デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

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ストックなんかねぇよ
うるせぇよ
黙れよ

書き溜めなんかねぇよ

オーバーウ↑ォ○チこそ正義
ストックなんかねぇよ
正しいのは俺

訳:更新遅れて申し訳ありません
決してオーバーウォ○チやったりとか、HUNTER×HUNT○R読んだりとか、リコ○コのスピンオフ見たりとか、ゆるキ○ン△見たりとか、そんな理由でサボったりなんかしてないです。多分。

……HUNTER×HUNT○R一気読みはさすがに時間かかるっすね()



雨舞台の始まり

勝負服とはッ!

 

その名の通り、ウマ娘たちがここぞという勝負、すなわちG1レースでのみ着ることを許された衣装であるぅッ!

 

原理は不明だが、これを着るとウマ娘は120%の力を発揮できるのであるッ!

 

そしてッ!

 

僕はデジたんを拝むだけで全宇宙の原子を集めた数でも足りないくらいの倍率で力を発揮できる!

 

勝負服を着込み、ターフの上に立つと、一体何が始まるか分かるか?

 

第三次大戦……ではなく、最高のレースが始まる。

 

 

 

「あっ……あっあっあっあっ」

 

「きっしょいなお前。よく十万人以上の観衆の前でエクスタシーできるなオイ」

 

「ふぅーっ、ふぅー……!危ない、もう少しで語尾にハートがつくとこだった♡我慢できた♡」

 

「手遅れだぜ」

 

おおっと危ない。えっちなのはよくない。

 

「よし。……ビークール、アンドステイクールだ。一旦落ち着こう♤」

 

「それはそれでなんかダメな気がするんだが」

 

おおっと危ない。キャラブレはよくない。

とりあえず、薄っぺらな嘘でもいいから平静を取り繕わなければ。

 

 

 

なんたって今は一世一代の大舞台。

 

そう、秋天である。

 

「ダートが得意なお前が、芝のG1に出走するなんてな。デジタルもそうだけどよー、ホント変態だな」

 

「変態は芝とダート、両方の性質を併せ持つ♧」

 

「お前マジでどうしたよ?」

 

「……ごめん。ちょっと興奮が冷め止まなくてキャラがおかしくなってる」

 

変態は変態でも、どこぞの戦闘狂ピエロとはベクトルが違うのだ、僕は。

 

……いや、どうだろう。

ハッキリと自分の気持ちを言葉にしてみようか。

 

僕は今、楽しい。このレースに集った猛者たちと競えるのが楽しみでたまらない。ゾクゾクが止まらない!

 

 

 

『各ウマ娘、ゲート前に集まりました。今年のレースで名を轟かせたウマ娘たちが一堂に会するこの秋天皇賞、今まさにその幕が切って落とされようとしています!一体どんなレースになるのでしょうか、一秒たりとも目が離せません!』

 

そうとも。僕はやってのけた。

僕はやってやったよ。デジたんもやった。

僕たちは走ったんだ。

 

どの世界の歴史にも存在しなかった僕は、レースに勝利することで存在証明を……。いや、そう呼ぶことすら生温い。心の底から走りたくてしょうがなくて、逆に自分が誰かも分からなくなるくらいの勢いであらゆるレースに挑み、今日ここに立つ権利を勝ち取ってやった。

 

デジたんもだ。彼女はアグネスデジタルであってアグネスデジタルではない。

 

スピカでの研鑽、そして僕との絆は、確かに彼女の力となった。

 

芝とダート、どちらも「かなりの高水準」などではない。「最強」だ。

 

つまり、彼女はウマソウルすら超えたのだ。

 

『注目の一番人気はやはりこのウマ娘!5枠6番、テイエムオペラオー!世紀末覇王伝説の新たな1ページが生まれるか!?二番人気、2枠2番メイショウドトウは食らいつけるのか!』

 

今日集まった観客はしっかり目を凝らしておくべきだね。

 

「最強」が集うこのレースを生で拝めるのは、一生に一度の幸運と言って差し支えないだろう。

 

……「最強」を自称するのは流石にイタい、と思ってるヤツ、ちょっとこっち来い。

 

そう、そこのキミだ、キミ。

僕より最強に変態な自信あんのか?

