デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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あのー。
まあ、そういうわけで。

リコ◯コ見ました?
面白いですよね。アレ。
(完全にハマって周回したあげく、オマージュ元の映画も確認しまくった結果、更新に遅れが出たことをお詫びいたしません。ぼくは悪くない。リ◯リコが面白いのが悪い)


夜明け前が一番明るい

 

「ふええぇっ……。オッ、オペラオーさんが大変なことに!」

 

「アレ、止めた方が良かったですかね……」

 

やあ皆、僕だ。

今日はトレセン学園のイカれた仲間たちを紹介していくぜ!

 

まずはこいつ!

 

「オペラオーさんが文字通り虹色に光ってますぅ……!」

 

メイショウドトウ。

デカアァァァァい説明不要ッ!

 

……というのは半分冗談で、彼女はオペラオーさんと共にG1の掲示板をワンツーフィニッシュで独占した、割とヤベーウマ娘である。本人は気弱なドジっ子なのだけれど、実力はトップクラス。

 

店で食事をするとき、間違えて激辛料理を注文してしまう、というドジを何度も踏んだ結果激辛料理をものともしない耐性を身につけた、とか、親が転勤族だから語学が堪能、とか、所々にハイスペの片鱗が見え隠れしている。ドジだけど。

 

「……あの人、一体いくら他人に迷惑をかければ気が済むんでしょう。懲りない場合は確実に私の手で殺してしまうべきでしょうか」

 

「カフェさん、そんなキャラでしたっけ……?」

 

こっちはホントに説明不要。カフェさんである。

 

二人の、恋人……というか、まあ、いわゆる親しい相手、つまりはタキオンさんやオペラオーさんが、また何かやらかしたらしい。

 

 

 

で、当の二人だが。

 

「最高だよオペラオーくぅん!もっと君の本気を見せてくれたまえっ!」

 

「はーっはっはっ!ボクにかかればこれしきのことは朝飯前っ!」

 

なんかはしゃいでる。

 

 

 

「……タキオンさんが新薬を開発したとき、私は難を逃れるために練習場に来ていました。なのに、しばらくして彼女がなぜかオペラオーさんと意気投合しながら練習場にやってきて、あとは見ての通りです」

 

「説明ありがとうございますカフェさん」

 

トレーニングしようと思ってトラックに来てみたら、明らかに生物として超えてはいけない一線を越えた光り方をしてるオペラオーさんがいたんで、事情を聞くとこの通り。まったく恐ろしいな、あのマッドサイエンティストは。

 

「オペラオーさんが眩しいですぅ!」

 

「……恐ろしいことに、どうやら本人は、それが薬の副作用だと気づいていないらしいです。普段から自分が光ってるとでも思っているんでしょうか」

 

「カフェさん、なんか言葉に毒がありますけど。もしかして疲れてます?」

 

「……別に。ただ、私が趣味で集めているグッズに薬品臭がこびりついただけですから。苛立ちなどはまったく感じていません……。あの人には何を言ってもムダだということを再三認識しただけですから……」

 

「やっぱりカフェさんは疲れてると思います」

 

「……そうですか。……今度、タキオンさんを散歩にでも誘ってみましょうか。それで『振り向いてはいけない小道』にでも連れ込んで、証拠を残さずに……」

 

「疲れのあまり完全犯罪しようとしちゃってますよ。とりあえず落ち着きましょうカフェさん」

 

何もそんな、平和な街に潜む殺人鬼を葬るようなやり方をしなくたって、タキオンさんは1%くらいの確率で話し合いで解決できるんだから。

 

「オペラオーさんが、ホントに太陽みたいになっちゃってますぅ……!」

 

あんなに毒々しく光ってるナニカを太陽と形容するなんてことあるぅ?何か名状し難い宇宙的恐怖の餌食になったヒトのなれ果てみたいな見た目だけど。

 

「今度は何を作ったんだタキオンさん」

 

「……飲んだら気分が良くなる、とか言ってました。多分麻取に通報すれば一発で検挙できます」

 

「あぁー?なるほど?」

 

なぁんだ、いつものバイオテロか。

タキオンさん、存在自体がCBRNEテロみたいな人だからなぁ。

 

「……どうすれば、あの人は傍迷惑な実験をやめてくれますかね」

 

「一回、完膚無きまでボコってみるとか」

 

「それは名案ですね」

 

「野蛮すぎますよぉ〜〜〜!?」

 

カフェさんが初期設定を思い出しつつある。

まさしく血に飢えた猟犬の眼。

 

と、カフェさんのポケットがヴーヴーと震え出した。

 

