デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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僕、ボク、ぼく
俺、オレ、おれ

同じ意味、同じ音なのに、文字にしたときだけ印象が違うってめちゃくちゃ面白いですよね。

何が言いたいかっておれっ娘なのに透明感ハンパないケイエスミラクルが性癖すぎて死にそアッ


こんなくだらないきっかけで

「タキオンさん」

 

「んん?どうしたんだい?」

 

「舌がちぎれそうなんですけど」

 

「あっはははは!カフェと同じことを言ってるね!さすがはロイヤルビタージュース・エクシード!効能を追求しすぎた結果なんかヤバめの毒性が発生し、耐毒性能の高いウマ娘しか飲めなくなった、究極の栄養ドリンク!確かに味は相当ひどいからねぇ!」

 

「栄養……?」

 

栄養の概念がこわれる。なんかヤバいらしい。

 

「っていうか、聞いてないんですけどその話。え?毒性あるの?嘘でしょ?タキオンさん、あんたまさか、他人に劇薬飲ませたんですか!?」

 

「あっ……。いや、大丈夫だろう?確かに説明が不十分だった私にも若干の落ち度はあるのかもしれないが、結果的に何も問題はないわけだし」

 

「そういう問題じゃないと思います」

 

年も明け、心機一転の風が吹く今日この頃。

 

デジたんも高等部になるのかぁ、なんて感慨に浸る暇はあんまりない。

僕はなかなか忙しい日々を送っているのだ。

G1戦線を駆け抜けるんだ、生半可なトレーニングじゃいけないからね。

 

そうなってくると、体力回復の手段は必須だろう。往々にして僕はデジたんを吸入……いわば喫デジたんをやったりして、自らのHPを回復してきた。

 

トレーニングは苛烈さを増していく一方。

というより自分から負荷を求めにいってしまう。

だからいよいよ喫デジたんだけじゃ足りなくなってきたんだ。残念なことに。

 

トレーナーさんは「いや、普通に休めばいいだろ。つか休め。トレーナーが言ってるんだから休め」と言っていたが、トレーニング中毒と化した僕にそんなことを言っても無意味である。

 

クソッ、肝心なところで肉体のしがらみに囚われる自分が情けないっ!

 

「僕だってこうしてタキオンさんに頼ってるんだから、毒も栄養も食らって血肉に変える覚悟はありますよ?でも、説明もなしじゃあ心臓に悪いですって……」

 

「ふふっ。今回のドリンクには心臓の作用を強め、血行を改善し疲労回復を早める効果があるからね。何も問題はない。安心してくれたまえ」

 

「むしろ恐怖が増しましたけど?」

 

「いやいや、大丈夫だとも!経過は良好だ!カフェのときの失敗をうまく活かせたようだ。我ながら自分の力が恐ろしい!」

 

「カフェさんに何してんですかタキオンさん」

 

「いやぁ、カフェが実験に協力してくれた(コーヒーにこっそり薬を混ぜた)のでつい舞い上がってしまって、とある成分を多めに入れてしまったんだ。するとまあびっくり、カフェはまるでカフェでなくなった。一つの身体に二人が入っているような覚束ない足取りで、私をブン殴ってきたよ!クククッ!」

 

「えぇ……」

 

ちなみに、タキオンさんの頬には湿布が貼ってあった。

わりとガッツリいかれたんだなぁ。正直言うと、因果がオホーしてるので、可哀想とかそういう気持ちが微塵も湧いてこない。

 

「失敗とは言うけれど、私は単に成功しない方法を発見しただけだからね!それに、今回私は、今までとは異なったアプローチを試みたのさ!その最たる例が……。おや、ちょうど来たらしい。ほら。彼女だよ」

 

「え?」

 

タキオンさんのラボのドアが開いた。

わざわざここに来る物好きはなかなかいないので、僕の知っている人じゃないかと思って見てみたら……。案の定だった。

 

「シャカールくぅん!いいところに来た!君と共同開発した例のブツを試しているところだったんだ!」

 

