不思議で仕方ありませんわ。繊細かつ力強いタッチ、さながらプロのようでしたのよ』だぜ。知ってるやつは基本ベタ褒めだな。あとはライアン、アルダン、それから……」

 

「もういい!分かった、分かったから!!」

 

どぼめじろう先生は器用すぎる。何せ彼女、ピアノもプロレベルである。僕はスライドホイッスルくらいしかできないので素直に尊敬する。

 

「そういやぁ、オロールもなんか描いてたよな」

 

「ああ、僕もデジたんを見習って絵を描くことにしてるんだ。ゴルシちゃんの寝顔はムダに美しいから、スケッチの練習の題材には困らないよ」

 

「週5くらいの頻度で寝つきが悪い理由はそれか。ときどき妙に悪寒がするんだよなぁ」

 

「週5?おかしいな、僕は週3で君の寝顔を見てるんだけど」

 

「あれじゃないですか。あたしの部屋に凸してくる時に窓を開けるから、それで空気が入れ替わって……」

 

「物理的に風を吹かせてんのかよ」

 

はてさて、気をつけねばまともな会話ができなくなる。僕の日々の過ごし方をトークテーマにしてしまうのはよくないな。

 

「あ、ところで。ロブロイさんはそういった創作活動にご興味はおありで……?」

 

「私はなにぶん本を読むばかりでしたので、絵をしっかり描けるかどうか……。あ、でも、小説なら書けるかもしれません。もちろん、本職の方には到底及ばないでしょうが……」

 

「ッ!小説ッ!いいじゃないですか二次小説ッ!確かに漫画やイラストよりも数字の伸びが良くないのは事実ですよ、コンテンツの消費時間が長いですし、文字の羅列に忌避感を抱く人もいますから。で、す、がっ!小説独自の魅力もまた確かに存在するんですッ!ロブロイさんが先程おっしゃっていましたが、モノクロによって喚起される想像力!小説の場合、想像力によって作られる魅力の比重はかなり大きいですからね!一度刺さればとことん奥まで捩じ込まれるのがもうたまんないっていうか……!ふああおおおおっ……!」

 

デジたん、魂の叫び。

 

「なんだコイツ」

 

「きっといつか読んだ神小説を思い出したんじゃないかな。文字のみの情報から自分で組み立てた風景はなかなか色褪せないからね」

 

忘れがちだが、僕は記憶力には自信がある。

もっぱらバグパイプの吹き方を覚えたりガルワーリー語を習得したりなど、生活の役に立たないことばかりにそのスキルを使っているが。

 

とはいえ、普段から僕は記憶を大切にしている。

こうして過ぎていく何気ない日々の記憶。その度に僕自身が感じ、考えたことを、ある種の叙述として記憶する。感情の微細な揺らぎも僕は忘れたことはないが、文章で記憶することで、その思い出は味わい深いものになるのだ。

 

要するに、思い出の中でじっとしていられないほどに尊い我らがデジたんの可愛さをさらに倍増させるための小技である。

 

「もうさ、この際ゴルシちゃんも参加してみない?」

 

「ぜっっってーやだ!」

 

「えぇっ、どうして?どうせ君のことだから、絵が下手とか文章が書けないとか、そんなことはないでしょ。むしろめちゃくちゃ上手いに決まってる」

 

「腕の良し悪しで参加の意思まで図ろうとするなよ。なんつーか、お前らのペースに持ち込まれそうでイヤなんだよ。あとアタシは図工の時間に粘土でロダンのレプリカ作ったことならあるぜ」

 

「君人生何周目……?とにかくさ、何事もチャレンジ!意外とハマるかもよ?」

 

「やーだ!アタシは感謝祭で小遣い稼ぐって決めてるんだ!マックちゃんと一緒に焼きそば屋やりてーんだよ!」

 

「っ……!なるほど、それなら仕方ない」

 

世の中には挟まってはいけない隙間が存在する。

 

「ゴルマク……。ふつくしい……」

 

まったくデジたんの言う通り。やはりゴルマク!ゴルマクは全てを解決する!

