いやぁ、怪文書更新はあくまで趣味の一環とはいえ、一応ネットに放逐しているからには多少リソースを多めに割きたいところではあるので、アニメやゲームを受動的に楽しむのはほどほどに……
え?デススト2?
FF16?
アーマードコア6?
え?
え?
うん。
エタります(エタるとは言っていない)
「時刻は現在午前五時を回ったところでございます。……ねぇ、もうね、僕は言ったじゃないかゴルシちゃん。この時期に野宿はねぇ……。死ぬよ?」
「そうだな。ウマ娘といえど、冬の夜に野宿なんかすりゃ命の保証はないわな。……言ったよな?アタシが、言ったよな?お前はそれでも野宿強行したもんな?そんなに凍死したいかコラ。ならテメェの顔面に液体窒素ぶっかけてやろうか?」
「えぇ、まあゴルシちゃんも随分とピリピリしてますけども!なんとか僕らは、あと一週間くらいでここから香港に行かなければならない!というわけでね!」
「誰に話してんだお前」
「雰囲気作りだよ。せっかくの海外旅行なんだからさぁ?楽しくいこうぜベイベー!」
「……スゥー。落ち着けアタシ。ここでコイツを殺しても何の意味もない」
「放送コードにひっかかること言わないでよ」
と、いうわけで。
昨夜は比較的暖かかったみたいで、ノリと勢いで夜を越すことができた。まあ、僕たちの顔面はお世辞にも可愛いとは言えないレベルまで崩壊してしまっているが、今日も旅は続く。
まずはこの辺りでちょいと観光……。できるだけお金は使わないようにしつつ、ね。
だけど皆へのお土産は必要な出費だ。
いろいろ見繕っていこう。
「よし、今日はとりあえず観光だっ!おーっ!」
「……おー」
「もっとテンション上げようよ?……えっと、僕らが今いる場所『黄山』では、世界有数の名峰が連なる幻想的な風景を拝めるらしい」
「観光サイトコピペした?」
「……『黄山を見ずして、山を見たといふなかれ』なんて言葉もあるらしい」
「ほぉー。そんなすげー場所なんか。んでお前、やっぱ観光サイトコピペしたろ」
「気のせいだよ」
何はともあれ、張り切って行こう!
心の中のキタちゃんからエールを貰いつつ、僕は野宿で棒のように固まった脚を動かした。
◆
「わぁ……!すごい、綺麗だ……!」
「お前でも素直に感動するレベルか。……確かにすげー。こんな場所が地球上にあるんだな」
「誰が見たって魂に刻まれるよ、この景色は……。昔の詩人がこぞって詩作に励んだのも納得だ」
黄山は古くより人々の心を掴んでいたのだとか。
李白だとかの名だたる詩人や画家がインスピレーションを受けたらしい。
悠々たる山々。
銀化粧を被るその姿は、水晶のように輝いている。
仙境。
現実から離脱したような奇妙な感覚が僕を襲う。
「……うわ、昇天しそうになった」
「それ多分あれだな。お前ら変態は逝き慣れてるから、多分ちょっとした拍子で魂が抜けんだ」
「なるほど。逆説的に考えれば、これほど素晴らしく幻想的な風景を見たとて、完全に昇天するわけではないってことは……。デジたんが地球一、いや宇宙一素晴らしい存在だって事実を証明してるんじゃないか」
「すまん何言ってるか分からん。地球の言葉で喋ってくれ」
「素敵な場所だからデジたんにお土産買ってこう」
「おう」
「お金貸して」
「十日で五割な」
「暴利反対!」
「手の爪と足の爪どっちがいい?」
「僕のような無礼者に貸し与えていただけること、まっこと幸甚の至りでございます」
「この先金を払わなくちゃならない場面じゃ、基本アタシが払うことになる。分かるな?お前は金持ってないわけだから。……香港にたどり着くには、アタシの機嫌を保つことが重要だぞ」
「脅してるのかい?……でも、仮に君がへそ曲げて日本帰ったとしても、僕はヒッチハイクと徒歩で香港目指すから」
「割と余裕で達成できそうなのやめろよ」
「あまり僕をペロペロ舐めるなよ」
「舐めねぇよ。シュールストレミングと永遠の愛を誓う方が120億倍マシだわ」
「ボリビアの山道よりも険しそうな道のりの恋路だね」
世界一臭い缶詰。実際に臭いを嗅いでみた感想としては……うん。まあ、人間の好奇心の素晴らしさを思い知ったね。アレを作ったのは間違いなく人間だ、ウマ娘じゃない。ウマ娘は美味しいものしか食べない気質なので。
いつだったか、ゴルシちゃんがイタズラの一環でソイツをトレーナー室でぶちまけたことがあった。
世界一臭いと銘打たれたソイツがどんなものか多少の興味があったんで、僕はその場にいた。
もちろん、その臭さの程度こそ知らねど、イタズラに関する備えは万全にしておく性質のゴルシちゃんと僕は、ガスマスクを用意していた。
……だが、悲劇は起こった。
まあ、詳しく語る必要はない。
ちなみに味は悪くなかった。ニシンの旨味がなかなか良い。夏場に生ゴミを一月放置したような臭いを気にしなければ、の話だが。
「……なんかお腹減ってきたなぁ」