シャカファイのシャカの方。

ガラの悪い見た目とは裏腹に、ロジックの天才である。タキオンさんのケミカルトークについていける数少ないウマ娘。なるほど、変態理系組の共同開発となれば、とんでもないブツができあがるのも納得だ。

 

「言うなれば、シャカタキ・スペシャル……!」

 

あたまのわるい単語が口を突いて出てきた。これもまた性なり、とまあ、脊髄でものを考えてしまっている。

 

「おいおい。何を言ってるんだい。そこはタキシャカだろう?」

 

タキオンさんもあたまがわるくなってる。

 

「何の話してんだお前ら。つか、その妙な暗号じみた言葉を口にすンじゃねェ。悪寒がすンだよ、なんでかは分からねェけど」

 

シャカールさんのこのたじろぎよう。

やっぱり名前が右側(受け)に来るべきなんじゃないかな。それが基本スタンス。だけど、決めるときは決めてくれる人だから、左側(攻め)も十分イケるんだよなぁ。

 

「にしても、タキオンさんがそういうこと言うの、なんか面白いですね」

 

「私のルームメイト兼君の恋人はなかなか興味深い趣味を持っているからねぇ。私はいわゆるホームズ的思考のウマ娘で、興味がないことには無頓着なのだが。しかしデジタル君の趣味は、私の科学的アプローチとはまた別の、芸術的、叙述的アプローチによって、ウマ娘という生命の神秘に迫ろうとしているように見えて仕方がないのさ」

 

要約。ウマ娘って叡智やんけ……。

とまあそういう話である。

 

「とにかく、シャカール君との協力で、今回のブツは特殊な仕上がりになった。具体的には、彼女の割り出した、数学的に限りなく正しい理論では、やはり真の正解には辿り着けないという結論に至り、ロジックの冒涜に走ってみたのだよ」

 

「……えっと、どういうことです?」

 

「ロジカルクソ喰らえ!ロマン上等!コンタミ大歓迎!今回君に飲んでもらったのは他でもない、とりあえずなんだか面白そうなものを試験管に詰め込んだ結果偶発的に生まれたブツに、最低限の安全を保証するため少々手を加えただけなのさ」

 

仮にもシャカールさんに手を貸してもらっておいて、ロジカルから遠ざかるのはタキオンさんらしいと言っていいのか何なのか。

タキオンさんは一見理系を装ってはいるが、本質はアーティストと言って差し支えない。神秘を肯定し、追い求めている。そもそも人体が光る薬を作る時点で、もはや魔法使いの業なのだから。

 

シャカールさんはある意味それと対称的で、全てを論理で説明したがる。ラプラスの悪魔にでもなるつもりか、と思うほど。そんなロジカル大好きシャカールさんは、タキオンさんのあたおか発言を聞いてから、苦虫を噛み潰した汚ねぇオッサン百人と連続でディープキスしたみたいな顔になっている。

 

まあ、タキオンさんを止めるためだけの法整備はこの国、いや世界の急務である。

というかそんなもんを僕より先に飲まされたカフェさんが不憫でならない。今度珍しいコーヒー豆でも差し入れてあげよう。

 

「ところでタキオンさん」

 

「ん?」

 

「めっちゃ身体がアツいんですけど。あの、僕言ったじゃないですか。例のロイヤルビタージュースの延長線上にある栄養ドリンクが欲しいって。つまり疲労回復の効果だけが欲しかったんですよ」

 

「えーっ。そんなこと今言われてもなぁ……。別に構わないだろう。オロール君はいつも精力MAXだし、今更増強されたところで変わりないだろう?」

 

やっぱりそういう効果があったか!

まあそんなことだろうとは思ったよ!

