HALO:IF battlefield of SPARTAN 作:コレクトマン
民間人である兄妹ウェルキンとイサラ、そして妊婦を敵兵から無事に守りきったと安堵したとき、妊婦の表情が良くなかった。これに気付いたウェルキンは妊婦に声をかけ、イサラは妊婦の容態を確認する。
「マーサさん!」
「いけない!陣痛が始まっている……動かすのは危険です」
「……と言っても、ここで寝かせておくわけにはいかないよ。かなりの数の帝国兵が街に侵入してきている。風車塔広場が制圧されるのは時間の問題だ」
二人の話からしてかなり危険な状況であることを理解するカイト。カイトはこれ以上民間人の被害を出さないためにもウェルキンたちに告げる。
「二人とも、君たちは乗り物か何かを見つけてこの街から出るんだ。俺はその帝国兵とやらを足止めしていく」
「一人でですか?危険です!いくらあなたでも……」
「それしか方法はない。それに、俺はこういうのは慣れている」
カイトはMA37を手にしてウェルキンがいう風車塔広場に向かおうとする。
「待ってください!あなたは一体……」
その時にウェルキンがカイトを止めようと声をかけるが既にカイトは風車塔広場に向かって走り去ってしまった。いくらカイトが強いといっても一人だけじゃ危険だと判断したイサラは庭の納屋に隠されている
「兄さん、このままじゃあの人が危険です。庭の納屋に行きましょう」
「……納屋に?」
「父さんたちが遺してくれたものが、私たちを助けてくれるはずです」
イサラの言葉通りウェルキンはイサラと共に納屋に向かう。その納屋の中にはウェルキンとイサラの父たちが遺した物が、後の歴史において刻まれることを二人は知る由もなかった。
____________________________________________
カイトが風車塔広場に着くとそこは既に銃弾と銃声、怒声や悲鳴が充満する戦場と化していた。帝国兵特徴の装甲服を覚えていたカイトは、この街を守る自警団を誤って誤射しないように気を付けながらもMA37で帝国兵を蹴散らしていく。そしてある程度の帝国兵を倒し、奥へ進むと大きな門を攻撃する戦車3両と無数の帝国兵。それをたった3人で、土嚢で出来た簡易陣地で防衛する自警団の姿だった。
「…接敵!」
その言葉を皮切りにカイトはアサルトライフルで交戦している帝国兵に向けて発砲する。
突如と表れた謎の灰色の重装歩兵が見たことのないマシンガンを使用して帝国兵に攻撃を仕掛けてるところを見た自警団は一瞬だけガリア軍の部隊かと思われたが、ガリア軍特有の国旗のエムブレムが存在しない。新たな敵かと思っている間にその重装歩兵が簡易陣地にある土嚢に滑り込むように隠れて声を発した。
「ここを指揮しているのは誰だ!?」
「わ、私です!」
カイトの問いに答えるように走り寄ってきたのは、まだ20にも満たないような女性だった。身形と雰囲気から察するに、おそらく新兵だと判断した。
「君がか?名前は!」
「アリシア!アリシア・メルキオットです!あなたは!?」
「…スパルタンだ!スパルタン、アルファ105!」
「スパルタン……?何なのそのスパルタンって!?」
「説明は後だ!呼ぶ時はスパルタンで良い!今は目の前にいる帝国兵という敵対勢力をどうにかするのが先だ!」
銃弾が飛び交う中、カイトはアリシアに大きな声で会話しつつもアサルトライフルで牽制射撃をする。
「敵対勢力って……あなた、そんなことも知らないで戦っているんですか!?」
「生憎、土地勘が慣れていないからな!とにかく今は応戦するんだ!」
アリシア達も応戦しはじめ、徐々に態勢を持ち直してきたが……まだそこには戦車が三台いた。門近場にいる戦車はカイト達に目もくれず門に砲撃、門が崩れはじめた。
「いけない……門が崩れ始めてる……」
「不味いな……敵の戦車は3両か。普通、今の手持ちの武器じゃ破壊は困難だ。もっとも、普通だった場合だけどな」
「えっ?それってどういう……」
「何でもない。それより、手榴弾はあるか?できれば三個貸してくれ」