「確かにもうちょいで昼時だな。朝も早かったし。……つーかお前、もしかしてシュールストレミングで食欲刺激されたのか?」
「うん」
「強すぎだろ」
「正確に言えば、いつぞやのトレーナー室激臭事件の時、ガスマスクがあまり効果なくて、涙目で缶詰を処理してたゴルシちゃんの姿を思い出して食欲をそそられた」
「キショいぞ」
「あまりにも素晴らしい涙目顔だったから、その後僕は全力でスケッチしてデジたんに渡した」
「何してんだオイ」
日本に帰ったら、冬コミ。
おそらくアリスデジタル先生は僕のスケッチを有効活用してくれるだろう。
なんたって、あのゴルシちゃんの……顔だけ見れば、まさに恋路に迷う乙女のような表情。激レア表情だ。
「それじゃあ街に戻ってランチを食べよう。せっかくだから黄山のご当地料理!昨日は忙しくて食いそびれた上に野宿だったから、胃袋が吠えてる」
「勝手に食うもん決めてんじゃねーよ、金出すのアタシだかんな?……まあいいけど。ご当地料理か。どんなんなんだろーな。アタシも聞いたことねーから楽しみだぜ」
博識のゴルシちゃんでも知らないことがあるんだな。
かくいう僕も、何となく観光サイトのレストラン紹介ページは見ていない。そっちのがワクワクするから。
「中華料理っつーと、いろいろ種類あるんだろ?聞いたことあんのは四川料理だとか北京料理だとか、その辺だ。多すぎだよな。さすが中国四千年……。いやもっとあるな。こと食いもんに関して言えば、一万年はあるんじゃね?知らんけど」
「歴史があるのは確かだよ。世界三大料理の一つだし。期待が膨らむよ。これで超クセのある発酵食品とか出てきたら面白いね」
「内陸だしあるかもな。……って、フラグ建てんなよ」
「あははっ、ゴメン」
まあ、シュールストレミングよりヒドイ臭いの食べ物がないと知っている僕は、どんなものでも美味しくいただける自信がある。
とはいえ、観光地の飯でゲテモノ引く確率は低いだろうし、大丈夫だろう。
◆
「……クッサ」
何だこれ、クサいぞ。
クセェ。
「
「なるほど?てことは美味いんだね?臭いけど」
「知らね。……お前先食え」
「毒味を押し付けたね君。まあ食べるけど」
ぶっちゃけシュールストレミングを経験すれば大概の臭いは気にならなくなる。それに、鼻が慣れてくるとむしろいい香りのように思えてくる。
いざ実食。
……臭鱖魚、といったか。
どうやら、鱖魚という中国の淡水域に生息する魚をうまいこと発酵させた料理らしい。
ふむ。
元々は魚を保存するために発酵させたんだろうが、テクノロジーの発展した昨今においても発酵させる意味とはなんぞや、と問うた時、その理由をすぐに答えられることには違いない。
つまり、発酵食品ならではの旨味がある。
そして味が濃い。だが決して悪いことではない。米が進む。
「どんな感じだ?」
「めちゃイケる。そもそもこの魚が美味いし、そこに発酵の旨味が加わるわけだから、不味いわけがない」
「素直に食レポしてくれてあんがとよ。そんじゃアタシも……」
発酵ってすごいんだなぁ。
現象自体は腐敗と何ら変わらないのに、こうも食文化の根幹を支えているとは。
世界のどこを探しても発酵食品が見つかるんだから、そのすごさが身に沁みて分かるってやつだ。
「
「G○ogleと仲良いなお前」
「中華料理は八大菜系といって、大まかに八つの区分があるらしい。安徽料理はその内の一つで、黄山などこの近辺の地域で生まれた料理らしいよ」
「ほぉー。つーことはアレか、四川やら北京やらも、その八大菜系に含まれてるってことか?」
「ざっくり言えばね。ただこの国はバカでかいから、本気で区分しようとなると時間がいくらあっても足りなくなるっぽい」
「……まー何でもいいわ。わりかし美味いし」
しかもこの料理、魚の骨が処理済みだから、とても食べやすい。会話が節目を迎えてから、僕たちはひたすら箸を動かしていた。
◆
「……なぁなぁオロールさんよ」
「なんすか」
「アタシなぁ、日本帰ったら大富豪になるかもしれん」
「……思ったよりいい値段したねあのご飯」
「おう。つーかお前めっちゃ食ったよな。五人分くらいは食ってたよな」
「……スペちゃんの食事量に比べりゃ可愛いもんじゃないか!」
「ま、アタシは構わないんだぜ。お前が日本に帰ってからウマ耳揃えてきっちりアタシに返してくれりゃ済む話だからな」
「くっ……!」
……うん、お金持ってこなくて正解だったかもしれない。
端的に言って、G1で好成績を獲り続ける僕の口座は、女子中学生であるにもかかわらず、家と車を余裕で買えるレベル。
もちろん、将来の生活withデジたんのためにも、浪費はしないよう心掛けている。
だけど、あったら使いたくなるのが性ってヤツ。
クリスマスとお正月には大が二桁吹っ飛ぶこと間違いなし。
それだのに今ここでお金をばら撒くわけにはいかないのであるッ!