 

「変わりありますからね!?むしろ普段から僕は理性を保ってること自体が奇跡みたいな生き方してるんですよぉ!?自分で言うのもなんですけど、僕の理性ってのは、ちょっとでも欲望にブーストかけられたら一瞬で月までブッ飛ぶんですよ!早くっ、僕が僕であるうちに、なんとかしてくださいよォーッ!?」

 

と、ここでシャカールさんがようやく口を開いた。

 

「あー、安心しろって言っていいのか。一応、なんとか歯止めが効くように数値の指定はしてるからよ……。まァ、天災に巻き込まれたと思おうぜ。お互いに」

 

「シャカールさん……」

 

優しさを感じる。

タキオンさんという天災の被害者としての共感。

 

ロジカルを使った天災の予測や対策はできても、阻止することは叶わない。世知辛いなぁ。

 

「それでは私はデジタル君を呼んでくるよ。君の有り余るリビドーを受け止められるのは彼女しかいないだろうからねぇ」

 

「えっちょっ」

 

なるほど、とことん肉体を苛め抜いた僕に待っていたのは、自制心、つまり精神のトレーニングか。

 

やってやろうじゃねぇかよこの野郎!

絶対に耐え抜いて……!

 

……うーん自制心なんてやっぱりいらねぇ!

我慢は身に毒!

欲望に余すことなく身を任せてやるぞぉ!

 

全部タキオンさんのせいだもん!

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれっ?……おかしいなぁ」

 

「えっと、オロール、ちゃん……?」

 

「デジたんを見てるのに、何も邪な気持ちが湧いてこないぞ……?」

 

シャカールさんが調整したとはいえ、僕の予想では、デジたんに抱きつくくらいしないと気が済まない、そう思っていた。

 

「えぇ?いや、襲われないに越したことはないんだけど、オロールちゃん……?どこかおかしいんじゃないの?保健室行った方が……」

 

「いや、ホントさ。なんだろう、もはや見てるだけで満足できるというか……」

 

「……悟りの境地?」

 

あり得る。

 

「もう、あたしが押し倒されないことに逆に不安を感じてきちゃったよ。本当に大丈夫?」

 

欲望がオーバーフローした結果ニルヴァーナ(悟りの境地)に達しちゃったんじゃないか。

 

「あ、待って。なんか『対話』できそう」

 

「何と!?」

 

「何か……。うん。何だろう。何かすごいのと」

 

「何!?なんなの!?」

 

次の瞬間、時間が止まったように視界が固まる。

気づけば僕は、暗闇の中にいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、あれかな。

うん、やっぱりウマ娘たるもの、三女神様とやらの恩恵に与っておくべきなのかな。

 

『因子継承ガチャ始まったか……?』

 

おや、言葉を口に出そうとしてもできない。

そのかわり、音が直接頭の中に響くような感覚がした。それほどまでにここが非現実的な空間であることが分かる。

 

『デジたんの因子!うへへへへ……!』

 

因子継承ってぶっちゃけ、行くとこまで行っちゃった後の神秘的行為と同義だよな。だってお互いの中身が混ざり合うんだろ?つまりそういうことじゃん。そういうことにしておこうよ。そっちのがアツいじゃん?

 

『さぁカモンっ!因子っ!』

 

受け入れる準備は万端だ!

僕もあれやりたいんだ!お前ら付き合っとるんかと見紛うほどに濃密にお手々繋いで因子ちゅっちゅしたいんだ!

 

『……Hey?因子?』

 

声が出ない分、一切揺らぎのない静寂が、余計に虚しさを引き立てる。

 

あれぇ?恥ずかしがってるのかなぁ?

因子ちゃーん?

 

しばらく待ってみる。

 

 

体感10分は待ったかな。

 

 

 

いや、もっと経ったな。30分くらい?

 

 

 

 

……小一時間は経った。

 

 

 

 

 

うん、3時間も待って何もないんじゃ、さすがの僕も精神が摩耗してくるぞ。

 

どうやらここには時間の概念がないらしいな。この調子じゃいつまでも僕は現実に帰れないんじゃないか。

 

因子継承ではないとすれば、この空間は一体?

