零課さんの「ハジケリスト世代だろ!」とのコラボになります
https://syosetu.org/novel/262555/
ストーリーの前後は脳内補完してください
とくに繋がりのない独立話となっております
要は頭のおかしいウマ娘は何匹いてもいいよねっていう話です
狂気の種類は問わない
勝ちへの執念だろうが、仲間への信頼だろうが、HENTAIであろうが、トンチキ歌舞伎者だろうが
ウマ娘は狂ってこそ意味がある(暴論)
そんなことはないですね、うん
久々の更新で喋りすぎましたわ()
相変わらず私事で申し訳ないのですが
小中高と美術が大っ嫌いだった私が
なぜか今さらイラストの練習を始めたので
物語を書く時間ががが……
長らくお待たせしてしまい申し訳ありません。
番外: HENTAIと傾奇者は紙一重
◆ありえたかもしれない、もう一つの歴史
「……?なんか、妙な気分だ」
何気ない朝。しかし妙な気分だ。
ものすごーく妙な気分だ。
周りを見回しても、何か変わったことがあるわけでもない。でも、
「ん?なんだ、お前。起きるの早グブフォッ」
掛け布団を蹴飛ばし、ついでにゴルシちゃんも蹴っ飛ばすが、その漠然とした異物感は消えなかった。
「なんで蹴った?」
「いや、まだ夢を見ているような気分で……。確認のために」
「自分でやれよバカ。ほっぺ抓れよ。お前、ほんっとバカ。……ったく、今日はライブの練習なんだから、もーちょっと寝てたいんだよアタシぁ」
「君はそこで怠惰を貪っているといい。僕は朝練行ってくる」
まあ、僕がウマ娘で、デジたんのことを考えながら走ると脳汁が噴出することに変化が生じたわけではないので。
問題なし!
と、まあ。
僕はスタコラと外の空気を吸いに窓から飛び出したので、ゴルシちゃんが何か呟いたのを聞き取ることはできなかった。
「……いや待てよアイツ誰だ?」
◆
昼下がり。
僕はいつもの如くトレーニングに励んでいた。
……だが違和感は拭えない。
今日はデジたんセンサーが不調だ。
普段通り朝一番でアグネス部屋の窓を確認したが、いなかった。デジたんは僕が来るのを知ってるから、早くから朝練に行ったりはしないのに。その後も、学園内で彼女とは会えず。
違和感はそれか?いや、
ダンス練習室に来てみたが、やはり何かが違う。
「おー、お前もダンス練習か。なぁ、聞いてくれよ。今度のライブでケチャやろうと思うんだが、どうだ?ケチャ」
「……あー、ゴルシちゃんや。もっとしっかり日本語喋ってくれると嬉しいんだけど」
「よしツッコミいただき、いいノリだ。……ってんなこたどーでもいい。今日の議題は『いかにしてウイニングライブを改造するか』だ。ぶっちゃけな、最近のウイニングライブには面白みが足りないと思うんだよ」
「なるほど。それでケチャを……。バリ島の呪術儀式をやろう、と、そういう発想に至ったわけか。最高だ」
「だろぉ?」
「いいじゃないかゴルシちゃん。パーフェクトだ。寝起き2秒の僕にいきなりその話を持ちかけてきたこと以外は」
「トレーニング中にイルカよろしく右脳だけ眠らせてるお前がおかしいんだよなぁ……。何モンだよマジで」
「半分は起きてるから大丈夫。それで?パーフェクトなゴルシちゃんの計画ってのは、どんなもんなんだい?」
「パーフェクトだなんて、生ぬるいぜその表現はッ!スーパーウルトラブリリアントギガンティック!ゴッドカリスマラブリープリティーエンシェントなゴルシちゃんの、最強最悪ドメスティックオルタネイティヴバンドデシネなライブ計画!聞きたいだろ?」
「五文字でまとめてくれるかい」
「ナシゴレン」
「オーケー完全に理解した」
つまり僕はケチャすればいいんだな。
「ん、今から電話するからちょっと黙れお前」
「電話?唐突だね。誰に?」
「もう一人、協力者雇おうと思ってよ」
「ほぉー。君の人脈は恐ろしいからなぁ。そのうち別次元から誰かを連れてきそうでビクビクしてるよ僕は」
「電話すっから黙っとけ、息もするなよ」
「了解ッ!スゥゥ……」
コール音が鳴り始めた。
暇だ。
ヘモグロビンと戯れるか。
やあ君たち、最近調子はどう?いやはや、ムリさせてごめんね。でもゴルシちゃんが息止めろって言うもんだから、仕方ないんだ。あー?なるほどね?そっかそっか。うんうん、なるほど、それは彼氏が悪いね。
「出ねーわ」
え?そろそろ苦しい?