「手榴弾を?どうするつもりなの!?」
アリシアはカイトの行動に疑問を抱いた。そしてカイトはアリシア達にあることを告げる。
「決まっている。これを使ってあの戦車たちを破壊する」
「手榴弾で!?無茶よ!あの戦車は手榴弾だけじゃ……」
「問題ない。特にスパルタンの俺にとってはだがな?」
そう言ってカイトはアリシアの静止を振り切り、手榴弾を三つ持って戦車に突撃した。戦車を操縦する帝国戦車兵は突撃するカイトを見て狂気を感じた。この男は自分の命が惜しくないのかといわんばかりに銃弾が飛び交う弾幕に飛び込んできたのだ。帝国戦車兵は、突撃してくるカイトを最優先で倒すべく砲塔を向け、帝国製の砲弾である“KrM10 Pg 2”を装填し、照準を定める。
戦車から砲弾が発射される前にカイトは、ミョルニル・アーマーに搭載されているアーマー・アビリティの一つである“アーマー・ロック”を発動させ、全身に強力なエネルギー・シールドを展開する。
帝国戦車兵はカイトが白い繭のような何かを纏っていることに違和感を覚えたが、ただのコケ脅しだと思考を切り上げてそのまま砲弾を発射する。その砲弾はカイトに直撃すると爆発と同時に爆煙が舞う。
「そんな……!」
アリシアもカイトが戦車の砲弾をもろに受けてしまって死んでしまったと思った。帝国戦車兵もこの時に謎の兵士一人を倒したと確信を持った。
しかし、その確信は儚くも砕け散ることになる。爆煙の中から無傷のカイトが飛び出て戦車の上部ハッチのところに駆け上がる。そして戦車のハッチをアーマーのパワー・アシストでこじ開け、アリシア達から借りた手榴弾の安全ピンを引き抜いてそのまま戦車の中に投げ入れた。そして投げ返されないためにこじ開けたハッチを閉じると同時にハッチを思いっきり殴りつける。殴りつけられたハッチはへこみ、中から開けられないようにする。戦車内にいた帝国戦車兵は投げ込まれた手榴弾に慌てふためき、ハッチから外に出ようにもハッチはカイトの拳でへこみ、ゆがんでいた為に出ようにも出られなかった。
ハッチを二度と開けられないようにしたカイトはすぐに戦車から離れる。そして数秒後に戦車は内側から爆発し、中にいた帝国戦車兵もろとも爆死する。この光景を見ていた残りの戦車はカイトに対する恐怖心に駆られていた。無論、それは戦車の周りにいる帝国兵士にもその恐怖は伝染した。
「う……うわぁぁぁーっ!?ば……化け物だ!!」
「あ……悪魔!奴は…悪魔だ!?」
それは誰の声だったのか、ブルールの町を占領しかけている帝国兵はこの時に思った。この勝ち戦に人の形をした化け物ともいえる何かによって滅ぼされる。理不尽に、一方的にだ。
死にたくないという思いが思考が充満したのかほとんどの帝国兵は戦意喪失していた。しかし、それとは逆に死にたくないからこそ目の前にいる化け物を倒そうと死の運命から抗う者もいた。
「くそったれ!?ここで死んでたまるか!!目標変更!照準をあの化け物に向けろ!」
「りょ…了解!!」
一台の戦車がカイトに攻撃を仕掛けるために砲塔を向ける。それに気づいたカイトはこの時にアーマー・アビリティを“スプリント”に切り替え、戦車から砲弾が放たれる前に走り出す。そのスピードは普通の人間では出せない速度だ。
人間の時速は100mで平均時速36km/hである。しかし、超兵士として鍛え上げられたSPARTANの平均時速は60km/hである。そこにアーマー・アビリティのスプリントを含めると平均時速80km/hに及ぶ速度である。戦車を操縦していた操縦士もカイトの人間離れした素早さに度肝を抜かれていた。
「は…早い!?……はっ!」
次に操縦士が目にしたものは、何かしらの刃物が操縦席の覗き穴から迫る光景だった。何故刃物がと理解する前に操縦士はその刃物に突き刺され、悲鳴を上げる間もなく絶命する。その刃物の正体は、カイトが刀を引き抜き、正面から戦車の操縦席の覗き穴に刀を突き刺したのだ。戦車の中では突如と刃物によって操縦士が殺されたことに近場にいた機関銃士が恐怖に駆られていた。