 

考えろ、何か手がかりがあるはずだ。

 

……そういえば。

僕より先にタキオンさんのクスリを飲んだカフェさんは、「一つの身体に二人」入っているようであったと。タキオンさんは確かにそう言った。

 

で、そのあとタキオンさんに摩天楼珈琲拳を喰らわせたんだっけか。

 

カフェさんが他人をブン殴るなんてよほどのことだし、おそらく「お友達」の意思が介在しているに違いない。カフェさんと共にある、もう一つのウマソウルが、覚醒していたんだ。

 

つまり、だ。クスリの効能は、疲労回復、精力増強に加え「ウマソウルの覚醒」ではないのか?

 

『それじゃあ……!カモンっ、ウマソウル!』

 

ウマソウル、ウマソウルって、よく言うけど。実際ひどく曖昧な概念なんだよな。実際その存在を感じられる機会は少ない。感じようと思えば「コレかな?」というものはあるんだけど、曖昧なことに変わりはない。

 

ああ、例えばG1の勝負服。あれにはウマソウルの力が働いている。機能性もへったくれもない飾りだらけの服を着た時が一番速く走れるのがウマ娘という生き物だ。世界中の物理学者の悩みのタネである。

 

そんなぼやけた存在であるウマソウルと果たして対話ができるのだろうか。そう思うと期待が膨らんでくる。

 

『……なんだコレ』

 

カモンっ!ウマソウル!と威勢よく叫んだ数秒後、僕の眼前に砂粒のように小さな光が現れる。

 

手を伸ばすと掴み取れた。

顔に近づけてよく見てみる。

 

 

 

僕が、紛れもなく精神的に幼かった頃。つまりウマ娘として生を受ける前のこと。

 

地面に落ちていた、ダイヤモンドの欠片のような光る石。拾った当時は本当に珍しいものだと思ってワクワクしてた。今となっては、それが石英だとかの、砂に混じっている一般的な鉱物だと分かるけど、当時は見つける度にテンションが上がったんだ。

 

そういう輝きを、今僕が手に取った小さな光が放っていた。

 

『……キレイだな』

 

しばらく、儚さすら感じるその光に魅入っていた。

 

それから、なんとなしに上を見た。

 

『ッ!?』

 

先ほどまで真っ暗だった空間に、一面の星空が広がっていた。その星々は、今まさに僕の方へと降ってくるところだった。

 

この光は一体何なのか。

そんなこと、考えなくたって分かる。

 

ウマソウルだ。僕の。

 

『……もっとこう、太陽みたいにデッカいもんかと思ってたんだけどな』

 

ウマソウルは基本的に各ウマ娘に一つだ。

心象風景もそれに準じたものになると思っていたんだけど。

 

仮にウマソウルをいくつも受け継ぐウマ娘がいたとしよう。基本的にウマソウルは、ウマ娘の身体面や性格面、脚質や適正距離などなど、全ての特質に影響を与える。複数のウマソウルを受け継ぐなんてことしたら、芝もダートも距離も関係なく走る上に、とんでもなく気性難のウマ娘が出来上がるんじゃないのか?

 

 

 

……ん?

 

『芝もダートもわりかし走れて?性格はお世辞にも落ち着いてるとは言い難い……。ん?んん?』

 

どっかで見たことあるなぁ、そういうウマ娘。

誰だったかな?

 

 

 

僕じゃね?

 

瞬間、まるで脳を焼き切ってしまいそうなほどに膨大な、いわば記憶の奔流が、僕に流れ込んできた。

 

『……なるほど、そういうこと』

 

僕、理解(わか)っちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

 

結論から申し上げると、僕は確かに複数のウマソウルを受け継いでいる。

 

では、なぜそんな不安定な存在が、日々バカをやって平気な顔して暮らしているのか。

 

『……くっだらない。けど、そういうの大好きだ』

 

簡単に言えば、僕がデジたんガチ推し勢だから。

 

僕のウマソウル……。その正体は、別に名馬の魂でもなんでもない、モブウマ娘ですらない。

 

そもそも競走馬として一切の名を刻めなかった、たくさんの馬たち。

 