はい論破。

 

……まぁ、そういうことである。

 

「つーか、マジ今日のメンツ狂ってんなぁ。性格にかなり難のあるヤツらと、それに振り回されるヤツらが全員集合。まぁ、スピカほぼ全員出走ってのが一番ヤバいけどな」

 

海外で大活躍中のスズカさん以外のスピカ。それとオペドト、タキカフェ。エアシャカール。それから、なんだかんだいって一番のダークホース、キンイロリョテイ。

 

……リョテイさんには、僕から喧嘩を売ったわけじゃないからな。逆に、彼女から売られたようなもんだ。

 

彼女には戦う理由がある。

 

つまり、ポテンシャルの塊が本気を出すってこと。

怖いね。

 

もちろん、他のウマ娘も怖い。

 

オペラオーさんなんかその筆頭。

純粋な実力だけ見れば、世紀末のG1を総ナメしたウマソウルがチート性能すぎるのだ。

 

「はーっはっは!ボクこそ最強ッ!」

 

うん、それはそう。

……今の僕やデジたんなら、条件次第ではいい勝負ができそうだし、場合によっては勝てるかもしれない。しかし総合的な能力では負けている。体調、策謀、そして運。全てが絡み合って初めて勝てるかもしれない相手。

 

 

 

「オっ、オペラオーさん〜……!き、今日こそ……!」

 

それにサラッと追い縋るドトウの姉御も、なかなかブッ飛んでる。

「オペラオーがいなきゃ勝ってた」なんて言うのは、さすがにいろんな人に失礼すぎるから言わないけどさ。彼女は強い。強すぎる。僕は必ず苦戦する。

 

 

 

「ったく、今日はさすがに全員ハジケてるせいで、オーラがハンパじゃねー。威圧感ヤベーっての。これじゃあ観客は浮き足立っちまうんじゃねーのか?てことでゴルシちゃん、動きます」

 

ゴルシちゃんは脚にディーゼルエンジンを搭載しているかの如く、凄まじい捲りでレースをぶち壊してくる。

 

何の前触れもなく、観客席の前でマイコージャクソンのライブでの登場シーンを再現するようなウマ娘だが、強い。

 

 

 

「……負けねー」

 

「こっちだってアンタなんかには負けないわよ?」

 

「言ってろ、勝つのはこの俺だ。……ま、精々頑張ろうぜ。俺もお前も、お互いにな」

 

「言われなくても分かってるわよ」

 

『一番人気こそ逃してしまいましたが、今日もこの二人のライバル対決は見逃せません。今も二人は何やら言葉を交わしているようです。レースではライバル、しかし仲はかなり良いとのこと。そんなわけで、かなり仲睦まじい様子が見受けられますね』

 

「はっ、はぁー!?ちげーし!?別にコイツとは仲良くなんか……!とにかく、そういう言葉じゃ表せねー関係じゃねーんだよ!?クソッとりあえず離れろお前ッ!」

 

「アンタから近づいて来たんでしょーが!!」

 

ウオスカも言わずもがな。片やダービーを制した女傑、片や掲示板入り率120%の先頭狂。

 

 

 

「こないだの練習じゃボクが勝ったよねー!今日もマックイーンには負けないよ?」

 

「あら、テイオー?その前の練習では私が勝ちましたわよ?」

 

「確かに、正直に言うと、今日の勝負はどうなるか分かんない。キミもかなりトレーニングしてたもんね。特に減量には気合が入って……」

 

ぶっ潰してさしあげますわ

 

「……ゴメン、マックイーン」

 

テイオーは全身バネウマ娘かつ主人公補正がかかってる。

マックちゃんは胃袋がデカい。

 

「……あなたのトレーナーさん、すごい勢いで応援してますね」

 

「おや、カフェ。よくあの観衆の中からモルモットレーナー君を見つけたね」

 

「光ってますから」

 

「ふぅン、なるほど。確かに」

 

タキオンさんは頭がおかしいし、それに振り回されるカフェさんはただただかわいそう。とはいえ、本当に強いのは狂人だ。なぜならブレーキがないから。それに、カフェさんも血に飢えた猟犬の因子を継承しているのでなかなか恐ろしい。

 

「……クソッ!この前ファインに言われた『データキャラはかませ犬らしいから気を付けてね』とかいう一言が頭から離れねぇッ!いいだろ別にッ!データキャラでもッ!つーかキャラってなンだキャラって!オレは別にキャラ付けでデータ取ってるわけじゃねーかンな!?」

 

誰にツッコミを入れているのか分からないシャカールさんは、データキャラなのでかませ……とかそんなことは全然ない。アナーキーかつロジカル、実際にレースをするとなったらリアルに危機感を覚える相手だ。非の打ち所がないロジックで、詰将棋のようなレースを展開してくる。

 

ま、僕は将棋盤をひっくり返すタイプだから、彼女とはいい勝負ができそうだな。

 

ああ、そうとも。

僕は楽しいさ。

 

 

 

なんたって、今日は雨だからね。

 

 

 

 

 

 

 

 

荒れるなぁ。

 

天気も、レースも。

この世界丸ごと荒れてんだよ。主に僕のせいで。

 

だってそうだろ?