「ねえねえゴルシちゃん!黄山って毛筆と硯で有名なんだって!買っとこうよ!」
「しょーがねぇーなぁ?せっかくだし、お高いヤツ買っとこうぜ!」
「うん!!!」
「ゴルシちゃんゴルシちゃん!黄山って、お茶が有名なんだって!中国十大名茶の一つらしいよ!よく分からないけどすごそうだ!」
「おう買うか。ついでに茶器も買っとくか」
「うん!!!」
「ゴルシちゃんゴルシちゃん!アレお土産に良さそうじゃない?えっと、スピカの皆と、父さん母さん、あと義父さん義母さん……」
「すげぇな、同音語なのにお前が何を言わんとしてるか手に取るように分かったぜ。よぉし、とりあえずたくさん買っとくか」
◆
「おかしい。僕はローコストで香港行きを計画していたはずなのに、一番浪費するルートを歩んでる気がする」
「気のせいだろ」
「気のせいかぁ」
ゴルシちゃんが言うならそうだな。
「気のせいだぞオロール。お前はすげー節約してると思う。でもなオロール。さすがに移動手段とホテルは必要経費だから、今日は素直に電車とか使って……」
「イヤだ。移動に関して僕は妥協しないぞ。絶対ヒッチハイクか徒歩だ。公共交通機関をどうしても使いたいのなら、行き先をサイコロで決める場合にのみそれを許可する」
「地獄じゃねぇか。世界中をアタシの涙で埋め尽くす気かオメーはよぉ」
「さあ選べ!」
「せっかくだからアタシは第三の選択肢を選ぶぜ」
「ほう、というと?」
「お前を半殺しにしたのち一人で帰国する」
「それが君の選択か。来いよゴルシちゃん……。決着をつけようじゃないか」
「おう、やるか。どうしたホラ、お前が来いよ」
「……君ガタイいいね」
「たりめーだろ。身長いくらあると思ってんだ」
くっ。僕も世界各地の格闘技を学んでいるとはいえ、相手はゴルシちゃん。おそらく僕と同じかそれ以上の技術を有している。その上体格でも負けてるんじゃあ勝ち目はない。
あ、そうだ!
この手があった!
というか、初めからそうしておけばよかったんだ!
「……しょうがない。分かった。ヒッチハイクはしないことにするよ」
「おうそうしろ。さすがに移動は計画的に──」
「
「──誰に電話した?」
「まあまあ、ね?落ち着きなさいよゴルシちゃん。僕はねぇ、そりゃもう、君の言う通りでさぁ。ヒッチハイクはよろしくない、と思ったわけだ」
「おいお前」
「そうとも!僕ぁねぇ、ヒッチハイクみたいに計画性が皆無な旅路ってもんはなかなか厳しいってこた分かってんの。だからねぇゴルシちゃん、君の望み通りに僕はやったよ」
「……」
「正直ね、怖いよ?僕は君が怖い。なんやかんやで、僕の友人として君とは一番長い付き合いだ。君が怒ったらどれだけ恐ろしいか僕は知ってる」
「おう。返答次第では怒る」
「だーかーら、落ち着きなってゴルシちゃん。全部君の望み通りコトは運んでるさ。僕はこの旅でヒッチハイクは金輪際やらない。……ヒッチハイクってのは、道路でプレートやら親指やらを掲げて通りすがりに拾ってもらうあの行為のことを言うわけだろ?」
「……おいお前まさか」
「判断したのは……君だぞぉ。僕はねぇ、君の言う通りにしたつもりだよぉ!財布握られてる今の僕は君の犬だよ!犬!」
「おいクソ犬!ちょっとスマホ見せろ!」
「ほい」
「……あー、なるほどなぁ???」
通話履歴の、最上部。
最新の通話相手の所に「リーさん」と書いてある。
「さあゴルシ様!あなたの犬は今、ご覧の通りしっかりと香港までのアシを確保いたしました!」
もちろん作者は海外未経験なので、描写は全てGo○gle先生に教えてもらいながら書きました()
完全ネタパートなので、スクロールしても画面からネタが消えないようにしていきたいですね(とてもすごいプロ意識)
それにしても……。
最近、更新ペースのヤツ、見かけないなぁ……。
心配だし、様子を見に行くか。
おーい、更新ペース?いるかー?
あれ?鍵が、開いてる……?
……入るぞー?
うわっ!?おっ、おい、大丈夫かっ?
……あ、あぁ?なるほどな?
ったく、ふざけやがって。
……なあ、十分驚いたよ。分かった、俺の負けだ。だからもうそんな冗談はよせって──
──ウソ、だろ……?