 

「ゴルマク?ああ、なるほどな?お前らマジで……。っ、どうする?考えろゴールドシップ。面倒ごとに巻き込まれるか?それともこのままマックちゃんに絡んでアイツらにそういう目で見られ続けるか?どっちがいいんだ……っ!?」

 

「何ぶつくさ独り言喋ってるんだいゴルシちゃん。言っておくけど、こちとら数多の尊みを見てきた身だ。仮に君がゴルマクの道を突き進むのなら!『海に沈みゆく太陽を見ながら肩を寄せ合い、少し濡れた水着の裾と煌めく肌が触れ合うゴルマク』くらいはしてもらわないと!テイマクとマクイクに勝つ覚悟はあるんだろうね!?」

 

「テイマクとマクイク……?ああテイオーとイクノか。つーかなんだよ勝つって!?そこで勝敗ジャッジする意味はあんのかよ!?」

 

「カップリングに勝敗はつけるべきじゃないし、つけたくない。でも仮に僕がゴルシちゃんを……、君の言う面倒ごとに巻き込んだとき、純度の高いテイマクが拝める、となったら……。まあそういうことだよ」

 

「ちっきしょう!大体なんでアタシをいちいち巻き込みたがるんだよ!アタシのこと好きかよ!?」

 

「うん」

 

「なんだお前」

 

「Oh……」

 

あ、やばい。デジたんが嫉妬しちゃう!

自惚れではない、と思う。相思相愛だし。

 

「ああ待ってデジたん。早とちりするにしても早すぎる。ハッキリ言おう、僕はゴルシちゃんのことが大好きだ。でも分かるでしょ。この好きの用法は、言ってみればヲタクが呼吸するのと同じペースで頻発する方の“好き”なんだよ。ガチ恋じゃないよ。アンダスタン?」

 

「あっ、早とちりとかはしてませんヨ。ただ、今のやりとりを見ててネタが思いついたというか、何気ない会話から告白するシチュって良くないですかっていう話をしたくなってるんです、あたし」

 

「やめろやめろ、これ以上カオスにするな。アタシを休ませてくれ」

 

「告白シーン……。恋愛小説においても一番の山場ですから、一番作り込みが必要な箇所ですよね。現実世界においても、プロポーズは二人の関係性の重要な節目となりますから、相応のシチュエーションで……というのが自然ではあります。しかし、それをあえて会話の流れの中で行うことにより生まれるエフェクトは非常に大きい……」

 

「ロブロイ?意外とノリいいんだなお前」

 

「……そうよね。確かに。会話の流れで告白する理由として、恥じらいや照れによるものだったり、いろいろあるけれど、何より必要なのは互いへの信頼だとアタシは思うの。逆に考えれば、その告白方法自体が、今まで築かれてきた二人の信頼を示すものに他ならない……」

 

「ドーベル、良かったなぁ、羞恥心を克服できて」

 

ドーベルさん、いいことを言うなぁ。その通り、ゴルシちゃんとはかれこれ一年近く寝食を共にした仲である。僕は、今さら崩れることのない信頼の証明をしただけなのだ。可愛くて、スタイルよくて、美しくて、カッコよくて、アーク溶接もできるウマ娘、大好き。

 

「君は素晴らしいね、ゴルシちゃん。もう存在自体が周りにインスピレーションを与えてる」

 

「勝手に妄想してるだけじゃねーかお前ら。そこにアタシの名前を出すなよ」

 

「ゴルシさん。ありがとうございます。おかげさまで、私も今回の即売会に出品してみたい気持ちになりました」

 

「礼を言われる筋合いはないんだよなぁ……。つかロブロイ、別にアタシは人のやることに口出しはしねぇけどよ、仮に、ほら、そーゆーのをやるとして、アタシをネタにすんのはやめてくれよ?」

 

「ごめんなさい」

 

「オイなんで謝っ……」

 

「ごめんなさい」

 

「な、なあ……」

 

「ゴルシさん」

 

「はい」

 

出た、ロブロイさんの覇気。

反骨精神旺盛のゴルシちゃんも、さすがに相手が悪かったようだ。

 

「さて、お話もひと段落しましたし、仕事を片付けてしまいましょう。ふふっ、ゴルシさんも結局付き合ってくれたおかげで、すぐに終わりそうです。本当にありがとうございます」

 

「うっす、姉御……」

 

「姉御?」

 

「あら、なんでもございませんわ、ロブロイさん」

 

「どうして急に敬語に……?」

 

「いえ、同学の士である貴女に敬意を表したまでですわよ」

 

敬語、っていうか、お嬢様だな。

しかしロブロイ殿の覇気、あれは無意識なのか。

ポテンシャルがすごい。

 

さて、姉御が言うのだからお喋りは終わりだ。

切り替えていこう。もうすぐレースも控えているし、メリハリは大事にしないと。

 

……レースか。

 

「んふふふふ……」

 

「あら、久々に聞きましたわね、その笑い方。相変わらず気味が悪いですわ」

 

んふふ。

胸が昂るばかりである。




更新ペースがどんどん遅れていく……。
実はこれ、私は悪くなくて。
全部CAPC○Mのせいなんですよね……許せない

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