おいおい甘ったれるな僕のヘモグロビン。デジたんのためだと思えば二年は息止められるだろ?頑張れって。
あー、あーね?うん、分かるよ。デジたんの血液摂取したいよな。分かる分かる。でも、一応僕は健康体だから、輸血されることは万に一つもあり得ない。自らケガして血を貰う手もあるが、デジたんと一緒に走れる時間が減るので論外だ。残念だったな、ヘモグロビン。
「……!」
「酸欠で頭イカれてます、みたいな顔してるな。まあ元々イカれてるから大丈夫だと思うぜ?てかお前なんで息止めてんだ?」
「さぁ?なんでだろう。よく分かんないや」
「まあいいわ。とりあえずよぉ、アタシの方から電話して繋がることは滅多にないんだよな、アイツ。LANEなら……」
スマホをジャグリングしながら文字を打つゴルシちゃん。
その文字入力方法はレボリューションすぎる。
はてさて、回転するスマホからコール音が。
もちろん、ブッ壊れたわけではなかろう。
ゴルシちゃんのコントロール力を舐めてはいけない。
「よーぅ、ケイジか?……ああ、うん。そうそう、ライブをはっちゃけたヤツにしてやろーかと思ってよ。おう、んじゃ頼むわ、またなー」
「ケイジ?誰?」
「知らねーの?マジ?驚いたな、あのキャラなら日本中誰もが知ってそうなモンだが……」
「……?」
ウマ娘の名前、か?
ケイジ、ってのは。誰なんだ?
◆
学園には多くのウマ娘が通っているために、僕やデジたんでもない限り、全員を把握することは難しい。
つまり、僕とデジたんは生徒全員把握済み……。
の、はずなのだが。
「お好み焼きって、要するにマヨとソースが美味いのであって、それ本体の味は大したことないんじゃないか?いや、しかし……」
「おぅ!来てやったぜ!」
ゴルシちゃんが謎の独り言を諳んじる中。
彼女はドデカくバァーンと顕現した。
電話を寄越してから数秒後のことである。
うん、マジで数秒後。
ゴルシちゃんが「おう、んじゃ頼むわー」って言ってから1分もしないうちに、なんか来た。
そのウマ娘、デカい。とにかくデカい。
ゴルシちゃんがチビに見えるレベルでデカい。
アメリカ西海岸のビーチに居たとしても目印にされるレベルでデカい。2メートルをゆうに超える身長。デジたんが解脱してしまいそうなくらいに美しいプロポーゥションッ。
しかし、その服飾を見るに、かなり頭のブッ飛んだウマ娘であろうことは容易に想像できる。要するに彼女、
その佇まい、黒天に走る紅の流星、星空の髪を束ねるは、向かうは敵なし紅白しめ縄。
天下一の傾奇者とはまさにこのこと。ただ一歩踏みしめるだけでも、いよぉ〜っ、ぽん、と鳴物を打ち鳴らすかの如き歩調。
……何者だ?
