デジたんに自覚を促すTSウマ娘の話   作:百々鞦韆

84 / 88
僕はハマったものをやたらと語りたがる癖があります。うざいタイプのヲタクです。

今はどうでし○うとSOUL’d ○UTと攻殻機○隊とチェンソー○ンとリコ○コと、その他もろもろに……

後者二つのように最近の流行りであれば友人に話が通じるのですが、20年も前のコンテンツとなると、もう、ね……

ちなみにどうでし○うとSOUL’d OUTと攻殻機○隊は義務教育なので怪文書読む暇があったら履修してください。


ランブータンと抜け毛と焼きそば〜辛子マヨを添えて〜

「ふふ……これはお茶のおかわりを欲しいのサインだよ。香港では茶ビンのふたをずらしておくとおかわりを持ってきてくれるんだ」

 

「……」

 

「また人にお茶を茶碗にそそいでもらったときは人さし指でトントンと二回テーブルをたたく。これが『ありがとう』のサインさ」

 

由来は定かではないが、ティーパーティー、すなわち社交の場において、給仕さんに口頭で礼の意を伝えると会話が途切れてしまうから、とか、口に食べ物が入っている時に喋るわけにはいかないから、とか。いろいろな説がある。

 

 

 

「ちょっと日本語が聞こえたもんで、失礼する。私も日本から来た旅行者なんだが、少し頼みたいことが……」

 

「ああ、どうされました……って、んん?」

 

うぅん、どこかで聞いたことある声な気が。

 

「……あ?」

 

 

 

「……リョテイの姉御ッ!?」

 

「あ?……って、お前らかよ!確かに見覚えのある後ろ姿だとは思ったが」

 

すみフラ(すみません、わたしはフランスからきた旅行者なのですが……の略)ではなく、すみニホ。してその正体はなんともまあ、こんな偶然があるとは。我らがゴルシちゃんですら恐れるキンイロリョテイの姉御であったとさ。

 

「リョテイさん、どうして香港に?」

 

「は?レース出るからに決まってんだろ」

 

「レース……ああ!香港ヴァーズ!」

 

香港カップと同日に開催されるレースに事実上の日本代表として出場するのが、他でもないリョテイさん。まあ元ネタ的に納得の展開ではある。

 

「お前らの方がどーしてこんなトコにいんだよ。今日のレース予定表を見たがお前らの名前はどこにもなかった」

 

「アグネスデジタル、って名前ならあったでしょう?つまりそういうことですよ」

 

「ああ……」

 

リョテイさんは僕やゴルシちゃん同様()()()賢いタイプのウマ娘なので、察しが良くて助かる。ここで言う()()とはつまり、いかにしてトレーナーさんを困らせるか、派手な悪戯をかますか、はたまたレースでハジケるか、まあいわゆる悪知恵というか小賢しさというか。

 

 

 

「ところで、頼みたいことって?」

 

「ああ……」

 

偶然の出会いではあるが、もともとは彼女が日本語を耳にしたことでコンタクトをとってきたのだから。

 

 

 

「金貸してくれ」

 

「……?」

 

「全部スッた」

 

「……あっ」

 

詳しく聞くのはやめておこう。

まあ、うん。お気の毒に。

 

「わざわざ僕から借りなくても、レースに出るために来てるんだから、トレーナーさんが同行してるんでしょう?」

 

こういうときは大人に頼ろう。

 

おい仮に貸すとしても金出すのアタシだぞ

 

「博打負けましたーって素直に言えるわけねーだろうが。黙って賭けたんだよこちとら。財布落としたって言い訳すると大事になるしよ」

 

「……」

 

しょうがない。

 

「よしゴルシちゃん。恵んでおやりなさい」

 

おっ前らなぁ……!!

 

おっ、ヤバいぞ。ピキってる、ピキってる。

 

「アタシが金出さなくったって、別に香港滞在に支障はないだろ?最低限の必要経費はトレーナーなんかが負担するだろうし。ただ、土産買ったり、美味いもん食べ歩きしたりができないだけだからな」

 

「んだよ、シケてんな。私に貸せば二十倍になって返ってくるのに」

 

かつてここまで信用できない言葉があっただろうか、いや、ない。ギャンブラーの「倍にして返す」が実行されるのは、水槽に腕時計のパーツを浮かべてかき混ぜ、完成品を組み立てるくらいの確率である。

 

 

 

「あーあ、なぁーんつーのかなぁ……。今なぁ、急激にムカついてきた。金ねーし。お前らの顔見たら秋天思い出した」

 