……砂粒みたいな星屑なのに、重すぎる。

期待に応えられなかった多くの魂は、当てもなく漂っていた。きっと寂しかったんだろう。「愛してくれよ」と、さっき星屑に触れた時、そんな叫びがたくさん聞こえてきた。

 

宇宙に浮かぶ惑星は、皆、塵から始まった。ほんの少し大きな塵に、周りが吸い寄せられて、だんだんデカくなった。

 

始まりは偶然にすぎなかった。

 

ただのつまらない人間だった僕の魂に、多くの馬たちの想いがくっついて、気づいたらリボーン。

 

愛してもらうため、集まった魂は貪欲に多くのものを求め、得たものを手放したがらなかった。だから僕は何事も決して忘れないんだろう。多くのウマソウルが集まったんで、メモリ容量はかなりのものだ。

 

ウィーズリー家の隠れ穴ばりに不安定な魂の集合体が安定した理由は、全ての魂に「ウマ娘」というコンテンツへの指向性があったからである。

 

同じ向きのベクトルを合成すれば、大きくなる。そんな当然の論理に従って、ウマ娘ワールドに流れ着いた魂。デジたん推しだった僕と「愛してくれ」と叫んでいた馬たちの魂は親和性バッチリだった。

 

 

だってそうだろ?

デジたんはウマ娘を心の底から愛してくれるから。

 

 

 

 

 

 

 

 

オロールちゃん?ねえ?ロールちゃん?」

 

「ふぁ……あ、、ぁ、?」

 

おや、いつの間にかデジたんが目の前に。

今度こそ因子継承できるかな。

 

「っ、オロールちゃん?……泣いてる?」

 

「え……?」

 

目元に手を持っていくと、なるほど確かにしょっぱい汗が流れている。

 

「いや、デジタル君。確かに泣いてはいるね。だが、涙腺から分泌された体液を垂れ流している、と言った方がいいかもしれない。顔中の穴という穴からいろいろ漏れている関係上、ね」

 

ちょっと待て、今の僕どんな顔してるんだよ。

 

「いやぁなかなか興味深い反応だったよ!まさか直立したまま硬直したのち、痙攣しつつ体液を垂れ流し始めるなんて」

 

僕がエモい心象空間でエモいことやってたってのに、現実じゃあだいぶきったねぇことになっていたらしい。

 

ていうかこんなくだらないきっかけ(ヤベェジュースの試飲)で意味深イベント起こるってどうなの?エモさとか、よく考えたら最初から無かった気がする。

 

「で、どうだい?新作RBジュースの感想は?」

 

「略さないでくださいよ。ヤバいクスリっぽさが増してます。……まあ、飲んでよかったな、とは思いましたね」

 

「ほう?どういう意味かな?」

 

「何と言いますか。無意識の領域を拡張できたような感覚?みたいなものがありまして。眠っていた力を引き出せるみたいなんです」

 

「ほう。そういえばカフェも言っていた。お友達との距離が縮まった気がすると。なるほど、ロジックをかなぐり捨てた結果、ロジックで説明できない事が起こったらしい」

 

「認めねェェッ!オレは認めねェぞ……!」

 

論理信奉者のシャカールさんにとってはかなり面白くない結果だろうな。僕は最高に楽しかったけど。

 

「このブツ、たくさん飲んだらもっと強くなれるのでは?」

 

「ほほう?ではもっと私のモルモット役をやってくれるのかい?……と言いたいところだが、無理だ。残念ながら」

 

「え?どうして?」

 

「最初に言ったろう。適当なものをぶち込んだせいで、毒性があるんだよ、このドリンク。ウマ娘なら多少飲んでも問題はないが、毒が分解されきる前に再び飲んでしまうと、どうなるか……。私にも分からないんだ、ククッ。とにかく、命に関わりそうなので、さすがに私も実験は一人一杯までと決めた」

 

「大丈夫ですかソレ?バレたらマズいんじゃないですか?」

 

「その通り!だから……訴えないでくれたまえよ。私のラボに不躾な輩が入ってくるのはいささか問題がある。本当によくないんだ。麻取とか呼ばれるかもしれないし……」

 