心の声でも読まれたか、傾奇者は僕に手を差し伸べる。
「そっちのチビっ子は初めて見る顔だな?アタシはケイジだ。よろしくなァ」
「傾くために生まれてきたような名前だね。僕オロール。よろしく」
握手を求められる。
……デカいので僕からすりゃハイタッチだ。
向こうはロータッチ。
ハイ&ロータッチ。そういうバンドありそう。
っとそれはともかく。
もしかして、だが。
僕、別次元に干渉してないか?コレ?
なんだか朝から違和感があったんだ。
ほんの些細な違和感だ。ティッシュの枚数が一枚だけ違うとか、朝ごはんのニンジンが一本多いとか、そのくらいの。
だが、彼女……ケイジさんを見て確信した。
僕は彼女を知らない。
それはつまり、前世ですら見たことがないウマ娘。デジたん最推しとはいえ、ウマ娘そのものをこよなく愛する僕がまったく知らないとなると、モブウマ娘か……。
だが、ちょっと非情な話をしてしまうと、やはりネームドウマ娘というのはウマソウルに見合ったそれ相応のオーラを纏っているので、モブ娘ちゃんとネームドを間違えることはそうそうない。だから弱い、という話ではなく、モブウマ娘ちゃんが伏兵の如くゴール板を一番に突っ切ることもあるし、ブリッジコンプちゃんなんかはネームドに遜色ないオーラを放っているが……。
彼女には並々ならぬオーラがある。
こちらを威圧するような、皇帝の貫禄。
このヒリついた感触は、ひょっとすると彼女が皇帝の一族であるかもしれない、ということを意味している。
とすると、選択肢はただ一つ……。
それにしても。
「……デッカぁ」
2メートルはさすがにデカい。
「っと悪ぃ。ビビらせちまったかねぇ?アタシぁ見ての通り、ちとガタイがイイもんでな」
「ビビる?僕を舐めないでくれよ?こちとら財布を持たずに海外旅行した身だぞ。そっちのハジケリストと一緒にね」
「なるほどなァ。そりゃ期待できそうだ。ところでお前、ライブDJとかできるタイプ?」
「ウイニングライブでラップかましたことならあるよ」
「最高だ!ゴルシのヤツが面白そうな話持ってきたから来てみたが、コイツぁいい!」
ハジケリストことゴルシちゃんが繋ぐ新たな絆。
たまにはイイことするじゃないか、ゴルシちゃんも。
「じゃあ逆に考えて、マヨとソースを海洋プラスチックゴミにかけて食ったら美味いのか……?環境問題解決イケるか……?」
で、本人はいまだに独り言。
マジで何言ってんだろう。
今日はゴルシちゃんが珍しくハジけている。
いや、本来彼女はハジケリストゆえ、これが普通なのだが。
うーん、なぜ今日に限って。
「おいゴルシ。なんでこんな面白そうなウマ娘、紹介してくれなかったんだよ?」
「いや、今朝初めて会ったし」
「ゑっ?」
……?
え?
「ビビったぜ。朝起きたらアタシの横でコイツが最初からそこにいたかのようにフツーに寝てたんだよな。んで突然蹴り飛ばしてきた。その時アタシの直感が囁いたんだ、『コイツ、さてはデキるウマ娘だな』と」
「えっちょっと待ってゴルシちゃ……?ゴルシさん?ゴールドシップさん?で、いいんだ、よ、ね……?キミは」
「おう。天下のゴルシちゃんたぁアタシのことだ」
「んでそっちの……。ケイジさんは?」
「アタシ?アタシぁ……。はぁ、何も知らんぞ?だがまぁ、奇怪なこともあったもんだ。まるでお前、別世界から迷い込んだみてぇじゃねぇか」
そんなコラボ企画みたいな……。
……何言ってんだ僕。
今の僕が別次元から来た存在だからか知らないが、今日はやたらとメタ的なシーンが多い。
「アタシはこう見えてそれなりに器用だから、何か困ったことがあったら言ってくれ。アーク溶接の資格とか持ってるぞ?」
うぅむ、ハイスペック。
まだ出会って数分だが、このケイジさんからは「制御可能なハジケ」を感じる。つまり、僕やデジたんのように、抑えようにも抑えきれない狂気が結果的にハジケを生み出しているタイプのウマ娘と違い、彼女は自らを律してハジけている!