「負けてましたもんねぇ」

 

「ま、賞金は稼げたから別にいいさ。実際、私みたいに走るヤツが最後に得をする。分かるか?つまり私の賞金額は、日本ウマ娘界でも指折り……両手両足の指を折ったくらいだろうが、まあ、そんじょそこらのG1ウマ娘よかぁ、美味い飯が食える」

 

地道にシルコレに励んだ結果、彼女の出走レース数はかなりのもので、それでいて脚がぶっ壊れたりもしないのだから、まったくすごいよなぁ。その点は素直に尊敬している。

 

「今の私は確かに金欠だ。渡航にあたっては、現地で増やす分を考慮して必要最低限額の現金を持ち込んだが、それが失敗だったなぁ。思ったより負け越した」

 

「……おいアホだぞコイツ

 

「あ゛?」

 

「いや、なんも言ってないっス!」

 

確かにアホだ。

見ず知らずの土地に行くってのに、宵越しの銭を持たないヤツがいるか普通。いないだろ。僕以外。

 

 

 

「いいこと思いついた!行く店行く店で前借りすりゃいいんだわ」

 

「……え?」

 

「ヴァーズで勝ちゃあ、ヒサンでも釣りが帰ってくる」

 

「……いや、さすがにやめましょうって。ウマ娘とはいえ、いやウマ娘だからこそ、トラブルに巻き込まれたらマズイですよ」

 

競走ウマ娘の身体はダイヤよりも価値がある。

……まあこの場合、トラブった相手がリョテイさんのサマーソルトを喰らって昇天する可能性があるので、心配しているのはむしろそっちだ。

 

「しゃーねー。やっぱ金貸してくれよゴル──」

 

あーもう鬱陶しい帰れやこの金欠野郎!

 

 

 

 

 

 

 

 

「平和だな。今日もな」

 

「僕はさっきのを忘れないぞゴルシちゃん」

 

ゴルシちゃんはガンギマリだった。

おそらく長時間の旅路が疲労を蓄積させたのだろう。一晩寝たくらいじゃ治らない、そんな疲労。さすがのリョテイさんも何かを察して「……なんかすまん」と言っておとなしく帰った。

 

「ピース!セイ、ピース!」

 

「ゴリ押そうとしないでくれ」

 

揺るがぬVサイン。

ちなみに手のひらは内側に向いていた。

 

 

 

「何はともあれ、香港についた以上、アタシは一刻も早く帰りたいんだが」

 

例の格闘家みたいな名前の親切な二人とは宿を出立する際に一旦お別れした。レース当日に会うことを誓い、僕はデジたんへの道を歩んでいる。

 

「まあまあ。ここまでくればあとは楽さ。今までの旅路がおかしかっただけで、本来はこうしてお茶を啜り、夜はホテルでゆったり寛ぐのが正しい海外旅行のあり方だからね」

 

「ホントだよ。なんで格闘家みたいな名前の地元民と数十時間ケツを虐めるハメになったんだ」

 

「でも、悪くなかったでしょ」

 

「まあ、わりとオモロい道のりではあった──」

 

だよなぁ。

 

「──とでも言うと思ったか耳引きちぎるぞテメー。始皇帝もドン引くレベルのクレイジージャーニーだっただろ?あ?

 

「そ、そんなに怒らなくても……」

 

「まだキレ足りねぇくらいだわ!普通に列車乗ればいいものを、どうしてわざわざヒッチハイクなんかで……!?おかげでケツがランブータンだよ!

 

「すいませんでした」

 

「ごめんで済んだらアタシの拳はいらねぇんだよなあ」

 

「待ってそれは冗談抜きに意識トぶから待って」

 

「分かった」

 

ほっ……。

 

んじゃ蹴るわ

 

「んんん?」

 

「っしゃー、いくぜー!ウェーイウェーイ、とりゃいっ──」

 

 

 

「ちょっと待ってストップ、ストップゴルシちゃちゃぐちギグばボボばあブッ」

 

「──ヘヘッ、どーよ?」

 

「ぃっ、あ、ぁ、ぁっ……!殺す気か君は!」

 

「たりめーよ」

 

「僕に武術の心得がなければ死んでたぞ」

 

「アタシも犯罪者にはなりたかねーからな。……お前なら死なねーって信じてたよ」

 

「くっそ、セリフの後半だけ切り抜いたらめちゃくちゃいいシーンなのに……!」

 

相変わらずひどいなこの芦毛。

 

