デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

76 / 88

脊髄で書いていると言ったな。

あれは嘘だ。

脳であれ脊髄であれ、中枢神経で書いてたら絶対もっとまともな話になっている、ということに気がつきました。

更新が遅れ気味なのは許してください。
複数小説を同時に進行させるの、想像の二万倍難しかった()

某彼岸花系アニメに触発されて衝動的に書いちゃった自分を痛くない程度に殴りたい気分です。


誰もが主役であり、脇役である

「はちみーにも致死量はあると思う」

 

「……?」

 

「いや、スペちゃん先輩。とぼけないで?飲み過ぎですからね?リッター単位で飲むもんじゃないんですよ?」

 

「……!」

 

「ダメだこれ。早くなんとかしないと……!」

 

スズカさんが海外行った途端にネタキャラと化しやがったスペちゃん。今日も今日とて胃袋の限界に挑戦している。

 

「ふふふ、オロールさん。私は大丈夫ですよ!なぜならっ、はちみーは美味しいので!」

 

「は?」

 

あまりの暴論に、素で「は?」と言っちゃった。

まったく、呆れるなぁ。そうやって論理をすっ飛ばして会話すると、話が伝わらないんだよ?僕は知ってるんだ。なぜなら自分がよくやるから。

 

というか、はちみーって値段が高いんだぞ?

中身がほぼ蜂蜜だから、硬め濃いめ多めのオプションを付けると四桁になる。それをリッター単位で……。

 

うっ、はっ、はんっ、んんんっ、おあぁ……!

 

そういうことするから、トレーナーさんが聞いたことない声で喘いじゃってるじゃないか。

 

ま、調子に乗って「お前らなんか飲みたいもんあるかー?なんでもいいぞー?」とか言ったのが悪い。

それを録音した上に拡大解釈し、高級キャロットジュースをせしめた僕は悪くない。

 

「トレーナーがおかしくなっちゃった……」

 

他人事みたいな目ではちみーを啜るテイオーが一番ヤバいやつかもしれない。

 

「ま、確かに、トレーナーさんの財布が羽毛のように軽くなった原因の一端、ホント、数ナノメートルくらいは、僕にあるのかもしれない。けど、はちみー頼んだのはテイオーとスペちゃん先輩だけだからね?」

 

デジたんを見習え。

運動後だからしっかりスポーツドリンクを飲んでる。

 

発端は、なんてことない、トレーニングを終えたゴルシちゃんのとある一言だった。

 

「あちー、喉乾いたぜー!」とまあ、至極普通の発言である。なぜなら今は夏。トレーナーさんは、愛すべき担当バのために、きちんと熱中症対策をする必要があった。

 

屋外トレーニングで火照ったウマ娘たちの体を冷ますために水分補給は必須。それから、前述の調子乗りまくり発言である。乙。

 

「今日こそ飲み屋のツケ払おうと思ってたのに……」

 

「僕が出しましょうか〜?」

 

「……教え子に奢られる気分、お前、どんなもんか分かるか?」

 

「分かってますし、煽る意図を含んだ上で言ってるんですよ!」

 

「わァ……ぁ……」

 

泣いちゃった。

 

いや、うん。再三確認するけど、決してトレーナーさんのことが嫌いなわけじゃない。むしろ大好きだ。彼が金欠の理由って、常日頃から僕たちのことを考えるあまり、トレーニング用品なんかに自腹を突っ込みまくるからだ。利他的な行動の結果金欠になってるんだよ。イケメンだよなぁ。

 

でもからかうと面白いんだよなぁ……。

 

「大の大人が泣いている様ほど滑稽なものはないなぁ」

 

「オロール、お前倫理どっかに落としてるぞ」

 

ゴルシちゃんが言う。

 

「分かった、言い直す。トレーナーさんが泣いている様ほど面白いものはないなぁ」

 

「おう。それでヨシ」

 

「いいのかよぉ!?」

 

当のトレーナーさんの渾身の叫びは、残念ながら、聴力の優れるウマ娘の耳をもってしても皆の心には響かなかったらしい。

 

「あ、の、なあ!お前ら!というか、主にオロール!確かに、レースに勝ちまくって良い成績を残しまくってるのはお前ら自身だ。だけども、俺だってけっこう頑張ってんだぜ?トレーニングメニュー組んだりとか、レースの出走登録とか……。大変なんだからな?」