競馬には人の夢が託される。そして、「ウマ娘」という概念は、さらなる夢の託し方を人々に教え授けた。すなわち、「IF」「ORIGINAL 」のストーリー。
ケイジさんも、そんな人の夢を託されたウマ娘なのだろう。ソレ
まったく素晴ら……けしからん。
オタクは軽率にメアリー・スーも裸足で逃げ出す理想のキャラを生み出しがちだ。
おおよそ現実味のないオッドアイの瞳を有し、大した理由もないのに各種の特殊技能を持っていたり、努力という行為に一切の抵抗がなかったり、例えば完全記憶だとかの特異な能力を宿していたりして、そのくせストーリーでいまいち能力を活用し切れず一部設定が腐っているキャラなど論外だ。
「ぐぼぁっ」
「どうして急に吐血するんだよ」
「あ、申し訳ないッ……。いや、何か、脳内で手の込んだスーサイドをかましてしまったというか」
「はっ、ハッハッハ!やっぱりお前、見どころがあるな!そういうの嫌いじゃないぜ」
気に入られたようだ。
やはり、惹かれ合うのだろうか。
変わった生まれ、という意味で、僕たちは似たもの同士だからな。
「で?ウイニングライブを改造するって話、聞いてきたんだが。プランは?」
すっかり乗り気だな、このデカウマ娘。
というか、待てよ。
「僕を受け入れるの早すぎないか?」
「……まぁ、悪いヤツじゃなさそーだし」
「アタシもそう思うね。お前さん、なかなかセンスがいい」
マジかよ。
僕のいた世界のゴルシちゃんなぞ、僕のことをこの世で一番悪辣非道なウマ娘だと言ってきかないというのに。
「……しっかし、なんでまたこんなことになったんだ?ゴルシ、なんか心当たりあるか?」
「そういや昨日の夜、三女神様の像にさつま揚げ塗り込みながら『ケチャ』歌ったな。それかもしれん」
何やってんだよマジで。
……いや待て。
ケチャ、か。
呪術儀式。
え?それで?僕ケチャで召喚された?もしかして。
「なぁゴルシ、ケチャって混声合唱だろ?お前一人でどうやったんだよ?」
「ルーパー使った」
こっちのゴルシちゃんはそんなことで異界への門を開いちゃったわけか?冗談で言ってみたが、まさかホントに別次元から僕を呼ぶだなんて……。まあいいか。
「てことでケチャやろうぜケチャ」
「がってん承知!じゃゴルシ、お前プニャンロットな」
「お前が決めんなよ。まず全員意見聞いてからだ」
お分かりいただけるだろうが、どうやらこのウマ娘どもは、おそらく現代日本で生きているうちは確実に使わないであろうケチャの歌い方についてバッチリマスターしているらしい。いきなりパート分けの段階に入った。普通のウマ娘はついていけないんだよ、その会話に。
「僕はチャクリマがやりたい」
だが僕は普通じゃない。
ちなみに、プニャンロットもチャクリマも、れっきとしたケチャの歌い方である。
どうやら僕の次元移動とケチャには何か関連がありそうだし、ここでイモ引くわけにはいかないんだ。
「なるほど。とりあえず、やるなら本格的にやりたいからメンバー集めないとな……」
「なぁゴルシ。ケチャやって笑い取れるか?」
「あぁ……。確かに、シュールすぎるか」
「だろ?せっかくならよ、もーちと、こう、万人受けするようなヤツをやろうぜ!」