「あ、電話……。はい、はい……。ええ、そうですね。……手伝ってくれるんですか?助かります……」

 

数秒で会話を終え、カフェさんは電話を切った。

 

「誰からです?トレーナーさんとか?」

 

「いえ、『お友だち』から……。タキオンさんをブン殴るときに力を貸してくれるそうです」

 

随分穏便(野蛮)な解決方法だな。

でもあの子、わりとヤンチャっぽいから、ちょっと納得。

 

「なるほど?……ていうか、なんで直接言いに来ないんですか」

 

「人ならざる者と身体が重なることにすら興奮を覚える常軌を逸した変態がいるからではないでしょうか……」

 

「僕のことですか?」

 

「はい」

 

カフェさんのお友だちとは仲良くしたいんだよなぁ。

だって、「お友だち」に触ると、透けるんだよ。なんかもう、めっちゃ楽しいし興奮するじゃん。皆そう思ってるはずだろ!

 

「お、お友だち……?」

 

何も知らないドトウさんが目をぐるぐるさせている。あ、コレがデフォか。まあいいや、困惑していることに変わりはない。

 

「ドトウさんは知らないんですね。実はカフェさん、地元じゃ有名なストリートレースチームの頭領(ヘッド)としてブイブイいわせた過去がありまして、今でも連絡すれば当時のお友だちを呼べるんですよぉ。タキオンさんの傍若無人っぷりに辟易したカフェさんは、仲間を連れてタキオンさん囲ってナシ()つける算段らしいです」

 

「出鱈目を言わないでください。というか、つくにしても、もう少しマシな嘘があるでしょう……」

 

「……?」

 

あんまり適当なこと言いすぎたせいで、ドトウさんが完全に置いてけぼりになってる。困惑しながら首を傾げるドトウさん、すっごく可愛いな。癒し系の頂点と言っても過言ではない。

 

ところで、ふと気になったことが。

 

「そういえば、こんなに尊み溢れる空間なのに、デジたんがいない……」

 

いつもだったら匂いを嗅ぎつけてどこからともなく現れるはずなのに。オペドトはデジたんの最推しのひとつだし、いないなんてこたぁないと思うんだけど……。

 

ん?

 

「……ねぇカフェさん。あの、トラックの向こうの方、見えます?なんかピンクと赤の物体が転がってるような気がするんですよ」

 

「……トレセンのジャージと、貴女のご友人の髪によく似ていますね」

 

「デジたん確定だぁ!?いつの間にか逝ってたんだ!?存在が希薄になってるせいで気付くのが遅れたぁっ!?くそっ、悔しいッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「確かにそこにいたんです。オペラオーさんとタキオンさん、まるで天使みたいに笑って……」

 

「デジたん。あのマッドサイエンティストの狂気を孕んだ笑みと、ケミカルに発光したナルシストの笑みを、天使と捉えていいものなのかな」

 

デジたん、無事回収。からの蘇生。

 

「そういやぁ、デジたんの笑みも天使のような笑みだーって言ってる人を前にネットで見かけたけどさ。天使ごときじゃ並び立てない可愛さだよ」

 

「あたしを推してくれる人って、もしかして結構いるの……?ちょっとむず痒いんだけど」

 

「デジたんにはイカれたファンクラブがついてるのを忘れたかい?アレ、いまやかなりの規模。大半が重度のウマ娘ヲタクで、その上『俺だけがデジたんの尊さを知っている』と思い込んだヤベーヤツばっかだから、推し活に余念がないよ!」

 

ちなみにその中でもデジたんのホントの可愛さを知っているのは僕だけである。デジたんは僕のもの。

 

 

 

「……あの、ちょっといいですか」

 

デジたんを愛でまくるターンが始まろうとしていたが、カフェさんに話かけられる。

 

「カフェさん?何か?」

 

「……()()、何ですか?」

 

うーん。

アレ、というのが何を指しているのかは分かる。ただ、答えることはできない。なぜなら僕もカフェさんと同じ疑問を抱いているから。

 

「オペラオーさんっ!なんかよく分かんねースけど、カッケーっす!」

 

「はーっはっはっ!そうとも!今のボクは宇宙一輝いている!太陽が嫉妬してしまわないか心配だよ!」

 

通りすがりのウオッカがオペラオーさんを持ち上げまくったせいで、さっきから光りっぱなしだし。

 

「さすがタキオンさんです!すごい!」

 

「フフフっ、褒めても紅茶しか出ないよスカーレット君」

 

通りすがりのスカーレットがタキオンさんを全肯定したおかげで、すごく得意気だし。

 