「麻取?」

 

最後の方は本気でお願いするような声だった。このマッドサイエンティストは本当にいつもやらかしまくってくれるよな。

 

「それにしても……。オロールちゃん、顔つきがなんか変わったような気がする」

 

「ホント?もしかして一段とイケメンになってる?」

 

「ううん。けど、何と言ったものか……。いろいろ背負い込んでるように見える、的な?」

 

「そうかな。ま、競走ウマ娘としてはいいことじゃない?背負ってるもののデカさで強さが決まるわけだし」

 

僕の走る理由は3つだ。

 

家族や友人など、応援してくれる人のため。

デジたんに似合うウマ娘になるため。

デジたんに惚れてもらうため。

……共に歩み『オロールフリゲート』を形作ってきた、名もなき仲間のため。

 

あれ、一個多いな?まあいっか。

 

「……ったく、何なンだよ。勝手に手伝いをやらされるし、頭のおかしいヤツらの頭のおかしい実験に付き合わされるし……。散々だぜ」

 

「すみませんねぇシャカールさん。でも、おかげで分かりましたよ。ウマ娘ってのはロジックでどうこうできる存在じゃないってことが。ロジックなんて所詮そんなもんです」

 

「ハ?今なんつったよテメェ。煽ってんのか?」

 

「はいっ!」

 

「正直に言うんじゃねーよ!もっとムカつくわ!ウッゼェなぁ!?つか今オレを煽ってなんの得があンだよ?これ以上ロジックを冒涜するようじゃあ、口だけじゃ済ませねェぞ?」

 

「煽ったらレース勝負に乗ってくれるかなぁと思って……?」

 

「は?」

 

「僕ですね、最近至る所でケンカふっかけるのにハマってまして。レース勝負がしたいからなんですけど」

 

「つまり、他人を煽ってヘイト溜めて、レース勝負する理由を方々で作ってるわけか?ハッ、バカかよ。……だが上等だ。バカだが、なかなか面白そうなことしてやがる。いいぜ、オレのロジックが正しいことを証明してやンよ」

 

よーし釣れた釣れた。

ついでにタキオンさんも釣っとくか。

 

「タキオンさんもやります?」

 

「え?私かい?いやまあ、別に構わないけど……。私のことは煽らないのかい?」

 

「え、うーん。まあいいかなって。タキオンさん、実質トレセンの便利屋みたいなとこありますし、頼み事言ったら聞いてくれるかなーって想いまして……」

 

「私のことを便利屋扱いしないでくれたまえよ。……とまあ、こんな感じでキレた、という(テイ)でいってみようかねぇ」

 

「あ、それでお願いします」

 

よーし、釣れた釣れた。

釣れたという体でいこう。

 

「雑すぎませんかタキオンさん」

 

「おやデジタル君。君は何を言ってるんだい。見たまえ私の瞳を。レースへの熱い想いで燃えているだろう。便利屋扱いされた恨みを晴らすために、私は走るのだよ!」

 

「えぇ……。タキオンさんがそれでいいなら、あたしは何も言いませんけど……」

 

「フッ、所詮は便利屋!ラボに籠って実験するしか能のない貴女じゃ僕には勝てませんよー!」

 

「ふぅン?この私アグネスタキオンが、何のために実験しているのか知らないのかい?そう!全てはウマ娘の可能性の先を知るため!私が走れば、生半可なウマ娘じゃ影も踏めないのだよー!」

 

「清々しいほどに棒読みの啖呵……!」

 

うおー!すっげーアツい勝負になるぞぉ!

 

「あンだけ因縁つけてきたのに、オレのこと放ったらかしにしやがった……」

 

 




うーん元馬の設定とか考えるのめんどくさいよなぁ
競馬知識もないし……どないしよか

せや!全部ぶち込んだろ!
→怪文書完成!

このくらいやっとけばどんなガバ設定でも文句言えないですよね。だって根底からガバなんだから(IQ2)

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