 

「トレーナーさんの筆跡やハンコ等の個人データはコピー済みなので、出走登録くらいなら僕一人でできますね。あと、トレーニングメニューはデジたんでも組めますし」

 

「フゥ……ゥ……ゥ……」

 

泣いちゃった。

 

「メンタルクソ雑魚じゃねぇかトレーナー。もう帰って寝ろよ」

 

「ゴルシ……。大人はな、ただ寝るだけじゃない、もっといい疲労回復法を知ってるんだよ」

 

「また飲みに行くのかよ?つっても、金ねーじゃん。さすがのマスターも苦笑いしながら『今をときめくスピカのトレーナーさんにも、何か事情があるのでしょう』とか言いながら苦笑いしてたぜ」

 

「そうだよ、だから今日払おうと思って……。って、なんでお前がマスターと親しげに話してんだ?」

 

「マスター、めっちゃイイ人だもん」

 

ゴルシちゃんはトレーナーさんと同じく常連客である。世界一カッコよくノンアルを飲める女、それがゴルシちゃんだ。

 

こないだはバーの一角を間借りして、サックスソロライブを開いていたよ。

ウマ娘随一と言っていい圧倒的なスタミナの基盤となる規格外の肺活量から繰り出される重厚かつ繊細なサウンド、その器用さが光る熟達した演奏スキル、黙ってれば超絶美人なビジュアル、謎に高いファッションセンスが織りなすバーの雰囲気に調和した身なり、全ての要素が美しかった。

 

ホント、ムダに美しかった。

 

「……今日のトレーニングはこれにて終了だ。俺は飲んで帰って寝る。お前らも早寝しろよ。特にゴルシ、夜間の外出は禁止だぞ、禁止!大体、週刊誌あたりにネタ抜かれたらどうすんだ?」

 

「アタシ、頭の()()を外すと誰だか分からなくなるって専らの噂なんだ」

 

「……確かにそうだな」

 

納得するんかい。

 

 

 

 

 

 

 

 

「はちみーを水道水か何かと勘違いしてる?」

 

「……?」

 

「首を傾げる前に、君が今週飲んだはちみーを数えてみてよ。テイオー」

 

「……15杯だね」

 

「今日は何曜日だっけ?」

 

「……木曜日だね」

 

「おかしくない?」

 

「……キミのような勘のいいウマ娘は嫌いだよ」

 

トレーナーさんが泣いちゃってから数日後、あいも変わらずはちみーづくしのテイオーである。

 

学園近くにやってくるはちみーの移動販売車は、トレセンのウマ娘たちにとって都合が良い。事実、トレーニング終わりのはちみーは多くのウマ娘たちのささやかな楽しみとなっているらしい。

 

ただし、テイオーなんかは確実に中毒者だ。

 

一日三本は飲んでるじゃないか。朝昼晩飲んでるのか?

 

ていうか、出費が万超えてるじゃん!

 

「ボクよりもスペちゃんの方がすごいよ。ハチミツマシマシアマメマシチョモランマを常飲してるんだから」

 

「何、その頭が痛くなりそうな名前……」

 

ラーメン屋かっての。

 

「いくらなんでも、一週間に出費が万を超えるってどうなのさ。ねぇデジたん、君もそう思うでしょ?」

 

「ヘッ……?アッ、ハイ!そ〜デスネ!」

 

む、何やら挙動不審。

 

「……今週だけでグッズに六万円溶かしたとか、口が裂けても言えないッ!」

 

なるほど、じゃあ聞かなかったことにしよう。

 

「あっ、噂をすればスペちゃん先輩が来たみたいだ……。ってなんだアレ?バケモノかな?」

 

彼女が胸に何かを抱えながら歩いてくる。

そう、抱えているんだ。

 

普通、飲み物ってのは手に持つもんだよね。抱えるって何さ。おかしいでしょ。

 

そのサイズとくりゃ、デカいったらありゃしない。チョモランマよりデカい。

 

スペちゃんがもう謎の貫禄を纏っている。

未来から来た筋肉モリモリマッチョマンのサイボーグが暴れ回る例の映画のテーマ曲がよく似合う。

 

夕日を背に、デデンデンデデンと歩いてくる。

 

「ふぅーっ!やっと買えました!いつも遅い時間にしか買いに行けないからなかなか手に入れられなかったのが、遂に!」

 

「スペちゃん先輩。ソレ……何?」

 

人の胴体ほどあろうかという太さの容器に、見るだけでズッシリとした重さが伝わってくる濃厚なはちみーの揺らめく様。もう致死量じゃないか?