 

本来、競馬史にもウマ娘史にも存在しなかった僕が、方々にケンカを売りまくったおかげで、よく分からんメンツが揃ったレースが始まろうとしている。

 

「ねーえデジたーん、デジデジたーん、おデジー。……尻尾吸わせてー?」

 

「……十万人の前で?」

 

「うん」

 

「恥ずかしいよね?あたしもオロールちゃんも恥ずかしいよね?あの、あたしの自己肯定感云々の話以前に、生命体として最低限度の矜持すらズタボロになるレベルだよね」

 

「そーだね。うん。ゴメンネ、冗談だよ」

 

「ホントー……?」

 

ホントさ。

 

あ、僕が尻尾吸引しようとしてたことがホントって意味だよ。いやぁ、あんまり大舞台なもんだから興奮が治らなくってね。

 

 

 

「どーよ、デジたん。僕の勝負服。実際、君とG1の舞台でまみえるのは初めてだったよね」

 

「すこ」

 

「そっかそっか。語彙力逝っちゃうくらいか。君の反応が可愛すぎて僕も逝くぞ、どうしてくれるんだ」

 

やっぱりイイよな、勝負服。

 

ほら、いつだったかにデザインを考えたヤツさ。

ターフのドレスコード。

 

しかし、僕みたいな歴史の爪弾き者なんかがパーティに参加するには、やっぱり賊として侵入するしかないわけでね。

 

オペドト劇場のスペシャル公演?タキカフェのマッド実験?ウオスカの熱血ライバル勝負?テイマクの主人公補正?スペちゃんの大食いショー?リョテイさんの伏せカード?ゴルシちゃんのハジケリスト狂走曲?

 

そんなもの、全部ぶっ壊れるよ。このレースで。

 

僕は歴史の改竄者なのだから。

 

……うん、やめようこのキャラ。さすがにイタいな、カッコつけすぎてダサい。

 

ま、語り口がムダに荘厳で厨二臭いだけで、言いたいことは全て網羅している。要は、僕が自分のことをある種の賊と認識していることが重要だ。

 

すなわち、この海賊チックな勝負服が、僕の心身共に馴染むこと。着ていれば最高のコンディションで走れること。それが大事だ。

 

 

 

「……ねぇデジたん。それ、良くないよ」

 

「え?」

 

「いや、その。ウマ娘ってさぁ、濡れると映えるよねっていう話」

 

「……一応、勝負服だし、その辺の対策は抜かりないケド」

 

「いや、そういう意味じゃなくて。汗、涙、雨、とにかくなんでも、濡れるウマ娘っていいよね……っていう」

 

「あ、それは分かりみ」

 

「だろー?てことで、どーよ、僕。水も滴るいいウマ娘!勝負服のカラーが黒ベースだから、なかなか空模様にマッチしてキマるでしょ。装飾の金属パーツも、テカリ具合が増していい感じ!」

 

今の僕、相当にカッコいいぞ。ファンが増えるな。そして、増えたファンはもれなく全員デジたん送りにしてやる。

 

「これからレースだよ?見た目なんか気にしてられなくなるよ?」

 

「でも君、あれだろ。ウマ娘ちゃんが汗水泥水まみれになるの好きだろ」

 

「無論大好物です」

 

 

 

「なら安心しなよ。今日の僕は今までで一番の走りをやってやる。泥まみれになっても、本気で勝ちを狙いに行く」

 

 

 

デジたんを最も輝かせるには、やはり僕が彼女の敵役をやらなきゃダメだ。

 

正々堂々卑怯な手も使いまくって戦う。

 

万全の態勢で走る。

 

「んふふふふふ……!こんなこともあろうかと、重バ場特化のシューズもチューンしておいたんだ!今の僕に死角はないッ!」

 

「いや、お前あれじゃん。チーム全員分のシューズ用意してただろ。蹄鉄も。珍しいことに親切だったからビックリしたぜ。そのおかげで、今日のレース、アタシも地面にしっかり蹴りかませそうだからいいけどよ」

 

……うん。

だって、だって、しょうがないじゃん?