このウマ娘、デキる。
単純にライブをブチ壊すだけではない。
観客を楽しませる、という本来のライブのあり方を、この上なく理解している。ひょっとすると、ウマ娘の誰よりも。
それはそれとして、ケチャれないのは困る。
僕はケチャの謎を解き明かす必要がある。
「それなら……。コントはこないだやったし……。とりあえず漫才でもするべ?アタシがボケやるからお前ツッコミな」
くっ。この上なく「正気」のウマ娘が多い場だと、ゴルシちゃんにペースを持っていかれる。なんか負けた気分だ。悔しい。
「そいつぁいただけんなぁ。今回はアタシがボケをやりたい気分だ」
「んだよケイジぃ、オメーよ、ムダにデカいから、ツッコミ入れるのにもいちいち苦労すんだよ」
確かに、なんでやねんと胸を引っ叩こうにも、デカいからなぁ。手が届くか怪しいし、あと、
「つぅか、そのライブってぇのは、今度アタシとお前の二人が出る予定のレースのライブってことだよな?」
「まぁそーなる。オロールはステージに上がれねーが、しゃーねーな」
「じゃ僕が機材系を担当するよ」
「助かるぜ。頼むわ」
今更だが、どうして遥々次元を跨いできた僕がいきなりウイニングライブで漫才の手伝いする羽目になってるんだ?
◆
今さらだが、元いた次元じゃあ、僕はどういう扱いになっているんだろう。失踪?それとも時間が都合よく止まってたりして?
ま、何でもいい。問題はそこじゃない。
「デジたん……」
デジタニウムが足りない。
デジタミンもだいぶ危うい。
さらにはデジタノールもカラっカラである。
こっちのデジたんとはまだ話していない。
一応、姿を遠目で見た際に匂いは覚えたのだが、接触はしていない。
……冷静に考えると、別次元に迷い込んだ時点で、普通ならばめっちゃめちゃ慌てるべきなのだろう。
しかし僕は常に冷静ではないので、「デジたんがいればなんとかなる」と確信している。デジたんとの繋がりは宇宙を跨いでも消えることはない。そして、この宇宙にデジたんがいるのなら、それすなわち安寧の証である。
◆
レース描写はスキップだ。
皆、しばらくはRTTTでお腹いっぱいだろう。
……僕は何を言ってるんだ?
ケイジさんを筆頭に、今日はなんだか別の次元の情報が勝手に頭になだれ込んでくる。
とにかくウイニングライブだ。
……歌描写もスキップだ。
皆あの天才的振り付けに脳を焦がされただろう。
今日の僕はいつも以上に狂っている。軽率に
ま、とにかく、ライブは遂行する。
ネタもやる。
両方やらなくっちゃあならないってのが、変態ウマ娘のつらいところだな。覚悟はいいか?僕はできてる。
「……歌が終わった段階で出囃子を流す。次にイイ感じにクールなBGMをかける。と、まあ、あの二人はそれしか言わなかったが、裏方をやるこっちの身にもなってくれ」
出囃子はよくある「ェシギャーギャーギャーギャーギャーァン!」だ。その後はフリーBGMで頑張ってもらう。
『どもー!どもどもどもー!』
よく響く声だな、二人とも。
『パーフェクト・ウーマンズです!』
なんだそのコンビ名は。そんでもって、随分名乗り慣れてるなぁ。もしやこっちのゴルシちゃんは、ライブのたびに毎回こんなことやってるのか?