アレ、というのは結局、この惨状のことである。

理解できるが納得はできない。

 

何がマズイって、本来なら周囲が歯止めをかけるべきなのに、アホ二人(ウオスカ)が来たせいで収拾がつかないこと。

 

ちなみにドトウさんはオペラオーさんに連れられて被験体二号にされた。めっちゃ光ってる。

 

 

 

「……なぁ。アタシがトイレから帰ってきたら練習場が地獄絵図になってんのやめてくんね?」

 

「僕に言われても」

 

「なんだ、オメーが唆したわけじゃねーのかよ」

 

「僕のことをトラブルメーカーとしか見ておられない?」

 

「うん」

 

なんだと?解せ……るけど。

ところでゴルシちゃんよ。君はこの場を収められるか。世界でも指折りのツッコミ強者としての腕前を見せてくれ。

 

「じゃ、アタシ帰るわ」

 

「ホワイ?」

 

「いや……。誰だって地獄は嫌だろ」

 

「待ちなよゴルシちゃん。抜け駆けはよくないなぁ。犍陀多は決して天国には行けないんだぞぉ……?」

 

「は?いや、アタシはアレだぜ。垂れた糸の端っこ手に巻き付けて命綱代わりにしつつ、自分だけ助かることにしてんだ」

 

「えぇーっ、性格悪っ」

 

「オメーに言われたかねーよ!?」

 

「何でもいいから、逃げないでね」

 

「何でだよ。大体、オメーもこっから逃げればいいだろ。そこのピンク頭と一緒に」

 

デジたんが尊みを前にして逃げるわけないだろう?

僕もおまけでついていく。

 

「まさかのタキオペッ……!?そんなっ、そんなことが果たしてあっていいものなのかっ……!?」

 

なかなか相性はいい。

タキオンさんにオペラオーさん、二人とも周りの目を引くタイプのウマ娘で、騒音製造機である。

 

というかこれはタキオペなのか?ウオスカ?タキスカ?

うーん、分からん!

 

なんか、うるさい!ってことは分かる。

 

 

 

「つーかよぉ、アタシさっきからマックちゃんのこと探してんだけど。見なかった?」

 

「え?……見てないなぁ」

 

「なんだよー。こないだマックちゃんが球場で熱烈なコールしてる瞬間を隠し撮りしたから、からかってやろうと思ったんだけどなぁ……」

 

「なんで更にカオスを巻き起こすんだ、君が」

 

「これ以上アタシが何したってカオスはカオスのまま変わらんだろ」

 

「確かに」

 

狂った世界にただ一人の常人はむしろ狂人である。みたいなアレか?うーん、違うか。まあ何でもいいや。

 

「噂をすれば。向こうから来てるのはマックちゃんじゃないの?」

 

「おお。メジロのネタ枠のお出ましだ!」

 

メジロは全員ネタ枠だぞ。

……いや、話したことないけど、パーマーさんとかライアンさんあたりは真面目そうだな。

 

彼女らを差し置いてメジロの名をネタとして世に知らしめたマックイーンやどぼめじろう先生の罪は重い。

 

「……ゴールドシップ。あなた今、何か失礼なことおっしゃってませんでした?」

 

「気のせいだろ」

 

ネタ枠とか、全然そんなこと言ってない。

アレだ。妬ましいほどにお上品だって言ってた。

 

「ところで、さっきのあなたの話、聞こえておりましたわよ。からかってやるとかなんとか……」

 

「……地獄耳すぎねぇ?」

 

「覚悟はよろしくて?」

 

「うおぉい!?なんでだよ!?野球関係でキレてんだったら、せめてバットとか持ってこいよ!なんでポケットから普通にペンチ出してんだよ!?何するつもりだよそれで!マックちゃんよぉ!?」

 

 

 

 

 

 

 

ゴルシちゃんとマックちゃんもトラックで追いかけっこを始めたんで、いよいよ収拾がつかない。

 

「トレーニングしに来ただけなのに、カオスすぎてトラックに近寄れない」

 

「さっきのオペラオーさんなんか、輝きすぎて完全にスタングレネードと化してたもんね。尊みが溢れすぎて失明するところだった……。近距離で見ていたウオッカさんとスカーレットさんは無事でしょうか」

 

「血眼で見ていたデジたんが鼻血を出すだけで済んでるから、ウオスカも大丈夫だとは思うけど……」

 

デジたんはおそらく光エネルギーの衝撃を鼻へ受け流したんだろうな。

 

 

 