ふしぎなちから(ぜんせのきおく)で雨が降るであろうことはなんとなく予想していたけれど、そうとなれば対策はするじゃん?

 

でも、皆が絶好調の状態で戦いたいじゃん?

一般に、ウマ娘は全てのバ場に対応できるようにトレーニングする。しかし、やはりベストの走りを追求する際には良バ場を想定する。

 

僕はトレーナーさんの放任主義をいいことに、雨天時の走りを磨いた。もちろん、皆も巻き込んで。

 

「とにかくっ!良馬場よりタイムが落ちてしまうのは否めないが、それも最小限にまで抑えられてるはず!てか、正直なところ、雨の悪影響を極限まで削いだ君らと走りたいんだよ僕は!ダートが得意な僕は、こういう時にしか芝で強くなれないんだからさ。……頼むよ、ゴルシちゃん。競争相手を潰す気で走ってもらって構わない。僕はそうする」

 

「わざわざ口に出してんのはお前だけだ。ここにいるヤツ全員、自分が勝つ気マンマンだろーが。……アタシ含め」

 

「君が本気になるとは。珍しい」

 

「だって勝たねーと地球滅ぶし」

 

「あー、なるほど?」

 

まーたいつもの狂言か。ゴルシちゃんらしい。

雨雲の向こうに光る円盤が見えた気がするが、まあ気のせいだろうし。

 

ま、彼女には勝たせないさ。

仮に地球が滅びかけたら、その原因を根本からどうにかする仕事は全部ゴルシちゃんにやってもらおーっと。

 

 

 

『各ウマ娘、ゲートイン!秋の盾の栄光を手にするのは誰か!今まさに、戦いの火蓋が切られようとしていますっ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「スターティングゲートってそわそわするよね。自分で蹴り飛ばすシステムにならないかなぁ」

 

「アタシのセリフパクんなよ」

 

「ごめんちゃい」

 

「おーう、謝罪ならオメーがレースに負けてから聞くぜ」

 

「えー?じゃ今のうちにたくさん謝っといてあげるよ。君が僕の謝罪を聞ける最後のチャンスだからね」

 

ごめんね、強くって……。

 

いや、ホント。これくらいの気持ちでいなきゃ、レースを楽しめないから。

 

 

 

「ふゥむ。なあカフェー。私はこのレースのために、先月くらいからモルモットくんにひたすら活力剤を飲ませてトレーニングの効率を上げていたんだが、これってドーピングになるのだろうか」

 

「……他人なら、セーフでしょうね。嘆かわしいことに」

 

ほぅら聞いたか今の。

G1ってのはアレくらい頭がおかしくないと走れないんだぞ?

 

 

 

「ふふふっ。テイオー聞いてくださいまし。私ったら、おかしいですわ。今からレースが始まるというのに、身体が重いですの。もちろんいい意味で。貴女方の気迫が、全身にのしかかってきているのですわ。……こうしてお互いに気圧される、ということは、それだけ皆の心も熱く燃えている、ということなのでしょうね。その重圧、しっかりと受け止め……」

 

「マックイーン、それ多分、さっき『一発入魂ですわーッ!』とか言いながら食べてたパフェが胃に溜まってるせいじゃない?」

 

南極までぶっ飛ばしますわよ?メジロの拳で

 

メジロの名をそんなとこで使うな。

 

「ゴメン、マックイーン。あ、でもボクはマックイーンより速いから逃げ切れるね」

 

あーあ、全員本気って感じかな?

 

 

 

「お母ちゃん、見ててや……!」

 

スペちゃんもよう気合い入っとる。

顔つきがいつもと違う……いや、そうでもないな。相変わらずモチモチスペスペしてる。

 

けど、目が違う。

あれが日本総大将の目か。なるほど。

 

……強いな。

 

 

 

「……なぁ、アンタ。随分不貞腐れてンなァ?これからレースだっつーのに」

 

「あ?テメーが言うなよボケ、陰キャ。さっきからジロジロ見やがって」

 

っと、シャカールさんとリョテイさんか。

あの二人喧嘩っ早いからなぁ。大丈夫か?