 

「これですか?フッフッフッ……。これははちみーの屋台に通い続けたものしか買えない伝説の裏メニュー!はちみー、ハチミツマシマシアマメマシマシオリュンポスですッ!」

 

「オリュンポス」

 

IQの低そうな名前だな。

深夜テンションのアホが考えたような名前。

 

しかし一番アホなのはその量。

裏返ったァッッ!とかやってる人じゃなきゃ飲めないレベルのアレだ。

 

「ごくっ、ごくっ、ごくっ……!」

 

一気飲みするもんじゃないだろソレ。

致死量だって。蜂蜜がどうとかソレ以前に、水分が致死量だって。

 

「……ぷはっ!美味しい〜っ!」

 

生物としての領域を超越した所業をやってのけながらも、しっかり可愛いのがまた恐ろしい。

 

とんでもない大食いってのが実に主人公らしい、と言えばそうなのかな。

 

たとえ量がイカれていようと、美味しそうにモノを食べる様子は見ていて気分がいいし。

 

「……何を飲み食いしても可愛く見えるのはスペちゃん先輩の才能だよねぇ。実際、これくらい食事量がブッ飛んでる方が、キャラとしては魅力的だ」

 

「流行りの漫画は得てして大食いキャラが主人公を張ることが多いですからね。熱血ハートを分かりやすく明示できるため、多くのクリエイターに愛用される属性ッ!古来よりジャパンのポップカルチャーとは切っても切り離せない属性、それが大食い!」

 

解説助かる、デジたん。

 

「……ハッ!?もしかして、わ、私、大食いキャラって認識されてるんですか!?」

 

「当たり前じゃないですか」

 

毎日ボテ腹晒しておきながら、よく赤面できるな。スペちゃんが大食いかどうか、百人に聞けば千人が「はい」と答えるだろうに。

 

「そんなぁ……」

 

大食いキャラ認定されたくないと本気で思ってるんだったら、今すぐにそのはちみーガブ飲みをやめろ。ごきゅっ、ごきゅっ、て音がハッキリ聞こえる勢いで飲むんじゃない。

 

「フッフッフッ……。甘いねスペちゃん。はちみーのように甘い。真のハチミストは、そんな風に一気飲みしないんだよ?ストローでゆっくり、着実に、甘味を舌で味わうんだよ!」

 

「ハチミスト」

 

知らない単語だ。

 

「スペちゃん先輩、そんなにがぶ飲みしていいの?最近のスピカはかなりいろんなレースに出走してるから、体重管理をサボる暇なんてないと思うけど……」

 

「……いっぱいトレーニングをすれば、その分エネルギーを使うので!大丈夫です!」

 

甘いモノを食べると頭の回転が良くなる、ってよく言うじゃん。

多分、スペちゃんはグルコースを摂取しすぎて、逆にオーバーフローしてるんだ。甘味の摂りすぎでエネルギー源がカンストして0に戻った。

 

「……今んとこ、二人ともレース前にはコンディション整えてしっかり全力出してるから、僕は何も言わない。けどもしはちみーの摂りすぎで太り気味になったら、チームのメディック役をやらせてもらってる僕が、心を鬼にして対処しようと思う」

 

「だ、大丈夫ですよ!……多分!」

 

「オッケーデジたん。一週間前と今のスペちゃん先輩の体重の差を教えて」

 

「……言っちゃっていいんですかねコレ」

 

「スペちゃん先輩。現実を受け止める覚悟は?」

 

「……ふぅー!」

 

息を吸っても吐いても体重は変わらないぞ。

さあ、己の罪を数えろ。

 

「2キロ増加してますね。御身体に触れさせていただければ小数点単位で測れますが。あのぅ、どうしますか……?」

 

「けっ、けけけ、けっ、こけっ、結構です……」

 

日本総大将がこんなんで大丈夫なのか。

 