「すみません……。スピカの皆さんといると、いろいろと勘違いされそうなので、私はこれで……」

 

「カフェさーん?何言ってるんです?スピカは素晴らしいチームですよ!勘違いって、別にスピカは変人の集まりとか、そんなんじゃないんですから。スピカ〜よいとこ〜、一度はおいで〜!」

 

「……訂正します。変人の皆様といると、私も誤解されるので、離れます」

 

「変人!?誰ですかソレ?」

 

「主に貴女と……。あと、そこでいきなり地面にうずくまって荒い呼吸をし始めたデジタルさんのことです」

 

デジたんったら、すーはーすーはーって、呼吸音ASMRしてくれてる……。

 

「……いやいやいや!デジたん?何してんの?」

 

「アッハイ、どうも。えへへへ……。練習場に来るたびに思うんですけど、普段からこの場所を何人ものウマ娘ちゃんたちが走ってるじゃないですか。そう思うと、できるだけこの辺り一帯の地面の微粒子を鼻に詰め込んでおきたくなりますよね?」

 

「……まあ、分かるけど」

 

「分かるんですね……」

 

確かに僕もデジたんといる時にはできるだけ息をたくさん吸うようにしている。

 

匂いのメカニズムって、要するに、モノの分子が鼻腔に入ったとき、受容体がそれをキャッチし、匂いとして認識するわけだ。

 

つまり、うんこの臭いがするときは、うんこの一部分が鼻に入ってくるって話だ。()()の臭いがするときも同じ。

 

……まあ待て皆の衆。そう悲観するんじゃあない。

デジたんの匂いがする、ということはつまり。

 

デジたんの一部を体内に取り込んでいる、ということになるんだよ?

 

「すーはー、すーはー。うん、なるほど。確かにウマ娘の匂いがする。嗅ぎたくなるのも頷ける」

 

「だよね同志っ!」

 

「……気持ちが悪い」

 

「ガチトーンやめてくださいよカフェさん!?」

 

まあ我々の界隈ではご褒美ですけどね!

 

ところで、ウマ娘の匂いってなんやねん、と嗅いだことない人は思うかもしれないが。

僕も正直、本能で嗅ぎつけているもんだから、うまく説明はできない。ただ、何か心地が良いとか、漠然とした幸福感で心が満たされる感じ。デジたんの髪に顔を埋めたときなんか特にそうなる。

 

「……私、図書館にでも行ってきます。タキオンさんのこともお任せします」

 

何してんだよオロール!こういうことしてるからカフェさんに引かれるんだよ!ぶっちゃけ、クールな瞳で呆れられるのはキモチいいんだけどね。

それはともかく!

 

「カフェさん!ちょっと待って!」

 

「……何か?」

 

「……暇なら、もう少しだけ付き合ってもらえません?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう!なるほど!それは名案だね!私もオペラオー君に試した薬の効果を比較によって具体的に明らかにしたいと思っていたところだ!」

 

「こんな暮れ方に模擬レースって、何考えてんのよ。しかも唐突すぎるわね。まあ、タキオンさんがやりたいみたいだから私もやるけど……」

 

まあ、なんだ。

もともとトレーニングしたかった僕と、明らかに体力が有り余ってそうなオペラオーさんにドトウさん、デジたん。やるせない怒りを背負ったカフェさんとマックちゃん。憧れの先輩と一度は勝負したいであろうウオスカ。野生のゴルシ。

 

皆、なんだかんだ言って走りたい気分だろうし。

 

「ふあぁ〜っ!?私、光ってますぅ〜っ!?」

 

今更それを気にする?

というかドトウさんが虹色に光っている絵面、とてつもなく面白いな。

 

「はーっはっはっ!いい輝きっぷりだねドトウ!君はやはりボクのライバルに相応しい!」

 

「光り方でライバル判定すんのかよ」

 

カオスだなぁ。

 

「というか、さっきから見ていたのなら最初に声をかけてくれてもよかっただろうに、カフェ〜?」

 

「は?」

 

「……どうしたんだい?今日は珍しくおこなのかい?おこカフェなのかい?」

 

「なんですかその喋り方。私はただあなたに精算してほしいだけですよ。罪を」

 

「倒置法で身に覚えのないことを指摘しないでくれたまえ。私が何をした?」

 

「……」

 

カフェさん、無言の圧。

 

「あー?そういえば、実験の際にちょっとばかしガスが流出して、部屋が煙まみれになったようなならなかったような……」

 

「……なってます。そのせいで私のグッズが燻蒸されて、妙な臭いを醸しています。実験に失敗した、と聞いて、一瞬でもタキオンさんのことを心配した自分がバカらしくなりましたね」