 

「オレは現場のデータを集めてるだけだ。少しでも多くな。集めれば集めるほど勝率が上がる。数学じゃねぇ、算数の問題だ」

 

「……似たモン同士みてーだな、私ら。勝ちに行くんなら、お好きにどーぞ。だが私も個人的に走る理由があんだよ。容赦はしねぇよ、データキャラくん?」

 

 

 

「……あの、話の腰折ってすまねェんだけどさ。オレそんなにデータキャラ感あるか?自分で言うのもなンだが、割とオラついた見た目だし、データキャラには見えねぇと思うンだがよ」

 

「……あー、なんかなぁ。オーラが滲み出てんだわ。隠しきれてねぇんだよ。なんつーか、論理を重んじるあまり周囲の無茶に振り回されてる感がある、的な?」

 

「はぁ……」

 

めっちゃ仲良くなってる。

レースの途中で共同戦線とか張りそうな勢いだぞ。

 

 

 

「負けた方が二週間部屋の家事っていうのはどう?」

 

「おー、いいぜスカーレット。今日から部屋に帰ったら靴下脱いで置きっぱなしにしてやるかんな?」

 

ウオスカか。何やら賭けをしているよう。

しかしウオッカ、やることがショボいな。もともと育ちの良さが隠しきれないから、思いつく中で最大の『ワルイ事』を言ってみた結果あれなんだろうな。

 

多分、靴下脱いで置きっぱなしにするときも、ちゃんと纏められてんだろうな。

 

 

 

「はーっはっはっ!ドトウ、常に貪欲に求めたまえ!観客席から見た時には、主役の座は一つさ!」

 

「今日こそ、勝ちますぅ〜……!」

 

誰もが主役だ。

だが、このレースを制するのは一人だけ。

 

 

 

「なぁオロール。やっぱスターティングゲートってそわそわするよな?蹴り飛ばしたくね?」

 

「僕のセリフパクんないでよ」

 

「初出アタシだかんなオメー」

 

思えば、スピカがこれまでやってこれたのはゴルシちゃんのおかげだ。僕を始めとしたとびきりの問題児を抱えつつ、今や学園で一二を争うチームになった。

それは彼女がなんやかんやチームのリーダー的立場として皆を引っ張ってくれたからだろう。

 

 

 

『各ウマ娘、準備が整いました!』

 

 

 

っと、そろそろ始まるな。

 

 

 

「……なんか、観客席に恐ろしいものが見えるんですけど、アレ。さすがにあたしの幻覚ですよね?」

 

「デジたんって描かれたハッピ着た連中が熱烈にコールしてるアレのことを言ってるなら、現実だね」

 

相変わらず同志に大人気のデジたんである。

 

そして、僕がこれから競う相手である。

7枠10番、アグネスデジタル。

 

デジたん、と読んだ方がいいな。

 

 

 

「……君は観客席に向かって走るんだろ?」

 

「……うん」

 

正に恵みの雨。

 

僕たちは馬ではなく、ウマ娘。

レースでのコース取り争いは、競馬のそれよりも激しい戦が繰り広げられる。

 

よって、外枠不利。それが基本。

 

しかし、今日のこの雨!インコースは荒れに荒れまくってグチャグチャだ。

そう、恵みの雨である。外枠のデジたんこそが勝つ、そんな未来がぐんぐん近づいて来る。

あくまで、可能性の話だけど。

レースに絶対はないからね。

 

 

 

「僕はこのレースに全て懸けるつもりだから。そこんとこよろしくね、デジたん」

 

「あたしはいつも全力だよ?ウマ娘ちゃんの御尊顔を拝むためなら、たとえ雨でもめげずに走るっ!それがヲタクッ!」

 

「ふふっ。雨になって喜んでるくせによく言う」

 

 

 

「……負けないから、あたし」

 

おいでませ、勇者様。

 

さあさあ、いよいよ始まるぞ。

ついこないだスキャットマンを熱唱しまくっていたとは思えないほどにシリアスな展開になってきたが、このヒリつき具合、最高に心地いい!

 

 

『さぁ、たった今、ゲート解放ッ!盾の栄光を手にするのは誰かッ!運命の扉が今!開かれましたッ!』

 




更新の遅れが遅れすぎているのが遅れていて良くないと思います。

一応、完結の目処は立ちまくってるので、エタりませんので、ご安心を。

完結後は月一くらいで更新されるネタ帳みたいになるかも?ならないことがあろうか、いや、なる(反語)

ところで私はゼパイルさん推しです()

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