「フッフッフッ!スペちゃんたら、だらしないなぁー!ハチミストとしてはまだまだだね!ボクを見習って……」

 

「あの、テイオーさんも。増えてます……」

 

「ピッ!?!?」

 

皇帝の後継ぎがこんなんで大丈夫なのか。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく経ったとある日のこと。

 

「あっ!?オロールちゃん、そっ、それは……!」

 

「んー?デジたんも飲んでみる?……ていうか飲んでくれないかな。僕一人じゃこの量は厳しい」

 

僕が買ったのはハチミツマシマシアマメマシチョモランマだけど、これでも普通のウマ娘にはキツい量だ。

 

「おそらくこれは『主人公』にしか飲むことが許されていない、聖なるはちみーなんだ……!頼むよデジたん、君の力を見せてくれっ!」

 

テイオー、スペちゃん、……あとはオグリさんあたりか。チョモランマに挑めるのは選ばれし者なのだ。

 

「あたし主人公じゃないけど……。まあ、もったいないし」

 

「間接キス」

 

「ちょおっ!?やめてよ!?意識しないようにしてたのに!?」

 

僕も意識してなかった。

まあ、自然と口から言葉が出たよね。

 

デジたんはちっちゃいんで、クソデカコップを抱えるとサイズ感が浮き彫りになって可愛さが増す。これはいい発見をした。

 

「お、おぅ……?なー……んー?えぇ?なっ、んんっ!何ですかコレ?甘すぎません?」

 

「だよねぇ?いや、美味しいんだけどさ。ずっと飲んでると甘ったるくてしょうがないよね。チョモランマでこうなるんだから、スペちゃん先輩って相当舌がイカれてるんだね……」

 

格の違いを見せつけられた気分だ。

 

 

 

「と、こ、ろ、で。君ぃ、さっきなんて言った?」

 

「え?……何ですかコレ?甘すぎません?」

 

「その前」

 

「ちょおっ!?やめてよ!?意識しないようにしてたのに!?」

 

「もーちっと前」

 

「えーっと、何だっけ……。あ、そうだ。確か『あたし主人公じゃないけど……』」

 

「それだよ、それ!聞き捨てならないなぁ!」

 

デジたん、実はかなりの主人公属性持ちである。

何せ、「勇者」とまで呼ばれた、G1六冠万能脚質のウマソウルを受け継いでいる。

さらに、他人を思いやれる性格で、いつも人助け……ウマ娘助けになることをやってる。

 

「……デジたんとはもう二年以上一緒にいる。だから、君が自分を卑下する癖があるのは知ってる。前は自己肯定感が低いからそうしてたじゃん。最近はそうじゃなくて、ただ単に、他人と話す時に謙ってるだけってことも知ってる。君は優しいから、そうするんだよね」

 

「……あ、えっ、と。オロール、ちゃん?ちょ、近い近い近い!シリアスな雰囲気にそぐわないくらい近い!」

 

デジたんの視細胞をカウントできそうなくらいに近寄ってるけど、これくらいやれば、僕が今からする話が彼女の記憶に深く刻まれるだろうと思ったのだ。

 

 

 

「この夏が終わったら、当たり前だけど、次は秋だ」

 

「……」

 

「何があるか知ってるでしょ?」

 

僕にとって、自分の生きた道の集大成となるイベント。

 

デジたんにとっては、輪廻すら超える因縁に決着をつけるための戦い。

 

「秋天の前に、君に話しときたいことがある」

 

「……」

 

「こういうさぁ、なんでもないような日じゃないと、話す気が湧かないんだ。だからさ、その。……聞いてほしい。僕が普段はこういうことするガラじゃないの知ってるでしょ?」

 

デジたんはこういう時、決まって笑みを浮かべて受け入れてくれる。それが何より嬉しいんだ。

 

 

 

「……今まで、別に隠してたわけじゃないんだけど。デジたん、僕は──」




はちみーって何なんですかね。

はちみーは蜂蜜?
いや、モロ蜂蜜はさすがにカロリー過多ってますもんね。

つまりはちみーははちみーであってはちみつではないということか!!

……分からん!(IQ2)

あ、なんかシリアスみたいになってるけど全然そんなことないんで安心してください(ネタバレ)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。