 

「だが私は謝らない!」

 

「潰します」

 

「……すまなかったねぇカフェ。だからその、断定形で犯罪予告するのはやめてくれたまえよ」

 

華麗なる手のひら返し。

潰します、はさすがに怖いな。

 

「ところでタキオンさん。今回の薬、ドーピング効果とかあるんですか?」

 

「もちろん!とはいえ、肉体を直接強化しているわけではないよ。気持ちを上向かせる、いわばエナドリのようなものさ。とはいえ、オペラオー君に飲ませても、元々自己肯定感がマックスだったのでさほど効果は実感できなかった。ドトウ君の場合、もともと三秒に一回ドジを踏んでいたのが、気分が高まり集中力が増した結果、五秒に一回になった」

 

超強化されてるじゃないかドトウさん。

 

まあいい。別にこのレースでは勝敗はさほど重要ではない。

 

勝敗を決めるんだったら、もっとしっかりメンツを揃える。スペちゃんやテイオーやシャカールさん、あとはリョテイさんあたりか。

 

勝ち負け決めるんなら、僕がやり合いたい、と思ったウマ娘全員と、本気で鎬を削り合わなきゃならないからね。

 

だから、このレースはただの遊びみたいなもの。

 

「オロールさんよぉ、最近やけに血の気多くね?妙に生き急いでるよな」

 

「僕のウマ娘ライフの大事な節目はしっかりシリアスして決めたろうかと思ってて。こう、思わせぶりな行動をしておけば、自ずとシリアスさが出るかなぁと」

 

「それ言っちゃったせいでシリアスさゼロになったけどな」

 

「確かに」

 

ま、とにかく。

 

こないだタキオンさんのヤクをキメてハイになった時に、自分が何をすればいいか気付いたんだ。

デジたんの「最強」を証明できる相手とレースすること。それをしなきゃあ、ウマ娘として生まれた意味がない。

 

僕の生きる道の、大切な節目だ。

 

「……変なメンツだな。まーいいや。勝ったヤツは負けたヤツにジュース奢りの漢気方式でいこうぜ」

 

「イイねそれ」

 

やっべー!勝ちたいなあ!

すごく勝ちたいなー!

 

 

 

 

 

 

 

 

オペラオーさんから貰ったにんじんジュースが、走った後の五臓六腑に染み渡る。

 

うっひょー!負けたー!悔しいなぁー!

……ホントに悔しいよ。

 

レースといっても、ほとんどお遊びだったから、別にアツい実況が付くほどの展開じゃなかった。

尺の都合で省略されたとかそんなんじゃないぞ。

 

……何を考えてるんだ僕は?

 

とにかく、世紀末覇王の貫禄を見せつけられた。その後にドトウさんが続き、タキオンさんは三着。賢くて速いとか、チートだろ。次いでカフェさんが四着。

 

で、次はデジたん。やっぱり芝じゃ僕の勝ち筋が薄れるんだよなぁ。

 

僕は六着。うーん、なんというか、巨大な才能の偉大さというものを感じてる。僕が必死こいて木端の才能を積み上げ続けて辿り着いた境地に、彼女らはわずかの努力で到達できる。

 

あ、僕の後ろには、お互いにムキになって爆速スタートダッシュをかまし、後半バテたウオスカがついてきてた。

 

そのさらに後ろがテキトーに流してた野生のゴルシちゃん。プラス、ゴルシ絶対許さないウーマンと化したマックちゃん。ゴルシちゃんをレース直後にしばき倒すためにピッタリマークしてた。この二人はネタ枠だから順位はさほど関係ない。

 

「はあぁっ、キモッチいい……!」

 

面白いレースだった。

特にゴルシちゃんが親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙なしに見られなかった。

 

「走っただけで年齢制限かかるタイプの興奮状態になるんじゃねーよ」

 

「しょーがないじゃんか……!レースしただけでキモチいいってのに。考えなくても分かるだろ、このメンツがとんでもないことくらい。余計に興奮するよね。皆の走り方のクセも少し分かってきた……!次は絶対負けらんない……!」

 

手を伸ばせば彼女らに届く。

それがどんなに嬉しいことか。

 

安心してくれ、伸ばす手は無数にある。

 

 

 

夜明けはもうすぐだ。




脊髄でしかものを書けなくなってるます。
グッダグダですけども、一応、この先の道筋はなんとなく目処が立っておりますので、もう少しお付き合いください。


ところで
靴下決闘しようとするタキオペは尊い
タキオペ、アリだと思います(適当)

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