『突然なんだが、アタシ最近、とある趣味にハマっててよ』
『ほぅ?そりゃあまた、どんな』
結局、ゴルシちゃんがボケだ。
ケイジさんの高身長による位置エネルギーをフル活用したツッコミが光るだろう。
『マラソンの給水所にヨモギ大福を──』
まぁ、いつもの僕とゴルシちゃんのやりとりを書き起こしたような漫才である。文は崩れていないのに意味が通ってない、そういうアレだ。
「……あ」
見つけた。
観客席の後方。
山盛りの、しかし周囲の邪魔にならない程度の応援グッズを背負い込んで、天にも昇りそうな笑顔を浮かべる桃色髪のウマ娘が。
なかなか、楽しそうだ。
……競技ウマ娘を「歌って踊れて走れるアイドル」と捉える見方も、あるにはある。だが本質はそうじゃないのかもしれない。
歌が苦手でもいい。踊りが苦手でもいい。
それこそ、漫才が苦手でもいい。
固定観念に縛られず得意なことをやればいい。
得意じゃなくてもいい。
楽しい事なら、何でもいいんだ。
やる側も、観る側も楽しめるエンタテイメント。
そんなものは理想に過ぎない。
だが、その理想が僕の目の前に顕現している。
だって見てみろ。デジたんがあんなに笑っているのを、僕はいつぶりに見ただろうか。お正月にお泊まりしに行って、一緒に年末特番を見た時以来じゃないかってくらいの笑いっぷりだ。
「……ぐっ、僕の負けだぜゴルシちゃん」
デジたんを真に幸せの絶頂へと押し上げるためには、まず全てのウマ娘を幸せにしなければならない。僕の場合、目的地がデジたんであるから、打算的に全ウマ娘の幸福を願ってしまう側面がある。
だが、今ステージに立つ二人のウマ娘は……。
ゴルシちゃんはともかく、ケイジさんは間違いなく、損得の感情なしに利他的な行動を取れるウマ娘だ。
僕が「狭く底なし」の愛を持つとしたら、あの人は「広く深く」の愛を持っている。あ、深さについては譲れないね。僕のデジたんへの感情は控えめにいっても多元宇宙一なので。
短いようで長い旅路の果て。僕はゆっくりと目を閉じて、デジたんや仲間たちに想いを馳せた。
……ふぅ。
えー、あー。
あの、まだ僕帰れないの?
こう、今、いい感じのモノローグ入れただろ?
大切なこと学びましたー感、出したろ?
んで目を開けたら元の世界に戻ってるはずだろ?
そういうのがお決まりじゃないか、普通。
『──テロリストのくせに、つぶあんじゃなくて小倉あんにするこだわりを持つなよ!』
なんで目を開けたらこの世の終わりみたいな漫才が繰り広げられてるんだ?
ただオチに迷ってるだけか?
……とにかく。
今の所手がかりはケチャしかない。
この際、僕一人でケチャってみようか。
幸い僕は
確かゴルシちゃんは「三女神の像にさつま揚げを塗り込みながらケチャった」んだったな。何も別に、パンを尻にはさみ、右手の指を鼻の穴に入れて、左手でボクシングをしながら「いのちをだいじに」と叫ぶ、なんて無理難題を要求されているわけでもない。今夜早速やってみるか。
◆
「スゥゥ……シィリリィ……プン……プン……シィリリィ……プン……プン……ッチャーッ!!ケチャッケチャッケチャーケチャーァケチャーッ!!!」
次の瞬間、僕の視界は暗転した。
◆確かにそこにあった歴史
「……?なんか、清々しい気分だ」
「おはようございます同志……。もはや恒例だけど、気がついたらベッドに潜り込まれているあたしは蒸し暑い気分だったがぁ……?」
「リスポン地点がデジたんの隣とは粋だなぁ。今日も世界に感謝しておこう」
……今度のライブは落語でもやってみるか。
競馬知識に裏付けされた作品の魅力を私がぶち壊してやいないかと心配で夜しか眠れませんでした。
と思いましたがweb小説なんざ専門知識を蹂躙してなんぼじゃないか、と思い直し事なきを得ました。
あとウマ娘二次創作のコラボだー
ってお誘いいただいて
まったくレースしないってことあるぅぅ?
零課さん、ありがとうございました!