「……とりあえず、デジたんの居場所は分かってる。ホテルの名前が分かってるからね」

 

デジたんから「ホテル着きますたー!」とメッセージが送られてきたので、そこから自然な流れでホテル名を聞いておいた。サプライズだからな、悟られてはいけない。欲が暴走しかけて危ない場面もあったが、まあ僕がそうなるのはいつものことなのでデジたんは気にしていない様子。

 

「文無し大陸紀行もついにフィナーレ!あとやることといえば、デジたんに道中で買ったチャイナドレスを着せるだけ!」

 

「オメーいつの間にそんなもの……」

 

愛麗(オイライ)なデジたんを拝むため、僕は進み続ける!」

 

デジたんは真のヲタクゆえ、コスプレも得意分野である。自分で衣装を制作できるのだから、すごいよな。

 

「あとリーさんたちへのお礼の品も用意しておかなくちゃ。何がいいかな」

 

「知らんわ。デジタルの脱いだ靴下とかでいいんじゃね」

 

「ゴルシちゃん……。さすがにキモイよそれは」

 

「なんでアタシが言ったらそうなんだよ!?いつものオメーらのことを考慮した上での発言だったんだけどぉ!?」

 

靴下は、よくない。そういうのはダメ。

あとデジたんにそういうこと言うな。あの子変なところでピュアだから、テンション上がってファンサで尻尾の毛とか渡そうとするぞ。

 

「お世話になった人たちに直筆サインを渡すのはもちろんのこと、それだけじゃ足りないくらい恩を受けたよね」

 

「そうだな。ま、ウマ娘の恩返しとくりゃあ、やるこた決まってんだろ」

 

「そうだね。……デジたんは絶対勝つ。それがファンにとって一番嬉しいことだ」

 

レースでカッコいいとこを見せてくれ。それからライブで可愛いところを見せてくれ。そのあとはホテルで僕だけにホントの君を見せてくれ……って字面がヤバいな。声に出すのはやめておこう。自戒。

 

「デジたん推しのリーさんはそれでいいとして、宿の大将、チェンさんの推しは他でもないゴルシちゃんだ」

 

「あー、そうだったな。どうする?まさかアタシがライブに乱入してゴールドシップのバッキバキのトラック響かせるわけにもいかねぇし」

 

「なかなか面白いけど……。デジたんのライブだからなぁ、ぶち壊すわけにはいかない」

 

あまり手間暇がかからず、それでいてゴルシちゃんらしさを感じられる、そんなファンサ。

 

「……もうこの際、焼きそばでも振る舞えば?」

 

「適当だなオイ」

 

「いや、考えてみなよ。推しの手作り飯食えるんだよ?普通の人間なら心臓が胸骨を突き破ってフライトゥザムーンまっしぐらだよ?」

 

「そうなのか?」

 

「うん。君、よくレース場で焼きそば売り捌いてるだろ?知ってるかい、アレめちゃくちゃ好評なんだよ」

 

「ほう」

 

「そりゃそうさ。明らかに市販品ではない焼きそば、つまり推しウマ娘が料理したという事実が一目見て分かる。プラス、売り子も本人がやるから、実質握手代のおまけに焼きそばがついてくる、と考えてもローコストハイリターンな体験ができる。まあ人気の要因ナンバーワンは味なんだけどね」

 

「味かよ。まあ確かにこだわってるけどよ。てっきりヲタクの超理論かましてくるのかと」

 

「君普通に料理上手いよね。あの焼きそば美味いんだよ。甘辛ソースとマヨが奇跡的相性(マリアージュ)なのはもちろん、辛子のおかげで飽きが来ないのが素晴らしい。肉や野菜といった具材も丹精込めて調理されてるし、なによりボリュームがイイ。レース観戦で興奮した胃袋をガッツリ満たしてくれるサイズ感がたまらない」

 

「おうよ!」

 

今までもゴルシちゃんのことを褒めちぎったことは幾度かあったが、今回が一番イイ笑顔を浮かべてくれた気がする。焼きそばへの情熱が思ったよりも凄まじいな。

 

「ちなみに、デジタルの手作り飯とアタシの焼きそばだったらどっちが──」

 

「デジたんに決まってるだろバカか君は」

 

「おっそうだな」

 

「あぁ待って待って!勘違いしないでほしいけど、決して君の焼きそばのクオリティを貶めるわけじゃない。比較対象にデジたんを出してしまったら、僕の選択肢はあってないようなものじゃないか。仮に、ミシュラン五つ星のレストランと君の焼きそば、どっちが良いかって尋ねられたら、僕は迷わず焼きそばを選ぶ」