「う……うわぁぁぁっ!?」
「バカ!?操縦変われ!!」
「はっ…はい!?」
戦車長に喝を入れられ、我に返った機関銃士は死体となった操縦士をどかして代わりに操縦する。そして正面に張り付いているカイトを押しつぶそうと一旦戦車を後退し、近くの建物に突っ込ませる。だが、建物に突っ込む前にカイトが移動していた為に空振りに終わり、ただ建物に戦車を突っ込ませるだけに終わった。その時に戦車長がしびれを切らしたのかハッチを開き、銃をもってカイトを迎え撃とうとする。
「くそっ!!化物め!?やつは何処だ!!」
「だ…駄目だ!今出てしまっては!!」
「何っ!?…っ!?」
帝国兵の言葉に戦車長は一瞬だけ反応が遅れてしまう。ハッチが開いたことに手間が省けたとカイトは思いつつも戦車長の死角から刀を振り、戦車長の首を刎ねると同時に手榴弾を戦車の中に入れる。中にいた砲手と機関銃士は戦車長が殺されたことと手榴弾が中に入れられたことに頭の中が混乱していてまともな思考ができないでいた。
手榴弾を戦車に入れたカイトはアーマー・アビリティのスプリントで一気に戦車から離れ、アリシア達のところに戻る。そして戦車が爆発し、敵の戦車は残すは一台のみとなった。
アリシア達もカイトの圧倒的な戦闘力に戦評した。ある者は突如と現れ、窮地の危機に瀕している者たちの救世主。またある者は帝国兵と同じく人の皮を被った化け物か何かのような悪魔。アリシアも最初は帝国兵を蹂躙するカイトの姿を見たとき、悪魔のような何かと思った。しかし、自警団を助け出した理由すらまだ聞けていないのに決めつけるのはまだ早いと判断し、今は彼の力に縋るしかなかった。そう考えていた矢先、帝国軍の陣地で一人の帝国兵の悲鳴が上がった。
「うわっ!せ、戦車だ!ガリアの戦車が出てきたぞ!」
「ガリア?……帝国と敵対している国の戦車か?」
カイトはヘルメットに内蔵されているズーム機能で広場の方を見ると帝国の戦車とはシルエットが違う青い迷彩塗装された別の戦車が現れたのだ。するとその戦車から聞き覚えのある声を耳にする。
「アリシア!スパルタンさん!待たせてすまなかった!」
「ウェルキン!?その戦車は?」
「ウェルキン?彼女とは知り合い……と言っている場合じゃないな。ウェルキン、一つ聞く!戦車戦の経験は?」
「高校の時、機甲訓練コースで通っていたので一応ですがあります!」
「そうか、なら上手く敵戦車の後方に回り込んで青白く光っている放熱板らしい部分を狙ってくれ!そこが弱点だ!」
「分かりました!あとは自分たちで何とかします!」
最後の一台である帝国戦車をウェルキンに任せ、カイトはウェルキンが乗る戦車を狙う帝国兵の注意を自分に向けようと牽制する。帝国兵はカイトの姿を見るや否や戦意消失をし、この場から逃げるのだった。逃げる帝国兵を追わず、カイトはこの場にいる残りの帝国兵を掃討する。
そうしている間にウェルキンの乗る戦車が敵戦車を撃破したのだった。戦車部隊が全滅した帝国軍は一時撤退を始める。それを確認したカイトはもはやここには長居は無用と判断し、ウェルキンと合流するのだった。
「よし!敵戦車を撃破したぞ!」
「やった!凄いよ、ウェルキン!」
「敵部隊が一旦退いて行くな。これで少し時間が稼げそうだ」
「お前たち、無事か?」
カイトはウェルキンたちの安否を確認する。ウェルキンとアリシアはお互いに無事であると返事を返した時にウェルキンの戦車から赤子の声が聞こえた。
「兄さん!マーサさんの赤ちゃんが、生まれました!」
「ええっ!戦車の中で生まれちゃったのかい!」
「はい。幸い、マーサさんも赤ちゃんも無事です」
「そうか……良かった。よし、敵を警戒しつつ郊外に脱出しよう」
まさかの戦車の中にマーサという妊婦を乗せていたのは想定外だった。それも戦車の中で子供を出産してだ。本来なら妊婦を戦車に乗せるべきではないのだが、状況が状況だったのでやむ負えなかったのかもしれない。そんな複雑な思いを抱生きながらもカイトはウェルキンたちと共にブルールの町から脱出するのだった。