 

「そんな気に入ってんのかよ?さすがアタシ」

 

「一生デジたんの抜け毛食べて暮らすか、君の焼きそば食べて暮らすかだったら、数分迷ってからデジたんの抜け毛を選ぶ」

 

「マジかよオメー!メチャクチャ好きじゃんゴルシちゃん特製焼きそば!」

 

なんたって、僕が数分迷うんだからな。並大抵の料理なら、もはや質問される前からデジたんの抜け毛食いますって答えてるレベルだ。

 

「香港カップ当日、恩人のお二方の背後からスッと現れ、クールな笑みを浮かべながら焼きそばを振る舞う。これでオトせないヤツはいないと思うな」

 

「髪に芋けんぴついてるのと同じくらいカオスな状況だな。……まあ他に面白いアイデアもねーしそれでいくわ」

 

「よし!それじゃ、行こうか。……待っててねデジたん、僕はいつだって君のもとに向かうよ」

 

「キッショ」

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁ、デジたん」

 

『オロールちゃん!どうしたの?何か用事?』

 

「いや、別に。ただ声が聞きたくて」

 

『ちょっ、やめてよそんな付き合いたてのカッポゥみたいな……』

 

「そうだね。僕らの付き合いって長いもんね」

 

『いや違っ……えと、じゃあ、用事とかはないってことだよね。なるほどだいたい分かった』

 

「元気そうでよかったよ。香港は楽しんでる?」

 

『それはもちろん!ホテルはリラックスできるし、ご飯も美味しいし、何よりいろんなウマ娘ちゃんがあっちにもこっちにも……んんっ、タマラン!』

 

「楽しそうだね。僕のこと恋しくなってない?」

 

『……まあ、少しは。海外遠征なんて初めてだし、普段とは違うことが多くて、最初は落ち着かなかったけど。でも今は大丈夫!レースでウマ娘ちゃんの御尊顔を拝見するためにも、メンタルは整えておかねばッ!』

 

「いい心がけ。メンタルケアの手伝いしよっか?僕、こういうの得意だよ。カウンセリング対象は君限定だけど」

 

『ほんと?……あ、でも、今から移動だから、そろそろ切らなきゃ』

 

「ありゃ。それは残念。君は今芝の上かい?」

 

『うん。現地のコースにもだいぶ慣れてきたよ。あたしの得意な走りでいけると思う』

 

「得意な走り……。って言ったって、デジたん、全部の走法得意じゃん。レースの勝ち方が毎回変態的だよね、君は」

 

『ブーメラン刺さってるよオロールちゃん』

 

「自覚してる。つまるところ変態が最強なんだよねぇ!んじゃ、頑張ってねデジたん!」

 

『ありがとう!それじゃ、またね!』

 

「うん、頑張ってね〜……。ところで、普洱茶(ポウレイチャ)ってもう試した?」

 

『ポーレイ?』

 

「お茶の一種。香港じゃあ飲茶店で出されるんだってさ。他にもいろいろな種類のお茶があるの。なかなか面白そうだし、一緒に行ってみようよ」

 

『あははっ、それじゃオロールちゃんが香港まで来なきゃ……。ちょっと待って?え?そんな、まさか、ねぇ?まさか、そんなことは……ない、ヨネ?』

 

「また会えるのが楽しみだよ。それじゃ!」

 

『あっちょっ、待っ──』

 

 

 

「……さて、もうそろそろ来るっぽい」

 

電話をかけ終わってからは、ホテルのラウンジで寛ぐことにした。ウマ娘たるもの、優雅かつ妖艶に。待ち人を待つ姿すらも、美しく。

 

なんというか、ラウンジの雰囲気が良さげなもんで。

ついカッコつけたくなってるんだよね。

 

「お前マジでさぁ……。お前さぁ、マジ、アレだな」

 

「ん?」

 

 

 

「他人を振り回すことにかけちゃあアタシ以上のプロだぜ、オメーは」

 

「フッ……お褒めいただきありがとう」

 

「ムカつくなぁ」





二週間以上間を空けてしまい申し訳ありませんッッ

更新が遅れ気味なのはアレですアレ(適当)
人生で一番優等生のフリをこかなきゃいけない時期なんです

ああ忙しい……防具の錬成もしなきゃいけないし、ぼざ◯も見なきゃいけないし、年末年始セールで買い込んだゲームやんなきゃいけないし……

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。